読んだ時代小説シリーズ2026/06/15



有馬美季子 『お葉の医心帖 ゆらめきの紫陽花』
心を寄せる林二郎が、師匠・道庵の因縁の相手、総伯の息子であることを聞き、林二郎のことを諦めようと思ったお葉だが、仕事に専念しようとしても彼の面影を心から締め出すことはできない。何も知らない林はお葉に会いにくるが、お葉はつれなくする。
やがて林は道庵と総伯のことを知る。

道庵は総伯とのことがあっても、お葉の幸せのためなら林二郎とのことを許すと思います。
林が父親と縁を切り、ただの町医者として生きていけるかどうかにかかっていますね。
お葉の幸せを願うばかりです。

知野みさき 『祈る紫苑~上絵師 律の似面絵帖~』
もう少しで子どもが生まれるという律はみんなに見守られながら、身体に差し支えないように仕事をしている。ありがたいことに、鞠巾着も新しく始めた歌留多守も途切れなく注文がある。
そんな律ではあったが、青陽堂の奉公人が藪入りで里に帰ってから帰りが遅れたり、新しく雇った女中のことなどでなかなか落ち着かない。

歌留多守を私も頼んでみたいです。
律は子どももできて、これからは危ないことも控えて落ち着くのではないでしょうか。
心配なのは岡っ引き志望の綾乃です。そのうち危ない目に遭いそう。
登場人物が多くなり、なかなか覚えきれなくなりました。
次回はどんな着物を注文されるのかが楽しみです。

坂井希久子 『なずな蕎麦 花暦 居酒屋ぜんや』
子を産んでから体調がすぐれなかったお妙だったが、元気になり、店に出られるようになる。そうなると、常連たちが放っておかない。店を貸切り舌鼓。
俵屋に勤める熊吉は毎日忙しく歩き回っているうちに子授け薬を求める武家の妻と女中と知り合い、女性にも薬を売るにはどうすればいいか考え始める。
お花は熊吉のことが少し気になる模様。ところが最近知り合った蕎麦屋の娘と会いに行ったっきり戻って来ない。一体、どういうことか。 

だんだんと熊吉とお花の気持ちが寄り添うようになっていくようです。
二人が結ばれて終わるのかしら。そうなるといいですね。

<おすすめ漫画>
七海仁 『Shrink~精神科医ヨワイ~』
今回はがん患者に関わるヨワイ医師です。
がん患者のこころに寄り添えない癌の専門医が多そう。
癌になった時に参考になりそうな漫画です。

マキヒロチ/まろ 『おひとりさまホテル 9』
東京のホテルの紹介です。
東京に住んでいても泊まりに行きたいです。
ホテル選びに迷っていたら読んでみてください。

「筆耕屋だんまり堂」シリーズ 1~32026/05/27



麻宮好 『筆耕屋だんまり堂ー心の色を文字にします』
    『筆耕屋だんまり堂(2)姉への恋文』
    『筆耕屋だんまり堂(3)一文字の想い』

水沢数馬は姪の春佳と深川今川町の蜜柑長屋に住み、筆耕屋を営んでいる。
数馬は上州郷埼藩の出で、水沢家は代々、藩の奥右筆を務めてきたが、五年前、兄の代で屋敷が火事となり、兄夫婦は亡くなり、数馬は声を失った。
水沢家は出火の咎でお取り潰しになり、叔父の勧めで兄夫婦の忘れ形見の春佳とともに江戸にやって来たのだ。
今や9歳の闊達で明るい娘となった春佳が口のきけない数馬の唇の動きを読み取り、理解し、彼と依頼人の間を取り持つ大事な役目を果たしている。

数馬には人にも言えない秘密がある。
文字に触れると書いた人の想いや過去が心に浮かぶのだ。
そんな彼が書いたものは、依頼人に寄り添ったものとなり、数馬に頼むと願いが叶うと言われるようになった。
そして、もう一つ、秘密がある。
火事が起きたときに持って逃げた兄の形見の硯箱の中身、つまり硯と墨、そして文鎮が数馬に話しかけてくるのだ。

