ヘニング・マンケル 『北京から来た男』2023/04/21



写真家のカルステン・フグリーンは山奥の村々やそれよりもっと小さな集落が、過疎となってうち捨てられ朽ちていく様子を写真におさめるために奨励金をもらい旅に出ていた。
最後の村ヘッシューヴァレンに到着したが、家々の煙突から煙が上がっていないのに気づく。家のドアを叩いてみるが、返事はない。隣の家に行っても同じだった。
カーテンの隙間から部屋の中をのぞいてみると、人が倒れているようだ。
金棒でドアノブを力いっぱい叩くとノブが壊れ、ドアが開いた。
中に入ってみると、血まみれになった人が倒れていた。
カルステンは急いで車に乗り、パーキングで車を停め、緊急センターに電話をかけるが、心臓発作を起こし、アクセルを踏み込んでしまい、対向車線に突っ込み、そこにトラックが来て激突する。
カルステンはトラックの運転手に「村が。ヘッシューヴァレン」と言ってこと切れてしまう。
運転手から話を聞いた警察官エリック・ヒュッデンがヘッシューヴァレンに行ってみると、片足のない男の死体を発見する。

ヒュッデンからの連絡で応援部隊が駆けつけ家を一軒一軒調べていくと、スウェーデン犯罪史上類のないことが起きていた。
ヘッシューヴァレンの村人がほとんど全員殺されていたのだ。
殺された十九人の村人たちはそれぞれ親戚関係にあった。
生き残ったのは三人で、そのうちの二人はこの村で二十年暮らしているよそ者で、もう一人が認知症を患っているユリアという老女だった。

ヘルシングボリの裁判官、ビルギッタ・ロスリンは大量殺人事件の新聞記事を見て、アンドレンという苗字に目が引かれた。
ビルギッタの母親はアンドレンという家族に養子に入り、子ども時代を養父母の村で過ごしたという。
母に関する書類を調べてみると写真があり、思った通り、ヘッシューヴァレンだった。

医師から疾病休暇を取るように命じられ、暇になったビルギッタは母の書類を見ていくうちにアメリカに移住したアンドレン一族の手紙を見つけ、ネットでいくつか検索をしてみた。
そうするとつい最近、ネヴァダ州でアンドレンという一家が皆殺しにされるという事件があったことがわかる。
ヘッシューヴァレンの事件とネヴァダの事件に何らかの関係があるように思えたビルギッタは車でヘッシューヴァレンに行くことにする。

ヒューディックスヴァル警察署の警察官ヴィヴィ・スンドベリはビルギッタを冷たく迎えるが、ヘッシューヴァレンのアンドレン家の中を見させてくれる。
タンスの中にあった日記に「ネヴァダ」という文字を見つけ、ビルギッタは秘かに日記を持ち出す。
日記はJ・Aという頭文字の人間が書いたもので、彼はアメリカ大陸横断鉄道を建設する鉄道会社の工事主任で、ネヴァダ砂漠を東に向かって建設される鉄道の現場監督だった。

やがてビルギッタは中国の現在と過去に翻弄されていく…。

物語では中国とアメリカ、スウェーデンの1860年代、1960年代、そして2006年が歴史的、経済的、政治的にとつもなく大きくなスケールで描かれています。
特に中国の農民たちの悲惨な暮らしやアメリカに連れられていき、大陸横断鉄道建設にたずさわされた中国人たちの過酷な労働等、読む価値のある内容です。
スウェーデンの若者たちが中国の文化大革命をどういう風に受け取っていたのかがわかりました。

殺人事件の方は途中からおざなりで、結末はぱっとしなかったです。
ヴァランダーのようなミステリーを期待せず、中国のことを読むと思って読むといいのではないでしょうか。