ラーシュ・ケプレル 『鏡の男』2024/03/05

スウェーデン・ミステリ。
ヨーナ・リンナ・シリーズの八作目だと知らずに買って、読んでしまいました。
読み進んでいくうちに、もう読むのを止めようとまで考えました。でも、頑張って最後まで読みましたけど。
こんなにも残酷で、暴力的で、気持ちの悪いミステリは今まで読んだことありません(たぶん)。


天文台公園で若い女性の死体が見つかる。
彼女はジャングルジムで、まるで処刑されたように首を吊られていた。
現場に駆けつけたスウェーデン国家警察国家犯罪捜査部捜査官のヨーナ・リンナは遺体の顔を見て驚く。
それは五年前に何物かに誘拐され、行方不明になっているヤンヌ・リンドだった。

遊び場に向いている監視カメラはないが、現場に向かって歩いていたり、立ち去ったりする人の姿は確認できた。
カメラに映っていた目撃者は、黒いラブラドールを散歩させている男、マルティン。彼は五年前に娘を事故で亡くして以来、精神を病んでいるという。
マルティンは被害者の写真を見て、殺したのは自分だと言ったのにもかかわらず、その後になにも思い出せないという。

ヨーナは催眠術を試みる。

マルティンの妻のパメラは犯人から脅迫を受け、養子に迎えようとしていたミアという少女が誘拐される。

はたしてヨーナはミアを見つけ出せるのか…。

ここまで読んでもどこにも気味悪いところはないと思ったあなた、それは間違いです。ここには書きませんが、本の中に出てくる誘拐された少女はものすごく酷い扱いをされていて、絶対に読むと目を覆いたくなりますよ。
このシリーズは女性たちが酷い目に遭うというのが定番なのですか?

この本だけではヨーナってどんな人なのかわかりません。
何か事件に関わり、酷い目にあって、精神が病みそうになったらしいということはわかります。
最後に出てくるサーガという女性とヨーナの関係はなんなんでしょう。
他の本の紹介文を読むと、捜査のパートナーみたいですね。
彼女、精神的におかしくなって、精神科病棟に隔離でもされているのかしら?
そうそう、最後のヨーナのターミネーター的活躍もお約束なの?
不死身かwww。
エログロが好きな方、どうぞお読み下さい。面白いみたいですよ。
(こんなところにこういう場面いるか、ということがあります、笑)

気になったのが、ヨーナの目の色のことは警察関係者の間で有名なのでしょうか?
「あなたの目の色について、みんなの話していることはほんとなんですね」と鑑識の女性がヨーナに言います。
「氷を思わせるヨーナの灰色の目」って書いてありますけど、何か目にあるのでしょうか。

なんだかわかりませんが、わたし、四作目の『砂男』をkindleで買っています。
本の説明にヨーナ・リンナ・シリーズの何作目とか書いていない、もしくは、わたしが見ていないから、買ってしまったのかな?
どうしましょ。読むのがいっぱいあるから、置いておきましょうか、笑。

ネレ・ノイハウス 『友情よここで終われ』2024/03/03



刑事オリヴァー&ピア・シリーズの10作目。ドイツ・ミステリ。

ホーフハイム刑事警察署首席警部のピア・ザンダーは元夫で法医学研究所所長のヘニング・キルヒホフから電話で頼まれる。
彼のエージェントであるマリア・ハウシルトが、ここ数日、音信不通だった友人の家に寄ってみると、ドアに血痕があり、何かあったのではないかと心配しているので、その家に行ってくれないかというのだ。
ピアが家の中に入ってみると、二階に右足首を鎖で繋がれた老人がいた。

行方不明になった女性はヴィンターシャイト出版から最近解雇されたばかりの元文芸部長のハイケ・ヴェルシュ。
彼女は自分の出版社を起こそうとして解雇された腹いせに、作家のゼヴェリン・フェルテンが盗作したとばらし、彼の名声とヴィンターシャイト出版の評判を傷つけていた。

動機から考えると、フェルテンが第一容疑者だが、調べが進むうちに、1983年にノワールムティエ島で起きた事故がハイケ・ヴェルシュの殺人に深く関わっていることがわかる。

