内澤旬子 『センセイの書斎 イラストルポ「本」のある仕事場』&『世界屠畜紀行』2012/02/01



作家、研究者、建築家、デザイナーなどの本棚を見てみたいという願望は、本好きなら誰にもあるでしょう。
私もそうです。
誰の本棚を見たいかしら?今ちょっと思い当たりませんが。

この本は書斎の詳細なイラストと書斎の持ち主へのインタビューからなっています。文庫本版を読んだので、イラストが小さすぎて失敗しました。(といっても図書館から借りたのですが)
内澤さんがどういう人か知りませんが、彼女の書く文が結構好きです。

自宅を見せてくださる人と、大学の研究室を見せてくれる人と人それぞれ。
本棚を見られるのって自分の脳みそを見られるようですね。
こういうブログも似たようなものですね。私の脳みそが暴かれているなんて、怖いですわ。
まあ、たいしたことのない人間ですからいいですかぁ。

昔は山関係の本を持っていて、それを見た古本屋さんがこういう本は高いんですと言っていたことを思い出しました。
今は軽い本ばかり読んでいるので昔ながらの古本屋さんには売らずにブックオフを利用しています。
前の家では本棚が足りなくて床の上に置いてある本もありました。引越を期に本を持たないことにしました。必要なら買えますもの。
この本に出てくる人たちはすごいです。彼らのような書斎が欲しいです。書斎に普通の人はあれほどのお金をかけられ、いえ、かけようとは思いませんよね。
一軒家に住めたら書斎を作りたいですが、東京に住んでいる限り無理そうです。

読んでいてロシア語の通訳でエッセイストでもある故米原万理の言葉にその通りと言いたくなりました。

「CD-ROMやインターネットだけだとやっぱり視野が狭くなるんですよ。自分の選んだ項目しか出てこないでしょ。電子メディアは。ところが紙の媒体だと全然読むつもりのないものがついでにパッと目に入ってくる」

語学の学習でも今は電子辞書が主流です。私も使っていますが物足りなくて紙の辞書をよく引きます。今の若い人たちは電子辞書に慣れてしまって、何でもすぐにわかることが当たり前になってしまっているように思います。
道草をしなくなったというんでしょうか。
手をかけてグダグダやるのが面白いんですけどね。


二冊目の『世界屠畜紀行』は色々なところで紹介されている本です。
読んでみたいと思っていたので、たまたま図書館にあったので借りてみました。実は『センセイの書斎』を書いた人と同じ作者だとは知りませんでした。イラストを見て気づきました。

何故日本では食肉処理にたずさわっている人は差別されているのか。
この疑問から彼女は屠畜現場へ出向くようになったようです。(何故屠殺でないのか、本読んでね)
韓国、バリ島、チェコ、エジプト、モンゴル、アメリカ、そして日本の沖縄、東京の中央卸売市場食肉市場内芝浦屠場と自腹で出かけています。

彼女のすごいところは、屠畜現場を見ても目をそむけず、なんと自分もやってみたいとまで思うところです。
彼女のブログを見ると、今、実際に豚を飼っているようです。本の中で家畜を飼って自分で屠畜したいと言っていましたが、実行したのですね。

そういえば私もインドで肉にするために鳥の首や羽を斬られたり、寺院で神様へのいけにえとしてヤギが殺されるのを見たことがあります。その時、気持ち悪いとか全く思いませんでした。
なんというのでしょうね。人間が生きていく上での当たり前の行為のように思いました。私って普通の人と感覚が違うのでしょうか?

