読んだ時代小説シリーズ ― 2025/04/02
読んだ文庫本が溜まっているので、いつものようにまとめて紹介します。
まず、私の好きな二つのシリーズ。

知野みさき 『南天の花 神田職人えにし譚』
縫箔師・咲の周りではおめでたが続く。しかし、桝田屋の美弥の義母から志郎の浮気疑惑を相談されたり、職人仲間の修次が女といっしょにいたと言われたりと、いろいろとつまらぬ噂話をわざわざ伝えに来たりする人がいる。そんな時に、昔の男、雄悟と出会う。
一方、仕事の方は順調だ。人形の着物の注文がくる。それが縁で、咲は戯作者・魔魅団三郎の秘密を知る。
しろとましろの双子の兄弟子の豆太郎という謎の人物が現れる。
修次は古い知り合いの喜兵衛の余命が短いことを知り、彼の娘を探している。
やっと娘は見つかるが、喜兵衛に会いたがるかどうかわからない。娘が武家に嫁ぐと聞き、喜兵衛は修次に簪を、咲に筥迫(はこせこ:着物を着たときに胸元に入れて持つ小間物入れ)を頼む。
いつものように、咲と修次の間に進展はありません。
咲は修次のことを職人仲間としか思っていないような感じですねぇ。
こんな調子で続いていくのでしょうか。
筥迫は普段着物を着ても持っていない人の方が多いですよね。
調べてみると、刺繍が映えそうな、今の化粧ポーチみたいなものです。
着物を着た花嫁さんが持っていそうです。
篠綾子 『十五夜草 小烏神社奇譚』
ある日、寛永寺の住職に仕える侍の田辺がやって来る。寺に首のない幽霊が現れたという。早速竜晴は寛永寺に行き、魔除けの呪を施す。
その夜、その霊が小烏神社に現れる。霊は天草四郎で、天海大僧正を訪ね、乱のさなかに呪詛を行ったかどうか訊きたかったという。
竜晴は行っていないと答え、四郎に忘れ草を渡す。しかし、仲間の悪霊が現れ、四郎を連れ去ってしまう。
茅の輪の件でやって来た大輔と花枝が夜の町に首なし男の幽霊が徘徊しているという話をする。竜晴は刀剣の付喪神である獅子王とおいちに夜回りを頼み、見つけたら小烏神社まで連れてきてほしいと頼む。
七月になり、父親の墓参りに行って来た泰山が墓守の鬼を連れて帰って来る。
墓守が首なし男の幽霊に会っていたので、竜晴は次に見かけたら小烏神社に案内するように頼む。泰山は墓守と会って以来様子がおかしい。どうも墓守から予知能力を授かったようだ。
その頃、竜晴は夢の中で何者かに早く目覚めるようにと命じられる。
無事に天草四郎は昇天するが、平将門公の首塚に関する気になることを話していく。
十月に鷹狩が行われる。ところがその後、首塚が暴かれ、伊勢貞衡が平将門公の霊に憑かれてしまう。
急いで竜晴は貞衡の屋敷に行こうとするが・・・。
最終巻だそうです。
賀茂家に伝わる使命が明かされ、付喪神たちが本性を現します。
よくできた時代物ファンタジー小説でした。
終わるのは残念ですが、西国でのお話で竜晴たちにまた会えることを願っています。
最後に10巻すべてを載せておきます。
ちなみに十五夜草とは「紫苑」のことで、花言葉は「君を忘れない」。
「思い草」とも言われていたようです。
反対の「忘れ草」は「萱草(かんぞう)」のようです。
「お江戸けもの医 毛玉堂」シリーズ ― 2025/03/01

