近藤史恵 『サクリファイス』 ― 2010/11/10

前にランス・アームストロングの書いた『ただマイヨ・ジョーヌのためでなく』を読みました。ランスは自転車競技選手で癌から生還し、その後ツール・ド・フランスで七連覇をなしとげた人です。
本では前半で癌克服の過程、後半でツール・ド・フランスの様子が書いてあり、ツール・ド・フランスの過酷さを知りました。
今回、『サクリファイス』読み、『ただマイヨ・ジョーヌのためでなく』に書かれていなかった自転車競技の内幕がわかりました。
ランスは石尾と同じエースだったのですね。
彼がマスコミからたたかれていたらしいですが(詳しくは知りません)まあ、エースだから仕方がないと言えるのかもしれません。
とっても美しい、自転車ロードレースの本です。
陸上で期待されながら、18歳で自転車ロードレースに転向した白石誓は、アシストとして生きる道を選ぶ。
陸上競技で勝つために走ることに嫌気がさしていたのだ。
日本の自転車ロードレースのチーム<チーム・オッジ>に入り、誓がアシストするのはエース石尾。
彼には勝つためにはどんなことでもするという噂があった。
自分のライバルになりそうな奴を事故と見せかして潰したこともあるというのだ。
山が得意な誓はある大会でステージ優勝をし、チームのもう一人のエースになるのではと期待されるが、自分に淡々と接する石尾を見て、噂は嘘だと思いたい誓。
ヨーロッパのチームが、日本人を採用したがっているという噂を聞いた誓は、チャンスと思い、自分と同期でエースになりそうな伊庭にその話をする。
エースを勝たせるためにだけ存在するアシスト。
アシストの手を借りて勝つエース。
彼は「アシストたちの夢や嫉妬を喰らい、それを踏みつけてゴールゲートに飛び込んでいく」。
結局大会で名前が残るのは、エースだけ。
<チーム・オッジ>が海外遠征に出かけていた時、誓に別れた恋人が会い来る。
レース中に見た彼女の横には、車いすに乗った男がいた。
それは石尾に潰されたという男だった。
思いがけない悲劇が誓たちを襲う。
一応ミステリー仕立てなのですが、私はロードレースのすばらしさを感じるだけで満足してしまいました。
美学と言ってもいいぐらいです。
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