リン・メッシーナ 『公爵さま、前代未聞です』2024/07/19

「行き遅れ令嬢の事件簿」シリーズの四作目。


叔父の家に居候しているベアトリス・ハイドクレアはケスグレイブ公爵と婚約する運びとなる。
周りのみんなはびっくり。というのも、公爵は身分も容姿も彼とピッタリのレディ・ヴィクトリアと婚約するとばかり思っていたからだ。
今まで寄っても来なかった人たちがやって来るようになる。
叔父さんとヴェラ叔母さんは自分たちの暮らしぶりが根底から覆され、余計な出費が増えることに思い至り不機嫌になる始末。

ある日、叔母さんが”公爵家の使用人リスト”に八人目の従僕を加えたとき、ベアトリスはほとほとうんざりし、家から逃げ出す。
気晴らしが必要だ。
前にレディ・アバクロンビーから調査依頼があったことを思い出し、彼女に会いに行くと、あきれられる。
しかし、ベアトリスは諦めない。探偵ごっこが趣味だと言い張り、二十年以上前の両親が殺害された事件の真相を明らかにすると決意表明をする。

レディ・アバクロンビーから聞かされた両親の秘密は意外なものだった。
父がケンブリッジの学友のピット首相の依頼で、スパイとしてイギリス連帯ギルトという商人たちの組織に侵入していたというのだ。

ベアトリスは公爵に内緒で調査を始める。

探偵ごっこが趣味とは、淑女にふさわしい趣味とは言えませんね。
それなのに、公爵は彼女のことを見守るだけで、今回は口出ししません。
公爵は学んだんですね。ベアトリスが一筋縄ではいかないことをww。

今回は自分の両親の死の謎に迫ります。
しかし、いつものように人騒がせにも、他人の屋敷の舞踏会の最中に騒動を起こしたので、彼女の評判は地に落ちたのではないかしら。
無事に結婚できるのか心配です。

五作目では、ベアトリスの宿敵、元ミス・ブロアムがやって来て、とんでもない騒動が起るようです。
読むのが楽しみです。

エヴァ・ビョルク・アイイスドッティル 『軋み』2024/07/18

アイスランドのミステリで英語からの翻訳です。


エルマは恋人と別れたことをきっかけにして、レイキャヴィーク警察を辞め、故郷のアークラネスに戻り、アークラネス警察の犯罪捜査部の刑事として働き始める。

そんなある日、年齢が三十代から四十代の女性の死体がアークラネス灯台の麓の海岸で見つかる。
その数日後、パイロットの妻、エリーザベトが職場に病気で休むと電話を入れた後に行方不明になったと夫から届け出がある。
灯台の死体と同一人物だと思われた。
彼女は子供時代にアークラネスに住んでいたが、町を嫌い、町には絶対に行かなかったという。
嫌うには何か理由があったのか。それなのに何故アークラネスに行ったのか。
検視によると、彼女は車にはねられた後に発見現場まで運ばれたようだ。

エルマはエリーザベドの過去を探り始める。

アイルランド人は姓のない名前で表記されていて、多数は名前の後に父親の名を属格として、男の子の場合は「-son」、女の子の場合は「-dottir」をつけるそうです。
例えば、アイスランド首相のKatrĺn Jakobsdóttir(カトリーン・ヤコブスドッティル)は、名前がKatrĺn でJakobsdóttirはJakobsの娘という意味なのです。
ヤコブスドッティルは姓ではありませんので、正式にはカトリーンと呼ぶそうです。
他のアイスランドミステリを読んだはずなのに、気づきませんでした(恥)。

救いようのない話で、いかにも北欧らしいミステリと言っていいと思います。
小さな町の雰囲気が重苦しく、機能不全の家族、そして…この先は書きませんが、気持ちのいいものではありません。