江戸時代に獣医がいたとは思いもしませんでした。
本当にいたのでしょうか?
谷中感応寺の境内に、かつて小石川養生所で腕が良いと評判の医者だった凌雲と妻の美津が営んでいる≪毛玉堂≫という動物の病を診る医院がある。
凌雲と美津は≪毛玉堂≫の庭に捨てられた黒太郎と白太郎、茶太郎という三匹の犬とキジトラ猫のマネキを飼っている。
凌雲は腕は確かなのだが、無愛想。
美津が凌雲と患者の飼い主の間を取り持ち、なんとかやっている。
毛玉堂に毎日やって来るのが、美津の幼馴染みで江戸三大美人と言われる美貌のお仙。
お仙は笠森稲荷の境内にある水茶屋≪鍵屋≫の看板娘で、笠森稲荷一帯の地主で三百石の旗本である倉地家の跡取り息子の政之助と恋仲になっている。
毛玉堂に持ち込まれるけものたちの問題を、凌雲と美津は様々な観点から探り解決していく。
さて、どのような問題が持ち込まれたのか。
『お江戸けもの医 毛玉堂』
「お化け犬」
十二歳になるコタロウという犬が三日も食べていない。これ以上苦しませたくないという飼い主だが。
「そろばん馬」
算術ができるという”そろばん馬”の竹馬が、算術を間違えるようになったのは何故かという相談。
「婿さま猫」
六つになる牡猫のトラジが、この一月ほど、夜になると何の理由もなく急に飼い主の妻に襲いかかるようになったという。その理由は?
「禿げ兎」
絵師の鈴木春信が飼っている兎の耳の裏側に禿げができたという。近頃、春信は兎を抱いたお仙の絵を描いている。春信はお仙が原因だというが。
「おもらし犬」
深川今川町の足袋問屋≪山吹屋≫の若旦那が飼っている狆が、息子が生まれて一月ほどしてから、息子はを追いかけ回して、小便を引っ掛けようとするので、困っているという。何故なのか?
『玉の輿猫 お江戸けもの医 毛玉堂』
「玉の輿猫」
飼い主に連れられて来た茶色い狐顔の仔犬のコンタはとても利口な犬だ。
ところが数日前から脚を引きずり、押すと痛むという。どうも生まれつき節が弱いようだが。
「ご隠居鳥」
料亭≪玉屋≫で飼われていた緋鸚哥の赤玉が自分の嘴で羽を毟るので、胸のあたりの羽がごそっと抜けてしまったという。鳥に詳しくない凌雲は鳥屋に紹介してもらい、赤玉の相談ができるようにする。
「お馬鹿犬」
てろ助は飼い主が躾もせずにかわいがるばかりなので、傍若無人にふるまい、周りを困らせているが、飼い主は頓着しない。凌雲がてろ助はいつか命に関わる事故に遭うと言うと、それでは凌雲と美津で躾の行き届いた良い犬にしてくださいと言いだす。てろ助を引き受けた凌雲と美津は賢犬堂の伝右衛門に相談しに行く。
「目覚まし猫」
十三歳になる雄猫の玉三郎がこのところ夜中に騒いで飼い主を起こすという。
飼い主の家に行き、夜中に凌雲は飼い主と釣りをし、美津は玉三郎の様子を見ることにする。
「けんけん堂」
賢犬堂から迎えた一歳ぐらいの中型犬、影法師は穏やかで、何があっても怒らない。大八車に轢かれて尾が千切れても悲鳴さえあげず、微動だにしない。それなのに、人間が手を上げると怯える。なんとも不自然だ。何か理由があるのか?凌雲と美津は賢犬堂の伝右衛門に影法師のことを聞きにいく。
『うぬぼれ犬 お江戸けもの医 毛玉堂』
「よごれ猫」
お仙がもぐらという猫を連れて来た。もぐらは薄汚れていて、ものすごい臭いがする。猫は本来、匂いが少ないはずなのに何故なのか。
「猿田彦」
お仙が小梅という犬を抱いてやって来る。猫派だったはずなのに、この頃は犬の匂いが好きだという。
猿回しが猿を連れて来た。猿が鍵の開け方を覚えてしまい、檻の中に閉じ込めても、鍵を開けて外に出てしまい困っているという。猿を預かることにするが。
「うぬぼれ犬」
鈴蘭という女けもの医者が猿に噛まれ腫れていた美津の手の治療をしてくれる。
千駄ヶ谷の湯屋の娘が二歳の雌犬のお姫を連れてくる。お姫は鏡に映った己の姿に岡惚れしているという。
「愛馬小栗」
柳沢村の死産した馬の小栗が立てなくなった。早速、凌雲と美津、そしてたまたま毛玉堂に来ていた鈴蘭は柳沢村へ行く。鈴蘭は膿で晴れたところに針を差し、膿を出し、小栗を助けた。村人の男たちは凌雲先生のお陰だと言うが、女たちは…。
「金八金魚」
赤ちゃん連れの若い母親が金八という金魚が気鬱の病に侵されたといってやって来る。金八はもともと色鮮やかな琉金だったのに、色が黒ずんでしまったという。
凌雲と美津は彼女と亭主が営む古着屋に行って調べてみると・・・。
ほとんどのけものたちは環境の変化に馴染めず、問題行動を取るようになったようで、凌雲と美津夫婦はその原因を上手く探っていきます。
ちなみに、うちの弟犬はたまに休日に吠えるという問題行動を起こします。
休日はパパがいるので、何かあるんでしょうねww。
お仙はトラブルメーカーなのですが、美津はそんなこと気にしていませんし、凌雲や飼い主に対する接し方が優しいです。
美津はしっかり者で気のいい女性です。
いつか凌雲先生と本当の夫婦になれるといいですね。
けものたちのこと以外に、凌雲と美津夫婦のことやお仙に押し付けられた子ども、善次のこと、お仙の嫁入り話、女けもの医者、鈴蘭のこと、仔犬たちに厳しい躾をする≪賢犬堂≫の伝右衛門のことなどが書かれています。
悪い人の出てこない、ほっこりしたお話です。
犬の躾のやり方も参考になるかもしれません。
気になる方は読んでみてください。
食べ物を扱う女性職人シリーズ(時代小説) ― 2025/02/22
江戸時代に生きる若い女性たちを描いたシリーズです。
彼女たちは料理人や菓子職人、茶屋の経営などをしています。

