永井紗耶子 『木挽町のあだ討ち』 ― 2026/04/09
神社に行くと、八重桜が咲いていました。

久しぶりの青空。

河津桜、枝垂桜、ソメイヨシノ、八重桜と次々と違う種類の桜が咲いて、長く桜が楽しめます。

映画の「木挽町のあだ討ち」が評判らしいので、原作を読んでみました。
2019年から「小説新潮」に連載され、2023年に単行本が刊行され、2025年に歌舞伎舞台化、2026年に映画化されたそうです。

睦月晦日の雪の夜、木挽町の芝居小屋の裏手で、菊之助という一人の若衆が見事な仇討をやり遂げた。
相手は菊之助の父、伊能清左衛門の仇、博徒の作兵衛。
朗々と名乗りを上げ、作兵衛に一太刀浴びせ、返り血で白装束を真っ赤に染め、作兵衛の首級を上げた後、菊之助は宵闇に姿を消した。
あれから二年。
菊之助の縁者と名乗る武士が森田座にやって来る。
木挽町の仇討について知りたいといい、仇討の場にいた者たちに話を聞いて回る。
その際に彼らの来し方も聞く。
武士に語った者たちは、元幇間の一八、立師の与三郎、衣裳部屋で端役の女形、二代目芳澤ほたる、小道具係・久蔵のお内儀、お与根、戯作者の篠田金治の五人。
仇討に秘められた真実とは…。
この作品は第36回山本周五郎賞と第169回直樹三十五賞を受賞しているのですね。
話題になっていたのを忘れていましたw。
あだ討ちよりも、市井の人たち、五人の来し方が面白かったです。
武士というものは、わかってはいますが、どうしようもないですねぇ。
まあ、オチは途中で予測できましたがね。
ミステリというよりも時代劇です。
時代小説が初めてという方でも読みやすいと思いますので、是非、挑戦してみてください。
私は見ませんが、ついでに映画も見ると、小説との違いがわかっていいかも。
なんか、役者が私の想像と違っていますわ…。
伊多波碧 『物が全てを教えてくれる 日本初の女性化学者・黒田チカ』 ― 2026/04/06
前に女性化学者・猿橋勝子について書かれた『翠雨の人』を読みましたが、NHKのおかげでしょうか、今まで日の当たらなかった専門職に就いた女性に関する本が続々と出版されるようになったようですね。
私が中高生の時にこのような本が読めたら、進路決定に何らかの影響があったかもしれませんねぇ。