読んでいくと、登場人物たちが多すぎて、誰が誰だかわからなくなってきます。
まとめてみますね。
物語の中心になるのが、ヴィンターシャイト出版を経営しているヴィンターシャイト家です。
ヴィンターシャイト出版の現社長はカール・ヴィンターシャイト。
カールの母カタリーナはヨハネス(ヨーン)・カール・ヴィンターシャイトと結婚しましたが、しばらくしてヨーンが亡くなくなり、カタリーナはカールが六歳の時に自殺します。
その後、カールは叔父のヴィンターシャイト出版社長アンリと叔母のマルガレーテに引き取られます。

「永遠の友人」は六人います。

①ゲッツ・ヴィンターシャイト:アンリとマルガレーテの息子で、三十五年前に死亡。
②ハイケ・ヴェルシュ:ヴィンターシャイト出版の元文芸部長。
③アレクサンダー(アレックス)・ロート:幼稚園の時からゲッツの友だち。ヴィンターシャイト出版の現文芸部長で、妻はパウラ・ドムスキー。
④シュテファン・フィンク:ゲッツの妹のドロテーア(ドーロ)の夫で、フィンク印刷所社長。
⑤アリア(ミア)・ハウシルト:ゲッツの元恋人。ヘニングの文芸エージェント。
⑥ヨゼフィン(ヨージー)・リントナー:ロートの元恋人。<ハウス・オブ・ブックス>のオーナー。

この他にヴィンターシャイト家の使用人ヴァルデマール・ベーアとヴィンターシャイト出版のヘニング担当の編集者ユーリア・ブレモーラがいます。
覚えられますか?わたしには無理ですわ(恥)。

そうそう、ヘニングがミステリを書き、ベストセラー作家の仲間入りをしています。びっくりしました。
彼の書いた本の題名が、今までのシリーズの題名と同じで、内容も同じだそうです。
意外な才能があったんですね。

そして、オリヴァーですが、詳しくは書きませんが、もう家庭がメチャクチャで、事件に集中できません。
彼の選ぶ女性って問題ありが多いのよ。何故なのかしら?

今まで出版された作品をGoogle検索をしてみると、なんとか八作品が見つかりました。
調べたついでに載せておきますので、興味のある方はどんなお話か見てみて下さい。


11作目は『Monster』という題名だそうです。
不可解な死や行方不明が起るらしく、次も面倒な事件の様子。
このシリーズはガッカリさせられることがなく、常に高水準を保っているところがすごいです。


<今日のおやつ>


可愛らしい缶に入ったクッキーです。
クッキーよりもレモンメレンゲ&ラズベリーメレンゲが美味しいです。

サラ・パレツキー 『コールド・リバー』2024/02/15

V.I.ウォーショースキー・シリーズの21作目。


ヴィクは犬たちを走らせようと、シカゴとエヴァンストンの境界線近くにある墓地に車を止めた。
すると、ミッチが逃げ出してしまう。
ミッチを追いかけていくと、岩場の二つのコンクリートブロックの隙間に一人の少女が倒れていた。

翌日、顔見知りのシカゴ市警部長刑事レノーラ・ピッツェッロが、ヴィクが岩場で見つけた身元不明の少女の件でやって来る。
ピッツェッロは少女が何か電子機器を持っていなかったか訊いてくる。
警察はすでに身元を知っているのかと疑うヴィク。

その翌日の朝、少女は病院から姿を消す。
少女が消える前に、ハンガリー語を話せる清掃員を連れた警官が少女に会いに来ていた。
ヴィクは病院に雇われ、少女を探すことになる。

そんな時にヴィクがロティから頼まれ、見張っていたシナゴーグに、サイレント・パートナーとして支援したいと、<クロンダイク>の代表取締役コーキー・ラナガンから電話が来る。
何故ラナガンはシナゴーグが欲しいのか、ヴィクは疑問に思う。

そこにまたピッツェッロがやって来て、しつこく消えた少女のことを訊いてくる。
彼女の何が重要なのか?
ピッツェッロの上司で知り合いの警部補フィンチレーに電話をして訊くが、拉致があかない。

