読んだ文庫本&漫画2024/02/17



<読んだ文庫本>
中山裕次郎 『外科医、島へ 泣くな研修医6』
三十一歳になった雨野隆治は医者になってもうすぐ七年になる、駆け出し外科医。
四月から半年間の予定で神仙島へ派遣されることになる。
神仙診療所には医師は所長の瀬戸山と雨野の二人、看護師は半田志真と繁田秀子の二人がいる。
島では今までとは違い、あらゆる病気を診なければならず、技量のなさを思い知らされる毎日だが、雨野は瀬戸山や志真たちの助けを借り、なんとかやっていく。
三十年以上もこの診療所で働いている瀬戸山。
彼が人生をかけて築いてきた医療体制と守ってきた島民の命、そして、諦めてきたいくつもの命がある。
あらゆる診療科の、あらゆる疾患を診て、全ての責任を負う瀬戸山の姿は、雨野には本当の医者の姿に思えた。
雨野は瀬戸山みたいな医者になりたいと思う。

人として、医者として、一回り大きくなった雨野くんです。
Dr.コトーを思い出しますが、雨野くんは島に残らず帰ってしまったのが残念でした。

喜多みどり 『弁当屋さんのおもてなし 巡り逢う北の大地と爽やか子メロン』
第一話 氷雪の下の幸を揚げる
札幌の弁当屋くま弁を夫婦で経営するユウと千春は、一泊二日でサロマ湖畔へ旅行に行く。宿泊した民宿はくま弁のお客だった華田将平が働くところだ。
宿で食事をしていると、将平が一人の女の子のことを気にしている様子がうかがえた。彼女は食事にあまり手をつけていないのだ。
次の日、将平と待ち合わせをしていたのに、将平が現れない。
将平はユウたちに食べさせる昼食の下見に出かけたらしいが…。

第二話 夕張小旅行とテッカメロン弁当
ドラマやバラエティで人気の有名人になった黒川茜がくま弁に現れる。一人の女性に後を付けられているという。その女性がくま弁の中にまで入ってきて、茜を探しているようだ。千春が声をかけると、店を出て行った。彼女は夕張市で開催されている映画祭のフライヤーを落としていく。
彼女のことに見覚えがあるような気がするという茜は、実際に夕張に行ってみると言い出す。
千春は明日はくま弁が休みの日なので、業務用バンで夕張まで行くことを提案する。

第三話 イカタコパーティーセット
お土産のイカとタコがあるので、ユウたちは休日に気心知れた友人たちを招いて食事会を開く。どんな料理がいいか訊くが、なかなか意見が合わない。ユウはあきれて厨房へ行ってしまう。
いつもユウに料理を作らせていると気づいたみんなはそれぞれタコとイカを使った料理を作ることにする。

第四話 冬の怪談と北海道巡り弁当
くま弁の近くのパティスリー・ミツで幽霊が出たという噂が…。
幽霊と間違えられたのはパティスリー・ミツのファンの梨之木という女性だった。
彼女は旅行に行けないので、道内で小旅行をした気分になれるお弁当を作って欲しいとユウに頼む。
ユウが作った弁当は…。

このシリーズは時が行ったり来たりします。
今回はユウと千春が籍をいれて数ヶ月の新婚の時のお話です。
お弁当で美味しいと思ったことはあまりありませんが、くま弁のなら食べてみたいです。
財政破綻した頃の夕張に行ったことがありますが、ゴーストタウンみたいでした。今はどうなんでしょう。メロンの食べ放題があるようですね。食べたいわぁ。

<読んだまんが>
大島弓子 『サバの秋の夜長』&『サバの夏が来た』
なんと猫が人間の姿で同じ大きさをしています。猫だけではなく、ノミやカラスなどの動物がみな人間の姿です。面白いですねぇ。
でも、このスタイルは続けず、猫は猫になりましたね。

漫画マキヒロチ 原案まろ(おひとりさま。)『おひとりさまホテル 1~3』
わたし、ホテルが大好きです。いろいろなホテルに泊まりに行きたいのですが、この頃ものすごく高くなっています。インバウンドのせいですね。
海外の旅行者価格と国内の旅行者価格の二つにしてくださいませんかね。
続々と新しいホテルができているようで、この漫画に出てくるホテルにいつか泊まりに行きたいと思っています。

柚月裕子 『風に立つ』2024/02/09



小原悟は困惑していた。
父の孝雄が補導委託を申し出たというのだ。

補導委託とは、「家庭裁判所が少年の最終的な処分を決める前に、民間のボランティアの方に非行のあった少年をしばらくの間預け、少年に仕事や通学をさせながら、生活指導を行い、更生への手助けを行う制度」。

孝雄は岩手県盛岡市にある南部鉄器工房『清嘉』の親方で、職人は悟と健司、研磨専門のアルバイトひとりだ。
悟は補導委託に反対だったが、健司と昨年結婚して家を出ている妹の由美は賛成していて、悟の話を聞こうともしない。

一ヶ月後、仙台家庭裁判所の調査官である飯島久子が預かる少年の庄司春斗と父親の達也、母親の緑を連れて来た。
春斗は16歳。彼の非行が始まったのは高校に入学してからで、万引きや自転車の窃盗などの問題行動が収まらなかったので、高校は退学処分となった。
父親は仙台市で弁護士事務所を構えており、母親は専業主婦だという。
悟は春斗にはできる限りかかわらないと決めていたが、彼の両親を見て、自分の先入観に気づく。
非行少年というだけで、親のネグレクトや貧困などの家庭環境が悪いのではないのだ。

それにしても何故孝雄は補導委託を申し出たのか。
自分の子供には手をかけなかったのに、どうして他人の子供の面倒を見る気になったのか。
孝雄は家族に対してはいつもぶっきらぼうで、態度も冷たかった。
それなのに、春斗には口調が穏やかで、態度も優しい。
いったいどうしたというのだ。