今日も数馬のもとに依頼人がやって来る。
迷子の娘を探し続ける夫婦、冥途からの文を求める飛脚、結婚する大店の娘に料理帖を託したい女中、姉の許婚だった男からの恋文を願う弟…。
ともすれば依頼人に同情し、突っ走ってしまう春佳に閉口しながらも、数馬は依頼人にとって何が一番よいのかを熟考しながら、彼らに寄り添った文を書いていく。

切ないけれど、心が温かくなるお話です。
火事で亡くなった兄夫婦の影にある藩の秘密を、これから数馬は解き明かしていくことになるのでしょうか。
春佳ちゃんには幸せな人生を願っていますが、彼女の性格からして、数馬にどこまでもついて行きそうです。
お勧めのシリーズで、四巻目が待たれます。

風野真知雄の新旧シリーズ2026/05/13

まずは風野真知雄の新シリーズから紹介いたしましょう。
彼はたくさんのシリーズを出しているので、この頃、あまり手を出さないようにしています。
「耳袋」シリーズはどこまで読んだかわからなくなり、「寿司銀」シリーズは主役のおじいさんがあまり好きじゃないので読むのを止めました。
今度のシリーズはわんちゃんが可愛いので、読める…かな?


風野真知雄 『手下は犬だけ』
安西三郎太は北町奉行所同心で、母方の下の伯父である安西家に養子に入ったのに、不手際が多く、このままでは安西家はお取り潰しになりかねないとのことで、急遽、25歳で隠居させられる。
彼の代わりに吉田家の喜八郎が養子に入り、三郎太は義父の持つ霊岸島の長屋に住むことになる。

三郎太が長屋に行き、中にはいると、足元に犬がいた。
二、三歳くらいの薄い茶色で、賢そうな顔をした牡犬だ。どうも野良犬らしい。
名を聞くと、「くうむ」と言ったので、犬の名は「空無」となり、三郎太は空無を飼うことにする。

まずは食い扶持を稼がなくては。
残念ながら霊岸島には町道場はなく、字が下手糞なので寺子屋の師匠はできない。
ブラブラと仕事を探しながら歩いていると、酒問屋の若旦那殺害を調べている喜八郎に会ったので、一応激励しておく。

別の日、酒問屋の<紀ノ川屋>の番頭に声をかけられる。
仕事を探していると言うと、用心棒をやらないかと言われる。
どうも同じ酒問屋の播磨屋の若旦那が殺されたこともあり、問屋同士で金を出し合って用心棒を雇おうかと話しているらしい。
というわけで、三郎太は用心棒となる。

三郎太は気になることがあると追及せずにはいられない性格だ。
播磨屋の若旦那の殺害と荷揚げされた空の樽一つの関係が気になる。
自分なりに調べ上げ、同心にとんと向かない喜八郎に手柄を譲る。

他に三郎太が気になったのは、武士の幽霊や火付けの前に鳴く猫、人斬り酒など変な噂のある事件だ。
三郎太は空無と共に事件を解きあかしていく。

三郎太は頭が切れるため、同僚たちのアラが見えてしまい、それで嫌われ、隠居させられたみたいです。
彼と正反対なのが喜八郎。取り調べはまったくできないのに、周りに対する配慮だけはうまく、義父にも気に入られているみたいです。
喜八郎に手柄を譲るなんて、三郎太は人が良すぎと思いますけどね。



風野真知雄 『わるじい義剣帖<七>ももこさま』
愛坂桃太郎は困惑していた。誰が言い出したのかわからないが、孫の桃子が願いを叶えてくれるという噂が出回り、毎日、誰かがやって来ては拝んでいくのだ。
たまに妙なことを祈る輩もいて、桃太郎は気になって仕方がなく、ついつい探ってしまう。
「あの足跡が早く消えますように」とか、「うどんが青くなりますように」、「タイでうまくエビがつれますように」、「どうか、あの子が立派な辻斬りになれますように」など。

