経済小説三冊2012/03/19



ビールやウィスキーを販売する会社、スターライトの憧れの宣伝部で働いていた上杉は、有名な広告賞をいくつか貰い天狗になっていました。いい気になって社内や代理店の女に手を出していると、相手が得意先の大手坂類卸の社長令嬢で、会社員としてのあるまじき行動を取ったということで、広島に転勤命令が出てしまいます。
辞めようとまで思いつめたのですが、宣伝部の先輩に諭され、広島行きを決意します。

「営業で売れまくって、宣伝部に凱旋してやる」

しかし、そうは甘くはない。なんと上杉は酒乱だったのです。営業って接待で飲みますよねぇ。

営業マンの仕事を垣間見られるお仕事本です。営業ウーマンは私にはできませんわぁ。


とっても夢のある話です。

お爺ちゃんから相続したアパートの管理人をしつつ、週に二日ほど夜バイトの交通誘導員をしている妹尾順平は吉野家で不思議な紳士に会います。
彼は順平に四百億を出すから三年で東京に鉄道を敷いて欲しいというのです。
戸惑いながらも、その仕事を引き受けた順平は、飲み友達のリエを引き込み、『鉄路プランニング』という会社を設立します。順平は代表取締役で、リエは専務取締役です。
その後、求人広告に応募してきた元国鉄に勤めていた鉄道のプロ、徳武こと徳さんを雇い、交通誘導で出会って頭の回転に感心したミキオを説得し、四人が『鉄路プランニング』のメンバーになりました。

さて、一体東京のどこに鉄道を敷こうというのでしょうか。

一つのプロジェクトをどういう風に進めていくのかということがわかる小説です。
これも立派なお仕事本です。


先に紹介した二冊に比べると、ちょっとスケールの小さな本です。

主人公は書店に勤める27歳の亜紀という結婚したばかりの女の子。
コネ入社の上、煮え切らない同じ書店に勤めている彼氏を振って、漫画雑誌の編集者と結婚したため、書店に勤める女の子たちからシカトされ、いじめを受けていました。
書店の仕事が好きだからと、いじめをする人たちと同じ土俵に立とうとはせずに頑張る亜紀です。
40歳独身父一人の副店長、理子はそんな亜紀が大嫌い。亜紀のところにきた結婚祝いのグラスを、ある理由から壊して捨ててしまったりします。

ここで気が付きました。著者の碧野圭って『辞めない理由』を書いた人ではないですか。
普通の職場って彼女の描くようなことが普通にあるんでしょうか?
私って恵まれているらしく、こういうことってない職場なんですが。

このままで行くと、よくあるお局様と若い子のバトルという暗~い話になってしまうと思っていると、違う展開になりました。

店長に抜擢された理子は自分の店が3月で閉店になることを知ります。どうせなくなる職場だから女に任せておけという発想なのか。
自分たちの働く場を失くしたくない理子と書店員たちは一致団結して売り上げを伸ばそうと頑張ります。そうすれば閉店しないと社長が約束したからです。
あんなに亜紀を嫌っていた理子も背に腹は替えられぬ。
亜紀の売り場改革案や人気漫画家のサイン会など、ユニークな企画をしぶしぶ取り上げるようになります。

いつも行く書店ってこんな仕事があるんだ。ふむふむ。
結局いじめのある職場って暇なのね、と思ってしまう私です。
残念なことに、上杉や順平と比べると理子も亜紀も魅力がないです。
亜紀はキャピキャピしすぎで、理子はなんでこんなにギスギスした嫌味な女なのか。

文庫本は『書店ガール』と改題してあり、書店もペガサス書店吉祥寺店になっています。内容も微妙に変わっているところがあるそうです。

三冊の中では一押しが『東京箱庭鉄道』です。
本当にこの本のようなことが計画されていたら・・・と思うと楽しくなります。私は実際にこういう計画があったのかと思ってしまいました。

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