傷心のエルマは気持ちに折り合いをつけることができるのでしょうか。

このシリーズはForbidden Icelandシリーズと言うようで、英語で五巻まで翻訳されています。
二巻目は『Girls Who Lie』でエルマは殺されたシングルマザーの過去に迫ります。
翻訳が待たれます。

弟わんこ、楽しむ♡2024/07/17

この頃、胃の調子が悪く、内視鏡検査をしてきました。
ところが、特に悪いところはない、加齢によるものじゃないと言われてしまいました(>o<)。
暑くなったので、冷たいものをゴクゴク飲んでいたのがダメだったのでしょうか。
そんなに食べてないのに胃もたれがしています。やっぱり加齢か…。
体重が1~2㎏減ったので、ダイエットになっていいですわ。
病気じゃないから痩せても安心、笑。
この調子でダイエット、頑張ります。

さて、うちのワンコたちですが、元気いっぱいです。
ママのようにお腹が痛くならないみたいで、快食快便です。
ヨーキー弟は外に散歩に行くと、すぐにへばってしまいますが、お家では走り回ります。
久しぶりにヨーキー弟の様子をご紹介いたしましょう。

アヒルさんで持ってこいをします。


口にくわえて持って来ます。


ペロペロ舐めています。


カメラに気づくと、笑顔をくれます。


一方、兄はソファーの上でおやつを待ちます。
おやつに対する熱い視線がすごいです。


何回も持ってこいをして疲れた弟は兄のベッドにアヒルちゃんを持って行ってしまいました。
取ってみろをしたいみたい。
追いかけるのが面倒なママはおやつの時間にします。


兄にばかりおやつは渡さないぞと弟がやって来ました。
髪の毛が乱れていますww。

わんこは人間よりも若いみたいです。
56歳のお父さん、走れますか?(ジョギングではないですよ)

櫻田智也 『六色の蛹』2024/07/16

魞沢泉シリーズの三作目。


「白が揺れた」
魞沢泉は寒那町の<地域おこし協力隊>が『山を生きる、山を食べる』と題して企画したイベントに出席する。
ワークショップの打ち上げを兼ねた懇親会に参加し、そこで知り合った町内の<名人>から<へぼ獲り>を習っていると、名人は途中でへぼが飛んで行ったのとは真逆の方向へ走っていってしまった。魞沢は唯一の教え『とにかく蜂を追え』を守って、蜂を追うと、鹿を撃ち殺したハンターの串呂と出会う。そこに緊急をしらせるホイッスルが鳴り響く。音のする方へ行ってみると、昨日のワークショップに参加していた三木本がいて、猟友会メンバーの梶川がうしろから胸を撃たれて倒れていたという。ホイッスルの音を聞いてやって来た名人が警察を呼びにいったらしい。
梶川は昨日のワークショップで二十五年前の誤射事件の話をし、腰からさげた白いタオルが誤射を誘発した可能性があると言っていたにも関わらず、腰から白いタオルをさげていた。違和感を覚える魞沢。

「赤の追想」
魞沢は花屋の黒板に『ミヤマクワガタ入荷しました』と書いてあるのを見て、花屋に入っていく。彼は勘違いをしたのだ。このミヤマクワガタは植物なのだ。自分の勘違いに気づいた魞沢は苗を買って帰ることにする。
花屋から出ようとすると、急に激しい雨が降り始める。外にある商品を中に入れるのを手伝った魞沢はお茶をすすめられ、花屋の店長、翠里と話をする羽目になる。
彼女から聞いた季節はずれのポインセチアを欲しがった少女の真意は?

「黒いレプリカ」
魞沢は北海道の宮雲市にある<噴火湾歴史センター>の作業員をしていた。
ある日、上輪山の工事現場で埋蔵物が出たという連絡が入る。現場に行ってみると、人の全身骨格の一部が露出していた。
八年前、調査部の田原という男がセンターから持ち出した土器を他人の土地に埋め、遺跡の捏造をしていたという事件があり、事件後しばらくして、田原は行方をくらましていた。
今回の出土も田原が埋めたものなのか?そして人骨は…。

「青い音」
魞沢は友人から誘われたコンサートに行く前に、ある店で没食子インクを見つけ買おうとした時にある男と出会う。
彼に誘われ、喫茶店に入り、話をしているうちに、彼は自分の生い立ちを話し始める。彼のミュージシャンで作曲もしていた父親が亡くなった部屋から楽譜が一枚なくなっていたというのだ。楽譜の行方を魞沢が推理する。

「黄色い山」
寒那町の名人が亡くなったという連絡を受け魞沢は駆けつける。
名人はお棺の中に自分が彫った仏像を納めて一緒に火葬して欲しいといい遺したという。名人が彫った仏像は他にもいくつかあるのに、なぜこの仏像なのか?

「緑の再会」
魞沢は墓参りの後に一度入ったことのある花屋に行く。彼は勘違いをしており、翠里というのは名前ではなく、苗字だった。花屋には店長の娘がいて、母はお寺の墓苑にいるという。それを聞いた魞沢は…。

今回の短編の題名は虫に関するものではなく、色になりました。
「白」のその後を描いたのが「黄色」で、「赤」のは「緑」です。
もやもやとしていたことがスッキリしました。
コミュ障の魞沢くんがよく寒那町で受け入れられましたね。
彼の勘違いの多さにびっくりしましたが、ご愛敬ですww。
題名に「蛹」を使った理由はあとがきに書いてありますので、ご覧下さい。

「赤の追想」に出てくる「ミヤマクワガタ(深山鍬形)」の花は「コトバンク」から頂きましたが、こんな花です。


高山植物で、可憐な花ですね。

「青い音」に出てくる「ピカシェットの家」が気になったので調べてみました。


墓守の男と彼の妻が暮らした家で、男が陶器やガラスの破片を拾い集めて貼り付けて自宅や庭を飾ったそうです。(「4travel.jp」から写真をいただきました)
なんとも美しい家です。

櫻田さんは北海道出身で、今は北海道江別市に住んでいるようです。
単行本はこのシリーズだけみたいです。

魞沢泉シリーズ
②『蝉かえる
③『六色の蛹』


塔山郁 『薬なければ病なし 薬剤師・毒島花織の名推理』2024/07/15



「第一話 認知症と株券」
ホテルで働いているくるみが毒島に相談する。
彼女の祖母の認知症の症状が進んでおり、物取られ妄想が出てきた。
その祖母がくるみに株券をくれたという。父親はその株券を使い、いい老人ホームを探して祖母を入れようというが、くるみも母親も勝手に使っていいのかどうか迷っている。青年後見制度を使うことも考えているというのだ。

「第二話 眠れない男」
元警察官の星野栄一郎は不眠症に悩まされ、元同僚が通っていたクリニックに行く。久しぶりに医療機関にかかったので、今までとは違うことにことごとく不満をつのらせる。
どうめき薬局で待たされてイライラしたせいか毒島という苗字を見て意地悪を言ってしまう。しかし、冷静に対処する彼女と話しているうちに自分の態度を反省する。
毒島は彼と話していて、別の不眠症の原因があるかもしれないと思い、星野に薬を飲んで効き目がなければ医者と相談するようにアドバイスをする。

「第三話 はじめての介護」
青柳亮平は一緒に暮らし始めた祖母を骨粗しょう症の治療をしているクリニックに連れて行った。
新しいクリニックから出された薬を祖母が違うといい、飲みづらいとか飲むと嫌な気がする、前の薬がよかった、と毎日のように文句を言っている。
そのため診てくれた院長に薬を変えた理由を聞いてきてくれと母親に頼まれていた。
しかし、診察では飲み方が悪いのだろうとなり、結局同じ薬を処方されてしまう。どうめき薬局で毒島に祖母の話を訊いてもらうと…。

「第四話 誰にも言えない傷の物語」
毒島が公休の時に、娘が彼女にお世話になったと言って矢倉聡美がやってくる。
娘が右手の手首に包帯をしているのに気づき、リストカットをしているのかと心配したが、それは猫のかみ傷だった。それを聞いた毒島が彼女の娘にいいアドバイスをしたらしいいのだ。

「第五話 処方箋と闇バイト」
この頃、カラーコピーを使った偽造処方箋による医薬品の不正入手が増えている。
SNSで処方箋の変造や偽造のやり方や転売の方法などを事細かに教えており、それを参考に犯罪行為に手を染める子どももいる。
薬局が不正な処方箋を発見した時は、保健所や薬剤師会への情報提供と共に、最寄りの警察署に通報することも求められている。

くるみの交際相手で、作家志望の影山はフードデリバリーの仕事をしている。
ある部屋の住人に注文した品物を渡すと、知り合いに届け物をしてくれないかと頼まれ、紙袋と一緒に三千円を押しつけられる。
千夏は手軽なお金稼ぎをしようと、医薬品の転売をしようと思い、あるマンションに行く。
白いコートを着ている女性とフードデリバリーの男とエレベーターに乗っていると、エレベーターが途中で停止してしまう。地震があったらしい。
三人は作業員が来るまで閉じ込められることになる。
フードデリバリーの男は影山で白いコートの女は毒島だった。
二人は会ったことがあり、二人の話から毒島が薬剤師だとわかり、千夏はつい薬剤師は薬の転売に関わる仕事かと訊いてしまう。

「第六話 肝油ドロップとオブラート」
幼稚園児だった頃、家にあった肝油ドロップを食べたいばかりに、兄と俺はバレないように粉薬を飲むときに使う丸いオブラートを巻いて食べた。
ところが数ヶ月してからバレた。どうしてバレたのだろう。
この疑問を解いたのが毒島だった。

毒島さんがいい薬剤師なのは、患者さんの話を良く聞くからではないでしょうか。
わたしなんかは薬剤師さんとお話をすることなんかないですもの。
いつも、「お変りはないですか」、「ないです」で終わってますww。

そうそう、猫にひっかかれたら、本を読まない人もいると思いますので、載せておきます。
「猫の歯は鋭くて長いので、咬まれると細菌が筋肉の奥まで到達しやすい。軽症なら腫脹や疼痛で済むが、最悪の場合は敗血症を引き起こす危険もある」ということですので、傷の治りが悪くて、微熱が続いていたり、痛みが引かなくて腫れていたりしたら、すぐに皮膚科のクリニックに行って下さいね。

なかなか役に立つお話です。
しかし、毒島さんとホテルマンの水尾爽太との恋物語がなければないで、ちょっと残念でした。彼は新規開業するグループホテルのヘルプ要員として軽井沢に行っているそうです。

薬剤師・毒島花織の名推理シリーズの順番を載せておきます。

⑥『薬なければ病なし』

二匹でお散歩♡2024/07/14

晴れてきたので、急いでお散歩に行きました。
一週間ぶりに二匹でお散歩をするので、わんこたちは嬉しそうです。
この頃、花があまり咲いていないのですが、赤い大きな花を見つけました。


モミジアオイという花だそうで、「北アメリカ東南部の湿地を故郷とするハイビスカスと同族の植物で、紅蜀葵(こうしょっき)とも呼ばれる」そうです。
色々な花がありますね。


二匹でズンズン歩きます。


気温はそれほどではなさそうですが、湿気があり、珍しく兄も舌を出しています。


イギリスが故郷のヨーキー弟はハァハァ言いながらお座りしています。
彼はいつもハァハァしていますけど。


かわいらしく舌を出している兄。


お水を飲ませます。
休憩の後、兄はママのスリングに入りました。そうすると弟も入りたいのか、ママにまといつきます。
しばらくするとパパが抱きかかえました。


舌をビロ~と出している顔は可愛くないので、舌をチロっと出している写真をおみせします。
犬的にも、人間的にも、早く涼しくなってほしいですね。

<昨夜の夕食>
昨夜は外食をしました。
前菜を食べた後にパスタとピザです。


ゴルゴンゾーラのニョッキ。


ワタリガニのパスタ。
これは頼んでいないのですが、あるアクシデントがあり、頂きました。


オニオンと何か(忘れてしまいましたww)のピザ。
胃の調子が悪いので、少しずつ頂きました。
デザートはなしです。
食事の後に買物をした時にコーヒーを飲みました。

ボニー・ガルマス 『化学の授業をはじめます。』2024/07/13



エリザベス・ゾットは奮闘していた。
アメリカの1950年代から60年代は、女性は劣っているという偏見に支えられた家父長制社会だった。
UCLAで修士号を取ったが、彼女をレイプしようとした指導教官に暴行を働いたため、博士課程進学許可を取り消され、仕方なくヘイスティングズ研究所に職を得た。
彼女は科学者としてヘイスティングズ研究所に勤務しているつもりだったが、与えられる仕事は男性の補助的な仕事ばかりだった。

ある日、ノーベル賞候補にまでなるようなスター科学者であるキャルヴィン・エヴァンズとの幸運な出会いがある。
実態はとんでもない出会いだったが、その後、彼らはつき合い、一緒に暮らし始め、唯一無二の存在として互いに認めあうようになる。
二人の育った家庭は悲惨なものだったが、キャルヴィンは家族になろうとエリザベスにプロポーズするが、断られる。
エリザベスは結婚しないし、子どもも作らないという。
その代わりに、彼らはシックス=サーティという野良犬を飼う。

ところが悲劇が起る。
キャルヴィンが事故で亡くなったのだ。
失意のエリザベスに遺されたのは、思ってもみなかった物だった。
エリザベスは妊娠していたのだ。
社会は未婚で子供を産む女性に対して不寛容で、エリザベスはヘイスティング研究所から解雇される。
最悪なことに科学研究部部長のドナティは後援者からの寄付金を得るためにエリザベスの功績を我が物とする。

解雇されてからエリザベスは自宅に研究室を作る。
生計を立てていくために、自分の名前を出さずに相談に来た元同僚の仕事を代わりにやり、料金をもらうことにしたのだ。

子どもが産まれてから、エリザベスの毎日は修羅場となる。
そんな彼女に隣人のハリエット・スローンという助っ人が現れる。
ハリエットは夫と上手くいっていないが、カソリックであるため離婚をしようとは思わずにいた。
最初はエリザベスの手助けをし、できるだけ家にいないようにしようと考えたのだが、最終的に彼らは友人となる。

エリザベスに転機が訪れる。
それは娘のマデリンのお弁当が誰かに盗まれているとエリザベスが気づいてから始まった。
お弁当を盗んでいたアマンダ・パインの父親でテレビ番組のプロデューサー、ウォルターがエリザベスに料理番組に出演しないかと声をかけたのだ。
背に腹は代えられないとエリザベスは引き受ける。
しかし、料理番組はウォルターの考えるようにはならなかった。
エリザベスは科学的に料理を説くのだ。

はたして彼女の料理番組はどうなるのか…?

1950年代から1960年代のアメリカが描かれています。
前半は読みながら胸クソ悪くなりました。
少し長いですが、本から抜粋します。

「彼らはエリザベスを管理したがり、さわりたがり、支配したがり、黙らせたがり、矯正したがり、指図したがる。なぜ仲間の人間として、同僚として、友人として、対等な相手として、あるいはただ通りすがりの他人として女性に接することができないのか」
「ハリエットに言わせれば、男は女とはほとんど別種の生き物だった。男は甘やかされることを必要とし、すぐに傷つき、自分より知的だったり能力が高かったりする女性を許せない」

自分の言うことを聞かなければ、最後はレイプですか。

エリザベスは言います。

「要するに、女性を男性より劣ったものとして貶め、男性を女性より優れたものとして持ちあげるのは、生物学的な習性ではありません。文化的な習慣なんです」

ふと疑問が湧きました。
なんで今頃、この本が出版されたのでしょう?
「全米250万部、全世界600万部。2022年、最も売れたデビュー小説!」だそうです。
ひょっとして、日本よりも女性が活躍しているアメリカなのに、女性たちには色々と不満があるのでしょうかね。

お話の後半でエリザベスが大躍進し、最後は勧善懲悪でスカッとします。
今、何かやろうと思っても躊躇している人が読むと、一歩踏み出せるようになるかもしれませんね。

最後にハリエットとエリザベスのわたしが好きな言葉を載せておきます。

ハリエット 
「家族とは、つねに保守点検が必要なのだ」

エリザベス
「勇気が変化の根っこになりますーそして、わたしたちは変化するよう化学的に設計されている。だから明日、目を覚ましたら、誓いを立ててください。これからはもう我慢しない。自分になにができるかできないか、他人に決めさせない。性別や人種や貧富や宗教など、役に立たない区分で分類されるのを許さない。みなさん、自分の才能を眠らせたままにしないでください。自身の将来を設計しましょう。今日、帰宅したら、あなたはなにを変えるのか、自身に問いかけてください。そうしたら、それをはじめましょう」

ボニー・ガルマスは1957年生まれで67歳になりますが、この本がデビュー作です。British Book Awards Author of the Year 2023をはじめ、色々な賞を取っています。
何歳になっても本が書けるといういいお手本ですね。
500ページを超える本で、最初は翻訳に違和感を感じますが(わたしだけかも)、面白そうと思った方は是非読んでみてください。
後悔はしないと思います(たぶんww)。

そうそう、犬のシックス=サーティは可愛いです。
ボニーさんの愛犬は99だそうです。
犬の名前に数字をつけるのが好きなんですね。

桜木紫乃 『谷から来た女』2024/07/12



赤城ミワはアイヌ紋様デザイナー。
母親が九州出身の日本人で父親がアイヌ人。
背中に父親が彫ったアイヌの紋様がある。

ミワと関わる大学教授やデザイン学校の同期の女、教育通信の記者、レストランシェフ、北海道テレビプロデューサー、そしてミワの父母の出会いを描いた六つの短編集。

桜木さんの本を読むたびに、私の無知を思い知らされます。
北海道で育ったというのに、全く北海道のことを知らないのです。
今までアイヌ人に会ったことはありませんし、学校でアイヌの歴史や文化について学んだことはありません。
アイヌ人に対する差別と言われても、はっきり言ってわかりません。

「あなたに見えない壁が、わたしには見えるんだ」

というミワの言葉が心に刺さります。

時系列にそってお話が並べられていないので、戸惑うこともありますが、不思議な魅力のあるお話です。
北海道出身のわたしとしては、ミワの凛とした生き方に魅了されますが、それ以上に自らの無知さを見せつけられ、ちゃんと知ろうとしなければと思わせられました。知らないではすまされませんよね。

あさのあつこ 『おもみいたします 凍空と日だまりと』2024/07/10

おもみいたします』の続編。


揉み仕事の依頼を受けお梅に取り次ぐ役割をしているお筆がやって来るが、なかなか仕事のことを言おうとはしない。
お武家からの依頼らしく、揉み治療に来てくれれば二十両を出すと言っているという。
そこに依頼した武家が二人現れる。お筆をつけてきたらしい。
彼らは詳しくは語れないが、すぐに来て主の腕が動くように治療をしてくれと言う。
興味を持ったお梅は十丸が反対するにもかかわらず、承諾する。