そんな頃、南町奉行所の隠密同心が殺され、関りのあった桃太郎と旧知の岡っ引きも命を落としていた。
桃太郎は気になり、調べていくが…。

葛飾北斎が出てきて、桃太郎に頼まれ、火事で焼ける前の霊岸島を記憶だけで描きます。
彼ならできそうですね。
桃子ちゃん、わるじいのおかげで拝まれてしまいましたねww。
可愛いからいいです。
さて、次回に何やら政治絡みの大変なことが起こりそうです。
桃太郎が元気でいてくれればいいのですが、まさか…。

新シリーズがどう展開していくのか気になります。できれば空無の出番を増やしてくださいませw。
4月に刊行したのに、6月には二巻目が出るそうです。風野さん、速筆ですね。
わるじいは飽きません。ずっと続いて欲しいです。

朝井まかて 『豆は煮えたか』2026/05/09



お玉は深川の水茶屋ささげやの女将。
亭主といっしょに店を営んでいたが、亭主が亡くなり、彼が作っていた名物の豆餅をお玉が作るようになってから味は落ちるばかりで、お客も少なくなるばかり。
しかし、お玉には人には知られていない裏家業があった。
人の掌に触れると、その人の近い将来が見えるのだ。
相談事のある人は、「豆は煮えたが」という符牒を告げねばならない。

「豆は煮えたか」
ある夜、お玉は怪我をした男に助けを求められる。男は新次郎と名乗り、賭場で知り合った女遊客と深間にはまり、女が侠客の情人であったため、仕置きを受けたという。新次郎は菓子職人だった。

「身のほど知らず」
竹原白斎は江戸で指折り数えられる易者の一人だが、自分の易断に自信が持てないでいた。易者は自分のことは占えない。今年の正月、挨拶回りに行くと、どの贔屓筋の家からも冷たく当たられ、その後に寝込んだ。よくなってから弟子の三太を連れ、客が噂していたささげやに行ってみる。

「いつ咲く」
植木屋寺嶋屋の主人、伊織は恵まれた生まれながら、父のようになれない自分を持て余し、女と遊びにかまけて、酒々落々と生きて来た。しかし、世間は五代目の伊織に期待しており、平凡であることを許してくれない。五代目としてどう生きたらいいのか、わからなかった。ある集まりでささげやの女将のことを聞き、ささげやに行き、符牒を告げると…。

「雲隠れ」
おかつはどこで何の奉公をしても続かなかった。最後の料理茶屋で放り出されてから、あてもなく歩き、ある店の縁台に腰かけていると、女将に声をかけられ、お茶と出来損ないの豆餅をご馳走になる。いつしかおかつは「わたしをここに置いてくれませんか」と訊いていた。
その頃、ささげやに新次郎の元情人の女が数人の破落戸を引き連れてやって来て、店に迷惑をかけるようになる。

「宝引き」
易者の八斎(三太)は具合の悪くなった宝引きの女とその女といっしょにいた女の子を押し付けられる。困った八斎は二人をささげやに連れて行って、面倒をみてもらう。実は宝引きの女にはお玉とは違う不思議な力があった。

「くらぶ者なき」
新次郎とおかつの夫婦にこどもが生まれ、お玉は彼らに店を任せ、占い稼業は続けている。
ある日、伊織から誰とは言えない特別な客をみてもらいたいと頼まれる。


私は三太とおかつが夫婦になるのだと思っていましたが、違いました。
なんでおかつは三太にきつく当たるのか不思議です。
そんなおかつが私は好きにはなれませんでした。

お玉だけではなく、彼女のそばにいる人たちの温かさに心が和むお話です。
江戸の庶民はこんな風に助け合って生きてきたのですね。
不思議な力を持った人たちがささげやに集うようになり、もしシリーズになったら、彼らが悩みを持った人たちを助けていくのでしょうか。
そういうお話も読んでみたいですね。

心に残った言葉。
「変わりものが現れるのを世間は偶然と呼ぶのだろうが、偶然はひたすら心を尽くして己を用意した者にしか訪れぬものだ」

読んだ時代小説シリーズ(文庫本)2026/04/27

パパが土曜日もお仕事だったので、日曜日に家族でお散歩をします。


クレマチスの花が満開です。


兄はおやつをもらえるのを期待して、ママの顔を見ています。


綺麗なピンクの芍薬。


兄はママの方を見ているのに、何故かお外に行くとヨーキーは変なところを見ていますww。


薔薇のカクテルも満開です。


最後にやっとこっちを見てくれました。

読んだ本がまた溜まってきたので、四冊まとめて紹介します。


横山起也 『針ざむらい(二)』
針さむらい』の続編。
親友・黒部新右衛門の仇である「七人のみさき」のひとりが、賭場を仕切っている「鎌組」の頭領ではないかという噂を耳にした糸原佐武郎は、声聞師の青と共に賭場に潜入する。しかし、賭けなどしたことがない二人。大負けしてしまい、千五百両もの借金を背負ってしまう。もちろん二人はカモにされたのだ。言葉巧みな青が賭場の顔役と交渉し、なんとかひと月の猶予が与えられるが、勝つ見込みは全くない。困った二人がひょんなことから知り合ったのが、曲という大道芸人。佐武郎たちは曲に賭博指南をしてもらうが…。

佐武郎も青もめっぽう賭け事に弱いというのが笑っちゃいます。
でも、意外なお方が強運の持ち主でした。
その人がこれから佐武郎の幸運の女神として存在感を増していくのでしょうか。
意外と面白い展開になっていっています。
さむらいシリーズの中で一番面白くなるかも。

馳月基矢 『姉上、ご成敗ねがいます②』
小夜が嫁入りした酒井家は血の繋がりはないが、各々優れた才を持つ、隠密の任を担う一家だ。彼らに申し付けられたのが、南洋の花鳥を狙った付け火と盗みの探索。しかし、闇場居党を壊滅させた恨みを持つ者がいるのか、何やら怪しい動きが。小夜が何者かに襲われたのだ。襲撃者はわかったが、大身旗本がバックにいるので、手が出せない。さて、どうする。

小夜に懐かなかった梅千代もだんだん変わってきています。
初恋と友、この二つが彼にいい影響を与えたようです。
疑似家族のそれぞれに何やら隠された過去があるような。
それがどのように任務と関わってくるのかが楽しみです。
実は表紙の絵、私、あまり好きじゃないです。
これからもこんな感じなんですかね。

知野みさき 『幕末神妙記1 両国の笛吹きと占い師』
十五歳の時に起きた悲劇のため二年分の記憶を失った翠は、十六歳の時に母のゆかりと共に母の親友の早苗をたより、上田から江戸に出て来た。
早苗は柳橋で屋形船・安曇屋を切り盛りしており、翠はゆかりと一緒に給仕や囃子方として働いていた。
一昨年、客の仁之助に見初められ、求婚されたが、翠は断った。しかし、ゆかりが卒中で倒れ、仁之助に勧められて彼の表店に引越した。それから一年ほどでゆかりは亡くなる。仁之助への恩返しを考える翠だが。
ある日、仁之助と広小路の出店を覗いて回っていたときに、翠は元鳥越町の万屋・白鳥屋の占い師、環と彼女の従兄弟に出会う。
環は評判のいい占い師で、翠の母が手放した笛が見つかる日を予言し、怪異好きの仁之助が持ち込む事件も占いで解決していく。環は一体何者なのか?