泉ゆたか 『うたたね湯呑 眠り医者ぐっすり庵』
京都から戻った藍は≪ぐっすり庵≫が≪福もみ屋≫になっているのを見て驚く。
藍がいなくて差し入れが滞ったので、久の忠言をきき、福郎と猫のねうが按摩の仕事をしていたのだという。
神田明神下の茶屋、千寿園は藍が考案した”かくし茶”で繁栄しているが、赤字寸前で、このままでは半年も持たないという。
一心から次なる一手を考えるように言われる藍。
さて、どうする、藍。
そんな時に、兄の松次郎を探しているという為五郎という男がやって来る。
どうも長崎では松次郎の首に賞金がかかっているらしい。
為五郎が、松次郎が江戸に戻っていることを知らない伯父夫婦のところにやって来たらしく、それから彼らの様子が変わったという。
そこに京都にいるはずの幸四郎が現れる。
自暴自棄になっている松次郎に幸四郎は大草能登守のお姫さま、咲子の病の治療の話を持ってきた。
咲子の病を治すことは、大草に無実の申し開きをする、またとない機だが・・・。
眠りの大切さを教えてくれるお話です。ねうのような眠り猫がほしいです。
お話もハッピーエンドということで、これで終わりなのでしょうか。
美味しい日本茶が飲みたくなるシリーズです。
シリーズの順番
①『猫まくら 眠り医者ぐっすり庵』
⑤『うたたね湯呑 眠り医者ぐっすり庵』(本書)
中島久枝 『おでかけ料理人 おいしいもので心をひらく』
元日本橋の老舗「三益屋」の娘で今は出張料理人の佐菜は16歳。朝は大鼓の石山流宗家の一人息子の専太郎の朝餉を作り、その後に神保町の煮売り屋のおかねの店で働いている。依頼があれば、その家に行き、料理を作る。
今回は、須田町の居酒屋、満々屋の大将から黒門町に住む独り暮らしの母親へ料理を作る依頼と日本橋の白蘭屋のおかみかから軍鶏鍋の依頼、能の太鼓の石山名人と大工の甚五郎から船場汁の依頼、郷里から出てくる父親に食べさせるれんこん料理の依頼だ。
心に一物があり、なかなか心を開けなくても、いっしょにおいしいものを食べれば、心が通じるということはありますよね。
上方と江戸前では料理の味がちがうそうですが、食いしん坊の私は佐菜ちゃんと同じくどちらも好きです。
江戸は目の前が海ですが、京は新鮮な魚介類が手に入らないので、京の料理人が知恵をしぼり、工夫を重ねたそうです。
佐菜の腹違いの弟の市松の今後が気になります。
シリーズの順番
③『おでかけ料理人 おいしもので心をひらく』(本書)
中島久枝 『にぎやかな星空 日本橋牡丹堂 菓子ばなし(十三)』
日本橋の浮世小路にある菓子屋、二十一屋はのれんに牡丹の花が白く染めぬいてあるので、牡丹堂と呼ぶ人もいる。職人は主で親方の徹次と徹次の息子の幹太、留助と伊佐、昨年、伊佐と所帯を持ったばかりの二十歳の小萩だ。
小萩はなんとか一通りの菓子が作れるまでになったので、小萩庵という看板を出し、お客の注文を受けている。
今回の注文は、夜咄の茶事のお菓子と二人静にちなんだお菓子、『鉢かづき姫』の物語にちなんだ最中。
二十一屋では幹太の考えた市村座の『阿古屋』で難役阿古屋に扮する人気女形の仲屋咲五郎にちなんだお菓子「咲五郎の阿古屋」を作って、芝居小屋で売ることになる。
私的には幹太の恋のお話が一番よかったです。
幹太は年上の母親と似た女性に恋したのですが、心の始末のつけ方が粋でした。
小萩がお客さんの事情に関わりすぎて、つかれ過ぎることを心配する伊佐はいい旦那さんです。
小萩は子どものことを考えていますが、仕事のことがあるので、思い切れないみたいです。伊佐は父親と幼い頃に別れたので、父親というものがわからず、自分みたいな者でも父親になれるのかと言っていますが、どうにかなりますよね。
シリーズの順番
⑥『はじまりの空 日本橋牡丹堂 菓子ばなし』
⑬『にぎやかな星空 にぎやかな星空 菓子ばなし』(本書)
坂井希久子 『菊むすび 花暦 居酒屋ぜんや』
お妙の体の調子が悪い日が続いている。
そんな時に、俵屋の若旦那とお梅の祝言の料理を何品か作って欲しいとの依頼がくる。
『ぜんや』で何度も飯を食べている花嫁のお梅を、思い出の味で慰撫してやろうというのだ。お花がお妙の代わりに作ることになるが、果たしてお花にお妙の代わりが務まるのか。
やっとお花も『ぜんや』を継ぐという強い意志を持ったようです。
いくらなんでも今まではいい加減でしたものね。
次が楽しみです。
シリーズの順番
②『萩の餅 花暦 居酒屋ぜんや』
⑦『菊むすび 花暦 居酒屋ぜんや』(本書)
江戸時代にあった職業のお話(文庫本) ― 2025/01/17
読んだ本が溜まっていますが、少しずつ紹介していきます。
今回は江戸時代にあっても、今はない職業についていた人のお話です。

西條奈加 『御師弥五郎 お伊勢参り道中記』
「御師」とは、もともと「御祈祷師」の略で、「おし」または「おんし」と呼び、平安時代から続く、「特定の寺社に属して、参詣者の参拝や宿泊を世話する」神職のような立場。
伊勢御師(伊勢の場合は「おんし」と読む)は全国各地に派遣され、現地の伊勢講の世話をし、伊勢参りに訪れた時には自分の宿坊で迎え入れて、便宜をはかったそうです。
今で言う「営業マン」や「広告マン」プラス「ツアーガイド」みたいなもんですかね。
弥五郎は大伝馬町の酒問屋、伊勢屋に世話になっている御師の手代頭だ。
命を狙われた材木商の巽屋清兵衛を助けたのが縁で、伊勢詣でをする清兵衛の用心棒として同行を頼まれる。
清兵衛は何物かに命を狙われているようだというのだ。
心当たりはあるようだが、詳しく語ろうとはしない。
弥五郎は十三年ぶりに伊勢に戻ることになる。
できるだけ道中の難を防ぐために、本所相生町の伊勢講の総勢十人の一行と同行することにする。
果たして無事に伊勢まで辿り着けるのか…。
お伊勢参りの道中が面白いです。
一生に一度と思えば、こんなに楽しい旅はないでしょうね。
今は簡単に旅に行けますが、それだけ旅の印象も薄いですよね。
伊勢には京都旅行のついでに何度も行っていますが、今でも思い出すのは、友だちと高速バスに乗って行った時のことです。
朝の四時か五時過ぎに伊勢市駅に着き、外宮に行こうと歩いていたら、おじさん(タクシーの運転手かな?)が話しかけてきて、「こんな朝早くには神様も起きていないよ」とか言われ、車で赤福の本店に連れて行ってくれて、赤福をおごってくれました。親切な人でした。ありがとうございました。
調べてみると、今でも赤福本店は朝の五時からやっていますが、高速バスは八時ごろに着くようです。
弥五郎と清兵衛に絡む謎解きも面白いですが、それ以上に昔のお伊勢参りの様子が生き生きと描かれていますので、是非読んでみて下さい。