春斗と工房で働き、同じ屋根の下で暮らすうちに、悟の気持ちはだんだんと変化していくが…。

今回出てくる父親は二人とも不器用で、思いが子供に届いていません。
子供には親の気持ちが、近すぎて見えていなかったり、子供の気持ちを考えずに強制しようとするので、子供の負担になっていたり…。
最後は上手くいってよかったのですが、実際にはこんなに上手く行くことなんて、滅多にないだろうと思います。

親との関係に悩んでいる人は悟に共感できるかもしれません。
心暖まるお話を読みたい人にはピッタリの本でしょう。
でも、ゴメンナサイ。
柚月さんのファンの方には物足りないでしょうね。
わたし、何も意外性がなく、みんないい人というお話が読みたいとは思いません。
残念ながら、この本はわたしが望む柚月さんの本ではなかったです。


<今日のわんこ>


この頃、兄はよく寝ます。
今年で12歳。人間で64歳ですから、立派なシニア犬です。
食い意地だけは、ママと同じで、あります、笑。

砥上裕將 『一線の湖』2024/02/02

線は、僕を描く』の続編。


両親が亡くなり、ひとりぼっちになった青山霜介は、叔父の助言により大学へ進学し、水墨画の巨匠、篠田湖山に出会い、水墨画の世界に魅了され、彼の内弟子となる。

湖山の孫、千瑛と湖山賞を競ったが、湖山賞を取ったのは千瑛だった。
それから二年が経ち大学三年となった霜介は未だ自分の進路を決められずにいた。
一方、千瑛は「水墨画界の若き至宝」と呼ばれ、もてはやされていた。
そんな時に、霜介は揮毫会で失敗してしまう。
湖山は霜介に少しの間、筆を置くようにいう。

そんなある日、兄弟子の西濱湖峰に呼び出される。
小学一年生に水墨画を教えるのを手伝って欲しいというのだ。
霜介が訪れた小学校は、亡き母が勤務していた学校で、担任の椎葉朋美は母と親しくしていたらしく、母の死後、彼女のクラスを引継いだという。
体調不良の西濱の代わりに霜介は児童たちに水墨画を教える羽目になる。
しかし、その授業が好評で、学校から引き続き霜介に水墨画を教えて貰いたいと請われる。
霜介は子どもたちに最善のものを伝えられればと思って引き受ける。
子どもたちと接するうちに霜介は思う。

「本当によい授業というのはこういうものかもしれない。彼らが自身で学ぶことに勝るものはない。教えたいという欲求を堪えることのほうが、教えることよりも難しい」
「彼らはありのままを生きているから、生きていることが描けるのだ。そのすべては線の中にあった。彼らが指先から生み出すものが、彼らの存在と違わない。
彼らは自然だった。心を遊ばせ、無限に変化し続けるゆらめきがそこにあった」

そして、霜介は母親の仕事を理解していく。

「母は自分が生きた一瞬や自分自身のために、力を尽くしていたのではない。人を育て、自分自身さえ見ることはないかもしれない遙かな未来に向けて、線を描いていたのだ」
「人は命よりも永く線を描くことができる」

小学校で一年生が描いた指墨画を展示し、その場で揮毫会を行うことになる。
その時の動画を誰かがアップし、話題となり、霜介は大学の理事長から大学学園祭で大揮毫会と展覧会を行うように頼まれる。
しかし、学園祭当日、子どもをかばった霜介は右手を骨折してしまう。
前から不調だった右手には感覚がなくなる。
湖山は霜介に自分の山荘に行くように勧める。

山荘に行った霜介は意外な人と再会する。

始めは二年前と同じように自分に自信がなく、同じ所をグルグル回っているだけのような霜助に、わたしはちょっと失望しました。
しかし、湖山先生は流石です。霜介の才能を惜しいと思っているのでしょう。
霜介を見捨てず、こう言います。

「描こうなんて思うな」「完璧なものに用はない」
「あと一歩だけだ。そこに線がある」

霜介は子どもたちから教えられ、そして、山荘に行き、自然と接するうちに、悟っていきます。

「生きるとは、やってみる、ことなんだ」

霜介はやっと一歩前に進むことが出来、自分の進むべき道を決められたのです。
時間がかかりましたが、回り道は彼にとって必要だったのでしょうね。
その道がどんなものであろうと、彼の家族である湖山会の人たちは受け入れてくれます。
わたしも彼の進む道が予想通りで、納得がいきました。

とにかく最後の湖山の引退式の揮毫会の場面が圧巻です。
絵が目の前で描かれているように、見えるのです。

どんな感じで水墨画を描くか、講談社が動画を載せていました。
ついでに前作の映画の予告編も載せておきます。

「線は、僕を描く」の予告編

映画は観ていませんが、予告編を見ると、登場人物たちがわたしがイメージしたのと違います。流星君は悪くないですが、これは観ないな。
本はとてもいいので、是非お読み下さい。

秋川滝美 『ひとり旅日和 幸来る!』2024/01/30

太田愛さんの『未明の砦』が大藪春彦賞を受賞したそうです。
おめでとうございます。
とてもいい作品だと思いますので、興味のある方は是非読んでみてください。


『ひとり旅日和』も五作目になり、梶倉日和(ひより)ちゃんは28歳になりました。
今回は日和ちゃんが行った観光地を載せておきます。
というのも、今まで載せていなかったので、後からどこに行ったのか調べられなかったからです。
本を見直せばいいのでしょうが、図書館で借りているので、思い立ったらすぐにみられないのです。 

第一話:能登
本を開いてびっくりしました。
日和ちゃんが最初に行ったのが、能登だったのです。
読んで驚きました。
この本は昨年の11月発売ですから、秋川さんは何気なく書いたのでしょうが。

「新しく造られるものがある一方で、景勝地が天災に見舞われて美しさを失うこともあるだろう」

この言葉そのもののことが起ってしまいましたね…。

一日目。
のと里山空港→のとじま水族館→海づりセンター→輪島

『のとじま水族館』はジンベイザメを飼育している水族館で、日和は日本全国のジンベイザメを飼育している水族館を制覇。
ちなみにジンベイザメがいるのは大阪の『海遊館』と沖縄の『美ら海水族館』、鹿児島の『いおワールドかごしま水族館』だそうです。
水族館前の食堂街でランチの刺身定食を平らげ、『海づりセンター』に行くと、断れなくて拉致され、釣りをする羽目になるが、1回でギブアップ。自分には向いていないと、餌を子どもにあげてしまうのには笑ってしまいました。

輪島の被害状況はニュースなどで伝えられているので、ここには載せません。
のとじま水族館の被害状況についてはここと生き物についてはここをご覧下さい。水族館は当面の間臨時休業で、見舞金はこちらで受け付けています。

二日目。
朝市(ノドグロのひものとえがらまんじゅうを購入)→重蔵神社→輪島キリコ会館→輪島塗会館→白米千枚田→イカの駅つくモール

被害状況は、輪島キリコ会館についてはここを、重蔵神社についてはここ、イカの駅つくモールについてはここ、白米千枚田についてはここをご覧下さい。
輪島塗会館は当面の間臨時休館だそうです。輪島塗業界復興のための募金を受け付けています。こちらをご覧下さい。

第二話:妙高
日和、仕事でありえない失敗をする。申し訳なくて休日返上したいが、みんなに気分を切り替えるために行ってこいと言われ、東北新幹線に乗る。

一日目。
春日山駅→上越埋蔵文化財センター(春日山城跡の「御城印」をゲット)→(春日山城跡)→春日山神社→高田駅→高田城三重櫓→雁木通り

知らなかったのですが、刺身盛り合わせの食べ方があるそうです。
左前から右、淡泊な白身から食べるということです。

第三話:村上・新潟
第二話からの続きです。
二日目。
強風のため笹川流れは中止。そのためまっすぐ新潟駅に行く。
高田駅→新潟駅ぽんしゅ館→村上駅→町屋通り→おしゃぎり会館

三日目。
村上駅→笹川流れ遊覧船→新潟駅ぽんしゅ館

ぽんしゅ館では新潟の酒の利き酒ができるようです。酒好きなら外せませんね。
でも、お酒の飲めないわたしには豚に真珠ですわwww。
酒飲みの梶倉家なので、お菓子のお土産が少なくて、残念です。

第四話:山口
日和の思い人、蓮斗が九州に転勤になるという。
たまに連絡を取るのだが、蓮斗は日和に何も言わない。
わたしは蓮斗にとって、それぐらいの人なのね。
このまま連絡が途絶えるのかと落ち込む日和は傷心旅行で山口に行くことにする。

一日目。
秋吉台(秋芳洞)→別府弁天池→松蔭神社→萩
二日目:
萩八景遊覧船→武家屋敷→道の駅 萩往還(瓦そば)→下関→『はい!からっと横丁』で遊覧車に乗る

『はい!からっと横丁』は名前からは想像できませんが、遊園地だったそうで、昨年の10月で営業終了してしまったそうです。

三日目。
唐戸市場で寿司を食べる→秋吉台(秋芳洞)再チャレンジ

秋吉台の秋芳洞には大学生の時に行きました。
その時はワンゲル部で隠岐の島に行った帰りに、友人と二人でリュックを担ぎ、鳥取砂丘や松江、出雲、萩、津和野、秋吉台、京都などを回って帰って来ました。
若くて体力があったのね。
日和ちゃんは秋芳洞が暗くて怖くなり、途中で引き返してしまいましたが、そんなに暗かったかしら?
わたしたちは雨水が溜まっていた所を知り合いになった大学生たちといっしょに通ろうとしましたが、頭まで水に浸かりそうだったので、途中で引き返したのは覚えています。
今はもっと観光地化して、歩きやすくなっていると思うのですが。
まあ、得手不得手は人それぞれですからね。
でも日和ちゃんにはいいことがあって、羨ましいです。

このシリーズ、これで終わりでもいいぐらいです。
どこに行ったかは書きましたが、書かれていないことがいっぱいありますから、日和ちゃんの行く末を知りたかったら、是非読んでみてください。

最後に、被災地が一日も早く復旧・復興して、再び多くの観光客が能登を訪れることを心より願っています。

人生、いろいろありますという本(文庫本)2024/01/18



もも吉は京都祇園の元芸妓で一見さんお断りの甘味処「もも吉庵」を営んでいる。
メニューは四季おりおりの麩もちぜんざいだけ。
「もも吉庵」に今日も悩みを抱えた人たちが相談に来る。

「第一話 幸せの四つ葉探して京の春」
昼は個人タクシードライバー、夜は祇園甲部の芸妓という美都子が幼馴染みの建仁寺の塔頭・満福院副住職の隠善と甘いもんを食べにいった帰りに、駐車しておいた美都子のタクシーに無理矢理乗り込んできた女性とその旦那、そして幼いこども。
女性は切羽詰まった感じで、何か緊急事態かと思った美都子は彼らを乗せると、彼女は「前のタクシーを追ってください」という。どういうこと?