自分たちの食べているものがどうやって作られているのかを知ることは必要なことです。パックされた肉だけでは何もわかりませんものね。
命をいただくということをしっかり心に刻みたいものです。

屠畜だけで宗教から社会、文化、差別問題まで網羅するということがとても面白いと思いました。
これから買う人は文庫本よりも単行本を買うことをお勧めします。
なにしろイラストが小さくて、大変ですから。

ボリショイ・バレエ 『スパルタクス』@東京文化会館2012/02/03



音楽:アラム・ハチャトゥリアン
振付:ユーリー・グリゴローヴィッチ
管弦楽:ボリショイ劇場管弦楽団

<キャスト>
スパルタクス:イワン・ワシーリエフ
クラッスス:アレクサンドル・ヴォルチコフ
フリーギア:スヴェトラーナ・ルンキナ
エギナ:マリーヤ・アラシュ

[第一幕]
ローマの執政官クラッススは、勝利を収めローマへ帰還します。彼が捕らえた捕虜の中に、トラキアの王スパルタクスとその妻フリーギアがいました。
クラッススと側近たちの酒宴でフリーギアは笑いものにされ、スパルタクスは剣闘場に送られ、親友を殺すことを強要されます。
スパルタクスは、仲間の捕虜たちに反乱を起こすよう煽動します。

[第二幕]
脱走したスパルタクスはフリーギアを探してクラッススの別荘にやってきて、彼女と再会します。
クラッススの勝利を祝う宴を催しているところをスパルタクスと仲間が襲撃し、クラッススを捕えます。
クラッススはスパルタクスと一騎打ちをします。
クラッススは敗れ命乞いをします。
復讐を望まないスパルタクスはクラッススを解放します。

[第三幕]
エギナはスパルタクスの野営地を発見しクラッススに知らせます。
クラッススはすぐに大軍を送ります。
スパルタクスの軍勢との間に血なまぐさい戦いが勃発します。
クラッススの軍勢はスパルタクスを発見し、彼を槍で串刺しにして殺します。
スパルタクスの最も忠実な部下たちが彼の亡骸を奪還して運び去り、フリーギアはスパルタクスの記憶が永遠に人々の間で生き続けることを祈ります。


あらすじを辿ると、何故スパルタクスはクラッススを殺してしまわなかったのと言いたくなります。
闘いでは人として道徳的にどうというのよりも、どんなにずるいことをしても勝たなければ意味がないですよ。
歴史を振り返ると、敵に情けをかけて勝ったためしがないような・・・。

ボリショイ・バレエはお値段が他のバレエ団より高めなのですが、それでもゆるせます。というのも自前の楽団を連れてくるのからです。
音が違います。迫力があっていいです。

ガラでスパルタクスとフリーギアのアダージョを見て楽しみにしていました。
記憶していたアダージョがなかったような・・・。振付が違うのか、カットされているのか。思っていたよりもリフトが少なかったようです。私がガラでみたのはヤコブソン版かモイセーエフ版のかもしれません。マリインスキー劇場のレパートリーに入っているそうなので、いつかみてみたいです。

前回の公演でイワン君がデビューして、ドンキですばらしい飛翔を見せてくれました。その後、太腿ムキムキになってしまい残念だなぁと思っていたのですが、今回はもうドンキの時の少年の面影はなく青年になり、大人の色気がでていました。
スパルタクスはワシーリエフに適任の役ですね。
昨年の12月だったかしら、急にミハイロフスキー劇場に移籍してしまって来日を危惧していました。これが彼をボリショイで見る最後なのですね。ミハイロフスキーでどういう活躍をしてくれるのか楽しみです。

『スパルタクス』はなんといっても、勇ましい「男たち」を見るバレエです。
これは日本人男性ではできないなと思いました。やっぱり胸板の厚い男性ではないと迫力がでません。ボリショイは層が厚いので、こういうものが出来るのですね。

座席はよかったのですが、体調が悪かったためかあまりよく見えなくて、これからはかぶりつきでみるしかないかなと思いました。といってもかぶりつきの座席は滅多に手に入りませんが。

