「天才作家の妻―40年目の真実―」@アップリンク吉祥寺2019/03/01



世界的作家であるジョゼフがノーベル文学賞を授与されることになり、妻のジョーンと息子を伴いストックホルムへ行くことになる。
二人は飛行機の中でジョゼフの伝記を書こうとしているナサニエルに話しかけられる。

ジョゼフは昔女子大で教えており、ジョーンは彼の教え子で、書く才能に恵まれていた。
妻子のあるジョゼフと結ばれたジョーンはジョセフが作家としてデビューするために、あることをしてしまう・・・。
ナサニエルはそのことを暴こうとしていたのだ。

ジョゼフのために甲斐甲斐しくよき妻を演じていたジョーンだったが、とうとう授賞式の日に彼女の忍耐力もつき、言い合いの末、ジョゼフに別れを告げるのだった。
しかし、ジョゼフは・・・。

それにしてもジョゼフは息子が言うように、よく食べること。
(ジョゼフは息子の書いたものに対して無視を決め込んでいるようですが、ひょっとして息子は文才があるのかも)
心臓のパイパス手術を受けているというのに、ずっと食べ続けている。
それに若い女の子が大好きときている。
ジョーンもよくこんな男に我慢してきたものだわ。
言い合いをし合う最後の場面で、私はついつい「○○!」と心の中で叫んでいました。
そうすると、本当になってしまいました(笑)。
どんなに浮気をされても、彼女にとって一番したかったことができていたからよかったのでしょうね。
後に彼らの秘密を公にしようと思えばできたと思うのですが、しなかったのには何か理由があったのでしょうか。
ジョーンにとっては名誉とかはどうでもよかったのでしょうが。

グレン・クローズはアカデミー賞を取り損なったようですが、流石の演技でした。
若い頃のジョーンの役が娘さんだそうで、それほど似ていないような。
でも美人さんです。

樋口有介 『探偵は今夜も憂鬱』―柚木草平シリーズ第三弾2019/03/02



ライターの仕事だけではままならず、恋人でキャリア警官の吉島冴子や草平を口説いている(?)クロコダイルの武藤、ナンバー10の葉子などがまわしてくれる調査で食いつないでいる草平。
相変わらずの若い美女好きで、まわってくる調査に関わるのはご都合よく美女ばかり。
今回は3つ、調査があります。
エステ・クラブの美人オーナーの義妹にまつわる依頼、死んだはずの夫からの手紙の調査依頼、失踪した有名女優の捜索依頼。

相変わらずの草平です。
東京には美女が多すぎるというようなセリフがあったけど、草介の周りに多過ぎなだけじゃないですかぁ。
それにしても領収書なしで一週間で100万円という調査費、すごいですねぇ。
どこの探偵事務所もこれぐらい取るのでしょうか?
こんなに取るのなら、少なくとも2・3ヶ月は普通に暮らせるような気がしますが、飲み過ぎよねぇ(笑)。

樋口有介 『誰もわたしを愛さない』―柚木草平シリーズ2019/03/03

この本の前に短編集で『プラスティック・ラブ』があるのですが、最初の物語に草平が出てきません。
なので、読むのを止めてしまいました。
そのうち読みますわ。


娘の加奈子はそろそろお受験。
母親は私立のエスカレーター学校に進ませたいのに、娘は公立に行きたいというのです。
娘の好きなようにすればいいと思う草平ですが、妻が怖くて(笑)。
おませな娘と妻に弱い草平に笑っちゃいます。

今回、草平が関わった事件は、渋谷のラブホテルでの女子高生殺人事件です。
犯人は若い細身の男らしいのですが、まだ見つかっていません。
草平はいつものように犯行現場に行き、警察関係者から検視報告書等のコピーをもらい、警察署に押しかけ山川に会い、事件の感想などを話し、被害者の交友関係を教えてもらいます。
そこでわかったのが、どうも死んだ女子高生はJK商売をやるような子ではなさそうです。
それなのに何故ラブホテルに行ったのか?

