カーリン・アルヴテーゲン 『罪』2010/03/09


 前に読んだ『影』のアルヴテーゲンの処女作です。
 あとがきを読むと、彼女は彼女の兄の突然の死を乗り越える過程でこの本を書いたのだということがわかりました。
 書いて心を吐露することは、ヒーリング効果があるのですね。今度やってみようかしら。

 
 鉄格子の会社を経営しているペーターは、経理係が会社のお金を横領したため、多額の負債を抱え込むことになります。
 何もかも嫌になり、十一日間アパートに引きこもった後、初めて外出し、カフェに座っていると、季節はずれのサングラスをかけた女が話しかけてきました。
 「夫のオフィスに行って、箱を渡して欲しい」
 ペーターは、女に押し付けられた箱を届けに行きます。
 驚いたことに、女の夫であるはずのオーロフ・ルンドベリは妻は三年前に死んだというのです。
 一体、あの女は誰なのか?
 箱に入っていたのは、人間の足の指でした。
 ルンドベリはペーターに、知らない女に付きまとわれているといいます。そして、その女を見つけてくれると、いくらでも報酬を払うというのです。
 ペーターは負債額を提示し、引き受けることにします。
 
 ペーターの父は消防士で、彼が七歳の時に火災現場で亡くなりました。父が死んでから母親はペーターを寄せ付けませんでした。母から締め出されたペーターは淋しい子供時代を過ごします。
 母はペーターがは父のような英雄になってくれることを夢見ていました。母の夢を叶えるために、ペーターは消防士を目指しますが、なれませんでした。
 ペーターは母親に嘘をいいます。消防士になったと。本当の彼はバスの運転手でした。
 母が死ぬまで、ペーターは嘘をつき続けたのです。
 
 ペーターがデモーンと名づけた女は、何が目的でルンドベリに付きまとうのでしょうか。

 デモーンが恐ろしいです。男より女の方が執念深いのかなと、この頃思います。
 読み進めると、意外な結末に・・・。
 ペーターにはパニック障害があるのですが、ちょっと同情してしまいます。こういうことは、育った環境に関係するのでしょうか?
 この小説を書き、アルヴテーゲンは兄の死を乗り越えます。
 孤独な男が物語の最後に希望を見出すのは、彼女の回復と関係があるようですね。
 

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://coco.asablo.jp/blog/2010/03/09/4934945/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。

_ じゅうのblog - 2018/04/27 20時16分54秒

スウェーデンの作家「カーリン・アルヴテーゲン」の長篇ミステリ作品『罪(原題:Skuld、英題:Guilt)』を読みました。
[罪(原題:Skuld、英題:Guilt)]

「カーリン・アルヴテーゲン」作品は、昨年の9月に読んだ『裏切り』以来です、、、

「マイ・シューヴァル」、「ペール・ヴァールー」共著に続きスウェーデンのミステリ作家の作品… 北欧ミステリ作品は、面白くて読み始めたら続いちゃいますね。

-----story-------------
謎の女に追いつめられる男が行き着いた恐怖

経理係の横領で二〇〇〇万円もの負債を抱えた「ペーター」は、ある日奇妙な事件に巻き込まれる。
見知らぬ女から強引に、ある会社社長に届け物を頼まれるのだが、その中身は足の親指。
女から執拗な嫌がらせを受けていた社長に借金返済を約束されて、「ペーター」は探偵役を引き受ける。
だが、いつのまにか女が仕掛けた巧妙な罠にはまっていた…。
緊迫の追跡劇を描きながら、亡き父親の温かみが忘れられず、母親から疎外された痛みを抱える主人公の内奥をも克明に書き込んでいく。
『喪失』で話題を呼んだ北欧ミステリー界の女王―鮮烈なデビュー作、ついに登場。
-----------------------

1998年(平成10年)に刊行された「カーリン・アルヴテーゲン」のデビュー作です… でも、翻訳されたのは2005年(平成17年)なので、2000年(平成12年)に刊行されてガラスの鍵賞を受賞した2作目の『喪失』の方が先に(2004年(平成16年))翻訳されたようですね、、、

デビュー作ですからね… ご都合主義的な展開もあり、やや物足りない感じもありましたが、心に痛みを抱えた人間の内面の描き方の巧さは『喪失』や『裏切り』への展開を予感させる内容でしたね。


社員の使い込みで破産宣告を受けた零細企業の経営者「ペーター・ブロリン」は、39歳にしては非常にナイーブで、怖がりで、自信がない… その性格は、幼くして父を亡くし、その後、母に疎外されてきたことに起因しているのだが、「ペーター」自身は快活な姉「エーヴァ」と比べて、何故、自分がこんなに憶病なのかわからない、、、

彼には自分の人生の一部しかわかっておらず、ここ半年ほど、いつ訪れるともわからないパニック発作の恐怖に悩まされている… その「ペーター」が知らない女性から届け物の小箱を預かる。

「ペーター」は、その女性の有無を言わさぬ強引な態度に腹を立てながら、彼女夫だという大手広告代理店の社長「オーロフ・ルンドベリ」という男にそれを届けに行くと、「ルンドベリ」は不快がり、妻は3年前に死んでいるという… 小箱を開けてみると、中に足の指が一本入っていた。

そして、その女性は「ルンドベリ」に一方的に愛の告白の手紙を送ってくるストーカーだった… 「ペーター」が「悪魔(デモーン)」と呼ぶこの女性は、次々に「ルンドベリ」に嫌がらせをし、「ルンドベリ」は「ペーター」をお抱え探偵として雇いたいと申し出る、、、

借金と同額の謝礼金ならと「ペーター」は、探偵役を引き受ける… 二人の間には友情さえ芽生えるのだが、知らず知らず彼らは「デモーン」の術中にはまっていく。

「デモーン」の犯行の動機には、「ペーター」の出生の秘密が絡んでいたんですね… そして、まさか女性警察官が、、、

救いのない哀しい家族の物語を背景とした「デモーン」の無軌道で異常な行動に恐怖感を覚えつつ… 親子ほどの年齢の違いのある「ペーター」と「ルンドベリ」が、思いがけぬ出会いの中で友情を育み、そして、自分を必要としている人間に出会い、自分が力になれること実感したことが「ペーター」に自信を与えるという展開は、哀しい物語の中に一筋の光が差し込む感じがして良かったですね。




以下、主な登場人物です。

「ペーター・ブロリン」
 負債を抱えた会社経営者

「エーヴァ」
 ペーターの姉、生物学研究社

「オーロフ・ルンドベリ」
 大手広告代理店の社長

「イングリッド・ルンドベリ」
 ルンドベリの妻

「シェスティン」
 イングリッドの姉

「ロッタ」
 ルンドベリのオフィスの受付係

「カテリーナ」
 ルンドベリ家に通う清掃人

「ヤン・ベングツソン」
 ペーターの会社の元会計士

「ボーディル・アンダーソン」
 女性犯罪捜査官

「エリサベート・グスタフソン」
 精神病院の元患者

「アンニャ・フリード」
 精神病院の元患者

「デモーン」
 ペーターが謎の女につけたあだ名