ボリショイはこれから『ライモンダ』と『白鳥の湖』を上演するようです。平日なので残念ながら行けません。『スパルタクス』を見ただけでよしとしますわ。

滝田務雄 『田舎刑事の趣味とお仕事』&『田舎の刑事の動物記』。2012/02/04

本がたまっています。早く紹介しないと内容を忘れてしまいます。
そういう訳で、シリーズ物は一緒に書いてしまいます。


タイトルに『田舎刑事…』とつくシリーズ物です。脱力系田舎ミステリだそうです。
シリーズ一作目は『田舎刑事の趣味とお仕事』、二作目は『田舎の刑事の動物記』。
題名からうかがえるように日本の田舎の警察署に勤める、階級が巡査部長という黒川鈴木が主人公です。名前が変ですね。まあ、名前だけではなく、性格も変わった人です。
黒川は日常と違うことをやるのが大嫌い。例えば海外旅行。
これまた変わったお人である奥様が雑誌の懸賞で台湾旅行を当ててしまい、一緒に台湾に行った時のことなんか、笑っちゃいます。
言葉が通じないところが大嫌いなんです。飛行機の中からドキドキしていて、パラシュートで逃げ出そうかなどと言っているんですから。
彼の趣味はネットゲーム。彼が選んだチャラクターは愛らしい女の子。
初心者はゲーム中にわからないことを聞こうとしても邪険にされます。例外はかわいい女の子のキャラ。そういう訳で女の子にしたのですが、結構はまっています。
家では鍵を閉めて、仕事をしているからと嘘を言って、ゲームをやってるのです。

こんな彼ですが、仕事はできます。推理力が冴えています。
仕事が問題なのではなくて、同僚が問題なのです。
彼の片腕(?)の白石君。
彼はお気楽おバカ。本能のおもむくままに行動します。なんで警官になれたのか?
かわいそうに黒川は白石のせいで胃が痛くなって入院までしちゃいます。
もう一人の同僚赤木はまっとうな人で、黒川と白石のバトルを冷静に見ています。
こういう三人プラス孫大好きおじいちゃんの署長でどんなことをやらかしてくれるのかが楽しみなシリーズです。

私が一番気になるのが、黒川の奥さんです。
この奥さん、変な人で、黒川の給料が安いからとサンタになったり、月光仮面になったりして稼いでいます。コスプレが好きなんでしょうか?
変な時に変なところに現れ、これまた黒川を悩まします。

事件は田舎ですから田舎特有の脱力系です。

このシリーズ、テレビの木曜ミステリーシアターで連続ドラマとして放送しているようです。まだ私は見ていませんが、どうなんでしょう?
黒川と白石の捕り物帳は実写版よりも漫画版の方が雰囲気出ると思いますが。

ヘイリー・リンド 『贋作に明日はない』2012/02/05



第一作『贋作と共に去りぬ』に続くシリーズです。
贋作に関する薀蓄は全くと言っていいほどなくなりました。こういう作品に期待しても無駄でした。北森鴻さんは偉大です。

サンフランシスコの高級画廊のオープニングに招待された疑似塗装師のアニーは、金持ちの招待客と知り合いになって仕事を回してもらえればと思って参加したのに、オークの木にぶらさがっている死体を見つけてしまいます。
警察を待っている間にたまたま話をした女性には、アニーの父親の古い知り合いの彫刻家パスカルが盗んだ彫刻を取り返すようにと頼まれてしまいます。
ちょうど同じ頃、画廊の隣にあるブロック美術館で絵の盗難がありました。
盗難にあった絵の側にはアニーの友人、ブライアンがいました。興奮しやすいブライアンはパニックを起こしてしまい、警察に協力をしないため、犯人ではないかと疑われてしまい、アニーに助けを求めてきます。

画廊からの帰りにスタジオの前で車を止め、車のドアを閉めると、スタジオの鍵は助手席に・・・。仕方なく裏手の窓から入ろうとすると、警報装置が作動してしまいます。そのため避けていた大家のフランクに見つかり、絵画修復の仕事を依頼されます。フランクはいい男なので、彼に元贋作師だったことがバレてしまわないかと心配なアニーです。

次の日、パスカルを探しに彼の家に行くと、どうも中にいるようなのでドアの前で彼が出てくるのを待つことにします。協力を申し出た友達たちがやってきて、退屈まぎれにドアの前で酒盛りが始めってしまいます。天岩戸のようで楽しそうですが、普通はこんなことやりませんよね。

アニーが何かをやるたんびに騒動を起こすのが、このシリーズのお約束事。
最初の何ページかで、時間的には4~6時間でアニーは以上のようなことをやっています。
それでも前回よりアニーのパワーが落ちてきているように思います。なにしろ前回はクラッシャーでしたから。