森明日香 『夜の金糸雀 おくり絵師』
「第一話 初しぐれ」
歌川国藤の住み込みの弟子であるおふゆの兄弟子、国銀に縁談が持ち込まれる。国銀は日本橋通りの薬種問屋の次男で、父親の金右衛門は神田の薬種問屋に婿入りし、商売しながら絵を描けばいいと言うが、国銀は断る。親子の間に何やらありそうだ。
ある日、おふゆは金右衛門が地本問屋で錦絵を見ているのを見かける。彼が急に胸を押さえうずくなったので、声を掛け、地本問屋の座敷を借りて休ませた。
おふゆは金右衛門と話し、心から息子の国銀を案じているのを感じる。
この後、おふゆは国銀に金右衛門の忘れ物を預けに行き、父親のことを話すが、国銀は減らず口をたたくばかりだった。
そんなある日、国銀と彼の兄の金太郎がやって来る。三日前に突然、父の金右衛門が亡くなり、おふゆに死に絵を描いてもらうようにという遺言があったという。
覚悟を決め、引き受けるおふゆ。
「第二話 夜の金糸雀」
おふゆは国藤から預かった絵を佐野屋に持って行った時に、店先で女絵師、応為栄女ことお栄を見かける。
佐野屋にお栄の肉筆画を見せられてから、おふゆはお栄の絵に気を取られ、ぼんやりすることが多くなる。
国藤によると、父親が亡くなった後、お栄は肉筆画を多く描くようになったので、店頭に絵が並ぶことがなくなり、武家や商家の子女に出稽古をしているという。
ある日、佐野屋からおふゆに店に来るようにとの書状が来たので、すぐに駆けつけると、お栄がいた。佐野屋がおふゆに指南してやってくれと言うが、お栄はそっけない。おふゆも頼むと、見て盗め、と言うだけだったが…。
「第三話 大地燃ゆ」
おふゆが何やら嫌な予感がしていた日に、地震が起る。国藤も妻のおなみも娘のお夏の嫁ぎ先の横山町に行っていていなかった。
兄弟子の岩五郎とおふゆは横山町に行くことにするが、おふゆはいつしか岩五郎とはぐれてしまう。
神社で一晩を過ごし、おふゆは国藤の家屋があった米沢町に戻ると、家屋は押し潰されていて、何も残っていない。
そこに寅蔵が現われ、みんなが無事であることを教えてくれたので、再びおふゆは横山町に向かう。
国藤たちと合流したおふゆのところに、読売を売っている矢助がやって来る。
おふゆに読売の挿絵を描いて貰いたいと言うのだ。
国藤はおふゆに佐野屋に行き、絵を描けと命ずる。
佐野屋がおふゆに描くように言った絵は…。
葛飾北斎の娘のお栄(1790年ごろに生まれ1860年ごろに亡くなる)が出てくるとは思いませんでした。
おふゆの暮らす時代は、北斎が1849年に亡くなっているので、1850年代で、お栄の生きていた頃と被る設定なのですね。
おふゆは誰かの妻になるということもできるけれど、お栄のような生き方もできます。どちらの道を選ぶのでしょうか。
私としてはおくり絵師として頑張ってもらいたいですがね。
お話としては、残念ながら今回もそれほど感動はしませんでした。
次作に期待します。
「はるの味だより」シリーズ ― 2025/01/11
佐々木禎子の「はるの味だより」シリーズの四冊を紹介します。