そんなところに昔の面倒な知り合い、ペテン師ぞろいのリトヴァク一家の子ども、ヴランウェルがやって来て、父親のドニーが何かトラブルに巻き込まれているようなので、助けて欲しいという。

その夜、清掃員が殺され、ヴィクのアパートメントに三人の警官がやって来る。
その中の一人、シカゴ市警ホーマン・スクエア署警部補のスコット・コーニーはヴィクを威嚇し、暴力も厭わず、執拗に身元不明の少女のことを訊いてくる。

次から次へと難問をかかえるヴィク。
身元不明の少女とシナゴーグ問題、リトヴァク一家、<クロンダイク>、そしてコーニー。
これらがどう繋がっていくのか…。

パンデミックの頃のお話なので、シカゴの町は不穏な雰囲気です。

子どもに弱いヴィクは凝りもせず、子どもを助けるために、一銭にもならない事件に足を踏み入れていきます。
その上、ヴィクに対して敵対心溢れる、腐れ縁のリトヴァク一家を相手にするなんて、バカですねぇ。
その結果、また満身創痍。
50代だというのに、我らのヴィクはワンダーウーマン(最強の女戦士)です。
川に飛び込み、拳銃に狙われ、命からがら逃げ、それに悪徳警官にも負けないんですから。
原題は『Overboard』ですが、印象的なのがシカゴの川なので、日本ではわかりやすく題名が『コールド・リバー』になったのでしょうね。
それにしてもシカゴのカリュメット川って汚さそうです(失礼)。

ヴィクもその他の登場人物たちもお年です。
一作ごとに年を取っているはずなので、ヴィクはたぶん五十代後半のはず。
友人の外科医ロティは70代か80代で、今でもメスを持っているのが不思議です。
隣人のコントレーラスさんは90代で、ものすごく元気です。
わんこたちは、なんと20歳ぐらい。いくらなんでも大型犬でしょうから、長生きし過ぎですよね。
それにサラ・パレツキーさんも76歳。
このシリーズはマンネリ化しないで続いているので、できるだけ長く続けて欲しいのですが、中途半端に終わるのだけは止めて欲しいです。
悲しいけど、そろそろ幕引きを考えて下さいませ。
ヴィク・ファンからのお願いです。

シリーズの二十二巻目、『Pay Dirt』が4月に発売されます。
週末に行ったカンザスで、南北戦争までさかのぶるトラブルに巻き込まれるようです。
今度は知り合いの大学生のために人肌脱ぐんだけど、ヴィクにとって大学生も子どもよねぇ。
子どもに弱いのも考えものだわwww。


<ヴァレンタインのチョコレート>


ケイタマルヤマの新しいチョコ缶とベルギーのピエール・ルドンのチョコレートです。


普通に美味しいチョコです。


ケイタマルヤマのチョコレート缶には洋梨のパート・ド・フリュイと宇治茶のホワイトチョコレートが入っています。(落としたので、抹茶のが割れてます、笑)
これも美味しいのですが、わたしはピンク缶のチェリークランベリーが一番好きですわ。

アーナルデュル・インドリダソン 『悪い男』2024/02/08

アイスランド・ミステリ、犯罪捜査官エーレンデュル・シリーズの七作目。


レイキャヴィクのアパートの一室で、若い男の死体が見つかる。
刃物で喉を切り裂かれており、レイプドラッグのロヒプノールを所持していた。
死体は女性用のTシャツを着ており、ベッドルームの床にコンドームが落ちていた。殺される直前に性行為をしていたらしい。
彼はバーかレストランで女性にクスリの入った飲み物を飲ませ、意識を失わせ、部屋に連れてきてレイプしたのか。
現場にはレイプの被害者のものらしい一枚のスカーフが残されており、何か香辛料らしきものの匂いがした。
レイキャヴィク警察犯罪捜査官のエリンボルクはその匂いがタンドーリ・チキンのものだと気づく。

やがて殺されたはアパートの住人で三十歳になる電気通信会社の技術者、ルノルフルで、口の中にロヒプノールを詰め込まれているのがわかる。
彼はレイプの常習犯で、これは被害者による復讐なのか?