黒田チカは明治17年(1884年)、元士族であった父・平八、母・トクの三女として佐賀県に生まれる。
小さい時から聡い子で、毎日、小学校に通う姉に付いていって、教室の外で授業を聞いていた。
5歳の時に小学校高等科の教師・米満与三郎の口利きにより、尋常小学校に入学を許される。
父の平八は「これからも女子にも教育が必要」と考える、進歩的な人だった。
そのためチカは当時の女性としては考えられぬ教育を受ける。
尋常小学校の高等科を卒業した後に佐賀師範学校に入学し、明治34年(1901年)に卒業後、小学校に一年勤務し、明治35年(1902年)に女子高等師範学校理科(今のお茶の水女子大)に進む。
明治39年(1906年)、女性高等師範学校を卒業後、福井師範学校の教諭となるが、一年で辞め、明治40年(1907年)、女性高等師範学校研究科に入学し、明治42年(1909年)に修了後、同校の助教授となる。
大正2年(1913年)、日本初の女性帝大生として東北帝国大学理科大学化学科に入学。
大正5年(1916年)に黒田の化学者としての生涯に多大なる影響を与えた眞島利行のもとで紫根の色素の研究に着手し、東北帝国大学化学科卒業するが、卒業後も大学に残り、研究を続ける。
大正7年(1918年)、紫根の色素構造の特定に成功し、研究論文を発表。東京化学学会で「紫根の色素について」講演する。東京女子高等師範学校教授となる。
大正10年(1921年)、英国オックスフォート大学に留学。フタロン酸誘導体を研究。
大正12年(1923年)、帰国して東京女子高等師範学校に復帰。
大正13年(1924年)、理化学研究所(眞島研究室)嘱託となり、紅花の色素の構造について研究を始める。
昭和4年(1929年)、「紅花の色素カーサミンの構造」で博士号取得。女性で二番目の博士となる。この後、ナフトキノン誘導体やウニの棘の色素(ナフトキノン系)の研究をする。
昭和24年(1949年)、お茶の水女子大学が発足し、同大学の教授となる。
自由学園の生徒たちに質問されたことがきっかけとなった、玉葱の皮からケルセチンの結晶を取り出すことに成功する。(1953年にケルセチンを主成分とした高血圧治療剤「ケルチンC」が開発される)
昭和27年(1952年)、お茶の水女子大学退官し、昭和38年(1963年)まで同大学非常勤講師を務める。
昭和43年(1968年)、福岡で逝去。享年84歳。
(参考:お茶の水女子大学附属図書館歴史資料館「黒田チカ」)
家父長制度があった時代では、女子が教育を受けられるかどうかは父親の考えに左右されます。
黒田チカは女子にも教育が必要だと思う父親がいたので、このように高度な教育を受けられたのです。
本人の資質も必要ですが、幸運の下に生まれたのでしょうね。
未だに古い、女には学問はいらないと考える親がいるようですが、本人がやろうと思えば何でもやれるのが今のいいところ。
ダメだと思わずチャレンジしていって欲しいですね。
本の中の米満先生の言葉を書いておきます。
「一つ知恵を授けよう。悩んだときは、物事を単純に考えるといい。自分の邪魔をするものには近寄らなければいいのだ。大きな石が道をふさいでいたらどうする?
回れ右をして別の道を通るだろう。上手に逃げなさい」
「物事を単純に考える」ことはいいことですね。
なかなか逃げるのも大変ですがねww。
小説としてみるとイマイチですが、黒田チカを知るにはいい本だと思います。
YAにお勧めです。
馳月基矢 『姉上、ご成敗ねがいます①』 ― 2026/02/11
「拙者、妹がおりまして」シリーズや「蛇杖院」シリーズを書いている馳月さんの新シリーズ。

小普請入りの旗本、吉竹家の娘、小夜は半月前に知行高五百石で勘定吟味役の酒井家の当主、菊之進に嫁いだ。
吉竹家も酒井家も、どちらにも裏の顔があった。
小夜の父、篤兵衛はご公儀の隠密にして始末屋。
弟の由利之丞がいるというのに、小夜の方に才があるからと、篤兵衛は小夜に直伝の始末術を仕込んだ。
小夜は依頼が受けたら仕事場に赴き、標的を確実に始末するのだ。
ところが半月前、小夜は酒井家に嫁ぎ、由利之丞は母方の遠縁の先手弓頭の滝沢雅監のもとへ養子にいくという手続きを調え、唐突に父がいなくなった。
酒井家には菊之進の他に、彼の弟の蘭十郎と嫡男の梅千代がいる。
しかし、この三人には血の繋がりはない。
酒井家は奉公人共々隠密の任を担う一家で、この疑似家族の中に小夜は妻として潜入せよというのだ。
裁縫や料理が苦手な小夜は酒井家の奥方として戸惑うことばかりなのに、さらに八歳になる梅千代は小夜に懐こうとはしない。
だが、彼以外の奉公人や菊之進、蘭十郎は小夜を快く受け入れてくれた。
小夜は隠密としての仕事をしながら、少しずつこの疑似家族たちと心を通わせ、彼らの秘密を知ることになる。
表紙の印象から始末屋のお話とは思いませんでした。
普段はおっとりしている小夜が、仕事では手際よくキッチリ始末をつけるというギャップが面白いです。
詳しくは書きませんが、他の三人の家族もそれぞれキャラ立ちしています。
二巻が三月に出るようで、異国渡りの鳥に関わる事件がどうこれから展開していくのか、楽しみです。
森明日香 『天上の宴 おくり絵師』 ― 2026/02/08

東京にも雪が降り、我が家の庭に雪が積もっています。
クリスマスローズが一輪咲いていたのですが、今朝見ると雪に埋もれていました。

昨日撮った時はまだ雪が降っていなかったので、こんな感じだったのです。
たまに降るのはいいのですが、今回は土日で選挙の日。
よかったのか、悪かったのか。
私は10年以上も前の大雪の日に滑って頭をうち、救急車で病院に運ばれたことがあります。
みなさま、くれぐれも気をつけてくださいね。
さて、本の方は、『恋女房』に続く、おくり絵師シリーズの五作目です。