「第二話 空豆に商う心教えられ」
京大出身の皆川遙風は第一志望のメガバンクから内定をもらっていたが、銀行が経営破綻したため採用の取り消しになる。就活戦線は既に終盤を迎えており、ゼミの教授の勧めに応じて京都に本社のある京洛信用金庫に就職した。ゼミの同期は日本を代表する大手の銀行や保険会社に勤めているのに、自分はここで燻ったままで一生を終えるのかと思うと苛立ちを覚えてしまう。
そんな時にやっと融資の仕事ができるようになるが、遙風は最初の融資に失敗してしまう。支店長は案内係の朝倉に与信審査の方法を遙風に教えてやってくれと頼む。すると朝倉は遙風を京麩の半兵衛麩へと連れて行く。

「第三話 祇園会の会議は踊るおもてなし」
「風神堂」の斉藤朱音と若王子美紗は「祇園祭黒子会」の会議の幹事を任される。
「祇園祭黒子会」とは、祇園祭の裏側で、黒子のように見えないところで働く有志の集まりだ。第一回会議が開かれ、会議は紛糾し、議長を務めた明智夢遊は困ってしまう。というのも力になってくれると言っていた庭師の山科仁斎がことの発端になったのだ。朱音は夢遊のために、場を和ませようと策を巡らせる。

「第四話 おむすびに込めた愛あり萩ゆる」
渡辺真凜は困っていた。小学一年の娘、彩矢が遠足におむすびを持って行きたいと言い張るのだ。真凜にとっておむすびはトラウマで、作ることも食べることもできない。
そんな頃、父が昔いっしょに暮らしたことのある陶子に指輪を渡して欲しいと言って亡くなる。陶子こそトラウマを引き起こした張本人。ためらいながらも真凜は父のスマホに入っていたもも吉の電話番号に電話をし、陶子の居場所を訊くが…。

「第五話 京セリは雪解けを待ち耐えて生き」
元芸妓、もも雛こと陽向とゲーム会社、サンガエンペラーの社長をしている夫の内山爽馬は苦境に立たされていた。
常務の谷川が会社の金を私的流用し、無謀な投機をしたため、巨額な損失を被り、二度の不渡りを出していた。その上、内山が命令したという告発文のようなものを谷川がネット上にアップしたのだ。
自暴自棄になった内山にもも吉は自分の辛い過去を話す。

人の悩みは様々。そんな人たちにもも吉はそっと寄り添い、的確なアドバイスを施します。
第一話では自分の心次第で物事の見方が変わることを教えてくれます。
第二話には商いをする時に役立つ教えが書かれています。
第三話では朱音がまたまた活躍してくれます。わたしとしては夢遊さんの気持ちに応えて欲しいな。
第四話では陶子の隠された思いが明らかになります。
第五話は涙なくして読めません(たぶん)。
もも吉が世の中のままならぬことを、『出会いもん』として考え、生きてきたのです。そんな彼女だからこそ、沢山の人たちにいいアドバイスができるのでしょう。
最後に食いしん坊の隠源住職の言葉を書いておきます。

「まず自分が幸せにならんと、他人を幸せにでけへんさかいなぁ」

巻末に京都の美味しいお店が載っていますので、ご参考に。


日本橋二十一屋通称「牡丹堂」で働く小萩は、小萩庵でお客の依頼に基づいたお菓子を考え、作っている。

「鹿の子の思い」
ある日、小萩庵に紺屋(染物屋)の十歳の娘、茜がやって来る。
彼女の店で働いている職人の岩蔵に、自分の父親になってもらいたいという願いを込めたお菓子を作って欲しいという。
小萩は彼女の母が得意だという鹿の子絞りにかけた鹿の子と、一見無骨で内側に軽やかで繊細なものをもつ岩蔵を表す練り羊羹の二つを作り、茜の書いた文を添え、岩蔵に持っていくが…。

「黒茶、花茶に合うお菓子は?」
二十一屋は西国の大名、山野辺藩の御用を賜っている。このほど新しい留守居役が着任することになり、顔合わせの場を持つこととなる。
しかし、その日は札差の箔笛の別邸で茶会がある。その茶会では清国のお茶を三種類出すという。そのためお茶に合うお菓子を三種類考え、作らなければならない。
その上、葬式饅頭百個も頼まれる。
顔合わせの当日、二十一屋は総勢七人で山野辺番の髪屋敷に行くが、途中で三人が抜け出す。
しかし、それが見つかり、新しい留守居役から咎められる。絶体絶命の危機。

「とびきりかたい、かりんとう」
小萩庵に国学者・学而の妻、お香とその娘のお花がやって来る。学而が煙草を吸いすぎるので、控えてもらうためのお菓子をお願いしたいという。
話し合いの結果、お菓子の他に謎をかけた和歌を添えることになる。
小萩がお菓子を届に行くと、文治郎という男がいて、禁煙に失敗した学而をからかう。そのため学而はへそを曲げてしまう。せっかくの妻と娘の心遣いがダメになってしまうのか?

「吉原芸者の紅羊羹」
小萩庵に吉原芸者の千代菊がやって来る。このたび二挺鼓の打ち手としてのお許しをいただいたので、自前芸者になるお披露目のお菓子を頼みたいのだという。
別の日、見世で饅頭を買い、ここで食べたいという若い娘が現れる。母が病気で長くないという手紙を出しても返事がない姉をたずねて、はるばる越後から来たという。姉は竜泉の百川で働いていると言うので、お萩は簡単な地図を描いて渡す。
翌日、千代菊のところにお菓子の見本を持って行くと、昨日の娘が現れる。なんと千代菊が彼女の姉だった。娘は米といい、母に顔を見せてやってくれと言うが、千代菊はお披露目があるし、お座敷がかかっているので帰れないと断るが、米は納得しない。その翌日、千代菊が残りの半金をもって来る。
はたしてお披露目はされるのか…。

出てくる和菓子がとても美味しそうで、食べたいです。
初めは頼りなかった小萩がだんだんと一人前になり、人の心がわかるようになってきて、いいお菓子を提案できるようになっています。

