筑前助広 『颯の太刀』 ― 2024/05/15

上州新田郡太田宿まで一人旅をしていた筧求馬は、旅装の手代に助けを求められる。手代に着いて行くと、四人の浪人が待っていた。
初めての真剣での立ち会いではあったが、求馬はなんとか対処できたが、そこにもう一人、浪人が現れる。
その浪人は求馬に、「おぬしは斬る価値がない」と言いすて、商家の主人と手代を殺して去って行った。
求馬、十六歳、初めて知る、己の無力さ。
求馬は旗本である芳賀家の生まれであったが、母が低い身分の正室の下女であっため、母は里に戻され、彼を産み、すぐに亡くなった。
実の祖父、芳賀宮内は天涯孤独の身となった求馬を哀れみ、引き取って旧知の筧三蔵の養子とした。
宮内は「腰の二刀は、弱き者を守る為にある。武士が米を作らず偉そうにしているのは、いざという時に死ぬためだ」と求馬に武士たる者の役目を教えた。
養父の三蔵は偏屈な性格や稽古の荒さゆえに、江戸の剣客から〔剣鬼〕と呼ばれ、避けられていた。
求馬は十八歳になった。三蔵は一年前に他界した。
深妙流筧道場を継いだが、門人はいない。
無外流花尾道場での代稽古からの帰り道で、求馬は若い娘が曲者に襲われているのに遭遇する。
忌々しい二年前の屈辱と羞恥を思い出す求馬。
真剣が、斬り合いが、強い相手が怖い。
このまま臆病な負け犬のままでいるのか。
俺は逃げない男になるのだ。
求馬は初めて人を斬り、娘を助ける。
娘の名は茉名。追われる身で、行く当ても身の隠し処もないというので、自宅道場に連れ帰る。
しかし、鷲塚旭伝と名乗る者が現れ、茉名は求馬の命と引き換えに我が身を差し出し、連れ去られてしまう。
自らを負け犬と称し、自分のふがいなさを歎いている時に、茉名の密偵の音若と浪人の楡沼三之丞がやって来て、求馬を小村井村の外れにある商人の寮に連れて行く。
そこで求馬は幕政を牽引する男の嫡子に会い、剣の腕を認められ、茉名の身の上と事情を知らされる。
自分の不甲斐なさから茉名を奪われたと思う求馬は、幽閉されている茉名を救い、その後、命を狙う者たちから茉名を守り、蓮台寺へ送り届けることを決意する。
『谷中の用心棒』とは違い、主人公はまだ剣士としては半人前。
ありきたりではありますが、心寄せるお姫様を無事にお国に送り届けるために戦います。
実ることはない恋とは知りながら、死をものともせずに戦う姿が好ましいです。
でも、自分を卑下し過ぎなところがちょっと気になります。
こういう言葉は今はNGですが、しいて使わせていただきます。
女々しいですww。
茉名の方が凜々しいです。流石です。
まあ、このお話は求馬の剣士としての成長物語ですから、仕方ないかもしれません。
求馬が谷中の用心棒の大楽みたいになるには時間がかかりますね。
このお話もシリーズ化し、求馬が公儀御用役として活躍していくのでしょうね。
そして、その合間に茉名からSOSが来て、白馬の騎士、求馬は駆けつけるのでしょう。
今後の求馬の成長と活躍が楽しみです。
コメント
_ 筑前助広 ― 2024/05/19 14時07分45秒
_ coco ― 2024/05/20 17時33分20秒
筑前助広様、再度のコメント、ありがとうございます。
『颯の太刀』は時代小説の初心者と若者のために書かれたとのこと、納得いたしました。
これからの求馬の成長と活躍を楽しみにしています。
来年の大河、わたしの好きなテーマです。新しいシリーズをお考えですか?
どんなものか、期待しています。
『颯の太刀』は時代小説の初心者と若者のために書かれたとのこと、納得いたしました。
これからの求馬の成長と活躍を楽しみにしています。
来年の大河、わたしの好きなテーマです。新しいシリーズをお考えですか?
どんなものか、期待しています。
コメントをどうぞ
※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。
※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。
トラックバック
このエントリのトラックバックURL: http://coco.asablo.jp/blog/2024/05/15/9684473/tb
※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。
今回は作風をガラッと変え、時代小説の初心者、若い人たちに読んでもらいたい!と物語もオーソドックス(それでいて、エンタメ性も担保しつつ)に、それでいて主人公は若者が共感しやすい、成熟しきれていないキャラクターにしました。
求馬が大楽のような男になるのは、まだまだ先ですね!
来年の大河は谷中の用心棒含め、同じ時代ですし、「颯の太刀」に登場した偉人も登場します。それに合わせて、作品も出していくので、今後ともどうぞよろしくお願いしますm(__)m