エーレンデュルは東フィヨルド地方へ行くといって出かけてから行方不明。
エリンボルクがシグルデュル=オーリと共にこの事件を扱うことになる。

殺された男には悪いのですが、因果応報と言えます。
彼にレイプされた女性と家族のことを思うと…。

捜査官のエリンボルクは四十代の女性で、テディというパートナーと同居しており、彼の姉の子を養子にし、彼との間に十代のニ人の息子と一人の娘がいます。
(アイスランドでは婚外子が約七割だそうです)
自動車修理工場の共同経営者であるテディは料理が出来ず、料理本を出すほど料理が得意な彼女が事件の捜査で忙しいと、テイクアウトしてばかり。
ジェンダー平等世界一位の国でも料理は女性が担当している率が高いのかしら?
養子の息子は実の父親と暮らすためにスウェーデンへ行ってしまい、それから長男とは、反抗期なのか、上手くいっていません。
唯一、優等生の娘が彼女の味方です。
子どもに関する心配事は日本とそんなに変わらないですね。
子どもたち、特に彼女の娘の未来に幸あれと祈らずにはいられません。

心配なのはエーレンデュル。
彼のシリーズなのに、なんで主人公が不在なんでしょう。
エリンボルクは彼のことを、「過去から自由になれない、いや自由になりたくない、考えが古く、態度も古臭い。世の中の価値観がものすごいスピードで変化している間も、古い考え、古い習慣にしがみついてきたに違いない」などと思っています。ちょっと酷いわねぇ。
彼女にとってはエーレンデュルもシグルデュル=オーリも好感の持てない変わり者なんですよ。
とにかくエーレンデュルが二週間も教会前にレンタカーを放置しているというのが気になります。
次回にその謎が明かされるのかと思ったら、次はシグルデュル=オーリが主人公で、この事件と同時期のことなんですって。
早くエーレンデュルに会いたいです。

このシリーズは1、2巻目が翻訳されていませんし、この後に6冊あるようですが、ちゃんと翻訳されて出版されるのか心配です。
マルティン・ベック・シリーズみたいにならないことを祈っていますわ。

刑事マルティン・ベック 『消えた消防車』2024/02/05

刑事マルティン・ベック・シリーズの五作目。


1968年3月7日。
午前三時過ぎに一人の男が拳銃自殺をする。
遺書はなかったが、電話の側にマルティン・ベックと書いたメモがあった。
マルティン・ベックはこの男とは面識がなく、自分の名前が描き残されていた理由も思いつかなかった。

同じ日、グンヴァルド・ラーソンは木造二階建てのアパートに住んでいるマルムという男を見張っていた。
突然、その建物が爆発する。
勇敢にもラーソンは一人でアパートの住人たちを助けに行く。
不思議なことに、出勤したという消防車は来ない。
ラーソンは八人もの人間を救出。
焼死者は三人で、その中にマルムがいた。

二月の交通違反のチェックに引っかかった時に、マルムは盗難車を扱う人物としてマークされているバッティル・オーロフソンの車に乗っていた。
姿を消したオーロフソンを捕まえるためにマルムは見張られていたのだ。

マルティン・ベックたちは捜査を始める。
やがてマルムは火事前に死んでいたことがわかり、自殺と見なされ、捜査が打ち切りにされようとしていた時に、国立犯罪技術研究所の鑑識官イェルムから電話が来る。
マルムがマットレスに仰向けに寝ていたのに、背中が異常に焼け焦げていたのは、マットレスの中で何かが燃えたためだという結論に達し、マットレスを調べてみると、何者かが時限爆弾をしかけていたことが判明したという。
火事は付け火だったのだ。

バッティル・オーロフソンを集中的に調べることにするが、彼の行方はなかなかわからず…。

今回は題名の『消えた消防車』に二つの意味があります。
読んでみてのお楽しみ。

今まで登場人物たちのことがあまり詳しく書かれていなかったのですが、今回は色々と書いてあるので、まとめて書いておきましょう。(なにしろわたしがすぐに忘れちゃうのでww)