今回はアニーのお母様まで登場。素敵な人なのですが、昔に男関係で何やらあったようです。
お爺ちゃんも変っていましたが、アニーの家族ってまともじゃなさそうです。
電話でしかお目にかかったことのないお爺ちゃんとアニーの二人でタッグを組み事件を解決しようなんてことをしたらどんなことが起こるのか、ちょっと怖いけれど、見て(読んで)みたい気もします。

一見無関係そうなことがうまくひとつに終息していき、大家のフランクからアニーは「確かに、きみはとてつもなく恐いな。だがどうやら、その恐さにそそられてきたようだ」と言われて、一応事件はうまく解決します。イケメン二人(フランクと前回登場の泥棒さんももちろん出てきます)とアニーの関係がどうなるのかしら。

本格的ミステリーではないですし、元贋作師の事件簿というわりにたいして贋作についての薀蓄も書いてありません。
ミステリー色のついたユーモア小説という感じの本です。
アニーにどれだけ親近感を抱くかによって好き嫌いが分かれるでしょうね。

高任和夫 『敗者復活戦』&熊谷達也 『ゆうとりあ』2012/02/06

経済小説でも今回紹介するのは定年間近、もしくは定年後のお話です。
主人公は団塊の世代でしょうね。


なんか『敗者復活戦』という題名が嫌です。
男性にとって定年とは死活問題なのでしょうか。仕事をしていれば満足なんでしょうか。

主人公の彦坂祐介は総合商社の中間管理職。とはいっても仕事は特殊で、社員のミスや不祥事の摘発が主な仕事です。嫌だと思いつつも辞めずにやってきましたが、今度は違います。黒川常務から与えられた仕事は、彦坂と同期入社の栗田を探すというものでした。栗田は三億もの巨額の負債を残して失踪していたのです。
一体彼に何があったのでしょうか。

彦坂は東京近郊のベッドタウン、虹が丘に住んでいました。同年代のご近所仲間がいて、その中に雨宮がいます。雨宮は一年前に銀行を退職したばかり。朝から飲み始める生活をしていました。
そのうち夜に眠れなくなり、曜日の感覚がなくなり、失禁し始め、動作が思うにまかせなくなり、何もやる気がおきなくなり・・・医者に行って診断されたのは、アルコール依存症でした。
雨宮の戦いが始まります。

もう一人のご近所仲間は河合です。彼は食品問屋の部長を辞して悠々自適に暮らしています。彼のような生き方が定年後のあらまほしき姿です。
テニスをし、碁を打ち、山歩きをし、好奇心旺盛で心が柔らかな人です。
河合は三百万円を使い、船で百日間世界一周旅行に行くことにします。
旅行の後に彼が見出したことは・・・。

最後がやっぱりと思ってしまいました。



『敗者復活戦』とは違って『ゆうとりあ』は夫婦の話です。

佐竹は定年を迎え、妻と理想郷「ゆうとりあ」に移住することにします。
「ゆうとりあ」は富山県のN市の外れの石川県との県境に近いところにあり、五百坪の畑がついた家が一千万ぐらいで買えます。
蕎麦屋をやるのが夢の佐竹と野菜作りをやりたい妻との意見が一致したのです。
住んでみた「ゆうとりあ」は・・・。

一方友人の北川は定年後も働きたい人間で、起業しようと佐竹を誘いに来ます。
佐竹と北川の同期の河村はロックバンドをやって忙しいとのこと。
これまた三者三様の定年後です。

六人の人たちの定年後の生活ですが、どの生活を取っても、本人が満足していればいいんじゃないのと言いたくなります。
人生に勝ち、負けなんかないのですから。
問題なのは会社に依存していたことのような気がします。

本の中のいい言葉を載せておきましょう。
まず、『敗者復活戦』から。

「一日一快」
「生きていられることへの感謝。あるいは生かされていることへの感謝。その気持ちを持てる人間だけが、依存症から脱却できる」

『ゆうとりあ』から。

「ようするに、いいことも悪いことも、小さなことの積み重ねなのよね。そのときにはささいなことも、十年、二十年、さらに三十年と積み重なっていくうちに、気づいてみたら引き返せなくなっているわけよ。それが人生というものだわ」

