刑事マルティン・ベック 『ロセアンナ』2024/01/03

年の初めから、地震と飛行機事故という思ってもみなかったことが起りました。
地震では東京の方も揺れ、東日本大震災を思い出し、原発は大丈夫かと心配でした。
一日も早い復旧と、被災された方々が日常生活に戻れるよう、お祈りいたしております。

グレーンス警部シリーズを読み終え、昨年末から刑事マルティン・ベック・シリーズを読み始めました。
気をつけてください。シリーズ物ですが、スウェーデン語から直訳された新訳版が四巻から刊行されていたのです。
私はそれを知らなくて、四巻目の『笑う警官』を先に読んでしまいました(恥)。
どうりで読んでいて、おかしいと思ったわwww。


1964年、7月8日。
ボーレンスフルトの閘門で、全裸の女性の死体が見つかる。
モーターラ署の警察官、アールベリが担当になり、女性の身元を探るが、モーターラの町にも、その周辺の警察管区にも捜索願が出されている行方不明者や公示されている失踪者もいなかった。

それから八日が経ち、女の身元も、犯行現場も、容疑者もわからず、捜査が行き詰まったため、スウェーデン警察本庁の刑事殺人課の捜査官マルティン・ベックとレンナルト・コルベリ、フレドリック・メランダーがモーターラに赴く。
しかし、それでも捜査は進まず、彼らはストックホルムに戻る。

八月に入り、アメリカ合衆国ネブラスカ州リンカーン警察の殺人課捜査官エルマー・B・カフカから電報が来る。
その電報には身元不明の女性の名前と年齢、職業が載っていた。
このことが突破口となり、捜査が進展するように思われたが…。

1964年のお話なので、携帯電話もパソコンもなく、郵便と電報、電話でやり取りする時代です。
登場人物たちが煙草を吸う場面が多過ぎです。ゴホ、ゴホ。
スタンダードな刑事物ですね。

表紙を見るといかにもマルティン・ベックが主人公のように思われますが、残念ながら彼はヴァランダーやグレーンスほど活躍していなくて、拍子抜けします。
似ているのは家庭が上手く行っていないことだけですww。
洋の東西を問わず、警察官って忙しすぎて、妻が不満を持ちやすい職業なんですね。
マルティンは1964年当時は胃弱な42歳。
29歳の時に妻のインガと結婚し、一男一女がいます。妻が主婦で暇なせいか、マルティンに五月蠅くかまうので、彼は妻には働いてもらいたいのですが、妻が働くのを嫌がり、主婦のまま居座っています。
私の見た、いえ読んだところ、マルティンはそれほど魅力的な人のようではないので、お互い様ですね。
今のままでいくと、末は離婚かなぁ?

スウェーデン警察本庁のエキスパートの捜査官だからか、もしくはスウェーデンの警察組織のやり方なのか、日本のように二人で組んで動くことがなく、互いに何をやっているのか知らないことが多いです。
同僚のコルベリとはいい関係が出来ており、助けられることが多いし、メランダーは抜群の記憶力を誇り、何でも彼に聞くと思い出してくれ、便利な人です。
この三人がこのシリーズの主要人物です。

タイトルの『ロセアンナ』は殺された女性の名で、彼女は今では当たり前なのですが、1964年当時は最先端を行く女性で、自由と自立を重んじる人でした。
時代を感じますが、刑事物としてはなかなかよさそうです。
スウェーデン社会と他の国々がどう犯罪に関わってくるのか。
ヴァランダーやグレーンスの先駆けとなる小説です。