環だけではなく翠も何やら不思議な力を持っている感じです。
シリーズが進むにつれて、明らかになっていくのでしょうね。

中島久枝 『おでかけ料理人 涙のあとには甘いものを』
神田に住む十七歳の佐菜はおでかけ料理人。人に頼まれて、料理をしに行く。
今回の料理は、噺家に頼まれた味噌汁と川遊びの弁当、姑の得意料理だったというふき味噌、能の囃子方大鼓、石山流宗家の孫の専太郎と彼の友たちのために作る地獄飯、絵師の猫のご飯、富田屋に頼まれた天ぷらの揚げ方指南など。

どのお話もほろりとした人情味のあるお話です。
神田明神裏の料理屋・江戸芳の板前、新吉が佐菜に気がある様子。
二人のこれからも気になります。

新しいシリーズはまだ様子見ですが、『針ざむらい』はこれから益々面白くなりそうです。
『おでかけ料理人』は方向も定まり安定してきました。

永井紗耶子 『木挽町のあだ討ち』2026/04/09

神社に行くと、八重桜が咲いていました。


久しぶりの青空。


河津桜、枝垂桜、ソメイヨシノ、八重桜と次々と違う種類の桜が咲いて、長く桜が楽しめます。


映画の「木挽町のあだ討ち」が評判らしいので、原作を読んでみました。
2019年から「小説新潮」に連載され、2023年に単行本が刊行され、2025年に歌舞伎舞台化、2026年に映画化されたそうです。


睦月晦日の雪の夜、木挽町の芝居小屋の裏手で、菊之助という一人の若衆が見事な仇討をやり遂げた。
相手は菊之助の父、伊能清左衛門の仇、博徒の作兵衛。

朗々と名乗りを上げ、作兵衛に一太刀浴びせ、返り血で白装束を真っ赤に染め、作兵衛の首級を上げた後、菊之助は宵闇に姿を消した。

あれから二年。
菊之助の縁者と名乗る武士が森田座にやって来る。
木挽町の仇討について知りたいといい、仇討の場にいた者たちに話を聞いて回る。
その際に彼らの来し方も聞く。

武士に語った者たちは、元幇間の一八、立師の与三郎、衣裳部屋で端役の女形、二代目芳澤ほたる、小道具係・久蔵のお内儀、お与根、戯作者の篠田金治の五人。

仇討に秘められた真実とは…。

この作品は第36回山本周五郎賞と第169回直樹三十五賞を受賞しているのですね。
話題になっていたのを忘れていましたw。

あだ討ちよりも、市井の人たち、五人の来し方が面白かったです。
武士というものは、わかってはいますが、どうしようもないですねぇ。
まあ、オチは途中で予測できましたがね。
ミステリというよりも時代劇です。
時代小説が初めてという方でも読みやすいと思いますので、是非、挑戦してみてください。
私は見ませんが、ついでに映画も見ると、小説との違いがわかっていいかも。


なんか、役者が私の想像と違っていますわ…。

伊多波碧 『物が全てを教えてくれる 日本初の女性化学者・黒田チカ』2026/04/06

前に女性化学者・猿橋勝子について書かれた『翠雨の人』を読みましたが、NHKのおかげでしょうか、今まで日の当たらなかった専門職に就いた女性に関する本が続々と出版されるようになったようですね。
私が中高生の時にこのような本が読めたら、進路決定に何らかの影響があったかもしれませんねぇ。


黒田チカは明治17年(1884年)、元士族であった父・平八、母・トクの三女として佐賀県に生まれる。
小さい時から聡い子で、毎日、小学校に通う姉に付いていって、教室の外で授業を聞いていた。
5歳の時に小学校高等科の教師・米満与三郎の口利きにより、尋常小学校に入学を許される。
父の平八は「これからも女子にも教育が必要」と考える、進歩的な人だった。
そのためチカは当時の女性としては考えられぬ教育を受ける。

