ラグナル・ヨナソン 『雪盲』2017/10/05



アイスランド・ミステリです。

警察学校を終えた新人警察官アリ=ソウルはレイキャヴィークに恋人を残し、雪深いアイスランド北端の小さな町、シグルフィヨルズルの警察署へと赴任していきます。
町は閉鎖的で、よそ者は何年経とうがよそ者。
上司は家に鍵をかける奴はいない。この町では何も起きないと言います。
しかし、赴任してから二ヶ月後に、有名な老作家が劇場の階段から転落して死亡します。
上司は事故として扱おうとしますが、アリ=ソウルは何者かに突き落とされたのではないかと疑います。
そして、その後、雪の中で半裸の女性が倒れているという通報が。
その女性は血まみれで病院に運ばれますが、瀕死の重傷で命の保証はないとのこと。
上司や同僚の助けを借りずに、アリ=ソウルは己の勘だけを頼りに捜査を勧めていきます。

雪に埋もれていく閉鎖感ってものすごいものでしょうね。
北海道の雪はそれほど積ることはなかったのですが、屋根から落ちる雪で台所の窓が埋まっていたのを思い出しました。
家全体が雪で埋まってしまうなんて・・・。
一人でそんな家にいると耐え切れずに魂が彷徨い出したりして・・・。

アメリカとは違う北欧ミステリ、おもしろいです。


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_ じゅうのblog - 2018/01/16 20時43分03秒

アイスランドの作家「ラグナル・ヨナソン」の長篇ミステリ作品『雪盲(原題:Snjoblinda、英題:Snow Blind)』を読みました。
[雪盲(原題:Snjoblinda、英題:Snow Blind)]

アイスランドの作品は昨年7月に読んだ「ヴィクトル・アルナル・インゴウルフソン」の『フラテイの暗号』以来ですね… 北欧ミステリが続いています。

-----story-------------
北欧ミステリの超大型新人、日本初登場!

亡き北欧ミステリの帝王「ヘニング・マンケル」のエージェントが仕掛けた超大型新人、「ラグナル・ヨナソン」の〈ダーク・アイスランド・クライムシリーズ〉第1弾!

新人警察官「アリ=ソウル」の赴任先は、アイスランド北端の小さな町・シグルフィヨルズル。
恋人を置いてたどり着いた町は、閉鎖的だが「ここらじゃどうせ何も起きない」と上司は言った。
だが着任から二か月後のある日、町の劇場で老作家の死体が発見される。
上司は事故で処理しようとするが、「アリ=ソウル」は遺体の状況から他殺を疑う。
さらに雪の中で半裸の女性が瀕死の状態で発見されて――。
捜査を進める「アリ=ソウル」の耳に、住民の不穏な過去ばかりが届き始める。
町の外へ通じる唯一の道は雪崩で塞がっている。
犯人は町の中にいる!

翻訳は「特捜部Q」シリーズで知られる「吉田薫」。
世界14か国で翻訳された人気シリーズが、遂に日本に初上陸です。
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首都レイキャヴィークより北極圏に近く、環状に連なる山とフィヨルドに囲まれて、空はいつも雲に覆われ灰色にくすんでいて、かつては漁業の中心地として栄え、特にニシン漁は最大の漁獲量を誇ったこともあるという、アイスランド北端の人口1,200人ほどの小さな港町・シグルフィヨルズルを舞台にした"ダーク・アイスランド"シリーズの第1作目となる作品です… 2010年(平成22年)に発表された作品、、、

2017年(平成29年)3月時点で、本シリーズは5作品発表されているらしいです… 現時点、翻訳されているのは本作品のみのようですけどね。


2008年(平成20年)の夏… 13歳で両親を失って以来、神を信じていいないにも関わらず大学で神学を志していた24歳の「アリ=ソウル・アラソン」は、その前に学んでいた哲学と神学のいずれにも挫折して、自分探しの途上で警官になろうと思い立つ、、、

アイスランドの首都レイキャヴィークのフラットで医学生の恋人「クリスティン」と一緒に暮らし始めたばかりだが、警察学校卒業を間近に控え、就活に苦戦中… そこへ「きみを採用したいと思っている」と一本の電話がかかってくる。