新人女性編集者・小高直海の登場。
草平はドS?
直海のような編集者に小突き回されてもうれしそうです。
今度二人の関係がどうなっていくのか楽しみです。

ヘロン・カーヴィック 『村で噂のミス・シートン』2019/03/04



夫が職場でもらってきた東京マラソンクッキー。
出場者全員がもらったのかしら? 土産で売っていたのかしら?
夫に聞いても知りませんでした。
「ありがとうと言ってもらっといたよ」ですって。
味は普通のクッキーでした。



コージー・ミステリの新しいシリーズです。
期待して読んだのですが、翻訳が今一なのか、原文が今一なのか、コージーにもかかわらずなかなか頭に入ってきませんでした。

ロンドンで美術教師をしているミス・シートンは、オペラを見に行った夜に女性を襲っている男性を見かけ、持っていた傘で男性をつつく。
反撃されそうになったところに人が来たので男は逃げて行きました。
男の顔を見たミス・シートンは得意の絵で警察に協力することにします。
そうすると、彼女の書いた絵が事件解決の鍵になります。

この事件の翌日、ミス・シートンは名付け親が遺してくれた田舎のコテージに出かけます。
田舎の村では彼女の噂が持ちきりです。
警察は犯人がミス・シートンを狙うのではないかと予測し、彼女の居場所を明らかにしないことにしていましたが、牧師のせいで田舎に滞在していることが新聞に書かれてしまいます。
ミス・シートンは無事に田舎の休暇を終えられるでしょうか。

大変な村です。
会ったことがない村人たちが勝手な憶測をし、話に尾ひれがついて、ミス・シートンはとんでもない人になっています。
いい村だったら、退職して住もうかと思っていたのにねぇ。

このシリーズが書かれたのが1960年代のようです。
だからちょっと古い感じがしたのですね。
それから半世紀にわたって三人の作家によって書き継がれたとのことです。
いつもこうもり傘を持って歩いているミス・シートンがこれからどんな事件に巻き込まれるのか、楽しみにしましょうね。
長く続いているシリーズなので、たぶん面白いのでしょうねww。

畠中恵 『かわたれどき』2019/03/05



「かわたれどき」ってどういう意味かと調べたら、「明け方」のことだそうです。

神田町名主の跡取り息子の麻之助と悪友三人組のシリーズ物。
6つの短編集です。

内容的になんとなくマンネリ気味です。
何か騒動が起きて、麻之助が無理矢理引き込まれて解決するというものですから。
そろそろ麻之助も妻のお寿ずの死から立ち直り、新しい一歩を歩むべき時ですね。
周りが縁談を持ってきていますが、はっきりしない麻之助。
お雪といい線いくかと思ったら、おじさんは嫌だと言われてしまいます。
でも、洪水がきっかけで麻之助の心境に変化が。

シリーズも次には終わりかな・・・?

降田天 『すみれ屋敷の罪人』2019/03/06



日本推理作家協会賞や『このミステリーがすごい!』大賞を受賞してデビューした降田さんの作品です。
こう紹介しても、私、彼女の作品を読むのが初めてで、どういう作品なのかと思いながら読み始めました。

2001年、戦前の名家・紫峰邸の敷地内から2つの白骨死体が見つかります。
紫峰邸で働いていた女中や使用人たちのところに西ノ森と名乗る男が話を聞きにきました。
紫峰邸はすみれの花の咲く美しい館でしたが、当主と三人の美しい娘たちは終戦間近、東京大空襲で亡くなったということです。

ならば、白骨死体は誰なのか?

話を聞いていくうちに、美しい館で起こった隠された悲劇が浮かび上がってきます。

戦前の昭和、名家、すみれのステンドグラスのある館、美しい娘たち・・・こういうのが好きな人にはたまらない作品でしょうね。
正統派ミステリではないですが、漫画とか映像にするといいですね。
面白くはあったのですが、戦前・戦中の昭和嫌いの私には食指の動かないミステリでした。

「奇想の系譜展 江戸絵画ミラクルワールド」@東京都美術館2019/03/07

しばらくぶりの美術展です。


この展覧会はそれほど人がいないのではと思ったら、とんでもありませんでした。
雨でも結構混雑しています。
友人はテレビでやったからなのではと言いますが、いつやったのかしら?