マルティン・ベッグ
ストックホルム警視庁殺人課主任警視。
小さな運送会社を経営していた父親はオープンで明るい性格で、人に好かれ、よく笑い、冗談をいう人だったが、マルティン・ベックが二十八歳の時に亡くなる。
マルティン・ベックは外見は父親と似ているが、自分は父とは違いかなり退屈な人間だと思っている。
母親はマルティン・ベックに家事をさせず、彼が小遣いを渡したり、今住んでいるホームの支払いをしようとすると断る、かなり頑固な人。彼が警察官になることには反対だった。
彼は上背のある痩せた体、面長で陰鬱そうな顔、額は高く、顎が張っていて不機嫌そうな青い目をしている。
妻のインガと娘のイングリッド、息子のロルフの四人家族。
小言ばかり言う妻にうんざりしている。
娘とは仲がよく、彼女は賢く、大人で、学校も友達関係もうまくやっていると見ているが、息子のロルフは怠け者で内向的、勉強嫌いだと思っている。
十七歳になるイングリッドが近いうちに独立して暮らすと言い出し、「どうしてパパも同じようにしないの」と言われショックを受ける。
暇な時には帆船のモデルを作ったり、読書をする。
フロリダという煙草を吸い、自動車が大嫌い。

ステン・レンナート・コルベリ
ストックホルム警察殺人課警部。
マルティン・ベックの親友。
傲慢な態度に腹の突き出た肥満体をしている。
開けっぴろげで、口が悪いので、人から無神経だと誤解される。
結婚して二年目のグンという妻と六ヶ月になる娘がいる。
彼の望みはいつも妻のそばにいること。
嫌いな奴をいたぶるのが好きで、特にラーソンを嫌っている。
車の運転が乱暴。

フレドリック・メランダー
ストックホルム警察殺人課警部。
警察官だった父から受け継いだヴァルムドウー島にあるサマーハウスは彼の宝物。
結婚二十二年目になる四十三歳の妻サーガと二人暮らしで、子どもは持たないと決めている。妻はケチで、屈強な体格で身長は百八十センチ以上あり、扁平足で、大きな胸はだらりと垂れ下がっている。
メランダーはサーガを美しいと思っている。
彼は四十八歳のスウェーデン一の辣腕警察官だが、無愛想で退屈そうな男に見える。
理論的で、素晴らしい記憶力とどんなときにも慌てない沈着さを持ち、感情的に物事をとらえず、対象となる仕事に対し冷静な距離を保つことができる。
その一方、ユーモアが発揮されるのは稀で、財布の紐が固く、面白みのない男で、素晴らしいアイディアを言うことも、突然のひらめきもない。
何故か必要なときにいつもトイレにいると言われている。

グンヴァルド・ラーソン
ストックホルム警察殺人課警部。
金持ちの上流階級出身で、有名学校へ行ったお坊ちゃまだったが、そのうち一族の問題児と見なされるようになり、父親に海軍に送り込まれる。
海軍も肌に合わず、数年後商船に乗るが、一生を海で過ごすのは気が進まず、一風変わった彼のバックグラウンドが役に立つような仕事を探し、警察官になる。
圧倒的な体躯は人に恐怖を与え、冷たい目で人をにらみつけ、それを得意がっている。
今回の主役とも言えるが、大半の同僚たちから嫌われている。もちろんマルティン・ベックやコルベリも嫌っている。
厳格をモットーとしていて、弱音を吐く人間には我慢がならない。
大抵のことは自分だけの考えで行動し、その方法は型破り。
エイナール・ルンと仲良しで、いっしょに夏休みを過ごしたり、家を行き来している。

紹介したのは主要メンバーと今回活躍した人だけということで、許して下さい。
(活躍というと、マルメ警察の捜し物の名人モーンソンもおちょこちょいのスカッケもいますけどwww)
こうやって書くと、好印象の人物が誰もいませんね、笑。
コルベリの長所ってなんなのかわかりません。わたしが気づかなかったのか、書いてありません。
マルティン・ベックが彼と話しあっている間に考えをまとめることが多いので、それが彼の存在意義ですかね。

残念ながら、この後はスウェーデン語からの翻訳はされません。
翻訳権の問題か?
続きを読みたい方は角川文庫の英語から翻訳した高見浩版をお読み下さい。
古本が苦手なわたしですが、仕方なく古本屋から買いましたので、続けて10作まで読もうと思います。