赴任地はシグルフィヨルズル… そこはレイキャヴィークよりも北極圏に近い町、、、

2008年(平成20年)の秋… リーマン・ショックを大きく受け、首相が国民に非常事態を宣言するほどの経済危機に陥っていた状況の中、仕事にありつけただけでもありがたいと思い、恋人の理解を得ないまま「アリ=ソウル」は400km離れた北の最果ての地シグルフィヨルズルへ向かう。

かつてはニシン漁で栄えた漁師町は人口も景気も衰退の一途をたどっており、上司の「トーマス」から、ドアに鍵をかける必要がないほど何も起きない町だと聞かされた「アリ=ソウル」は、山と闇と雪に押しつぶされそうな閉塞感に悩まされながら、こんなところに来るんじゃなかったと後悔する日々を送っていた… そんなある日、町で最も高名な人物であり、市民劇団の主宰者である元作家の「フロルフル・クリスチャウンソン」が劇場の階段で転落死する、、、

当初、単純な事故と思われたが、平和なはずの町に不穏な空気が漂い始める… 「アリ=ソウル」の自宅に強盗が押し入り、強盗を捕らえようとした「アリ=ソウル」が軽傷を負う事件が発生、次に劇団員「カルトゥル・ステインドウル・エイナルソン」の内縁の妻で看護師の「リンダ・クリステンセン」が刃物で切られ、雪上で瀕死の重傷を負う事件が発生し、「フロルフル」は死の直前に劇団の演出家「ウールヴル・ステインソン」と口論していたこと等から事件性が疑われ、小さな町は混迷を深める。

関係者の聞き取り等から、劇団関係者の暗く不穏な過去、劇団内の脚本や演出、キャスティングに関する確執や劇団内での不倫等が判明、それらの情報もとに「アリ=ソウル」は推理を進め、三つの事件の真相について仮説をたてる… そして、証拠は不充分だったが、仮説を証明するために犯人と思われる人物の自宅に単身乗り込む、、、

「フロルフル」の事件と、「リンダ」の事件は、動機も犯人も全く異なりましたが、それぞれ納得の結末が用意されており、パズルのピースがきっちり嵌る心地良さが味わえる作品でした… 「カルトゥル」は、証拠はないとはいえ、過去の犯罪歴を考えると、もっと懲らしめてくれた方が納得感があったけどなぁ。


北欧ミステリって、猟奇的な殺人事件や暴力性や残虐性の高いシーンが多いのですが、本作品では、そんなシーンは全くなく、ホントに身近で起きても不思議ではない事件が扱われており好感が持てましたね、、、

自分探しの延長で警察官になっただけあり、まだまだ考え方に甘いところがあり、推理は冴えているものの、詰めが甘いまま行動に移ってしまう「アリ=ソウル」の等身大のキャラも良かったですね… 本シリーズ、他の4作品も翻訳してほしいなぁ。


以下、主な登場人物です。

「アリ=ソウル・アラソン」
 シグルフィヨルズル署の新米警官、24歳

「クリスティン」
 アリ=ソウルの恋人、医大生

「トーマス」
 シグルフィヨルズル署の署長、アリ=ソウルの上司

「フリーヌル」
 シグルフィヨルズル署の警官、アリ=ソウルの同僚

「ウグラ」
 劇団員、ピアノ教師

「フロルフル・クリスチャウンソン」
 劇団の代表、元作家

「ウールヴル・ステインソン」
 劇団の演出家、元外交官

「カルトゥル・ステインドウル・エイナルソン」
 劇団員

「リンダ・クリステンセン」
 カルトゥルの内縁の妻、看護師

「パウルミ・パウルソン」
 劇団の脚本家、元教師

「ローサ(ローサリンダ)」
 パウルミの父親の知人

「レイヴル」
 劇団員、大道具担当

「アンナ・エイナルスドッティル」
 劇団員

「ニーナ・アルナルドッティル」
 劇団の雑用係

「サンドラ」
 フロルフルと親交があった老女