尋常小学校の高等科を卒業した後に佐賀師範学校に入学し、明治34年(1901年)に卒業後、小学校に一年勤務し、明治35年(1902年)に女子高等師範学校理科(今のお茶の水女子大)に進む。
明治39年(1906年)、女性高等師範学校を卒業後、福井師範学校の教諭となるが、一年で辞め、明治40年(1907年)、女性高等師範学校研究科に入学し、明治42年(1909年)に修了後、同校の助教授となる。
大正2年(1913年)、日本初の女性帝大生として東北帝国大学理科大学化学科に入学。
大正5年(1916年)に黒田の化学者としての生涯に多大なる影響を与えた眞島利行のもとで紫根の色素の研究に着手し、東北帝国大学化学科卒業するが、卒業後も大学に残り、研究を続ける。
大正7年(1918年)、紫根の色素構造の特定に成功し、研究論文を発表。東京化学学会で「紫根の色素について」講演する。東京女子高等師範学校教授となる。
大正10年(1921年)、英国オックスフォート大学に留学。フタロン酸誘導体を研究。
大正12年(1923年)、帰国して東京女子高等師範学校に復帰。
大正13年(1924年)、理化学研究所(眞島研究室)嘱託となり、紅花の色素の構造について研究を始める。
昭和4年(1929年)、「紅花の色素カーサミンの構造」で博士号取得。女性で二番目の博士となる。この後、ナフトキノン誘導体やウニの棘の色素(ナフトキノン系)の研究をする。
昭和24年(1949年)、お茶の水女子大学が発足し、同大学の教授となる。
自由学園の生徒たちに質問されたことがきっかけとなった、玉葱の皮からケルセチンの結晶を取り出すことに成功する。(1953年にケルセチンを主成分とした高血圧治療剤「ケルチンC」が開発される)
昭和27年(1952年)、お茶の水女子大学退官し、昭和38年(1963年)まで同大学非常勤講師を務める。
昭和43年(1968年)、福岡で逝去。享年84歳。
(参考:お茶の水女子大学附属図書館歴史資料館「黒田チカ」)

家父長制度があった時代では、女子が教育を受けられるかどうかは父親の考えに左右されます。
黒田チカは女子にも教育が必要だと思う父親がいたので、このように高度な教育を受けられたのです。
本人の資質も必要ですが、幸運の下に生まれたのでしょうね。

未だに古い、女には学問はいらないと考える親がいるようですが、本人がやろうと思えば何でもやれるのが今のいいところ。
ダメだと思わずチャレンジしていって欲しいですね。
本の中の米満先生の言葉を書いておきます。

「一つ知恵を授けよう。悩んだときは、物事を単純に考えるといい。自分の邪魔をするものには近寄らなければいいのだ。大きな石が道をふさいでいたらどうする?
回れ右をして別の道を通るだろう。上手に逃げなさい」

「物事を単純に考える」ことはいいことですね。
なかなか逃げるのも大変ですがねww。

小説としてみるとイマイチですが、黒田チカを知るにはいい本だと思います。
YAにお勧めです。

馳月基矢 『姉上、ご成敗ねがいます①』2026/02/11

「拙者、妹がおりまして」シリーズや「蛇杖院」シリーズを書いている馳月さんの新シリーズ。


小普請入りの旗本、吉竹家の娘、小夜は半月前に知行高五百石で勘定吟味役の酒井家の当主、菊之進に嫁いだ。
吉竹家も酒井家も、どちらにも裏の顔があった。

小夜の父、篤兵衛はご公儀の隠密にして始末屋。
弟の由利之丞がいるというのに、小夜の方に才があるからと、篤兵衛は小夜に直伝の始末術を仕込んだ。
小夜は依頼が受けたら仕事場に赴き、標的を確実に始末するのだ。
ところが半月前、小夜は酒井家に嫁ぎ、由利之丞は母方の遠縁の先手弓頭の滝沢雅監のもとへ養子にいくという手続きを調え、唐突に父がいなくなった。

酒井家には菊之進の他に、彼の弟の蘭十郎と嫡男の梅千代がいる。
しかし、この三人には血の繋がりはない。
酒井家は奉公人共々隠密の任を担う一家で、この疑似家族の中に小夜は妻として潜入せよというのだ。

裁縫や料理が苦手な小夜は酒井家の奥方として戸惑うことばかりなのに、さらに八歳になる梅千代は小夜に懐こうとはしない。
だが、彼以外の奉公人や菊之進、蘭十郎は小夜を快く受け入れてくれた。