その三日後、お梅は武家の屋敷に行く。
屋敷には嫌な気が満ちていた。
出てきた女にお梅の揉み師としての決め事を話すが、女は先がないから無用だと突っぱねる。
武家には武家の生き方がある。恥を知り、恥を恐れ、恥を雪ぐために身命を賭す。そういう生き方で、町方とは異なるのだと言うのだ。
それにも関わらず、お梅は当主と会う。
そして、当主のどうしようもできない行く末を知り、自分の力と回りの助けを借り、生き続けるための道筋をつけていく。

今回は武家の当主が患者です。
町人とは違い武士は本当に生きづらい人種だと思います。
お梅が何を言おうが聞こうとしないんですから。いいえ、聞えても、心を閉じているのです。
凝りは人そのもので、揉むというのは、身体だけではなく、心の凝りもほぐしていくもの。人として一日、一日を楽しめるように。
何回も言いますが、わたしもお梅に揉んで欲しいです。

なんか前とは違い、お話が大きくなり過ぎている感じで、そこが残念です。
まだ十七歳のお梅がお節介過ぎで、武家相手にそこまでやれるのと言いたくなりました。実際にはこんなに上手くはいかないですよね。
それにお筆の孫のお昌ちゃんが全く登場しないし、仙五朗親分はもっと活用してほしかったです。
人ではない存在の十丸とお梅の会話はよかったです。
天竺鼠の先生はお酒に目がなく、仕事もわすれて飲んで騒いでいます。可愛い♡

次は短編で江戸に住む様々な人たちのことを書いて欲しいです。
そういえばこのお話、ミステリだったっけ?
今回はミステリ色を全く感じませんでした。

原田ひ香 『古本食堂 新装開店』2024/07/09

古本食堂』の続編。


珊瑚と美希喜の鷹島古書店は順調だ。
しかし、美希喜が三冊二百円の格安文庫コーナーの値上げやレジ横をカフェスペースにしたいなどと言い出し、珊瑚は溜息をついてしまう。

カフェスペースのために本棚を動かすと、棚の裏側の壁にびっしりカビが生えていた。
まさか他の壁も同じなのか…。

美希喜はカフェスペースのせいで、今まで来てくれた常連さんが来なくなるのではと心配する。
現に来ない人がいる。

帯広にいる珊瑚の恋人の東山は手を骨折し入院したという。
それなのに珊瑚には連絡をくれなかった。
気になる珊瑚は思い切った行動を取る。

珊瑚は70代、美希喜は20代で世代が違いますから、古書店に対する思いが違うのは当たり前ですよね。
珊瑚さんってさっぱりした人かと思っていたら、どうもそうではないみたい。
美希喜ちゃんや東山さんとちゃんと話そうよぉと言いたくなりました。
でも珊瑚さん、最後は頑張ります。どうなったのかは次のお楽しみかな?

今回も味のあるお客様が来てくれました。
特に美希喜のお母さんの親戚の三姉妹がインパクトありました。
それぞれのお客様に紹介した本はどれもすぐに読めそうです。
わたしはモモちゃんシリーズを読んでいないので、気になりました。

もちろん美味しいご飯が出てきましたが、わたしが一番食べたいのは、岡田三姉妹が持って来た「日本で一番古いお弁当屋のお弁当」です。
どこかと探してみたら、日本橋弁松総本店のお弁当らしいです。
神保町ではないのね。
今度都心のデパ地下に行ったら探してみます。

ひ香さんは食べ物を食べて、お話している人の描写が上手いです。
わたしも中に入りたくなりました。
例えば六花亭の喫茶コーナーで、「うんうん、わたしも八百円のケーキなんか見たらぎょっとするよ」なんて言いたいわ。
六花亭、ショートケーキなんて326円よ。安い!
インバウンドのせいで、もしかして今年ぐらいから値上げとかないよね。
帯広には行ったことがないので、次回北海道に行くことがあったら行ってみたいです。

『古本食堂』を読んでいなくても、大丈夫です。
わたしもすっかり内容を忘れ、思い出しながら読んでいますからww。
小説家志望の奏人って誰?って感じで、未だに思い出せません。
お勧めの本です。