「第一話 子福長者」
大地震後の復興が進み、おふゆが師事している歌川国藤や弟子の岩五郎への依頼が増え、おふゆは絵草子の挿絵を一手に引き受けるようになっていた。
しかし、病で寝込んでからおふゆに迷いが生じていた。
自分の描く絵は浅かったのではないか…。
そんな時に昔世話になった旅芸人一座の座長お京が現れ、おふゆに亡くなった亭主の死絵を描いて欲しいと頼む。
書き上げたおふゆにお京が語ったことは…。
「第二話 朝靄の出立」
文政五年(1822年)、ころりが江戸で蔓延し、多くの人たちが亡くなる。
おふゆは亡くなった糸物問屋の金右衛門の死絵を描き、息子の喜右衛門に渡す。
そんな頃、菓子屋「卯の屋」の元若旦那だった寅蔵がおふゆのところにやって来て、ころりで母親のおりんが亡くなり、両親の骨を持って仙台に行くという。
おふゆはおりんの死絵を描こうとするが…。
「第三話 天上の宴」
新しい年が明け、おふゆは版元の佐野屋から芝居に招かれる。お京から紹介された八代目市川團十郎の父親・海老蔵がでるという。
芝居は賛否両論の出来だった。
しかし、その後、海老蔵が舞台で倒れてしまう。
おふゆは佐野屋から海老蔵が亡くなった知らせが届いたら、すぐに死絵を描くことを依頼される。
おふゆは思う。自分に名役者の死絵が描けるだろうか…。
様々な人々との出会いと別れを経験し、おふゆは「亡くなった人を悼み、遺された人を労わる絵を描きたい」と心を新たにして、死絵を描きつづけることにします。
もう迷わず、自分の道を行こうと決めたおふゆに、新しい仕事と縁がやって来ます。
いいライバルになりそうだった歌川豊国の娘のおとりが魚屋の跡取りと一緒になるようで、そこが残念でした。
おふゆの方は思い人が仙台に行ってしまったものね。
恋も仕事も、共には難しいのがこの時代です。
本の中のいい言葉:
岩五郎:「望んで描くことと、望まれて描くことは違う」
佐野屋:「心に映るものだけを信じるのです」
読んだ時代小説シリーズ ― 2026/01/03
少しブログに繋がりやすくなったかと思ったら、海外の方では全くダメみたいです。どうにかならないものでしょうかね。
さて、昨年に読んだもので、紹介していないものがあるので、一遍に紹介しちゃいましょう。

和田はつ子 『家族ぜんざい 料理人季蔵捕物控』
ある日、昼賄いでにぎわっている塩梅屋に酒問屋の若旦那、江戸屋治吉がやってくる。養母を刀で斬殺し、打ち首に処されたという幼馴染の和泉健治の無実の証をたてたいというのだ。手助けをすることにした季蔵だが…。
和田はつ子 『日ノ本一のおせち 料理人季蔵捕物控』
塩梅屋の安くてうまい昼賄いが好評だ。ある日、季蔵の弟分の豪助とその妻のおしんが切り盛りしている鳥料理の店、味楽里の庭で武家の娘の骸が見つかり、同じ時に塩梅屋に海苔を寄付してくれた品川屋の主と大番頭が店の近くの神社で殺されていた。辻斬りではないかと思われた。
そんな時に北町奉行烏谷は季蔵に、『四方八方料理大全』の著者であり、種々料理法の生き字引である松枝貴栄に手助けを頼み、”大江戸泉岳寺初参り”に出す日ノ本一のおせちを作り上げろと命じる。烏谷の真意は?
料理人季蔵捕物控シリーズも五十作目だそうです。長く続いていますね。
この頃、料理の記述が多くて、そこは流し読みになっています。
御節料理について詳しく知りたい方は読んでみるといいでしょう。
李蔵の思い人が今回は出てこなくて、ちょっと残念です。
麻宮好 『震える羊羹舟 おけいの戯作手帖<二>』
戯作者見習のおけいは二作目が書けずに苦しんでいたが、十一歳の弟の幸太郎には単独で妖怪絵の注文が来ていた。
そんなある日、おけいの想い人で、版元の勘助からお菓子競べに誘われる。
なんとそこで羊羹舟が宙を飛んだのだ。
おけいは羊羹舟の謎を解き、次作に書こうと思うが…。
「羊羹舟」は羊羹を作る時に使う型のことです。
おけいは一巻目よりもしおらしくなっていますww。
同じく女戯作者の桜木華絵が登場し、おけいと友だちになったので、次回は二人で謎解きをするのでしょうかね。
風野真知雄 『わるじい義剣帖(六)ありがたや』
孫愛溢れる愛坂桃太郎は相変わらず面倒な頼まれごとに悩まされている。
今回は「化け猫の墓」、「駕籠かきが消えた駕籠」、「役立たずの提灯」という謎解きだ。
こんなことばかりならよかったのだが、桃太郎は隠密同心の殺しと関わることになる。
ひょっとしたら桃太郎は次回は危ないことにまきこまれるのでは…。
有能な人はおちおち隠居もできないものですね。
坂井希久子 『撫子こがし 花暦 居酒屋ぜんや』
只次郎とお妙夫婦に子が生まれたが、産後の肥立ちが悪く、お妙はなかなか床を上げられずにいたため、お花は一人で『ぜんや』を切り盛りしている。
そんな時に一人のお侍がぜんやにやって来る。彼はお花の実母と何やらありそうな感じだ。
一方、熊吉は仕事の迷いとお花への想いから抜け出せずにもがいていた。
「どっちを向いて歩けばいいか分からないときは、周りをよく見てごらんなさい」
というお妙の言葉が熊吉の心に届くのかな。
一区切りがついたお花のこれからの活躍が期待されます。
馳月基矢 『掌 蛇杖院かけだし診療禄』
穢れが見える拝み屋桜丸が予言した通りに麻疹が江戸で猛威をふるい始めた。
桜丸の指揮の下、蛇杖院は総出で病人の世話をしていたが、小梅村にも麻疹の患者が出るようになり、やがて桜丸が倒れた。
市中には根も葉もない噂話や印施、瓦版などがばらまかれた。
薬が大手の医家に押さえられ、その医家は高い薬礼が支払える者だけに治療を施していた。
そんな頃、瑞之助の実家の長山家から甥や姪が麻疹に罹ったと手紙が来る。
瑞之助は治療のために長山家に戻り、三年ぶりに母や兄と向き合うことになる。
江戸時代の医師たちは治療法も確立していない時に、知恵を出し合って患者を助けてきたのですね。
瑞之助が医師として益々成長し、頼りになってきました。
次回に思わぬ展開がありそうで、楽しみです。
料理人季蔵捕物控シリーズとおけいの戯作手帖はそろそろ読むのを止めようかと思います。
それ以外のシリーズは面白くなってきたので、続けて読もうと思います。
横山起也 『針ざむらい』 ― 2025/12/27
『編み物ざむらい』、『お茶漬けざむらい』に続く新さむらいシリーズ。

糸原佐武朗は広島藩の山中のたたら場を回って検分する鉄徒目付だ。
ある日、山から屋敷に戻ったばかりの佐武朗に親友の黒部新右衛門が訪ねてきて、誰にも渡さないようにと三冊の帳面を預けて帰っていく。
翌朝、黒部家に寄ってから登城しようとした佐武朗は、新右衛門の父、黒部伊右衛門から新右衛門が町はずれの竹藪で亡くなっていたことを聞く。
身体には剃刀でそいたような傷や服ごと肌を鋭く切り裂くようなひどい傷跡があったという。
そこに下目付の門野鷲蔵が現れ、佐武朗は番所に引ったてられそうになる。
佐武朗は新右衛門が言った「誰にも」は役人や藩の上役という意味かもしれないと推測し、日記を守るためにその場から逃げ出す。
一年後、佐武朗は江戸の神田鍛冶町で「針研ぎ かぐら」を営む浪人となっていた。
新右衛門の仇のうちの一人が江戸を拠点としていると聞いたからだ。
声聞師の青の釣り針を研ぐ仕事をしてから、佐武朗の運命は変わっていく。
果たして佐武朗は新右衛門の仇を取ることができるのか…。
横山さんは「〇〇ざむらい」シリーズをこれからも続けて書いていくことにしたのでしょうか。
それにしても「編み物ざむらい」シリーズがまだ終わらず、「お茶漬けざむらい」シリーズが今年出たばかりなのに、新しいシリーズを始めるなんて、ちょっと心配になります。
今時の出版事情では一つのシリーズをじっくり書いていくというのはできないのでしょうか。
作家さんには他のシリーズを書くことはブレーンストーミングみたいになっていいのかもしれませんね。
どうせなら次々と新しい「〇〇ざむらい」を開発していって、全員でひとつのお話に出演というのもいいかもww。
何を食べるのかを考えるシリーズ ― 2025/12/06

