南木佳士 『ダイヤモンドダスト』&『陽子の一日』2017/06/02



南木圭士さんが「ダイヤモンドダスト」で芥川賞をとっていたとは知りませんでした。

タイ・カンボジア国境の難民キャンプで医療活動をしていた人たちが日本に帰ってきてからのことを描いた四作品が収録されています。
自然の中に生きる人々の生活と思いが淡々と描かれています。


陽子は信州の総合病院で30年以上も働くベテラン医師。
女手一つで子供を育て、重症の入院患者を担当してきましたが、還暦を迎え、最先端の技術にはついていけない自分を感じていました。
今は外来診察と人間ドックの患者さんへの説明を引き受けています。

そんなある日、院内メールが届きます。
送ってきたのは後輩の医師で、メールに添付されていたのは陽子の元同僚、黒田の「病歴要約」でした。
陽子は診察の合間に「病歴要約」を読み進みます。

現役医師の書いた本をこの頃よく読んでいます。
自分が入院して、医師や看護師と接してみて、この人たちは何を考えているのかと思いました。
入院するまでは、医療に携わる人たちは私なんかにはマネのできないすごい人たちだというように思っていました。
残念ながら今は、私と同じ人間で、欠点も美点もある、時には間違えることもある人たちという感じに変わりました。
絶対的な信頼感はないけれど、でも人間としての誠実さは欲しいという感じです。

黒田とか陽子のような医師に出会いたいと思いました。