北森鴻 『狐罠』2010/11/25



美人古美術商の宇佐美陶子は、銀座の骨董商で橘薫堂の橘秀曳から発掘物の硝子碗を買います。
しかし、それは巧みに作られた贋作で、陶子は橘から仕掛けられた「目利き殺し」にあったのです。

悔しい思いをした陶子の元に、鄭富健と名乗る保険調査員がやってきます。
彼から橘が国立博物館研究員の戸田と組んで贋作を本物と鑑定してもらっているという話を聞きます。

陶子は橘へ意趣返しの罠をかけようと決意します。

イギリス人の元夫で大学教授をしているDから陶子は美術品の鑑識眼を養われました。
久しぶりに夫に会いにいった陶子はDに贋作の天才、潮見と会える手筈をつけてくれるようにと頼みます。

そんな折、橘薫堂の外商で耳役である田倉俊子が殺され、陶子は殺人事件に巻き込まれていきます。

前にイギリス(だと思う)の骨董屋のミステリーを読んだことがありますが、日本の骨董屋も同様に奥が深いというか、汚いというか、狐と狸の化かし合いなのですね。

美しいものを身近において愛でたいという欲望は切りがなく、囚われると地獄に落ちるしかないという恐ろしい世界です。
そんな世界を女一人で渡っていこうとする陶子は格好よすぎです。

幕切れがはぎれがわるいことが残念でしたが、こういう話、私は大好きです。
惜しむらくは、北森さん、48歳という若さで亡くなっているのです。
陶子シリーズ、探して読むことにします。