私の理想の定年後は、河合さんみたいなもんですかね。
夫婦そろって地方に移住は無理なので、船旅行なんていいです。
でも、知り合いの知り合いの夫婦は船旅行に行ってから仲が悪くなったそうです。
河合さんみたいに一人で行くというのがいいのかもしれません。

とにかく年を取っても持っていたいのが好奇心と些細なことにも幸福感を見出せるやわらかな心ですね。


小川糸 『あつあつを召し上がれ』&近藤史恵 『三つの名を持つ犬』2012/02/08

この頃Googleを見るのが楽しみです。2月は有名人の誕生日がめじろおし。今日は伊藤若冲です。7日はディケンズでした。その前は・・・・忘れちゃったわ。


小川さんの本には美味しそうな食べ物がいっぱいです。
今回は短編小説なので、一作一作に美味しそうなものが出てきます。
例えば、死につつある祖母に食べさせるかき氷。
プロポーズの時に食べていた横浜中華街のしゅうまい、ふかひれスープ、 豚バラ飯。
別れる二人が金沢の旅館で食べる松茸づくしのご飯。
乳がんで死んだ母から学んだ煮干しの味噌汁。
認知症の老女が食べるコロッケ・・・。
どれも美味しそうです。

私的には煮干しの味噌汁はNGです。煮干しが嫌いなんです。だしは昆布か鰹節でお願いします(笑)。



この本、買おうかどうか悩んで買いませんでした。買わなくてよかったわ。
近藤さんの書く『サクリファイス』や『モップの精…』などは好きなのですが。

エルという雑種犬との生活を書いたブログが評判になり、エルと一緒に雑誌のインタビューを受けたり、エルとのことを書いたエッセイの仕事をしてそこそこの生活をしていた元モデルの草間都は、愛人とのデートに出かけて帰ったところ、エルが死んでいました。
エルがいなければ仕事はもらえません。
彼女がしたことはエルと似た犬を探すことでした・・・。

犬好きなら都の気持ちがわかるかしら?
都のしたことはあまりにも愚かとしかいいようがないですわ。

私が今飼おうと思っているのが、豆柴かフレンチブルドックです。
フレンチブルドックは毛が短いのに脱毛が多いとか。意外なのですが、プードルの方が脱毛が少ないということです。
本当ですか?

畠中恵 『まんまこと』2012/02/09



宮部みゆきの江戸物が気に入ったので他にないかと思っていたところ、図書館で見かけたのがこのシリーズ。
本屋では「しゃばけシリーズ」の文庫本が目立つところに置いてあったのを思い出しました。「しゃべけ」は長そうなので、まだ三作しかでていないこのシリーズをまず読んでみることに。

江戸神田の古名主高橋宗右衛門の息子、麻之助は16歳になったとたんに今までの”いい子”とは大違いの”お気楽”若者になってしまいます。
親たちの心配をものともせず、いつもつるんでいる悪友二人―おなごに強いイケメン、町名主の息子の清十郎と武家のお城の石垣よりも固い石頭の吉五郎―と町の難問奇問を解いていきます。

シリーズは『まんまこと』から始まり、『こいしり』、『こいわすれ』と続きます。三馬鹿トリオの活躍がおもしろいです。
ある人に思いを寄せる麻之助が、シリーズが進むにつれ吉五郎の親戚のお寿ずと出会い、結婚し、子供ができ・・・と続いていきますが、どこに転ぶのか気になります。まさか・・・ね。(ネタバレになるので書きませんが)

江戸時代のことはあまり知りませんが、読んでいてとても身近に感じました。
このシリーズ、おもしろかったので「しゃばけ」も読もうと思っています。

気になった麻之助の言葉を載せておきます。

「後悔は、齢を重ねる内に数多く積み重なる。重くなっていくのがたまらぬな」

この後悔の気持ちが麻之助のやる気のなさの原因のようです。
ちょっと女々しいぞ!朝之助。
ままならぬが世の常。
ですよね。

北森鴻 『親不孝通りディテクティブ』&『親不孝通りラプソディー』2012/02/11

北森さんの本は全部は読んでいませんが、ほぼ知っていると思っていました。
甘かったです。
この「鴨ネギコンビ」シリーズは知りませんでした。
私の好きな民俗学や骨董の世界を描く作品ではありません。