この展覧会は美術史家・辻惟雄が1970年に著した『奇想の系譜』という本の中で取り上げられていた6名に鈴木其一と白隠慧鶴を加えた8名の画家の作品が展示されています。
どの絵画も「奇想天外な発想に満ちた江戸絵画」です。

面白かった絵を紹介しましょう。


伊藤若冲の描いた象です。
象なんて見たことないのでしょうが、想像だけでよくこれまで描けましたね。


長沢芦雪が屏風いっぱいに描いた象。
若冲と比べると、迫力がありますね。
この象と対になっているのが、牛です。


こんな大きい牛は実際にはいませんね。
下にいる白い動物は犬です。
かわいいですね。
この犬は誰が見てもかわいいと思うのか、グッズがありました。
芦雪のことは知りませんでしたが、結構好きな絵です。


もう一人、気に入ったのが白隠慧鶴です。
達磨の絵がいいです。
彼は画家ではなく禅僧です。


≪すたすた坊主図≫
これまた愛嬌のある坊主です。


鈴木其一の≪夏秋渓流図屏風≫では水を表す色にびっくりしました。
こんな色、みたことないです。


これも見事な構図です。
歌川国芳の≪相馬の古内裏≫。

私はボスとかブリューゲルが好きですが、日本にも似たような絵があったのですね。

美術展に行くと楽しむランチですが、歩くと膝が痛くなりそうなので、美術館内で食べることにしました。


前菜の盛り合わせと鴨のロースト・オレンジソース。
これぐらいの量がいいようです。

樋口有介 『刺青(タトゥー)白書』 &『夢の終わりとそのつづき』2019/03/08

今回は柚木草平シリーズを2冊いっぺんに紹介します。


シリーズで好きなのは女子高校生の出てくる物です。
草平は娘がいるせいか、女子高校生には優しいような感じです。

草平は自宅で殺されていたアイドル・神崎あやの殺害事件のレポートを依頼されます。
たまたま行った雑誌の編集部で出会った女子大生の三浦鈴女はあやと中学時代の同級生でした。
鈴女は草平と会った日にアナウンサーとして就職が決まっている中学校の同級生の伊藤牧歩とも偶然再会していました。
しかし後日、牧歩は隅田川で水死体となって見つかります。
二人には右肩に薔薇の刺青の消した後がありました。
中学時代に事件の発端があると思った草平は、鈴女に中学の同級生に会いに行き、話を聞いてくるように頼みます。

鈴女ちゃんが活躍するお話です。
彼女は大学院に進学するような女の子で、卒論のテーマが「江戸時代における春本の社会学的効用」っていうのです。
草平の好きな美女たちとは違いますが、それはそれでかわいいです。
たまには草平と美女たちの会話がなくてもいいか・・・。


警察を辞めて、ぐだぐだしている草平35歳の時のお話です。
どうも樋口さんが最初に描いた草平らしく、雰囲気とか文体とかが大分違ってびっくりしました。
この本の草平はあまり好きじゃないです。

草平に変わった依頼が舞い込みます。
ある家から出てきた男を一週間尾行して欲しいというものです。
報酬は200万円。
依頼人(美女)とお金に引かれ、やることにした草平ですが、早々に尾行も飽きてしまい、探偵小説好きの夢子にうまいことを言いやってもらうことにしました。
ところが、夢子が尾行した日、男は公園のトイレで死んでしまい、解剖すると胃の中が空っぽでした。
男は一日中、飲み食いをしていたのに、一体どういうことか。
謎の美女の正体は・・・。

いつもの草平を期待して読まないでください。
内容が今までとは全く違います。
セックス描写あり、謎の物体X風あり、スパイが出てきたりとなんなんだかねