小路幸也 『バイト・クラブ』2025/03/17



<カラオケdondon>の七号室は<バイト・クラブ>の部室。
<バイト・クラブ>に入るための資格はたったひとつ。
【高校生の身の上で<暮らし>のためにバイトをしていること】

初めは<カラオケdondon>でバイトをしている紺野夏夫だけだったが、いつの間にか五人が集まるようになる。
みんなで仲良くやっていたのだが、ある日、とんでもない事件が起こり…。

登場人物が多い上に、誰と誰が同級生とか先輩とかと関係が入り乱れているので、記憶力に自信のない私には大変でした。
そういう方のために、登場人物をまとめてみました。
読む時に参考にしてくださいね。

<バイト・クラブの仲間>
紺野夏夫:県立赤星高校三年生。<カラオケdondon>でバイトをしている。
父はヤクザらしいが、会ったことはなく、母子家庭で育つ。父親から金を貰っているようだが、自分の小遣いは自分で稼ぐことにした。
菅田三四郎:受験校の私立蘭貫学院高校一年生。<三公バッティングセンター>でバイトをしている。中学校で野球をしていたが、ヘルニアになり、中二で止める。家の運送会社が倒産したので、自分の小遣いや交通費を稼ぐためにバイトをしている。学校はバイト禁止だが、担任がうまく隠してくれている。
渡邊みちか:県立赤星高校二年生。ファミレスでバイトをしている。祖母と母親と三人暮らし。母親の具合が悪くなり、バイトを始める。
坂城悟:県立一ノ瀬高校二年生。ガソリンスタンドでバイトをしている。母は東京でホステスをしているので、祖父母と暮らしている。
田村由希美:私立榛学園一年生。<花の店マーガレット>でバイトをしている。三四郎の幼馴染み。両親が離婚し、父親といっしょに住んでいる。学校はバイト禁止ではないので、自分のことは自分でしようと思い、バイトを始める。

<この五人と関わる大人たち>
筧久司:58歳。<カラオケdondon>のオーナー。昔、お寺の書道教室の先生の尾道というお坊さんがバイトをしながら学校に通っている子供たちに場所を与えていた。その時、お世話になったので、自分もそういう場所を作ってみようと思い、自分の店の七号室を<バイト・クラブ>のために解放している。
尾道広矢:35歳。尾道グラフィックデザイン代表。グラフィックデザイナー。書道の先生の孫で元高校球児。
塚原六花:35歳。私立蘭貫学院高校の教師で、三四郎の担任。広矢とは高校の同級生で、17年ぶりに再会する。
紺野志織:夏夫の母親。六花とは高校の同窓生で、二つ上。
長坂康二:夏夫の父親。
河野良純:ガソリンスタンドのオーナー。長坂とは小中の同級生。
渡邊なみえ:みちかの祖母。
渡邊さより:みちかの母親。志織の三つ上の先輩。
黒川優馬:さよりの同級生。
野呂希美:42歳。<花の店マーガレット>の社長。由希美の父親、健司の元同僚。
西森茂二朗:85歳の野球好きのおじいさん。

何が起こるのか、ワクワクしながら読みましたが、期待したほど大したことではなくて、ちょっとガッカリしました。
まあ、小路さんですから、人が傷つかない、ほっこりしたお話です。
それが小路さんのいいところですから、仕方ないんです。

この本の中のいい言葉を載せておきます。

「どうしようもないことを考えても本当にどうしようもないのよ」
その通り。グダグダ考えずに行動しろ。

「親を選んで生まれてくることはできないっていうけどさ、違うよな。そこをスタート地点にして生まれちゃったけど、ゴールは自分で選べることにちゃんと気づけってことだよな、きっと」
親ガチャがどうした。親なんか関係ない。自分の人生だ。自分で考えて進め!

この本もYAの若い人たちにお薦めです。

髙田郁 『星の教室』2025/03/17



大阪に住む潤間さやかは、中学1年生の二学期半ばに、同級生の暴力により肋骨を骨折し、ひと月入院した。
苛めのことは親にも教師にも言わず、不登校を通し、卒業証書は受け取らず、中学校を中途退学した。
高校を卒業する歳になり、アルバイトでもいいから働こうと思ったが、履歴書を求められる度にバイトを辞めた。
今のバイト先のレンタルビデオ店「アガサ」は珍しく三ヶ月も続いている。

そんなある日、さやかは七十前後の女性に夜間中学校が舞台の映画があるかと訊かれる。
店長の緒方が知っていた。
その時、緒方から隣町にある河堀中学校に夜間中学校があると知らされる。

さやかは夜間中学校に行ってみた。
まだ中学校に行くことが怖い。学校の中には入れない。
フェンスで囲まれた校庭伝いから帰ろうとしてグランドを見ると、体育の授業をしていた。
服装も年齢もバラバラで、とても学校の授業とは思えなかった。

それから一週間毎日、バイト後にさやかは河堀夜間中学校に行き、フェンス越しに授業の様子を見ていた。
ところが、あることがきっかけとなり、さやかは河堀夜間中学校に入学することに・・・。
さやか、二十歳の春だった。

さやかが仲良くなった生徒たちには様々なバックグラウンドがある。
グエン・ティ・スアン:日本人と結婚して日本に来た。英語はさやかと同じ授業だが、識字クラスで学んでいる。
正子ハルモニ:在日。車椅子で学校に来ている老女。
遠見巌:宮古島出身の腰痛持ちの初老の男性。
山西蕗子:中国残留孤児。面倒見がよく、さやかが夜間中学校に入るきっかけを作った恩人。
松峰健二:23歳の五分刈りの青年。料理店に住み込んで修行をしている。

先生方も個性豊かだ。
江口先生:さやかのクラス、二年三組の担任で体育教師。
鈴木先生:みんなから慕われている養護教諭。
田宮先生:社会科教師。
吉村先生:1年4組の担任。国語教師。M教(問題教師の略)

用瀬裕という漫画家が取材に来る。
彼は二十年以上も前、高校一年生の時に苛めに遭い、高校を中退。その後、漫画家としてデビューし、『ハイスクールぶるうす』を描き、一世を風靡した。
人生を『生きなおしたい』と思い、東京から大阪に居を移している。

いい仲間たちと信頼のおける大人たちに囲まれ、さやかの頑な心がほどけていき、やがて叶えたい夢を持つようになる。

髙田郁さんは時代小説を書く方だと思っていましたが、そうでもないのですね。
あとがきによりますと、この本は漫画原作者時代の2001年に連載したものを土台にしているそうです。
ですから2001年から2002年のお話です。

夜間中学校に通う人たちは、AIがまとめてくれましたが、戦後の混乱期に学齢期を迎えたため学校に通えなかった人や不登校などの諸事情により、学校に通えないまま中学校を卒業した人、日本や本国で義務教育を修了していない外国籍の人、経済的な困窮などの理由で昼間に就労や家事手伝いを余儀なくされた人などがいます。
2020年の国勢調査によると、義務教育未修了者は約90万人。
2024年10月では全国で53校の夜間中学校があります。
2024年5月の生徒数は1969人で、外国籍の生徒が1256人(中国やネパールが多い)で日本国籍は713人。39歳以下の若年層が1114人。
今はこの本の夜間中学校と少し様子が変わっていると思いますが、こういう人たちがいるということを心の片隅にでも置いておいてください。

本の中のいい言葉。
「『学び』とは、誰にも奪われないものを自分の中に蓄える、ということなのか。
誰のためでもない、自分のために。自分の人生のために」

なお、夜間中学校が舞台の映画とは山田洋次監督の「学校」です。
もし夜間中学校に興味を持ったなら、この本を読んで、映画を見てみてください。
若い人たちに読んでもらいたい本です。

ふたたび、河津桜と♪2025/03/16



またお散歩で河津桜の前を通りました。
花は枯れていなかったので、また写真に挑戦しました。
ヨーキー弟は嫌だったみたいです。


視線をずらします。
他の写真では横を向いてしまいました。
カメラの光が嫌なのかもしれません。(もしくはしつこいママが・・・)
人通りがあるので、急いで撮りましたが、みなさん、なにやってるの。バカじゃん、と思っているんでしょうね。(親バカです)