博多長浜でカクテルとおでん、ラーメンを出す屋台をやっているテッキこと鴨志田鉄樹と高校の同級生で結婚相談所の調査員のキョータこと根岸球太。
このコンビと言えないような二人のお話。彼らの姓を取って「鴨ネギ」コンビ。(ベタな名をつけてます・・・)

『親不孝通りディテクティブ』は短編集です。
まっとうに屋台商売をやろうとしているテッキのところに、厄介な事件がやってきます。
事件を運んでくるのが、コンビの片割れで、お調子もん、頭を使うことが苦手なキョータや鴨ネギたちの高校の元教師で華岡結婚相談所経営者のオフクロ、ライブハウス≪セブン≫の経営者にして伝説の歌姫、そして博多署に勤めながらも危ないバイトをしている刑事です。
テッキって頭脳派で事件を鮮やかに解決していくのが格好いいですが、見かけがあまりよくないのかしら?女にもててません。


『親不孝通りラプソディー』は鴨ネギコンビが高校時代に起こした、とんでもない事件の話です。
もちろん、その事件の発端はキョータですよ。
キョータはいいところのボンボンで、父親が県会議員に立候補しようかという人です。
自分は格好よくて、もてると勘違いしていて、歌姫の経営する≪セブン≫でひっかけた女の子とトイレの中でいいことをしていると・・・美人局に引っかかってしまいます。
用意するのは一千万。金を寄越さないとテメエのやったことを世間にばらしてやるぞ、ということになります。
そこでどうしようもなくなり、キョータが考えたことは鴨、失礼、テッキと一緒に金を用意することです。どうやったかはネタバレするので書きませんが。なんで自分だけでやればいいのに、テッキまで引き込むのでしょうかね。

北森さんって山口出身なのに、博多のことをよく知っているようです。
博多って屋台が有名ですよね。私は一度も博多に行ったことがないので、よく知らないのですが、たぶん北森さんの描いているような雰囲気の所なのでしょう。
冬は寒そうなので、暖かくなったら行ってみたいです。ラーメンもいいけれど、餃子も美味しそうです。

関係ない話ですが、今日、餃子の大将で持ち帰り餃子を頼んだところ、相棒に笑われてしまいました。

私:「餃子12個ください」
店員:「二人分ですね」

大将では餃子は一人分、二人分と頼むのですね。なにしろ王将に1回しか入ったことないですから。

北森さんの本で彼の死後、公私共にパートナーであった浅野里沙子が完成させた『蓮邪馬台 蓮丈那智フィールドファイルⅣ』が出版されているそうなので図書館で探して読んでみたいと思っています。

この親不孝通り、いえ、鴨ネギシリーズもシリーズ化するつもりで書いていたのでしょうね。
続きが読めなくて、ホント、残念です。

アーロン&シャーロット・エルキンズ 『悪夢の優勝カップ』2012/02/12



今日は用事があったので、勝どき付近に行ってきました。高層ビルが立ち並び、新しいビルも続々と建っているようです。
水辺を歩くのは気持ちがいいです。
鎌倉に住めないのならここら辺に住んでもいいかなと話していましたが、違うところに住むことになってしまいました。



怪しいスライス』に続く、プロゴルファー、リーの第二弾です。

賞金ランキング九十八位のオレゴン州ポートランド出身の無名選手であるリーが、ニューメキシコ州ロスアラモスにあるゴルフ場、コットンウッド・クリークで開催されたWPGTツアーで調子がよく、初日に首位をキープしました。彼女のスコア64はこのコースの新記録です。
これは優勝できるかもしれない。
そう思ったリーですが、心配なことがありました。腕が痛いのです。
医者に診せるとトーナメントを棄権するように言われるかもしれないと考えると不安になるリーです。
友人のペグに言われて医者に診てもらうと、テニスひじでした。リーはプレーを続行することを決心します。