小夜は隠密としての仕事をしながら、少しずつこの疑似家族たちと心を通わせ、彼らの秘密を知ることになる。

表紙の印象から始末屋のお話とは思いませんでした。
普段はおっとりしている小夜が、仕事では手際よくキッチリ始末をつけるというギャップが面白いです。
詳しくは書きませんが、他の三人の家族もそれぞれキャラ立ちしています。

二巻が三月に出るようで、異国渡りの鳥に関わる事件がどうこれから展開していくのか、楽しみです。

森明日香 『天上の宴 おくり絵師』2026/02/08



東京にも雪が降り、我が家の庭に雪が積もっています。
クリスマスローズが一輪咲いていたのですが、今朝見ると雪に埋もれていました。


昨日撮った時はまだ雪が降っていなかったので、こんな感じだったのです。
たまに降るのはいいのですが、今回は土日で選挙の日。
よかったのか、悪かったのか。
私は10年以上も前の大雪の日に滑って頭をうち、救急車で病院に運ばれたことがあります。
みなさま、くれぐれも気をつけてくださいね。

さて、本の方は、『恋女房』に続く、おくり絵師シリーズの五作目です。


「第一話 子福長者」
大地震後の復興が進み、おふゆが師事している歌川国藤や弟子の岩五郎への依頼が増え、おふゆは絵草子の挿絵を一手に引き受けるようになっていた。
しかし、病で寝込んでからおふゆに迷いが生じていた。
自分の描く絵は浅かったのではないか…。

そんな時に昔世話になった旅芸人一座の座長お京が現れ、おふゆに亡くなった亭主の死絵を描いて欲しいと頼む。
書き上げたおふゆにお京が語ったことは…。

「第二話 朝靄の出立」
文政五年(1822年)、ころりが江戸で蔓延し、多くの人たちが亡くなる。
おふゆは亡くなった糸物問屋の金右衛門の死絵を描き、息子の喜右衛門に渡す。

そんな頃、菓子屋「卯の屋」の元若旦那だった寅蔵がおふゆのところにやって来て、ころりで母親のおりんが亡くなり、両親の骨を持って仙台に行くという。
おふゆはおりんの死絵を描こうとするが…。

「第三話 天上の宴」
新しい年が明け、おふゆは版元の佐野屋から芝居に招かれる。お京から紹介された八代目市川團十郎の父親・海老蔵がでるという。
芝居は賛否両論の出来だった。
しかし、その後、海老蔵が舞台で倒れてしまう。
おふゆは佐野屋から海老蔵が亡くなった知らせが届いたら、すぐに死絵を描くことを依頼される。
おふゆは思う。自分に名役者の死絵が描けるだろうか…。

様々な人々との出会いと別れを経験し、おふゆは「亡くなった人を悼み、遺された人を労わる絵を描きたい」と心を新たにして、死絵を描きつづけることにします。
もう迷わず、自分の道を行こうと決めたおふゆに、新しい仕事と縁がやって来ます。

いいライバルになりそうだった歌川豊国の娘のおとりが魚屋の跡取りと一緒になるようで、そこが残念でした。
おふゆの方は思い人が仙台に行ってしまったものね。
恋も仕事も、共には難しいのがこの時代です。

本の中のいい言葉:
岩五郎:「望んで描くことと、望まれて描くことは違う」
佐野屋:「心に映るものだけを信じるのです」

読んだ時代小説シリーズ2026/01/03

少しブログに繋がりやすくなったかと思ったら、海外の方では全くダメみたいです。どうにかならないものでしょうかね。

さて、昨年に読んだもので、紹介していないものがあるので、一遍に紹介しちゃいましょう。


和田はつ子 『家族ぜんざい 料理人季蔵捕物控』
ある日、昼賄いでにぎわっている塩梅屋に酒問屋の若旦那、江戸屋治吉がやってくる。養母を刀で斬殺し、打ち首に処されたという幼馴染の和泉健治の無実の証をたてたいというのだ。手助けをすることにした季蔵だが…。