5、6枚撮って一枚だけ前を向いたのがありました。
まあ、これでいいでしょう。
付き合ってくれて、ありがとう。
また、よろしく。
「嫌です」という弟の心の声が聞こえてきましたwww。

三月の上旬は内分泌科や眼科の診察があったり、兄わんこの調子が悪かったので、お出かけはあまりできませんでした。
やっとこれから出掛けられそうです。
今週は用事のついでに、ホテルでランチをしてきました。
前に来た時は混んでいたのですが、今回はすいていました。


春らしい籠に入っています。


メインは角煮にしてみました。柔らかくてトロトロでおいしかったです。
デザートはアイスとコーヒーにしましたが、ここのコーヒー、私は苦手なのを忘れていました。炭火っぽいのはダメなんです。

駅ビルで美味しそうなチーズケーキがあり、夫が食べたそうだったので、買って帰りました。


「now on Cheese♪」のチーズケーキサンドラズベリーです。
いっしょに買ったチーズケーキサンドカマンベールは日持ちがしないので、次の日に食べねばなりません。
1個200キロカロリーぐらいなので、大丈夫(なにが?)。
マイルドなコーヒーと一緒に食べました。

しばらくお菓子は買っていなかったのですが、外出すると目にとまり、ついつい買ってしまいます。いけませんねぇw。
冷蔵庫にはホワイトデーのチョコレートが入っています。
春はスイーツの季節かな?

寺地はるな 『雫』2025/03/14



2025年春、老朽化した高峰ビルの取り壊しのため、リフォームジュエリー会社『ジュエリータカミネ』は営業を終了する。
『ジュエリータカミネ』のジュエリーデザイナー、永瀬珠は次の仕事を決められずにいた。
『ジュエリータカミネ』は、高峰能見が父親の死後、宝石店をリフォームに特化したサロンにしたものだった。
永瀬がデザインしたものを木下しずくが、高峰ビルにあった『コマ工房』の冶金職人として形にしていた。しずくは、今、星母島という離島に住んでいる。
他に高峰ビルに『かに印刷』が入っていた。『かに印刷』には、上司のパワハラによって会社を辞めた森侑が勤めていた。

永瀬、高峰、しずく、森の四人は中学校の美術の授業で同じ班になり、卒業制作で永遠を表す「雫」がモチーフのレリーフづくりをした。
それ以来、30年間、共に過ごした仲間だった。

2025年から2020年、2015年・・・1995年までと五年ずつ時が遡っていきます。
生きるのが不器用な四人が30年間のままならない人生をどのように生きていったのでしょうか。

私がこの物語で一番印象に残ったのが、美術の田村先生です。
彼と出会えた四人は幸運でしたね。

主人公の永瀬珠は独りでしっかりと立っている人です。

「変化しながらゆるやかに繰り返し、続いていくことを「永遠」と呼ぶのだから、終わることも、変わっていくことも、離れることも、なにひとつ悲しいことではない」

「大切なひととふたりで歩くのが幸せな人も、たくさんの人に囲まれることに喜びを感じる人もいるだろう。でもわたしはひとりで歩くほうがいい。誰かとすれちがったら、笑顔で手を振る。そして、どうかご無事で、と祈る」

「晴れてよかった。人々は人生の折々でそう口にする。でも、わたしは雨の日が好きだ」

こういう永瀬は普通の人たちには理解されないでしょうね。
仲間たちがいてよかったですね。

気をつけなければと思ったのが、心配だからと、「・・・した方がいいよ」と相手に言うことです。
言われる方にしたら、自分を否定されていると思ってしまうことがあるのです。
誰にでも変われることと変われないことがありますものね。
気をつけましょう。
あなたはあなたのままでいい。そう言ってもらえると、安心できますよね。

若い人たちにお薦めの本です。人生を肯定的にみることができますよ。


<今週のおやつ>


「台湾人が好きな日本のお菓子」という記事に出てきたお菓子が駅ビルの期間限定ショップで売っていました。
定番といちごを買ってみました。普通に美味しいです。


オスロコーヒーというのがあったので、入ってみました。
プリンとサンドイッチ、カフェオレを頼みました。
プリンは大きく見えますが、普通の大きさで固めでした。
カフェオレはコーヒーの味が強めです。
次回はセムラを食べたいです。

