重松清 『見張り塔から ずっと』2006/01/21



東京は大雪。上京したての時、雪が降ると傘をさすのが、不思議でした。でも1度傘をささずに出掛けてみると、理由がよくわかりました。本州の雪は水分が多く、べたつくので、傘が必要なのですね。


重松清の初期の短編集、『見張り塔から ずっと』を読み終えました。

「カラス」は新興住宅地に、マンションの値段が下がってから越してきた家族が現れ、その家族にまわりが『いやがらせ』をするという話。普通に出会えば、仲良くなったかもしれないのに、自分たちよりも大分安くマンションを買えた、そのことだけで、子どもは幼稚園で孤立し、母親は自治会にもいれてもらえない。怖いのは、いじめにあっていた家族が越した後、次のターゲットは誰になるのか・・・。

「扉を開けて」は、子どもを失った夫婦のマンションの同じ階に、ある家族が越してくる。その家族は自分たちと同じ年代で、その子どもは、亡き子が生きていたらなっていたであろう年齢で、名前まで同じ。妻の精神がふたたび病んできて、子どもの幻までみるようになり、心配していた夫もだんだんと・・・。

人間の奥底に潜む悪意や弱さ、悲しみがよく描かれた短編集だと思います。