茜の言う、「あたしが考える幸せっていうのはさ、にこにこ笑って今日もいい日だったねってご飯を食べることだよ」には驚きました。若いのにわかってらっしゃる。
どの人も他の人の幸せを思った行動をとるのですが、それがうまくいかないのは、人生の機微ってものでしょうか。
最後の「吉原芸者の紅羊羹」には泣かされました。

そうそう茶会に出されるお茶は、「緑茶 碧螺春」と「茉莉花茶 福州白龍珠」、「黒茶 正山頂普洱茶王」です。
「緑茶 碧螺春」は中国十大銘茶の一つで、江蘇省蘇州市の洞庭山で生産される非発酵茶。香りは非常に濃厚で、ほのかに花果の香りがして、淹れた湯の色は青く住んでいて、味は濃厚で後味もいいそうです。
「茉莉花茶 福州白龍珠」はジャスミン茶のことです。
「黒茶 正山頂普洱茶王」はプーラール茶かな?癖があって、好き好きですよね。

これからも小萩庵に次はどんな訳アリお客が来て、どんなお菓子を作るのか、楽しみです。

二冊ともシリーズ物ですが、シリーズが進むにつれて面白くなっていっています。

仕事で頑張る若い女性のお話(文庫本)2024/01/13

原発性アルドステロン症の診察で内分泌科に行ってきました。
年末、食べ過ぎたため、1~2㎏太り、中性脂肪が増えてしまい、主治医がめちゃ怖かったですww。
12月に健康診断をしたのですが、腎臓の機能を表すeGFRの値が若干低く、軽度の腎機能障害があるかもと指摘されていたので、そのことを言うと、今飲んでいる薬でそういうことが起るのだそうです。
薬を減らすとeGFRの値は高くなるけど、それでは血圧が上がってしまうので、仕方ないそうです。
知りませんでしたわ。
原発性アルドステロン症の方で腎臓の機能低下がある方、そういうことだそうですので、ご参考までに。


『ユリイカの宝箱 アートの島と秘密の鍵』 一色さゆり
桜野優彩は家の都合で高校を卒業してから画材店に就職した。しかし、画材店は半年前に店じまいをしてしまう。絶望感に襲われた優彩は、友人から仕事の誘いはあったが、その仕事は自分には無理なんじゃないか、本当に自分のやりたいことなのか考え始め、袋小路にはまってしまう。
そんな頃、梅村トラベルという見知らぬ旅行会社からアートの旅への招待状が届く。担当者の志比桐子に問い合わせてみると、新しくアートの旅行を企画する予定で、モニターとして参加し、サービスの感想や改善点についてのアンケートに答えるだけで、旅費のほとんどを負担してくれるのだとか。優彩は思い切って参加することにする。
行き先は「現代アートの聖地」、瀬戸内海に浮かぶ直島。
旅の終わりに優彩は桐子から一緒に働らかないかと誘われる。それだけでも驚きなのに、優彩と桐子は優彩が小学校の頃に会ったことがあるというのだ。
優彩は梅村トラベルで働くことにするが、桐子のことは思い出せない。
一方、桐子と巡るアートの旅は、人生に迷う人に寄り添い、前へ進もうと優しく誘ってくれるものだった。

一色さんは原田マハさんとは違った角度からアートを描いています。
この本では、アートは難しく考えることはない、自分自身と向き合うことだと教えてくれます。
アートは優彩に「自分の可能性を削っていたのは、他でもない自分自身」であり、「壁だと思い込んでいた境は、じつは、つぎの世界への入り口かもしれないのだ」と気づかせてくれました。

アートに関する印象に残った言葉をいくつか書いておきます。
「アート鑑賞って、基本的に誰にとっても、ユリイカの連続だと思うんです」
(注:「ユリイカ」とはギリシャ語の『わかった』)
「民藝では、美しいものは特別な人だけが生みだすものではなく、無名の職人の手仕事にも宿っているという考えがある」
「アートは決して、日常とかけ離れたものじゃない」
「アートって、自分の人生を見つめ直すきっかけをくれるから。道に迷ったときに光を照らしてくれる存在」

ちなみに彼女たちがお客様と訪ねた美術館は、直島の地中美術館、京都の河合寅次郎記念館、安曇野の碌山美術館、佐倉のDIC川村美術館です。
私は地中美術館とDIC川村美術館に行ったことがあります。どちらもお勧めです。
実はとても碌山美術館に行きたくなり、電車の時刻表を見たり、松本のホテルを探したりして、旅行日程を作ってしまいました。暖かくなったら、一泊二日の予定で行ってきますわ。
是非桐子たちとアートの旅へ行ってください。

『上毛化学工業メロン課』 奥乃桜子
瓜原はるのは上司、坂上の命を受け、『上毛高分子化学工業株式会社 赤城第二工場』に異動になる。工場は見渡す限り荒れた畑の中にある物置みたいな二つのプレハブ小屋で、入り口に『メロン課』と書いてある。まさかここ?なんとそこは問題社員を集めた「追い出し部屋」だったのだ。しかし、社長賞をとった、はるのの憧れの先輩で天才研究員と言われた南がいるはず。だが、南はパワハラ上司に逆らい左遷され、今や酒浸りだという。彼らは三年以内にメロンを収穫しないと首だと言い渡される。はるのはなんとかしてみんなをやる気にさせ、メロンを栽培しようとするが、前途多難。

なんとも情けない南と何があっても挫けない、前向きなはるのとの対比が面白かったです。パワハラ上司、室谷、最悪。会社の権力争いっていうものは…溜息。
できすぎ感はありますが、お仕事の本としては面白いですよ。
メロンは栽培がとっても難しいんですって。知りませんでした。
メロン農家さん、いつもありがとうございます。もう少し価格が下がれば、もっと食べますけどww。

『わたし定時で帰ります。3 仁義なき賃上げ闘争編』
定時帰りをモットーとする東山結衣は残業をしたがる若い部下、本間に悩まされていた。二週間前に仙台支店が炎上し、それを鎮めるために結衣の婚約者である種田晃太郎と甘露寺勝が仙台に行き、彼らの代わりとして仙台支社から来たのが平のディレクターの本間とサブマネージャの塩野。会社から残業削減指令が出ているにもかかわらず、本間と塩野谷は残業は仙台では当たり前だという。それでは収まらないのが結衣。本間から残業代がないと生活が苦しいという話を聞き、仙台支所の実態を探っていくと、思ってもいなかった事実が発覚する。定時帰りを死守するために、給料アップを目指し、結衣は人事評価制度の改革を提案するが…。
一方、結衣と晃太郎の結婚は仙台支社の炎上が収まらず、棚上げとなる。
はたして晃太郎との結婚はどうなるのか。

いろいろと問題山積のネットヒーローズ株式会社です。といってもこの会社だけの話ではないですよね。
生活残業や創業メンバーと中途採用の扱い、世代間の給与格差などの問題がわかりやすく書かれた作品です。
出世する気になった結衣がどこまでやるのか、楽しみです。

簡単に読める、面白い本ですので、お暇な時にどうぞ手に取ってみてください。

近藤史恵 『ホテル・カイザリン』2024/01/12

ずっと前に非常食を買って置いておいたので、賞味期限がどうなっているのか確かめてみました。
そうすると、ビスケットなどは昨年の10月ぐらい、アルファ米は今年の1月、パンの缶詰は2月に期限が切れます。気づいてよかったわ。


ネットで調べると、ビスケットなどは期限が切れても六ヶ月ぐらいは食べられるというので、ビスケットを食べてみました。全然大丈夫です。
アルファ米は別の容器に入れてお湯を入れると、米の芯が残りました。
おかしいと思って作り方をよく見てみると、お湯の場合は15分、水の場合は60分待つそうです。作り方をよく読みましょうねww。
量が多いと思ったら、お茶碗で軽く二杯分で、意外と美味しかったです。
これからしばらくランチは賞味期限切れの非常食になります。

うちの場合はわんこたちがいるので、避難所には行けないと思いますので、どう避難するのか、考えておかなければなりません。



近藤さんの本は好きなので、新刊がでたら読むようにしています。
この本は長編小説だと思って図書館に予約したら、八篇の短編集でした。
実は私はあまり短編小説って好きじゃないんです。
この前、原田マハさんの『黒い絵』は二篇ぐらい読んでパスしてしまいました。
ダークなのは嫌いですもの。
この本もどうかと思って読み出したら、最後まで読んじゃいました。

「降霊会」
学園祭実行委員だったが、家の都合で学園祭当日までの一週間を休んでいたぼくは、幼馴染みの宮迫砂美がペットの降霊会をやるということを聞き驚く。砂美が何を企んでいるのか、心配になったぼくは降霊会に参加することにする。

「金色の風」
幼い頃からやっていたバレエを止めたわたしはフランス語を学びにパリに行く。
パリでベガという犬とランニングしていた女性と知り合い、わたしも走ってみることにする。
走っているうちに、わたしはあることに挑戦することにする。

「迷宮の松露」
わたしはモロッコにもう二週間も滞在している。
思い出すのはわたしを育ててくれた、美しい祖母のこと。
ある日、道に迷った日本人夫婦に話しかけられる。
ホテルまで送ってあげた翌日、お礼にもらったのが松露。
それは祖母との思い出のお菓子だった。

「甘い生活」
わたしは子どもの頃から誰かのものが欲しくなるタチだ。
しかし、誰かのものを欲しがるのはよくないことと知ってから、上手く立ち回る方法を考えた。
小学校の六年生の時、沙苗が持っていたオレンジ色のボールペンがどうしようもなく欲しくなったわたしは…。

「未事故物件」
植野初美は東京に引越し、一人暮らしを始めた。
それからしばらくして、朝の四時から洗濯機の音が聞え始めた。
管理している不動産会社に苦情を言うと、上の階は空き室だという。
音は一体どこからしているのか?

「ホテル・カイザリン」
ホテル・カイザリンはわたしのお気に入りのホテル。
わたしは毎月好きなマクベスの部屋に泊まる。
そんなある日、よく見かけていた女性のひとり客と知り合い、意気投合し、都合がついたら同じ日に泊まろうということになる。

「孤独の谷」
大学で風土病を研究している白柳は、『文化人類学Ⅰ』を履修している波良原美希から相談を受ける。
それは彼女が九歳の時に養子として引き取られた纏谷村に住む家族に関する妙な噂のことだった。「纏谷という村に住むものは、たったひとりで死ぬ」というのだ。
実際に彼女の父が謎の死を遂げていた。
興味を持った白柳はヘルシンキでの学会を終えた後、美希の叔母に会いにラトビアまで行ってみる。

「老いた犬のように」
ぼくは小説家。ぼくのミューズ、妻の葵が出ていってから書けなくなっていた。
彼女はぼくの半身で、優しい人だったはず、なのに…。
ある日、SNSでリプライしてきたハンドルネーム「南風」さんと、いつも行く喫茶店で、偶然話すことがあった。
行きがかり上、彼女の書いた短編を読んでアドバイスをすることになるが…。

しょっぱなからいや~な感じの終わり方だったので、イヤミスでいくのかと思ったら、違いました。
多彩な近藤さんの色々な面を見させてくれます。ダークサイドに寄ってますけどね。
八篇の中で、私は主人公が再生するお話の「金色の風」とモロッコの異国情緒漂う「迷宮の松露」が好きです。
松露って和菓子なんです。食べたいわぁ。
読みながら、そろそろ外国に行きたいなと思いました。

表題の「ホテル・カイザリン」はこんなホテルがあったら泊まりたいというものです。
明治時代の洋館を改装した、各部屋には創業者が好きだったシェイクスピアの戯曲の名前がついているホテルだそうで、主人公が泊まったマクベスの部屋はくすんだ紅色のカーテンで、ベッドカバーもカウチに置かれたクッションも炭灰色で、キングサイズのベッドと暖炉、ベランダがある部屋です。
ロミオとジュリエットの部屋は、シフォンのカーテンが繭のようにベッドを包んでいて、ベッドリネンは白いレースで揃え、ベッドのクッションにひとつだけ赤いクッションが紛れ込んでいるんだそうです。
ハムレットの部屋はどんななのか、興味があるわぁ。

それなりに楽しめた短編集でした。
読むと、それぞれの方が気に入る物語が見つかるでしょう。

凪良ゆう 『星を編む』2024/01/05

汝、星のごとく』の続編。


「春に翔ぶ」
北原草介(後の北原先生)の父は老舗旅館の跡継ぎで、彼が小学校に上がる前に旅館を潰し、自己破産もせずに借金を返済し続けた。
そのため家計が苦しく、高校受験では私立の高校をあきらめ、大学は奨学金を利用した。大学院に入って触媒を研究し、研究者になろうと思っていたが、母が入院したため、大学院を中退し、地元の教員採用試験を受け、教職についた。
草介の中には両親に対して疎ましい思いがある。
ある日、草介は父の見舞いに行った病院で、勤務している高校の生徒、明日見奈々と出会う。

「星を編む」
柊光社ヤングラッシュ編集長・植木渋柿と薫風館Salyu編集長・二階堂絵理は青埜櫂の小説を世に出し、小説の刊行に合わせて漫画を復刊させ、物語を完結させようと奮闘している。

「どれだけ近くに寄り添って物語を共に作ろうと、ぼくたちは星にはなれない。けれどぼくたちは光輝くそれを愛して、編んで、物語を必要としている人たちへとつなげることができる。ぼくたちは、ぼくたちの仕事に誇りを持っている」

「波を渡る」
櫂が亡くなってからも人生は続く。その後の北原暁海と北原先生のお話。
互いに相手に好きな人ができたと思い離婚を申し出たりすることもあったが、二人には二人の夫婦の形がある。たとえそれが世間でいう夫婦と違っていても。

心に残った言葉。
「愛はどこまでもパーソナルなもので、逆に『瑕疵』や『不完全』こそが、最後まで心に刺さって抜けない甘い棘になるのかもしれない」

「おいしいねって一緒にご飯を食べられるのは、それだけで最大の幸せです」

「自分は自分、他人は他人、とそれぞれ別の個であることを理解できさえすれば、自身の暮らしと関係ない他者への攻撃が無用かつ無駄であるとわかるだろう」

それにしても毒親を持ったにしては、人間として素敵に育った方々ばかりです。
できすぎ感がちょっとありますが。
北原先生が暁美に手を差し伸べさせたわけが何となくわかりました。
出版社の人たちの忙しさは聞いてはいましたが、実感できませんが、大変さはわかります。
二階堂さんの女であるがために被っている苦い思いには共感しました。

「若いころから、わたしがどれだけ組織内の人間関係に苦労したと思ってるの。男性上司や同僚からはかわいくないって敬遠されて、後輩からは怖いって敬遠されて、円滑になるのであればと当たりをやわらかくしたら、なにを企んでるんだって敬遠されて」

まるで私のようではないですかぁ、笑。
二階堂さんが夫の優しさにあぐらをかいていたら、しっぺ返しを被ったのにはゾッとしました。
話し合うべきことはちゃんと話し合っておかなければね。

読みながら人生にはいいことばかりではないけど、それでもちょっと視点を変えてみると、それが幸せだと思えることもあるんじゃないかと思いました。
刺さる方には刺さるお話です。
『汝、星のごとく』を読んでいない方、よかったですね。是非、『汝、星のごとく』を読んでから、記憶の新しいうちにこの本を読んでください。
私は時間が経ってから読んだため記憶が定かではなく、これは誰で、どういう関係だったっけとなってしまい、感動も何もあったもんじゃないですわwww。

<今日のわんこ>


遊んでとママのそばに来たので、カメラを向けると、すぐにお座りしてポーズを取ります。


兄も同様です。おやつをもらえると思うのか、舌まで出します。


例の一日で音のしなくなったカモシカちゃんですが、喜んで追っかけ、こんないい笑顔をくれました。

明けましておめでとうございます。2024/01/01



わんこたちからの御挨拶です。
今年、兄、12歳、弟、10歳になるシニア犬です。
病気もせずに元気に過ごしています。


昨年、弟にはおもちゃ、兄には洋服をクリスマスプレゼントにしました。
おもちゃは紹介したので、洋服をお見せしましょう。
セールで白いのを買おうと思ったのですが、ノロノロしていたら売り切れてしまいましたwww。


黄緑色、似合っていますね(親バカ)。
兄だけでは弟が怒るので、弟もおめかしをしてみました。(一昨年買ったのだけど)


弟だけの写真を撮ろうとしたのに、兄がどきません。
タテガミが見事です。


洋服の後ろが可愛いので、後ろ姿を撮ろうとしましたが、顔を向けるので、こうなってしまいましたww。おちゃらけヨーキーに合わせてミッキーです。
犬に洋服を着せることに疑問な方がいるとは思いますが、犬も人間と同様に寒さに弱いのですよ。お散歩に行く時に喜んで着ています。

今年もドッグフレンドリールームがあるホテルを探し、彼らと一緒に色々なところに行きたいと思います。


辰年なので、龍の置物を買ってみました。
右側のかわいい龍は秩父今宮神社のおみくじのです。可愛いので飾っておきます。

さて、恒例の昨年読んだ本の中から面白かったものや考えさせられたものをご紹介いたしましょう。

<日本ミステリ>
『未明の砦』 太田愛
『四日間家族』 川瀬七緖
『看守の流儀』&『看守の信念』 城山真一

<日本文学>
『逆ソクラテス』 伊坂幸太郎
『正欲』 朝井リョウ
『永遠と横道世之介』 吉田修一

<歴史・時代小説> 今後の活躍を期待して
『写楽女』&『おくり絵師』 森明日香

<外国ミステリ>
『卒業生には向かない真実』 ホリー・ジャクソン
シリーズ三部作の最終話で、驚愕の最後です。是非『自由研究には向かない殺人』と『優等生は探偵に向かない』を読んでから読んでください。

女性警部フルダ・シリーズ  
『闇という名の娘』
『喪われた少女』
『閉じ込められた女』 ラグナル・ヨナソン

刑事ヴァランダー・シリーズ  ヘニング・マンケル
グレーンス警部・シリーズ  アンデシュ・ルースルンド&ペリエ
ボッシュ&バラード・シリーズ  マイケル・コナリー

ヘニング・マンケルさんはお亡くなりになっていますので、ヴァランダー・シリーズは途中で終了しています。
グレーンス警部とボッシュはまだ続きますが、最後(最期?)までいけるかしら。
北欧ミステリは今年も続けて読んで行きます。

<TV番組> Amazon Prime Videoで鑑賞
「ホームカミング シーズン1」
「ボッシュ:受け継がれるもの シーズン2」
「占いタクシー」
「天狗の台所」

<この頃好きなVlog> YouTubeで見られます
「英国暮らし」 mikazuki
「北欧暮らし」 Karu&Siiri
バックグランドミュージックと映像が素敵です。イギリスやフィンランドに住みたくなります。

今年1年でブログに紹介した本はおよそ250冊です。
読書はストレス解消や認知症予防になるといいますので、気になる本があったら、是非図書館へ行って手に取ってください。
私と趣味が合わなくて、面白くなかったら、読むのを止めればいいんですから。

昨年、沢山の方々がブログを読みに来て下さったようです。
というのも、この頃、アサブロのランキングがおかしいのです。
年末最後に3位、今朝は5位ということで、驚いています。


「ママ、それは僕たちのおかげです」 

お散歩から帰って来たわんこたちがおやつを求めて五月蠅いので、御挨拶をして終わりましょうね。

「皆様、今年もよろしくお願いしますワン」 

夏川草介 『スピノザの診察室』2023/12/20



雄町哲郎は京都の洛都大学の医局で将来を嘱望された内科医で内視鏡手術に優れていたが、三年前にシングルマザーだった妹が亡くなり、残された小学生の甥と暮らすために退局し、原田病院で働いている。
原田病院は消化器疾患を専門とする四十八床の病棟を備えた小さな地域の病院で、内視鏡処置の患者を除くと高齢の患者が多く、病気を治すことがゴールではない。
雄町はそんな患者たちに寄り添い、たとえ病が治らなくても、「少しでも多くの人たちが幸せにすごせるように、自分は何ができるのか」を考え続けている。

雄町のように地位も名誉も金銭も求めず、人間の幸福について考えている医師って特別ですよね。
彼は「医療というものに、たいして期待も希望ももっていない」が、「人は無力な存在だから、互いに手を取り合わないと、たちまち無慈悲な世界に飲み込まれてしまう。手を取り合っても、世界を変えられるわけではないけれど、少しだけ景色は変わる。真っ暗な闇の中につかの間、小さな明かりがともるんだ。その明かりは、きっと同じように暗闇で震えている誰かを勇気づけてくれる。そんな風にして生み出されたささやかな勇気と安心のことを、人は『幸せ』とよぶんじゃないだろうか」、「暗闇で凍れる隣人に、外套をかけてあげることなんだよ」と言います。
これは院長が言っている、「できるだけ患者の顔を見ようとする理念」、すなわち「外来にいても、入院になっても同じ医者が診れれば、患者も安心やろう。そしてできれば往診になっても看取りになっても、ずっと診てきた医者が患者のもとに足を運ぶ医療」に通じるものがありますね。

老いたら、こういう医療を受けたいと思います。
雄町のような医師がいたら、主治医になってもらいたいと思います。
でもねぇ、そんな医師がいるだろうか…。
夏川さんの書く理想の医師の姿にいつも感動しますが、現実を見ると、「こんな医師なんていないよなぁ」とつぶやいてしまいます。
これから夏川さんの書くような若い医師が増えていくことを期待しています。
私も良い患者になるようにしますが、年を取るとどうなるかなぁ…ww。

雄町医師と彼を取り巻く人たちが、『神さまのカルテ』のような感動をもたらしてくれます。

そうそう、京都の美味しい物。食べたくなりました。
雄町医師は甘党なんです。
阿闍梨餅は食べたことがあるので除外して、亀屋友永の『小丸松露』、パティスリー菓欒の『西賀茂チーズ』、村上開新堂の『マドレーヌ』、緑寿庵清水の『焼栗の金平糖』、そして矢来餅と長五郎餅が食べたいです。
京都には行きたいけど、観光客が多いと聞き、なかなか行く気にはなれないので、すぐには食べられないわぁ。


<今日のわんこたち>


ママにおもちゃを投げて遊んで欲しいと訴えているヨーキー弟。
その後ろで、何故かひっくり返っている兄犬、笑。


ママが弟に何をするのか興味を持って見ている兄。
弟は健気にジッと待っています。