堂場瞬一 『英雄の悲鳴 ラストライン7』2025/03/13

罪の年輪 ラストライン6』に続く、「ラストライン」シリーズの七作目。


五十六歳になった岩倉剛は立川中央署から警視庁捜査一課に復帰し、南大田署時代に指導した愛弟子の伊東彩香とまたコンビを組むことになる。
恋人の赤沢実里は母親の看病や連続ドラマの出演などで忙しく、なかなか会えない状態が続いている。
娘の千夏は大学4年になり、就活のことが気がかりだ。

捜査一課は若い女性ばかりが犠牲になった連続殺人事件の捜査に追われていたが、岩倉は待機状態で関わっていない。
暇を持て余している時に、町田市の公園で三十歳ぐらいの男性の遺体が発見される。
スマホや財布などの遺留品はなく、凶器らしき刃物とネックレスがあったが、目撃者も出ず、防犯カメラにも人の姿が映っていなかった。
厄介な事件になるのではないかと岩倉は思う。

たまたま岩倉が自販機のコーヒーを買いに行った時に、地域課がざわついており、気になったので、地域課長に聞いてみると、怪我して保護した女性が病院を逃げ出し、一度家に戻ったのに、家を出ていったという。
事件か事故かわからないらしい。
岩倉のアンテナが危険信号を受信していた。

やがて車のキーから被害者の身元がわかるが、周辺捜査を続けていくと、被害者の隠された姿が浮かび上がってくる。
しばらくして岩倉はなんの気もなく関わった女性の失踪事件に駆り出される。

三つの事件は思わぬ展開を見せ、絡み合い、意外な様相を見せていく・・・。


意外だったのは、あのおっさん臭い岩倉が、今回、丸くなっていることです。
五十六歳にもなると、定年を踏まえて、後輩を指導しようという気になるんでしょうかね。
時効の果て』では追跡捜査係の西川を振り回していたのに、今回はそれほどパワーが全開になっていません。
どうしちゃったんでしょう。

このシリーズには堂場さんの他のシリーズに出てくる人たちがよく参加しています。
特にイケメン大友鉄が出てくると、私的には嬉しいです。
なんと彼は五十歳を過ぎていてもハンサムですって。
捜査一課強行犯係に復帰し活躍しています。
一人息子は大学を卒業して働いているんですか。
岩倉よりも大友の方の活躍が読みたいです(ごめん)。

今回は岩倉のおっさん臭さはあまり気になりませんし、結構面白い内容になっています。
このシリーズ、このまま岩倉が定年になるまで続くのか、楽しみになってきました。
次回は五十七歳になった岩倉が活躍するんでしょうかね。

伊坂幸太郎 『楽園の楽園』2025/03/12



庭のクリスマスローズが咲いていました。
他に白いのがあったはずですが、咲いていません。
花が終わり、枯れた葉をむしってしまったのがいけなかったのかしら?


いつも沢山のクリスマスローズが咲く場所には変わらず咲いています。


ここ数年間、世界は大規模停電、強毒性ウィルスの蔓延、頻発する大きな地震、飛行機墜落事故、高速増殖炉からの放射能漏れなどが立て続けに起こり、混乱に陥っていた。
人工知能の『天軸』が暴走して、これらの災厄を引き起こしたと考えられた。

驚異的な免疫力を持つ選ばれし三人、五十九彦(ごじゅくひこ)、三瑚嬢様(さんごじょう)、蝶八隗(ちょうはっかい)に『天軸』を開発した<先生>を見つけるというミッションが与えられる。

手がかりは<先生>が残した『楽園』というタイトルの水彩画。
そこに<先生>がいるのか。

三人の行き着いた果ては…。


伊坂幸太郎デビュー25周年記念書き下ろし作品だそうです。
短編小説で挿絵が豊富、ファンタジーっぽい、我々人類に対する寓話ですね。
この物語のようなことが起こるのかどうか、それはわかりません。
もう遅いということはないですよね。