ホリー・ジャクソン 『受験生は謎解きに向かない』2024/01/26



17歳のピッパ(ピップ)・フィッツ=アモービはリトル・キルトン・グラマースクールの十二年生で、ASレベルの試験を終えたばかり。
あとは「自由研究で得られる資格」の志望書を提出すればいいのだが、まだテーマが決まっていない。

そんな時に同級生のコナー・レノルズから招待状が届く。
彼の家で架空の殺人事件の犯人当てゲームを開催するというのだ。
舞台の設定は、1924年の孤島に建つ大富豪の館。
1920年代ふうの服装で参加するように書いてあった。
参加者は同級生とコナーの兄のジェイミーの七人。
ピップはシーリア・ボーンという架空の女性に扮することになる。

ゲームが始まるとすぐに、館の主人の絞殺死体が発見され、謎解きはブックレットの指示に従い進められる。
最初はあまり乗る気ではなかったピップだが、やがてゲームにハマっていく。

このゲームが「自由研究で得られる資格」で5年前に起こったアンディ・ベル失踪事件を取り上げるきっかけとなります。
ゲームの結末がピップはよほど気にくわなかったのでしょうね。
ピップ、優秀すぎ。

わたしとしては、別にこの本を読まなくてもよかったな、という感じです。
三部作で十分楽しめましたもの。
どちらかといえば、中年以降のピップたちがどうなったのかを知りたいと思いますが、それも書かれなくてもいいわ。

いろいろな意見が出てくる話題の本ですので、まだの方は是非最初の『自由研究には向かない殺人』から読んでみてください。

刑事マルティン・ベック 『笑う警官』2024/01/21

刑事マルティン・ベック・シリーズの四作目です。
前にも書きましたが、出版はこの本が一番最初ですので、間違えずに『ロセアンナ』から読んでくださいね。


1967年11月13日。
ストックホルムではヴェトナム戦争に反対するデモが頻発しており、この日もデモが行われていた。

夜の11時3分、ストックホルム市中を走るバスの中で八人が射殺され、一人が瀕死の重傷を負う事件が発生する。
マルティン・ベック主任捜査官は現場に直行する。

被害者の中に、拳銃を握りしめたスウェーデン警察本庁刑事殺人課の犯罪捜査補佐官オーケ・ステンストルムがいた。
彼はなぜこのバスに乗っていたのか。
彼の机の中に入っていたのは、厳重に閉じられた婚約者の写真。
これは何を意味するのか?
休暇を取っていたはずなのに、婚約者は彼がこの三週間働きづめだったという。
彼は一体どの事件の調査をしていたのか?
重症者は最後に意識を取り戻し、意味不明の言葉を残して亡くなる。
被害者一人一人に関する地道な聞き込みをするが、一人だけ身元のわからない人物が…。

難解な事件を地道な捜査で探っていくという、王道の警察小説です。

あとがきによると、「1960年代から70年代にかけての10年間はスウェーデン社会が大きく変貌した時期」だそうです。
最初に出てくるデモも実際に行われたのだとか。
そうそう、私も、たぶん多くの人も勘違いしているのが、「フリーセックス」という言葉。
「フリー」は「教会からの自由」という意味の「フリー」なんですって。
ようするに、「教会で結婚式を挙げた男女だけに許されるという縛りからの解放という意味」なんだそうです。
宗教がそれほど浸透していない日本人にはわかりずらいですね。

刑事マルティン・ベック 『バルコニーの男』2024/01/20

マルティン・ベック・シリーズの三作目。
噂によると、柳沢由実子さんのスウェーデン語からの翻訳は五作目『消えた消防車』で終わりということです。売れないのかな?
kindleで読んでいたのですが、六作目からは古本屋で探すしかなさそうですねぇ。
そういえば外国の翻訳本にしては珍しく、この本に登場人物の説明がないです。
たまにこれ誰だっけと見ることがあるので、載せて欲しかったです。


1967年6月。
この頃、ストックホルムの公園で強盗事件が頻発していた。
そんな時に、ヴァーナディス公園で女の子の絞殺死体が見つかる。
遺体には性的暴行の跡があり、パンティがなかった。
事件当日の夕方、その辺りで強盗事件が起きていた。
その二日後、こんどはタント公園で少女の遺体が発見される。
手がかりは二人の目撃者、強盗と被害者の友人の三歳の弟。

