「ぬぐ絵画―日本のヌード 1880-1945」展@東京国立近代美術館2011/12/10



黒田清輝の絵のポスターに惹かれて行ってきました。
この展覧会を見る前は、日本の絵画にヌードがどう描かれていたかどうか考えてもみませんでした。
浮世絵に水浴びする女性のもろ肌を脱いだ絵がありますが、そういえば全身裸というのは見たことがありません。春画がありますが、美術作品ではないですし・・・。
日本人が裸体画を鑑賞するということは明治になるまでなかったということです。

1895年にフランスから帰国した黒田清輝がフランスで描いた「朝妝」を第4回内国勧業博覧会に出品しました。この「朝妝」は空襲で焼けてしまいましたが、ちなみにこんな絵だったそうです。


今では何の変哲もないこの絵が、日本美術会初の裸体絵画だそうです。
裸体論争が起こり、風刺画家ビゴーは当時の様子をおもしろおかしく描いています。
この頃の日本人は公の場でのヌードを見慣れなかったということですね。
問題なのは胸ではなくて、下なのです。


この絵は前に三菱三号美術館の『三菱が夢見た美術館』展で見ましたが、発表された時はなんと下半身を布で覆って展示したそうです。

横に寝た絵はエロチックすぎるからと、黒田は横になった女性を縦に描きます。
そうすると立っているように見えるからだそうです。


この「野辺」がそういう意図で描かれていたとは・・・。

上野の黒田清輝記念館にあった「智・感・情」も展示されています。
三人の神々しいような女性たちですが、裸体論争に抵抗を示し、裸体の美をしらしめるために描いたものなのでしょうね。
黒田清輝が日本美術会に与えた影響は大きいのです。

黒田清輝を見ただけで満足でした。
ちょっと思ったのが、美術館の部屋の違いでしょうか、飾り方の違いでしょうか、絵の美しさがあまり生きていないような気がしました。

黒田清輝が日本に裸体絵画を定着させ、定着したヌード絵画は開花し成熟していきます。
萬鉄五郎(よろずてつごろう)の絵なんかおもしろいですね。


自分の妻を描いたそうですが、黒田と比べると人間臭い、ムンムンとした生命力溢れる絵です。ゴーギャンのタヒチの女性を思わせます。

古賀春江(男です)の絵は好きです。彼はキュビスムやシュルレアリスムなどの影響を受けています。残念なことに、38歳の若さで亡くなっています。


彼の代表作の「海」は4階の所蔵作品展に展示してありますので、この展覧会を観終わったら行ってみてください。
所蔵作品展もヌード満載です。

他にも梅原龍三郎や中村彝(なかむらつね)、村山槐多、熊谷守一、安井曽太郎など近代日本美術会のそうそうたるメンバーの作品があります。
見に来る人も少なく、ゆっくりじっくり見ることのできる面白い展覧会です。

とっても残念だったのが、疲れたのでお茶でもと思ったら・・・、喫茶室がありませんでした。どうもクイーンアリスが撤退したようです。他の美術館ほど人が来ないせいですかね。 
流行りのお店でなくていいから、ブリジストン美術館のようなこじんまりした喫茶室を望みます。