いろいろといい言葉が散りばめられていましたが、ここには書きません。
1500円の価値があるかどうかは読者が決めること。
私は長編小説が読みたかったですけどねww。

泉ゆたか 『横浜コインランドリー』&『横浜コインランドリー 今日も洗濯日和』2025/03/10

泉さんは時代小説を書く作家さんだと思っていたのですが、違いました。
こころが傷ついた人にそっと寄り添うお話を書く作家さんなのですね。


中島茜は新卒で不動産会社に入社したが、ブラック企業で、三年間勤めたが、超繁忙期である三月初旬に、後先考えずに会社を辞めた。
それから半月経つが、一歩も外に出ず、食事はウーバーイーツ、朝から晩までベッドの上でスマホの動画を見て過ごしていた。

しかし、やっとこのままではいけないと思い始め、まずは洗濯をしようと思ったのに、洗濯機が動かない。
仕方なく、スマホで見つけた近くのコインランドリー、≪横浜コインランドリー≫に行ってみる。

驚いたことに、そこはカフェのようなお洒落な空間。
今の自分の格好では入りずらいので、帰ろうとすると…。
「何かお手伝いできることはありますか?」という声が聞こえた。
声をかけてきたのは、デニム地のエプロンをした華奢な女の人。
店長の新井真奈だった。

この出会いがきっかけになり、茜は横浜コインランドリーでアルバイトをすることになる。
コインランドリーを様々な人たちが利用する。
その中には悩みを持った人もいる。
そんな人に真奈は「洗濯相談0円」を利用し、絡まった心をほぐしていく。

やがてトラウマになっていた会社のことを乗り越え、茜はクリーニング師の国家資格を取ろうと決意する。

変わった常連さんや困ったお客さんなどが出てきますが、どの人も親しくなるに従いちゃんとした人だということがわかり、安心しました。
私はコインランドリーを利用したことがありません。
外から店を覗いて見ていますが、従業員さんがいるコインランドリーは見かけたことがないです。
従業員さんがいると、私のような使ったことのないお客は安心して利用できますが、今風ではないですよねww。

そんなに多くはありませんが、洗濯する時に役立ちそうなこと、例えば、洗濯の基礎、泥汚れの洗濯の仕方、アイロンのかけ方などが出てきますので、洗濯の方法等知りたい方は読んでみると一石二鳥ですww。
こころがほっこりして、軽くなるお話です。

<面白かった漫画本>
この頃、気に入った漫画本を紹介します。
児島青の『本なら売るほど 1』です。


脱サラして古本屋を始めた青年が店にやって来る様々なお客さんと織りなす物語です。
寺田寅彦の話や粋な着物おばあさん、二人で作る秘密基地、青木まりこ、腰痛など、面白いです。
本好き、必見の漫画です。

若竹七海 『まぐさ桶の犬』2025/03/09



昨日とは別の道でお散歩をすると、神社に河津桜が咲いていました。


意外とどこでも見られるようになったのですね。


吉祥寺のミステリ専門書店<MURDER BEAR BOOKSHOP>のアルバイト兼<白熊探偵社>の調査員である葉村晶は、ご近所さんの奥山香苗の娘に無理やり頼み込まれて、香苗の父方の叔母の三十三回忌の法要に、香苗のボディガードとして参加することになる。
香苗は身近な人間にはワガママを通すのに、親戚たちにはいい顔をしたがるという。
どうも親戚連中はそれにつけこんでいるようだ。

法要がおわったので、しつこい親戚連中から逃れ帰ろうとする葉村たちは白いワゴン車の事故に巻き込まれる。
香苗はかすり傷ひとつ負わなかったが、葉村は額を強打し、たんこぶができた上に、乗っていった<MURDER BEAR BOOKSHOP>のワゴン車は潰れてしまう。
実質七時間働いたのに、「ボディガード料」はたった二万円という安さ。
店長の冨山泰之から「葉村はヤキが回ったんじゃないか」と言われる始末。
法要の間に香苗の屋敷に窃盗団が浸入し、家財道具を盗もうとしていたというオチがあったが、何かおかしいと思った葉村は前もってセキュリティー会社に注意喚起をしていたので、未然に防げたのは幸いだった。