ヨーキー弟はトリミング先で耳を立てて写真に写るようになったと思っていたら、二枚もらった写真のうちの一枚だけでした。
なんでなんですかね。

兄はちょうど帽子の下にお座りしています。頭にかぶせたいけど、ソフトがないのでできないです。
ヨーキー弟にはちゃんとお座りする兄の爪の垢を煎じて飲ませたいですww。
さて、今週のママは健康診断に行って、とても疲れてしまいました。
いつも思うのですが、病院には人の元気の素を吸うお化けでもいるのでしょうか。
元気のない時は美味しいものを食べたくなりますね。
というわけで、二作品をご紹介しましょう。

有馬美季子 『お葉の医心帖 であいの柚の木』
町医者の道庵の助手を務めるお葉は、道庵が留守の時に頼まれて、修行中の鍼を打ってしまう。その患者は卒中の後遺症で顔面麻痺が起こり、いつも鍼を打ってもらっていたと言ったのだ。しかし、後で道庵が診察すると、違う病であることがわかる。お葉は自信をなくし、しばらく鍼を打てなくなるが、その代わりにお灸を極めようと考える。
霜月のある日、お使いの帰りに稲荷に寄ったお葉は脚を怪我した猫を治療しようとしていた林次郎と出会う。
お葉は猫に会うことを口実に林次郎と待ち合わせをして何回も会ううちに、彼への思いが強くなっていくが、林次郎には何か秘密があるようだった。
妊婦や脚気、狭心症、火傷の患者などが道庵のところにやって来ます。
脚気は「江戸わずらい」と言われ、江戸で大流行しましたが、白米を食べて偏った食事をしていたことが原因だったそうです。
お葉は脚気や狭心症、火傷の患者のために道庵から教わった病気によい食材を使い、料理を考えていきます。
脚気よりも心臓によい食べ物が現代には必要なので、書いておきますね。
いいのは青魚、野菜、果物、キノコ類、大豆から作られたもので、ダメなのはお酒、塩分、甘いもの、脂っこいものです。
お肌には玄米や若布の味噌汁などがいいそうです。
江戸時代からわかっていたのですね。
玄米は脚気にもいいのですが、よく噛まないと消化しにくいという欠点があるので、気をつけましょう。
思いもかけないお葉の初恋ですが、これからいろいろとありそうです。
悲恋にならなければいいのですが。
仙川環 『食べてはダメとは言いません 暮林医院栄養室』
暮林怜奈は祖父が開設した内科医院で管理栄養士として働き始めた。
これまで二つの職場を経験している。
最初の職場は神奈川県西部の中規模病院で、尊敬していた女性上司が突然退職したのをきっかけに辞め、次にフリーの管理栄養士の個人事務所でメディア向けの仕事をしていた。しかし、病院で担当していた肥満症の女性から減量に成功したという暑中見舞いのハガキをもらい、もう一度栄養指導の仕事をしたいと思い始め、捨て犬を拾い、飼おうと思ったこともあり、西荻窪の実家に戻ったのだ。
祖父が亡くなり、大病院の内視鏡部長をしていたが、部下へのパワハラで自主退職を促された父が医院を継いでいる。
父は怜奈が栄養指導をすることに反対だったが、ベテラン看護師兼事務長の今川美佐子を味方につけ、なんとか認めてもらった。
最初は閑古鳥が鳴いていたが、怜奈の頑張りが功を奏し、徐々に栄養室を訪れる患者が増えてきた。
怜奈が栄養指導を行った人たちは高血圧、栄養失調、痛風、貧血、誤嚥性肺炎、糖尿病、狭心症などの患者やその家族ですが、おもしろいことに、色々とあるんです。
例えば、本人は高血圧ではないのに、高血圧のふりをして薬を欲しがったりする人。怜奈はすごいですよ。そういう人の嘘を見抜くんですから。
それ以外にも患者のためにわざわざ近所のスーパーやコンビニに行き、買える食品や食材のリストを用意し、頼まれれば、レシピも考えて用意します。
時間外なのに自宅に行って相談を受けたりもするんです。
患者のために全身全霊を賭けています。
怜奈のような栄養士が現実にいますかね?
私は二つの病院で栄養相談をしたことがありますが、一つは役立ち、一つはひどかったです。
この頃思うのは、医師でも看護師でも栄養士でも、隣人でも友人でも通りすがりの人でも、いい人に出会ったら儲けもの。
出会いに感謝しましょう。
もし本に書いてある病気の方、もしくは家族の方は読んでみるといいでしょう。
役に立つことがあるかも。
最後に怜奈の言葉を載せておきます。
「いきなり完璧を目指す必要はない。挫折せず、長く続けられる方法を考え、実践してほしい。コツコツやっていけば、身体はきっと応えてくれる」
麻宮 好 『お内儀さんこそ、心に鬼を飼ってます おけいの戯作手帖』 ― 2025/10/27
私は結構本をタイトル買いすることがあります。
特に時代小説は面白いタイトルが多いような気がします。
この本もタイトルに惹かれて読んでみました。