『思い出牡蠣の昆布舟』
文政(1823年)六年。
二十二歳になるはるは江戸に行方知らずの兄を探しに来た。
縁があって花川戸町のお気楽長屋の木戸番の隣にある一膳飯屋『なずな』で住み込みで働いている。
はるの作る料理は、薬売りだった父が作ってくれた思い出の料理だ。
はるの父は男手ひとつで二人の子を育てながら、日本国内のあらゆるところに薬を売り歩いていた。
しかし、はるが十二歳のときに父が亡くなり、ひとつ年上の兄の寅吉ははるを下総の親戚に預けて、どこかに行ってしまった。
十年が経ち、絵師の彦三郎が行方知らずの兄の手紙と金一両をたずさえて現われた。はるは彦三郎に頼み込み、江戸について来た。
『なずな』は彦三郎に紹介された店だ。
店主の治兵衛は薬種問屋・中野屋の元店主で料理などしたことがない。
『なずな』は彼の次男の店で、次男が亡くなった後に何を思ったのか、隠居して『なずな』を継いだのだ。そんなわけで、店には閑古鳥が鳴いていた。
はるが父が作った料理をもとに、きんぴらごぼうとか昆布豆、納豆汁やその時にある材料で料理を作って出すようになると、少しずつお客が入るようになる。
『口福の祝い笹寿司』
治兵衛から一膳飯屋『なずな』を任されてから二ヶ月。
少しずつ客も戻り始めている。
はるは『なずな』を訪れる客たちに「美味しいものを食べに来たんだ」と言ってほしくて頑張っているが、受け入れられない料理もある。
はるは一体自分は『なずな』をどんな店にしたいのだろうかと考え始める。
そんな時に、御薬園勤めの同心・笹本から紹介され店にやって来た本草学を学ぶ学者の竹之内勝俊が、壁にはってあった彦三郎が描いた寅吉の似姿を見て、はるの兄が長崎の出島でシーボルトと一緒にいるのを見たと言い出す。
兄を探しに長崎に行こうかどうか、悩むはる。
そんなはるに治兵衛は挑む。
治兵栄の妻が作っていた笹寿司を作って、美味しかったら『なずな』にいてもいいが、まずかったら、長崎に行けというのだ。
『思いの深さの花火弁当』
『なずな』で働き始めてから半年。納豆汁だけではなく、稲荷笹寿司までもが他の店で真似されるようになる。馴染み客たちは怒っているが、はるはピンとこない。
そんなはるに治兵衛はまた無理強いをする。
はる独自の豆腐田楽を作り、五升の稲荷笹寿司を売り切ること。
季節は春。はるは花見客に花見弁当として稲荷笹寿司を売ることを思いつく。
売れ残りの福寿草を買ったことから仲良くなった棒手振のみちは木戸番の与七に想いを寄せていた。与七もどうやら脈があるようだ。はるたちは二人のために一肌脱ぐことにする。
『秘めた想いの桜飯』
文政七年の夏。
『なずな』に悪い噂がたち、客が離れていった。それでも以前からの馴染みの客は来てくれる。
きっかけを作った岡っ引きの八兵衛は噂の出所を調べた上で、そのお詫びとして知り合いたちを『なずな』に連れてきた。その中に幕下の相撲取りの金太郎がいた。彼ははると同じあやまり癖があり、相撲も弱腰。八兵衛ははるに金太郎のあやまり癖を吹き飛ばす料理を作ってくれと頼む。後にこの金太郎に『なずな』は助けられることになる。
ある日、しばらく『なずな』に来ていなかった彦三郎がやって来る。
はるの作った烏賊飯を見て、店を閉めた後にまた来るから一杯のこしておいてくれと言って帰って行く。
十二歳ぐらいで、父親の作った料理を覚えていて作れるものか、なんとも言えませんが、はるは食いしん坊のようなので、父が料理を作る姿をよく見ていたのでしょうし、料理の才能があったのでしょうね。
私はお兄さん探しはどうでもよくて、出てくるお料理を楽しみに読んでいたのですが、驚いたことに四巻で終わってしまいました。
もう少し、彦三郎とのこととかお兄さんのこととか書けますよね。
出版社の都合なのか、四巻で終えるという契約だったのか。
ネタバレになってしまいますが、四巻目で、バタバタと結婚が決まり、急にお兄さんが現われ、唖然となりました。あまりにも唐突すぎます。
でも最後はハッピーエンドなので、長々と続くよりは潔いです。
似たようなシリーズが出ているので、生き残るのが大変でしょうね。
私は十分に楽しませて頂きましたので、仕方ないと諦めますww。
筑前助広 『颯の太刀 好敵手』 ― 2025/01/09

筧求馬の前に蓮台寺の仙波迅之助と名乗る男が現われ、徳前屋庄兵衛が求馬の命を狙っていると報せて消える。
その頃、公儀御用役である求馬は田沼意知から信州の小県の土師で起っている辻斬り事件の解決を命じられる。
信州までの道中、求馬は困っている人を見捨てられず、腰を痛めた老婆や父を殺された娘、破落戸に絡まれていた子を連れた母親を助ける。
その合間に蒲池伊織たちと山賊たちを追い、求馬に興味を持ち、後を尾行ていた仙波迅之助とともに、吉隅村への復讐を果たそうとする男を斬る。
旅の最後、士師で、求馬は辻斬りをしているという辻神逸刀を止められるのか。
そして、最強の刺客とどう立ち向かうのか…。
私が気になったのが、吉隅村の件です。
20年前に自分を見捨てた村人たちに復讐しようとした甚六が可哀想でなりません。
せめてお敬が甚六が斬られるのを見ていただけではなく、身を挺して甚六を諭して欲しかったと思います。
これからの楽しみは、仙波迅之助がどう求馬と絡んでくるのか。(絡んでもらいたいです。この後も登場しますよね)
そして、求馬が人を斬ることに対する葛藤とどう折り合いをつけていくのか。
「人を斬らずに悪を斬る」、「他人を活かし、自分も生きる」という「目指すべき活人の剣」をどう突き詰めていくのか。
この三つです。
求馬の剣士としての成長を楽しみしながら、このシリーズを読んで行こうと思います。
*『颯の太刀 好敵手』について筑前さんがお書きになったものを見つけましたので、興味のある方はご覧下さい。
宮部みゆき 『気の毒ばたらき きたきた捕物帖<三>』 ― 2024/12/05
「きたきた捕物帖」シリーズの三作目。