次の日、雷でプレーは中断されます。コースの側の家に避難していたリーがプレーを再開するためにカートに乗っている時に、倒れている男を見つけてしまいます。
リーはすばやく気道を確保をし、心拍蘇生法を施し、通りかかった人に助けを頼みます。救護員が来るまで心臓マッサージを続けていたため、リーのテニスひじの腕はクラブを振ると激痛が出るまでになってしまいました。四週間から六週間休まなければならないと医者に言われてしまいます。
仕方なく、棄権をし、これからのことを考えると暗くなるリーでしたが、テレビの仕事が舞い込みます。これでお金はなんとかなりそうです。
リーが助けようとした男は死んでしまいます。一見雷にうたれて死んだかのように見えましたが・・・。

前回恋人同士になり、今は距離を置いていたカーメル市警警部補のグレアムがわざわざリーに会いに来ます。ロスアラモス郡警刑事のルーペンと知り合いで、ゴルフをよく知らないルーベンの手助けをすることになります。

アメリカのスポーツ中継の様子が垣間見られる内容です。

グレアムと親しくなりすぎると、自分の将来がどうなるのかと考えるリーの気持ちがよくわかります。
年を取ると、結婚しちゃえばどうにかなることがわかるのですが。

リーがいつ優勝できるのか。そしてグレアムとの関係がどうなるのかが楽しみになってきました。

畠中恵 『しゃばけ』&『ぬしさまへ』2012/02/14

今年のチョコはショコラティエパレドオールの詰め合わせです。


半分は私が食べてしまいます。バレンタインは美味しいチョコレートがたくさんあるので嬉しいです。


図書館に『しゃばけ』シリーズが全部あったので借りてきました。


廻船問屋兼薬種問屋 長崎屋の若だんなの一太郎はやっと授かった一粒種の上、病弱なので親からも手代の兄いからも甘やかされ、過保護なくらい大事にされています。
彼の手代の兄いは佐助と仁吉と言いますが、実は人ではなく妖(あやかし)です。
一太郎の祖母おぎんが妖で、彼のことを心配して二人をつけてくれたのです。
残念ながら一太郎には特別な力はなく、妖が見えるだけです。

病弱なため外出は滅多にできず、できたとしても佐助か仁吉の付き添いがあるのがいつもですが、ある夜、一太郎はこっそり一人で外へ出かけます。
その帰りに人殺しに出会います。殺されたのは大工で、一太郎が見つけた時には首が付いていたのに、その後、誰かが首を切り落としたようです。
この殺しの後に薬種屋が次々と殺されます。
一太郎も家にいたのに、危ない目に会います。
一体何者が何のために薬種屋を殺しているのか、一太郎たちが探っていきます。


二巻目は短編集です。
どの話にも一太郎のことを気遣い、過保護すぎるほどの佐助と仁吉が出てきます。
佐助の本当の名は『犬神』。力が強く、ごっつい顔立ちに身の丈六尺に近い偉丈夫です。
仁吉は『白沢』といい、齢千年を超える、切れ長の目に整った面をしたイケメンで博識。実は彼、一太郎の祖母おぎんこと狐の妖である皮衣(かわごろも)にずっと恋心を抱いています。
この二人の妖の他にも一太郎の周りには妖ばかり。
小鬼の鳴家(やなり)はお菓子大好き。遊ぶの大好き。お菓子を取る奴に対する恨みはすごいです。いつも一太郎の袖に入って彼の行くところについて行きます。
屏風のぞきは屏風の付喪神。派手好きの妖で仁吉と佐助とはそりが合いません。
他にも野寺坊、獺、鈴彦姫など色々な妖が一太郎の住んでいる離れを住処としています。事件が起こると一太郎のために探りにいきます。

一太郎がこれはいい子で、どんなに甘やかされてもそれを当たり前としません。病弱故、一人立ちできない自分を情けなく思い、しっかりしなくてはと思うのです。
身体はダメでも頭で勝負してます。

ラジオやテレビでドラマとして放送されていたようです。手塚裕也が一太郎だったようですが、どうだったのかしら?