おけいは火事で両親を亡くし、十一歳の弟と共に戯作者の祖父のところに身を寄せている。
祖父の筆名は「寄木古茶」といい、おけいは祖父の原稿の清書をしている。
おけいは戯作者志望だが、まだ書けていない。
弟の幸太郎は幽霊の類が見える。
幸太郎は「見えないものが見える」ことから祖父書く読本『雪姫道中奇談』の挿絵を描き、評判になっている。
ある日、大伝馬町の油問屋・安房屋の主人夫婦の心中事件が起こる。
友だちのお奈津にのせられたおけいは戯作のネタになるのではないかと思い安房屋に行ってみると、因縁のある岡っ引きの伝三郎に会ってしまい、ほうほうの体で逃げ帰ってしまう。
それからしばらくして、安房屋に夜な夜な幽霊が出るという噂が出る。
よせばいいのに、おけいは俄然興味を持ち、幸太郎を霊験あらたかな神司の格好にし、安房屋に乗り込む。
すると、別の拝み屋とかち合ってしまう。
うまくその拝み屋に取り入り、共に幽霊を待つが、何かおかしい。
おかしなことは続き、伝三郎からおけいと幸太郎の二人も探索に加えると言われる。
おけいは事件を探りながら、祖父の言葉、「人の心は見えぬ。おまえはその見えぬものを見ようとしている。そして、それを言葉にしたいのだろう」を胸に執筆を続けていく。
おけいは私の好きなタイプじゃないですが、弟の幸太郎がとても姉思いのいい子で、彼が出てくるのを楽しみに読み進んでいきました。
事件の真相は目新しくありませんが、今では誰もが知っている精神疾患が出てきて、麻宮さんは初読みなのでわかりませんが、こういうものを取り入れながら時代小説を書く人なのでしょうか。
おけいが事件に関わる人の胸の内をどのように書いていくのかが読みどころとなっています。
タイトルはそれなりにお話の内容を表していますが、イマイチですねぇ。
二作目も出ていて、『震える羊羹舟』だそうです。
まだこっちのタイトルの方がよさそうですねww。
天羽 恵 『もゆる椿』 ― 2025/10/26

金木犀の香りがしたと思ったら、すぐに寒くなってしまいました。
秋と春がなくなり、夏と冬だけになってしまうのでしょうか。
わんこたちはシニアなので、心配です。
特に兄犬は今年、暑くなったとたんに調子が悪くなったので、今は天気のいい日中にお散歩させています。
ママも寒くなると痛めていた腰と、今年から手が腱鞘炎になり痛みが出てきました。
わんこたち共々、できるだけ身体を温めて動かすようにしますわ。
第六回大藪春彦新人賞を受賞した天羽恵さんのデビュー作を読んでみました。