第一話:気の毒ばたらき
北一は文庫屋と岡っ引きの真似事をして暮らしている。
ある日、万作・おたま夫婦が親分の跡を継いだ文庫屋が放火により火事になった。
昼火事だったこともあり、万作もおたまも子どもらも、そして職人も奉公人も近所の連中も無事だった。
しかし、火をつけたのが台所女中のお染だという。
親分の家でお染に世話になった北一は信じられない。
お染の疑いを晴らすために、北一は人々に話を聞いて回る。
その時に北一は焼け出された人たちが暮らす仮住まいに現れる怪しげな男たちに気づく。いったい彼らは何物なのか?
調べて行くと、意外なことが判明する。
第二話:化け物屋敷
北一は貸本屋・村田屋治兵衛から貸本と朱房の文庫を組み合わせて新しい商いをしようと持ちかけられていた。
北一は乗る気になっていたが、作業場の職人頭の末三じいさんが治兵衛を嫌っていた。
というのも二十八年前の治兵衛の妻殺害事件と数年前の村田屋と親しかった若い浪人の惨殺事件の二つを重ねて、凶事に見舞われる者は業が深いと末三は思い込んでいたのだ。
末三が治兵衛を嫌がる気持ちを薄めるために、北一は治兵衛の妻の身に何が起きたのか、下手人は誰なのか突きとめようと決意する。
もちろん、北一は長命湯の釜焚きをしている喜多次の協力を求めます。
どうも喜多次は忍びの者と何やら関係がありそうです。
その他、新しいメンバーとして二匹のワンコ、シロとブチが登場します。
うちのワンコたちに爪の垢でも飲ませたくなりました。
富勘長屋のみんなや長命湯の爺ちゃん婆ちゃん、沢井と栗山の旦那、おでこさんなどいつものメンバーも元気です。
千吉親分のおかみさんにすごい能力があるのがわかりました。
目が見えないからとあなどってはいけませんよ。
そうそう、長崎にいる弓之助は暗号解読でちょこっと登場。いつ江戸に帰ってくるのかしら。
お話の結末はすっきりとはせず、しんみりとした悲しいものですが、北一の成長が感じられます。
喜多次に鍛えられ、北一がムキムキになっているかどうか、次のお話が楽しみですわwww。
本の厚さが気になりませんので、是非読んでみて下さい。
きたきた捕物帖・シリーズ
①『きたきた捕物帖』
②『子宝船 きたきた捕物帖<二>』
③『気の毒ばたらき きたきた捕物帖<三>』
時代小説シリーズ(文庫本) ― 2024/11/27

山本巧次 『大江戸科学捜査 八丁堀のおゆう 殺しの証拠は未来から』
関口優佳のところに宇田川聡からLINEで連絡が来る。彼曰く、「江戸の骨が出た」。詳しく聞いてみると、四谷の建設現場で一週間前に人骨が発見され、科捜研によると、概ね二百年程度は経過したもので、警察が取り扱うものではないと判断されたとのこと。優佳が骨を見に行くと、傷があり、刺殺されたようだ。文政丁銀と何に使われたかわからない金属板の切れ端の遺留品があった。
宇田川は偉そうな科捜研の連中の鼻を明かしたいという子どもみたいな理由を言って優佳に江戸で調べろと言う。優佳はこの「起きていない事件」を調べてみることにするが、行方知らずになっている男はなかなか見つからない。
相変わらず進まない南町奉行所定廻り同心・鵜飼伝次郎とおゆうこと優佳の仲です。
さて、彼らが未来から来た同志だとわかるのはいつでしょうね。その時が物語の終わりの時なのでしょうか。
森谷明子 『源氏供養 草子地宇治十帖』
寛仁三年、道長大殿は出家し、刀伊の賊がもたらした恐ろしい病が広がっていた。
そんな時に賢子の母の香子(紫式部)が亡くなる。香子の庵には物語はなかった。
晩年、香子は指の痛みで筆を持って文字を書くことが困難になっており、彼女の周りでは猫や人に毒を盛った出来事が起っていた。
一方、香子の侍女だった阿手木は夫とともに筑紫に渡り、「刀伊の入寇」に巻き込まれる。
私ったら、間違って王朝推理絵巻の三巻目を読まずに最終巻を読んでしまいました。
『千年の黙 異本源氏物語』から『白の祝宴 逸文紫式部日記』、『望月のあと 覚書源氏物語『若菜』』の次にこの本をお読み下さいね。
阿手木がこの物語の中で一番好きなキャラだったのですが、何があるのかわからないのが人の世ですからなぇ(溜息)。
『源氏物語』等の素養があった方がより面白く読めただろうなと思いました。
今からは読む気力がありませんがねww。
風野真知雄 『わるじい義剣帖<四> やってない>
女絵師・お貞殺しとおぎん殺しは未だに解決していない。
そんなある日、愛坂桃太郎は女武会の幹部三人と対決する。もちろん桃太郎が勝つのだが、どうも三人は桃太郎がお貞を殺したのではないかと疑っていたようだ。
お貞とおぎん殺しに精力を傾けたい桃太郎のところに次々と相談ごとがやって来る。犬小屋で寝起きをするご隠居の謎、息子の女が化粧して別人になる謎、尻尾屋あるじの店じまいの謎、<若虎屋>の隠居殺害…。
桃太郎の閃きから殺人事件は解決しそうになるが…つづく。
桃子ちゃんが尻尾をつけたのを見て、みんなが真似をするというのが可愛いですね。そういえば尻尾、流行ったことがありましたよね。あれはシッポ型フェイクファーチャームというのだそうです。みんなつけて歩いていました。
変な相談事にかまけているうちに、桃太郎、ピンときちゃいます。物事が煮詰まったら、他のことをしてみるというのが意外と役に立ったりするようです。
阿部順一 『まんぷく旅籠 朝日屋 もちもち蒸しあわびの祝い膳』
「第一話 あわびの両思い」
朝日屋に祝い膳の予約が入るが、おふさは乗る気ではないようだ。ちはるはおふさの様子が気になる。おしのが担当となり、みんなで色々と案をだしあうが…。
「第二話 異変」
朝日屋に目付の新倉格之進が怜治に会いにやって来る。火盗改の柿崎詩門の兄、安岡左門が広田屋に押し入った賊の一人だと言われており、詩門の最近の様子を聞いてくる。
翌朝、詩門が現れ、左門も困っているというが…。
「第三話 新風」
伊勢に向かった茶々丸から紹介されたと言って世之介という宮大工が朝日屋にやって来る。茶々丸から朝日屋のみんなの噂を聞いているというが、とんでもない作り話ばかり。世之介は普請場に行き、五日間働き、木材をもらってきて、土間の隅に飾ってもらえるもんを作ると言う。彼の作ったものは…。
「第四話 朝茶」
狭山の茶を世の中に広めるため尽力している五平が朝日屋に泊まる。
彼のお茶の淹れ方は無造作で雑ともいえるような気軽な淹れ方だったが、飲んでみるとまろやかな甘みとさわやかな渋みが心地よく舌の上を駆け巡った。
ちはるは無料で茶葉を配り、試し飲みをしてもらうことを提案する。
朝日屋も泊まり客に飲み比べしてもらうことにする。
しかし、なかなか道行く人は飲んではくれない…。
読んでいると、伊勢うどんが出てきて、食べたくなりました。
おかげ犬の獅子丸は元気だそうです。また逢いたいですね。
この頃日本茶を飲んでいませんが、ちゃんと茶葉から淹れて飲みたいなと思いました。ティーバッグは手ごろですがね。
今回はお仕事をする上で大切なことを教えてくれるお話になっています。
「美味しいものって、本当に心を豊にしてくれますよねぇ」
「美味しいものの力は、すごいですよねぇ」
食いしん坊の私は同感です。
軽い時代物を読みたい時に手に取ってもらいたいシリーズです。
蔦屋重三郎の本二冊 ― 2024/11/20