この後、香苗から呼び出され、一応謝られたが、本題は国分寺の叔父様が葉村に頼みたいことがあるということだった。
国分寺の叔父様こと乾嚴は魁星学園の創始者・乾聡哲の孫で、学園で教鞭を取る傍ら理事もしていたという。
現在は世田谷の介護付きシルバーマンションに入っている。
彼から葉村は秘密厳守で稲本和子という元養護教諭の女性を探して欲しいと頼まれる。

コロナ禍で三年ぶりに調査の仕事をする葉村晶だったが、一筋縄ではいかない関係者たちの間で翻弄される。
そしてまた満身創痍という、誠についていない葉村晶だった。

葉村晶も五十代に突入し、老眼が進み、「保湿剤や日焼け止めの量が増え、目薬、皮膚炎、湿布薬の消費が激しく」なり、「痛む膝をかばうためのサポーターや、歩きやすい靴に動きやすい服、ヘアマニキュアから白髪染め。いずれ補聴器や入れ歯、場合によっては人工関節なんてものまで必要になるかもしれないが、わたしはその費用を捻出できるんだろうか」なんて書いてあるので、笑ってしまいました。
ホント、笑い事ではないですねぇ。明日は我が身ですわwww。
それなのに、葉村晶は頑張ります。
なんとかならないのでしょうか、若竹さん。
毎回、痛い目にあうなんて、かわいそすぎますよ。

とにかく出てくる人が多過ぎて、途中でわけがわからなくなるので、気をつけて下さい。
私のような人は、最初から家系図を書いてみるといいでしょう。
私は読み終わってから書いてみましたが、後からじゃ意味がなかったです、笑。

「まぐさ桶の犬」って初めて聞きました。
本の中では、「自分には役に立たないが、誰かがそれでいい思いをするのは絶対にイヤだ、とその「役に立たないもの」を手放さずに意地悪や嫌がらせをし続けるひとを「秣桶の犬」と呼ぶ」そうです。
イソップ物語が出典のようです。

何故か葉村晶の周りには、人の話を聞かないで、仕事を押し付けるワガママな人ばかりです。
何ででしょうね。
毎回楽しませてくれる葉村晶シリーズです。

シリーズの順番
④『暗い越流
⑨『まぐさ桶の犬』(本書)

河津桜とわんこ2025/03/08

暖かくなったと思ったら、また寒くなり、今晩から雪が降りそうだとか。
体がとまどっているみたいです。


先週、お腹の調子が悪かった兄は元気になったので、お散歩を解禁すると、次の日に食べた朝食を吐き、う◯ちが緩くなりました。
それでも元気なので、様子見です。
お腹の調子がよくならないようなら、獣医さんに行こうと思います。
犬も12歳になると、元気そうでも体は正直です。

人間も同じです。
おかしなことに、先週、暖かくなったのに、体が寒いのです。
寒いのに暑く感じることはよくあるのですが、暖かいのに寒く感じるなんて、自律神経の乱れなのかしら?

ヨーキー弟といつもと違うところにお散歩に行きました。


風が強くて、耳のたてがみが風に吹かれています。


弟の方がお腹が緩くなることが多かったのに、この頃、餌がいいのか、快調です。


いつもは行かない大きな公園の方へ行ってみました。
河津桜(だと思う)が満開でした。
弟にお座りをさせ、写真を撮りました。


人がいたので、急いで撮ったので、こんな写真になってしまいました。
リードが邪魔。せっかくいいポーズを取っているのにねぇ。
もっとしゃがんで、下の方から撮った方がよかったですね。