二十歳の真木誠二郎は三人兄弟の次男坊の冷や飯食い。
弟の文三郎は長崎で蘭方医になるべく遊学中だが、誠二郎は唯一の取り柄である剣術で身を立てようとしたが、彼のような腕前の剣客は履いて捨てるほどいると諦観するようになっていた。
しかし、チャンスが訪れる。
裏目付の佐野に見込まれ、士官への道が開かれたのだ。
御役目は尊王攘夷派の黒幕を謀殺するために江戸から京まで赴く刺客の共をするというものだ。
刺客は”里の者”と呼ばれる殺生を生業とする者だという。
”鬼のような刺客”との御役目を無事に果たすことができるかと不安に思う誠二郎。
指定された品川宿の播磨屋に行くと、現れたのは下女奉公の町娘そのものの十二歳の美津という娘だった。
美津は傍若無人の大食い。何故か誠二郎を気に入ったようだ。
こんな子どもが刺客役という荒事をできるのかと疑問を持つが、美津は目に天賦の才があり、里で刺客の技を仕込まれていた。
「生来の臆病者で切った張ったは苦手だが、いざという時はためらわず刀を抜ける男でありたい」という誠二郎に美津は剣の稽古をつけてやると言う。
こんな二人に待ち受けていたのは…。
お美津が今時のギャルっぽくて、彼女に翻弄される誠二郎が面白かったです。
十二歳の少女には壮絶な過去があり、刺客になったのにも深い事情があったのです。
そのことを知って、人を切ったこともない誠二郎がお美津を護ろうとするところがいいですね。
今までにない時代小説で、若い人に受けるかもしれません。
時代小説なんて読んだこともないけれどどういうものか読んでみたいと言う身体も心も若い方は是非一読をww。
朝井まかて 『どら蔵』 ― 2025/10/21

「どら蔵」こと寅蔵は、大阪の道具商「松仙堂」のドラ息子だが、店の跡を継ぐには主家の骨董商「龍仙堂」で七年間丁稚奉公を勤めねばならない。
しかし、目利きにちょっとした自信のある寅蔵はとんでもないヘマをしてしまい、修行は頓挫し、それを知った父親に勘当される。
大阪にはいられなくなった寅蔵は江戸に行くことにする。
なんとか江戸に辿りついた寅蔵はひょんなことから道具屋「白浪屋」の親分、権兵衛に拾われ、一日中、屑や欠片を拾い歩く毎日。
ある日、親分に連れていかれた先で、無謀にも入れ札をしてしまい、勝ったはいいが、蔵の中は一つを除いて屑ばかり。
その結果、寅蔵は権兵衛に三十三両もの借金をしてしまう。
寅蔵は権兵衛に借金を返すまでこき使われる運命か。
権兵衛に富山の薬売りの共をさせられるが、その時に義太夫の竹本桃之助と出会ったことから寅蔵の運が変わっていく。
関西人と関東人は違う人種(?)と言われていますが、寅蔵の口のよく回ること。
なんでも一言、言わずにおれないという性格で、江戸の人たちは飽きれます。
大阪人の知り合いはいますが、寅蔵ほどではないんですけど、実際はどうなんでしょうね。
意外と(失礼)人のいい寅蔵が江戸の狡猾な人たちにコケにされながらも、頭を働かせ、目利きの骨董商として成長していきます。
知らなかった富山の薬売りや骨董屋の世界が垣間見られるお話です。
400ページ以上の厚い本ですが、半分を過ぎた辺りから俄然面白くなりますので、我慢して読んでみてください。
寅蔵以外の登場人物たちがいいキャラなので、シリーズになってもいいぐらいです。ひょっとしてシリーズ化しようと思って最後がああなのかな。
<今朝のわんこ>
兄はいつも朝食が終わるとママの寝床にきます。(というかママが連れてきます)

ママが本を読んでいると、いつの間にか寝ています。
でも、背中を向けると、わざわざ起きてママのところまで来ます。
ママが眠くなり二度寝しようとすると、起こしに来ます。迷惑なのですがぁ。
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