和田はつ子 『日ノ本一のおせち 料理人季蔵捕物控』
塩梅屋の安くてうまい昼賄いが好評だ。ある日、季蔵の弟分の豪助とその妻のおしんが切り盛りしている鳥料理の店、味楽里の庭で武家の娘の骸が見つかり、同じ時に塩梅屋に海苔を寄付してくれた品川屋の主と大番頭が店の近くの神社で殺されていた。辻斬りではないかと思われた。
そんな時に北町奉行烏谷は季蔵に、『四方八方料理大全』の著者であり、種々料理法の生き字引である松枝貴栄に手助けを頼み、”大江戸泉岳寺初参り”に出す日ノ本一のおせちを作り上げろと命じる。烏谷の真意は?

料理人季蔵捕物控シリーズも五十作目だそうです。長く続いていますね。
この頃、料理の記述が多くて、そこは流し読みになっています。
御節料理について詳しく知りたい方は読んでみるといいでしょう。
李蔵の思い人が今回は出てこなくて、ちょっと残念です。

麻宮好 『震える羊羹舟 おけいの戯作手帖<二>』
戯作者見習のおけいは二作目が書けずに苦しんでいたが、十一歳の弟の幸太郎には単独で妖怪絵の注文が来ていた。
そんなある日、おけいの想い人で、版元の勘助からお菓子競べに誘われる。
なんとそこで羊羹舟が宙を飛んだのだ。
おけいは羊羹舟の謎を解き、次作に書こうと思うが…。

「羊羹舟」は羊羹を作る時に使う型のことです。
おけいは一巻目よりもしおらしくなっていますww。
同じく女戯作者の桜木華絵が登場し、おけいと友だちになったので、次回は二人で謎解きをするのでしょうかね。

風野真知雄 『わるじい義剣帖(六)ありがたや』
孫愛溢れる愛坂桃太郎は相変わらず面倒な頼まれごとに悩まされている。
今回は「化け猫の墓」、「駕籠かきが消えた駕籠」、「役立たずの提灯」という謎解きだ。
こんなことばかりならよかったのだが、桃太郎は隠密同心の殺しと関わることになる。

ひょっとしたら桃太郎は次回は危ないことにまきこまれるのでは…。
有能な人はおちおち隠居もできないものですね。

坂井希久子 『撫子こがし 花暦 居酒屋ぜんや』
只次郎とお妙夫婦に子が生まれたが、産後の肥立ちが悪く、お妙はなかなか床を上げられずにいたため、お花は一人で『ぜんや』を切り盛りしている。
そんな時に一人のお侍がぜんやにやって来る。彼はお花の実母と何やらありそうな感じだ。
一方、熊吉は仕事の迷いとお花への想いから抜け出せずにもがいていた。

「どっちを向いて歩けばいいか分からないときは、周りをよく見てごらんなさい」
というお妙の言葉が熊吉の心に届くのかな。
一区切りがついたお花のこれからの活躍が期待されます。

馳月基矢 『掌 蛇杖院かけだし診療禄』
穢れが見える拝み屋桜丸が予言した通りに麻疹が江戸で猛威をふるい始めた。
桜丸の指揮の下、蛇杖院は総出で病人の世話をしていたが、小梅村にも麻疹の患者が出るようになり、やがて桜丸が倒れた。
市中には根も葉もない噂話や印施、瓦版などがばらまかれた。
薬が大手の医家に押さえられ、その医家は高い薬礼が支払える者だけに治療を施していた。
そんな頃、瑞之助の実家の長山家から甥や姪が麻疹に罹ったと手紙が来る。
瑞之助は治療のために長山家に戻り、三年ぶりに母や兄と向き合うことになる。

江戸時代の医師たちは治療法も確立していない時に、知恵を出し合って患者を助けてきたのですね。
瑞之助が医師として益々成長し、頼りになってきました。
次回に思わぬ展開がありそうで、楽しみです。

料理人季蔵捕物控シリーズとおけいの戯作手帖はそろそろ読むのを止めようかと思います。
それ以外のシリーズは面白くなってきたので、続けて読もうと思います。