日本橋通油町にある地本問屋の丸屋小兵衛は引退を決意し、店を売ることにした。
そこに若い男が訪ねて来て、小兵衛に毎年二十両払うから雇われ人になって自分を手伝って欲しいと言われる。
その男が耕書堂の主、蔦屋重三郎だった。
雇われ人になった小兵衛だったが、驚いたことに重三郎のやることといったら真っ昼間からの連日の吉原通いで、日本橋の店を再開させる気配はまったくない。
重三郎は小兵衛にもっと吉原に馴染めというばかり。
いっしょに遊ぶのは素性も本名もしれない男たちで、重三郎はそれぞれを寝惚、六樹、喜の字と呼んでいる。
そんな時に重三郎の遠縁で絵師をやっている北川勇助という男が店に転がり込む。
小兵衛は重三郎に良いように言い含められて、自分の給金の中で勇助を雇って面倒をみることになる。
やがて重三郎は小兵衛たちを吉原の小部屋に呼び出し、仕事の話を始める。
それからの重三郎は次々とヒットを飛ばすが、寛政の改革が始まり…。
丸屋小兵衛から見た蔦屋重三郎が描かれています。
重三郎と縁のあった戯作者や狂歌師、絵師が続々と出てきますが、彼らは本に描かれているようなキャラだったのでしょうかね。
松平定信の行った政治のことはあまり知りませんが、本を読むと嫌になります。

戯作者志望の幾五郎は耕書堂の前で主の蔦屋重三郎を待っていた。
しかし、重三郎に会った途端に気を失い倒れてしまう。
気づくと、布団に寝かされていて、側に鉄蔵と名乗る絵師がいた。
飯を食い終わった時に蔦重がやって来て、京伝からの預かり者の瑣吉を探すように申しつけられる。
京伝の所に行って瑣吉のことを聞くが、来ていないと言う。
そこにいつの間にか斎藤十郎兵衛が着いて来ていた。
幾五郎と鉄蔵、十郎兵衛の三人はいっしょに瑣吉を捜すことになる。
三人は瑣吉捜索二日目に吉原にいる喜多川歌麿に会いに行き、三日目に瑣吉の兄が仕えている侍の屋敷を訪れるが、何も手がかりはなかった。
もはや打つ手がなくなり、鉄蔵の家で焼け酒でも呑もうということで長屋に行くと、男が腰を抜かしていた。
なんと、瑣吉ではないか。
瑣吉は鉄蔵の家と間違えて隣の家の戸を開けてしまい、首を括った女の骸を見つけてしまったのだ。
瑣吉曰く、死のうと思って鉄蔵に会いに来たそうだ。
瑣吉を見つけたので、幾五郎は蔦重に寄宿を許される。
そして、まだ何者でもない四人の若者たちは、長唄の女師匠の変死事件の謎を追うことに…。
さて、この四人、誰だと思いますか。
本の中に書かれていたヒントを出しておきます。
幾五郎:生まれは駿河。江戸で武家奉公をし、大阪で町奉行に仕える。
侍を辞め、浄瑠璃を書くが、滑稽本に出会い戯作者になろう思い、江戸の地本問屋廻りをして、耕書堂に転がり込む。
鉄蔵:主に役者絵を描く絵師、勝川春章の弟子。
斎藤十郎兵衛:阿波蜂須賀家の能役者。
瑣吉:京伝のところに居候をした後、蔦重に拾われ、その世話で下駄屋に婿養子に入る。
この本では歌麿(北川勇助)が人気の絵師になっています。
二冊とも、小説というよりも漫画に近いような感じで、とても読みやすいです。
来年の大河ドラマが蔦重のことらしいので、興味のある方は読んでもいいでしょう。
重厚な時代小説を読みたい方には軽すぎるでしょうがねw。
<家で遊ぶヨーキー>
ヨーキー弟と兄は気が合わないようで、この頃は別々に行動し、遊ぶことはありません。
兄は犬部屋から出ると、クンクン臭い嗅ぎをし、満足するとソファでおやつを待ちます。
弟は遊ぼうとママのところにおもちゃを持ってきます。
犬のおトイレの掃除をしているママは面倒くさいのですが。

