歌田年 『紙鑑定士の事件ファイル 紙とクイズと密室と』2024/03/28



やっと桜が咲き始めました。来週、花見に行けますね。

「紙鑑定士」シリーズの三作目。
一作目の『紙鑑定士の事件ファイル 模型の家の殺人』はこのミス大賞受賞作品です。
紙鑑定士というのが面白くて、続けて二作目の『紙鑑定士の事件ファイル 偽りの刃の断罪』を読みましたが、三作目が出ていることを知りませんでした。


FILE:01 クイズと密室と紙と
西新宿に渡部紙鑑定事務所をかまえる紙鑑定士兼紙営業士、渡部圭は『月刊KAMI-ZINE』という創刊二周年を迎えたばかりの新しい雑誌を見ているうちに、二周年記念特別企画として懸賞付クイズコーナーがあるのに気づく。
題して、『紙人32面相の紙ってる!推理クイズ』。
懸賞金10万円に引かれ、応募してみることにする。
クイズは有名なトリックの一つ、”密室”がテーマ。
その日は用事があったので、とりあえず、クイズは置いておいて、渡部は高尾にある旧知のプロモデラー、土生井登の家まで行く。
土生井と渡部で共同開発企画”ディオラマ運搬用紙器”を考えていたのだ。
その時、渡部はカンニング事件の事件現場だという塾の教室のジオラマを見せてもらう。
土生井はその塾の教師からどうやってカンニングをしているのかわからないと愚痴られ、世話になっているから謎を解いてやろうと思ったそうだ。
興味を持った渡部は何か思いついたら知らせると告げ、辞去した。

別の日、渡部は中堅総合出版の<竹井書店>の本社に呼ばれた。
男児向け雑誌『ボーイズ・デイ』の付録についての相談だった。
そこで手帳はどうかという話になる。
翌日、再び呼び出された渡部は、編集長が持って来た古い手帳を見ているうちに、ある紙にピンとくる。
カンニングの方法がわかったのだ。

FILE:02 紙と密室とクイズと
二月になって、東京・埼玉・神奈川のいくつかの図書館で、「さわるときけん けがするで カミ人30面相」という一文を書き、カミソリを貼り付けた紙片が本の間に見つかる。
渡部は老舗の中堅紙商<自然堂紙パルプ商会>の創業者の一人娘、自然堂真理子から<頌叡出版>の文芸編集の人が容疑者だと聞く。
たまたま頌叡出版の紙材担当者と会う予定があったので、探りを入れようと思っていると、相手から話を持ちかけられる。
容疑者とされている文芸の橋本の潔白を証明して欲しいというのだ。
旧知の神奈川県警の石橋和男刑事に電話をすると、向こうも渡部に用事があったらしい。
幸運なことに、渡部は証拠品の紙を見ることができた。
その紙はPPC用紙、ようするにコピー用紙だった。

二月に入り、今度は大手古書店チェーン<BOOK DOWN>北横浜店で、カミソリの刃が多数見つかった。筆跡も紙も六割方前のものと一致していた。
石橋も渡部も同一犯ではないかと思うが、一体犯人はどうやって閉店後の店内に入り込んだのか?

渡部は意外なことからカミ人30面相のトリックを見抜き、その上、『紙人32面相の紙ってる!推理クイズ』まで解いてしまう。

FILE:03 紙とクイズと密室と
二月下旬、渡部は『紙人32面相の紙ってる!推理クイズ』のクイズ第一問に見事当選し、10万円を手に入れた。
気をよくした渡部は第二問にも挑戦することにし、思いついた解答を送った。
その翌日、”紙人32面相”から第一問の正解に至った経緯をインタビュー取材したいというメールがくる。
賞金も手渡しでくれるというので、<KAMI-ZINE社>に行くと、デザイナーの小牟田千果咲という女性が現れる。
インタビューの後に、彼女は渡部が謝礼を払えば、特殊な依頼を受けてくれるという噂を耳にしているので、個人的なことをお願いしたいと言い出す。
彼女曰く、三年前に、紙業界で働く人との不倫関係で悩んでいた彼女の姉が、自宅マンションで睡眠薬を飲んで亡くなった。部屋は密室で、警察は自殺と断定したが、彼女は納得がいかず、姉と同じデザイナーとなり、犯人を捜すことにし、今回の創刊二周年記念企画の賞金付き推理クイズで犯人をおびきよせようと思いついた。
第一問と第二問に現実味のある解答をした渡部にサポートしてもらい、”弔い合戦”をしたいというのだ。
渡部は彼女に協力することにし、第三問目をいっしょに考える。
果たして渡部たちは犯人をおびき寄せることができるのか?

今回も紙についての蘊蓄が満載で、マニアには嬉しい一冊です。
男児向け雑誌に手帳の付録って多かったっけ?
あ、わたしは少女向け雑誌の付録しか知らないわww。

今回がシリーズ三冊の中で一番分かりやすい内容でした。
渡部が探偵仕事に慣れてきたからでしょうかね。
シリーズの一、二作目は読んでいなくても、大丈夫。
今回は渡部が他のマニアの方に協力してもらわず、自分の頭を使って謎を解いていきますよぉ。
そうそう、元彼女の真理子ってなんなの?
少ししか登場していないのに、印象強すぎ。
次は彼女と何かあるのかと思わせられました。
期待しましょう。

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://coco.asablo.jp/blog/2024/03/28/9671239/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。