マルティン・ベックたちは地道な捜査を続けるが、早々に捜査は行き詰まる。
しかし、突破口は意外なところに…。

マルティン・ベックの容姿が描かれていました。「背が高く、顔は面長、額が広くて顎が張って」いて、「よそ見にはちょうど田舎から上京したばかりの、右も左もわからない、困惑している中年男に見えるかもしれない」そうです。
そんなパッとしない見かけからか、中央駅で十四歳ぐらいの少女に自分の裸を撮った写真を買わないかともちかけられています。
もちろん、前作ではある女性からの誘惑を退けたマルティン・ベックですから、買いません。彼女が儲けたお金で麻薬を買うのではないかと予想しています。
スウェーデンではこの頃から若年層の薬物使用が問題になっていたようです。
そうそう、今回はコルベリが大変な目にあっています。彼ってもてそうですもの。

後書きによると、マルティン・ベックはスウェーデン警察本庁刑事殺人課の犯罪捜査官で、ストックホルム警察で勤務していましたが、ストックホルム南署に異動したみたいです。
仲間のレンナート・コルベリとフレドリック・メランダーはストックホルム警察刑事犯罪課犯罪捜査官で、ストックホルム署にいます。
マルティン・ベックが警部でコルベリとメランダーが警部補。
今回、マルティン・ベックがストックホルム署に助太刀に来ているという感じなのでしょうか?
スウェーデン警察の組織がどうなっているのか、わかりません。
気にせずに読んでも問題ないですが、気になります。

自警団がヴァランダーの本にも出てきましたね。
スウェーデンではよくあることなのでしょうか。
コルベリを殴ったボランティアの自警団の男たちにマルティン・ベックはこう言います。

「あなたたちのしたことは弁解の余地がない。自警団は、個々の犯罪者や法を破る者よりもずっと社会にとって有害なものだからだ。それは私刑をよしとする考えにつながり、結果、無法状態を生み出すことになる」

マルティン・ベックは理性的な人なのですね。彼を怒らせると怖そうです。

この本は1958年から1963年までに起った実際の事件を題材にして書かれたそうです。

刑事マルティン・ベック 『煙に消えた男』2024/01/19

刑事マルティン・ベック・シリーズの二作目。


マルティン・ベックは夏休みでストックホルムの群島に行く。
ところが丸一日も経たないうちに、上司のハンマル警部に呼び戻される。
会いに行った外務大臣の側近から言われたのは、アルフ・マッツソンというジョーナリストが十日前からハンガリーの首都ブタペストで行方不明になっているということ。
国際問題にならないように、正式に警察に捜査願いを出さないが、マルティン・ベックに非公式にマッツソンを探して欲しいというのだ。
マッツソンは週刊誌の「東欧エキスパート」で、頻繁に東欧諸国へ旅行していたため、彼に関して警察の国家安全委員会が秘密裡に調査していた。
彼の失踪に疑問を覚えたベックはこの任務を引き受けることにする。

マッツソンの妻に会い、彼のマンションの部屋の中を調べてから、ベックは彼ののみ友達のところに行き話を聞くが、役立つ情報は得られなかった。
ベックは単身、プタペストに飛び、マッツソンが泊まったホテルの同じ部屋に泊まる。

ベックに会いに来た大使館の書記官は、確実にわかっているのは、マッツソンが二十二日の夕刻にブタペストのフェリへギー国際空港から入国していることだけで、ブダペスト警察はマッツソンが有効なビザを持っている限り、彼の行方を探すつもりがないという。
数少ない手がかりをもとにベックは捜査を続けるが、マッツソンの行方はなかなかわからない。
そんな時にヴィルモス・スルカという地元の警察官が接触してくるが、その頃から何物かがベックを尾行していた。

ジャーナリストの不可解な失踪。
彼は一体どこにいるのか。
事件は袋小路に入るかのように思えたが…。

1966年8月のお話。
1966年というと、まだ鉄のカーテンがあった時代です。
描かれているブダペストの町が何やら重苦しくきな臭い感じがします。

一作目ではマルティン・ベックがろくに働いていないので、二作目で単身ブダペストに乗り込ませましたかね。
意外と彼、真面目です。奥さんと上手くいっていないにもかかわらず、若い女性の誘いに乗りませんもの。
ヴァランダーはラトビアで亡くなった中佐の奥さんとできちゃいますものね。
人間的にベックはあまり面白くないかも、笑。

一作目と同様、捜査はサクサクとは進んでいきません。
マルティン・ベックよりも脇役のコルベリの方が魅力的かもねww。
三作目は『バルコニーの男』で、これも地味な捜査になりそうです。

刑事マルティン・ベック 『ロセアンナ』2024/01/03

年の初めから、地震と飛行機事故という思ってもみなかったことが起りました。
地震では東京の方も揺れ、東日本大震災を思い出し、原発は大丈夫かと心配でした。
一日も早い復旧と、被災された方々が日常生活に戻れるよう、お祈りいたしております。

グレーンス警部シリーズを読み終え、昨年末から刑事マルティン・ベック・シリーズを読み始めました。
気をつけてください。シリーズ物ですが、スウェーデン語から直訳された新訳版が四巻から刊行されていたのです。
私はそれを知らなくて、四巻目の『笑う警官』を先に読んでしまいました(恥)。
どうりで読んでいて、おかしいと思ったわwww。


1964年、7月8日。
ボーレンスフルトの閘門で、全裸の女性の死体が見つかる。
モーターラ署の警察官、アールベリが担当になり、女性の身元を探るが、モーターラの町にも、その周辺の警察管区にも捜索願が出されている行方不明者や公示されている失踪者もいなかった。

それから八日が経ち、女の身元も、犯行現場も、容疑者もわからず、捜査が行き詰まったため、スウェーデン警察本庁の刑事殺人課の捜査官マルティン・ベックとレンナルト・コルベリ、フレドリック・メランダーがモーターラに赴く。
しかし、それでも捜査は進まず、彼らはストックホルムに戻る。

八月に入り、アメリカ合衆国ネブラスカ州リンカーン警察の殺人課捜査官エルマー・B・カフカから電報が来る。
その電報には身元不明の女性の名前と年齢、職業が載っていた。
このことが突破口となり、捜査が進展するように思われたが…。

1964年のお話なので、携帯電話もパソコンもなく、郵便と電報、電話でやり取りする時代です。
登場人物たちが煙草を吸う場面が多過ぎです。ゴホ、ゴホ。
スタンダードな刑事物ですね。

表紙を見るといかにもマルティン・ベックが主人公のように思われますが、残念ながら彼はヴァランダーやグレーンスほど活躍していなくて、拍子抜けします。
似ているのは家庭が上手く行っていないことだけですww。
洋の東西を問わず、警察官って忙しすぎて、妻が不満を持ちやすい職業なんですね。
マルティンは1964年当時は胃弱な42歳。
29歳の時に妻のインガと結婚し、一男一女がいます。妻が主婦で暇なせいか、マルティンに五月蠅くかまうので、彼は妻には働いてもらいたいのですが、妻が働くのを嫌がり、主婦のまま居座っています。
私の見た、いえ読んだところ、マルティンはそれほど魅力的な人のようではないので、お互い様ですね。
今のままでいくと、末は離婚かなぁ?

スウェーデン警察本庁のエキスパートの捜査官だからか、もしくはスウェーデンの警察組織のやり方なのか、日本のように二人で組んで動くことがなく、互いに何をやっているのか知らないことが多いです。
同僚のコルベリとはいい関係が出来ており、助けられることが多いし、メランダーは抜群の記憶力を誇り、何でも彼に聞くと思い出してくれ、便利な人です。
この三人がこのシリーズの主要人物です。

タイトルの『ロセアンナ』は殺された女性の名で、彼女は今では当たり前なのですが、1964年当時は最先端を行く女性で、自由と自立を重んじる人でした。
時代を感じますが、刑事物としてはなかなかよさそうです。
スウェーデン社会と他の国々がどう犯罪に関わってくるのか。
ヴァランダーやグレーンスの先駆けとなる小説です。