飛ぶヨーキー。
このおもちゃはフィンランドで買ってきたもので、長持ちしています。
もう一つのものは数日で壊れてしまいました。
何回も持って来いを繰り返すので、おやつが欲しい兄はしばらくするとじれて怒ります。

やっと満足して、兄の寝床に行きますが、おもちゃを離そうとしません。
でも、年をとったのか、食い意地がはってきたのか、おやつを見せると離すようになりました。
風野真知雄の二つのシリーズ ― 2024/10/25
「魔食 味見方同心」シリーズの三作目。

『魔食 味見方同心三 閻魔様の怒り寿司』
今回も面白い料理が出てきます。
まず最初は、「怒り寿司」。
寿司が怒るはずはないので、何かというと、閻魔様を祀っている渋谷村の炎上寺で売っている寿司のことです。
その怒り寿司を食べると、閻魔様に怒られることになるので、犯した罪は許されるという、何とも都合のいいお話です。
でも、寿司は普通のとは違います。
どんなに罪があっても、私は絶対に食べたくないです。苦手なんです。
どんな寿司か、ここには書きません。
想像してみて下さいww。
次に出てくるのは「きったねうどん」。
その名の通り、深川のごみごみした路地の奥深くにあるきたないうどん屋のきつねうどんなのですが、食べたらものすごく美味しいとか。
魚之進も行ってみるのですが、なかなかお店に辿り着けません。
食べてみたい気もしますが、汚い店には入りたくないわ。
三番目の料理は、というか食材と言った方がいいかな。
「素麺くもの糸」です。
とにかく素麺がくもの糸のように細く、喉越しがいいんですって。
これは食べてみたいです。
四番目は「棘の蜜」。
これも料理ではなく、サボテンの花の蜜のことです。
サボテンに花が咲くことは知っていましたが、蜜が美味しいなんて、知りませんでした。
蜂がその蜜を吸いにやって来るのだと思ったら、なんと、コウモリが来るというのです。
本当なのでしょうか。
調べてみると、本当でした。
もはやこれらは魔食の部類に入りますね。
さて、このような食べ物からどのような事件が起るのか。
興味を持った方は読んでみて下さい。
このシリーズは兄の仇討ちをする「隠密 味見方同心」シリーズ(九冊)から「潜入 味見方同心」シリーズ(六冊)、そして、その後の「腐食 味見方同心」(三冊)へと続いています。

『寿司銀捕物帖 イカスミの嘘』
新シリーズです。
日本橋の魚河岸に近い、小網町一丁目にある<銀寿司>のあるじで握り寿司の名人と言われている銀蔵は、かつて凄腕の岡っ引きだった。
その頃、銀蔵の相棒だった北町奉行所の定町廻り同心、谷崎十三朗から、もう一度十手を持ち、彼の息子で見習い同心になったばかりの十四朗の相棒になり、彼を一人前に鍛え上げて欲しいと頼まれる。
銀蔵と十四朗が最初に関わった事件は、イカ将のあるじ、将吉殺し。
わきに『かねかしじんきち』と書付が遺されていたというが。
「イカは嘘をつかない」とは本当でした。
次は銀座四丁目の<万五郎寿司>のあるじ、万五郎殺し。
そばにハマグリが一つ、シジミが二つ、そしてかなりいいマグロがあった。
今は夏。「夏のマグロは、まずいはず」なのに。
次に殺されたのは、老舗の海苔問屋<川本川>の旦那。
まだ還暦だったというのに、餅を喉に詰まらせて亡くなったらしい。
どうもおかしいと、銀蔵の勘は言っている。
ある日、十三朗のお見舞いに行った帰りに、銀蔵は箱崎町の料亭<長生楼>の女中のおたつが必死の形相で駆けてくるのを見かける。
翌日、長生楼のあるじと女将、住み込みの板前の三人が殺されているのが見つかる。
金は盗られていない。
調理場のまな板の上にヘソがくり貫かれたアナゴがあった。
おたつは仕事に来ない。
殺しの現場を見たのか?
「味見方同心」シリーズとは被らないように、新シリーズは寿司関係にしましたね。
食べ物からよくこんなことを考えつくなと、いつも思うほどです。
流石です。
私はもっぱら食べるばかりの能なしですわwww。
<今日のおやつ>

大きいシナモンロールは食べたくないので、小さいものが売っていたので、買って来ました。
フィィンランドのシナモンロールとアメリカのシナモンロールは違うみたいです。
フィンランドスタイルのものは生地にカルダモンが入っているようですが、アメリカンスタイルはシナモンとシュガーだけで、上にアイシングをするのだとか。
私が買って来たのはアメリカのシナモンロールですね。
アイシング、いらないです。
フィンランドのシナモンロールを売っているお店、どこかにないかな。
来年の夏にまたフィンランドに行くか、スウェーデンかノルウェーに行こうかと計画を立てています。
旅行貯金をしなければ…。
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