堂場瞬一 『共謀捜査』2024/04/08

「検証捜査」シリーズの六作目で、最終巻です。


警察庁のキャリア官僚、永井はフランス東部の町、リヨンにある「ICPO(国際刑事警察機構)」本部に出向している。
国境を越えて暗躍する犯罪組織と対峙するための新しい組織、「ICIB(国際犯罪組織捜査局)」の発足準備に従事しているのだ。
ある日、永井はアパルトマンに帰ろうと自転車に乗っていた時に、後ろから来た車にぶつかられ、意識を失う。

保井凛はICPOの同僚であるアンドレ・クレマンからの電話で、永井が何者かに拉致されたことを知る。
すぐにメールで身代金の要求がある。
ICIBの設立を妨害するための犯行か?
永井との因縁のあるロシアン・マフィア、ブランの宣戦布告なのか?
凛はリヨン署と協力して永井の行方を追うことになる。

一方、東京の警視庁捜査一課の神谷警部補は本庁の浦部官房長から呼び出される。
かつて神奈川県警の不祥事を調べた時、捜査線上に上がったが、逮捕も書類送検もされず、懲戒処分を受け、県警を辞めた松﨑泰之が、警視庁の管内で殺された。
この件に例の神奈川県警の事件が影響を及ぼしている疑いがあるので、その背景を探ってほしいというのだ。
浦部に呼ばれたのは、神谷の他にあの時のメンバーの神奈川県警捜査一課の刑事、桜内省吾と福岡県警の皆川慶一郎。(ちなみに大阪府警の島村保は定年退職をしている)
特命捜査チームが再度集結し、捜査を開始する。

やがてフランスと日本の二つの事件が繋がり、意外な真相が暴かれるが…。

フランスからスイスへとスケールが大きくなるのかと期待したのですが、それほどではなくて、ちょっと残念でした。
そうそう、フランスの警察のことが書いてありました。
日本のような「中央官庁と地方組織」に分れていなくて、「地方の警察組織は全て、中央官庁の当該部署の直属だから、中央の情報が地方でも即座に共有される」そうです。

堂場さん、書きすぎです。
「神奈川県警は、内輪の人間を庇うために平気で冤罪事件を起こすような連中だ」とか、「職員の質が悪い」のは「一説にはうち(警視庁)の試験を落ちた連中が向こうへ行くーー警視庁の滑り止めだ、なんて言われているけど、実際にミスや不祥事が多いのは間違いない」なんて書いてあるんですよ。
神奈川県警から訴えられませんかねww。

『時限捜査』で島村さんがいい上司だと書きましたけど、今回も退職しているにも関わらず活躍してくれました。
そうだろうなと思ったのが、『複合捜査』の主役、NESUの班長・若林が一ヶ月前に急死したということです。
彼の性格と生活態度ではそうなるでしょうね。ご冥福をお祈りします。

あとがきに書いてありましたが、堂場さんは「○○捜査」を「シリーズ」とは認めていないそうです。
全てが『検証捜査』のスピンオフ作品とのことですが、作者なりのこだわりなんでしょうねぇ。
海外にまで進出したわりにスケールが小さいと書きましたが、コロナ禍になってしまい、取材出張ができなかったそうです。
仕方がないのかもしれませんが、最後が…という方が多いでしょう。
フランスとスイスに行けてたら、もっとすごいものが読めたかもww。

最後まで読んだので、読んだらいい順番を載せておきます。

検証捜査 (2013年集英社文庫)
 複合捜査 (2014年集英社文庫)
 共犯捜査 (2016年集英社文庫)
 時限捜査 (2017年集英社文庫)
凍結捜査 (2019年集英社文庫)
⑥共謀捜査 (2020年集英社文庫)

『複合捜査』と『共犯捜査』、『時限捜査』の3つはスピンオフですから、順番はどうでもいいです。
『凍結捜査』と『共謀捜査』は続けて最後に読むといいでしょう。
わたしみたいに『凍結捜査』を先に読むのはお勧めしませんわ、笑。

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