新川帆立 『目には目を』2025/03/06



土木作業員、少年Aの死体が寮の部屋で発見された。
容疑者はすぐに見つかった。自首したのだ。
容疑者の娘は少年Aに殺されたが、少年Aは十五歳だったので、少年院に一年三カ月入っただけで退院していた。
人を殺して、たった一年三カ月入っただけで、許されるのはおかしい。
死には死をもって償ってもらう。
そう思った容疑者はインターネット上で少年Aの情報を集め、Aと同じ時期をN少年院ですごした少年Bからの情報提供でAの所在を特定し、殺害したと語ったという。
裁判で犯行動機を聞かれ、容疑者はハンムラビ法典の「目には目を」を引用した。
そのため被害者家族が加害者に復讐した稀有な例として、この事件は「目には目を」事件と呼ばれるようになる。

フリーのルポライター、仮谷苑子は他の多くの少年は罰を受けていないのに、なぜ、少年Aだけが殺されたのか。少年Aは運が悪かったのか。あるいは殺されるだけの事情があったのかという疑問を持ち、「目には目を」事件の関係者の証言をもとに、少年法のベールに包まれた事件の真相を解明しようと思った。

少年Aと同じ時期にN少年院ミドリ班にいた少年は六人。
①大坂雅也(仮名):先輩に命じられ、名前も知らない少年に暴行を働き、翌朝、少年は死亡。弟が子役で有名だった。目立ちたがり屋。少年院が楽しかったという。
②堂城武史(仮名):中3の時に十歳ぐらいの女の子をトイレに連れ込みいたずらしようとするが、叫ばれたので殺す。IQ76。「根は優しい」と幼なじみはいう。
③小堺隼人(仮名):受験に失敗し、自殺しようとして誤って母親をナイフで刺してしまう。自分は利口で天才ゆえ、生きづらいと思っている。
④進藤正義(仮名):14歳で特殊詐欺の受け子で逮捕されるが不処分。中学の女子更衣室に隠しカメラを仕掛け盗撮し、保護観察処分。18歳で暴力団員に金を払えと恫喝され、大きな屋敷に盗みに入り、家主に見つかり逃亡し、窃盗未遂で少年院に入る。大声で話し、社交的だが、虚言癖があるという。
⑤雨宮太一(仮名):妹の友だちの女の子と男の子を殺し、切り刻んで、つなぎ合わせて民家の前においた元猟奇殺人犯。タワマンに住み、YouTuberをしている。
⑥岩田優輔(仮名):吃音を気にして高校からしゃべらなくなる。醜形恐怖症と男性器が小さいことに悩んでいる。高校1年の夏休みから母親や姉に暴力を振るうようになり、高校2年の時に母に暴力を振るうのを止めようとした姉を殴り、鑑別所から少年院に送られる。姉は未だに植物状態。今は父親と暮らし、話せるようになっている。

この6人のうち、誰が被害者で、誰が密告者なのか。
仮谷苑子の隠された意図はなんなのか。
意外な事実が明らかになる。


各少年たちの話を読んでいくと、この子たちとの意思の疎通は難しいだろうなと思いました。
厳しい見方をすると、自分がしたことを客観的には見られないようですし、被害者と被害者家族に対して悪いことをしたとか罪を償おうとか、それほど思っていないように感じました。
少年院の職員の方々は大変ですね。

読んでいて、どうしても私にはわからなかったのが、少年Aの母親です。
少年Aは少女を殺しているんですよ。そうでなければ、少女の母親は少年Aを殺さなかったはずです。
それなのに、そのことは棚に上げ、「じぶんの息子が学校で虐められていた。ストレスがたまっていたんだ。少年院で自分の罪と向き合っていたはずだ。殺さなくてもいいじゃないか。これからというときだったのに」とか言っています。
そして、加害者には手が出せないので、「自分の子を裏切った情報提供者に報いを受けさせなくてはならない」と思うのです。
なんかこの論理の飛躍が私には理解できませんでした。

今までの新川さんとは全く違う作品です。
興味がある方は読んでみてください。


<今週のおやつ>


ガトーフェスタハラダのグーテ・デ・レーヌとグーテ・デ・ロワ プレミアム ノワゼットです。
グーテ・デ・レーヌは薄くスライスしたガトーラスクでレーズンクリームを挟んだもの。
ノワゼットの方はクーベルチュールミルクチョコレートにノワゼットのペーストを練り込んだものをガトーラスクにコーティングしたもので、すごく甘いです。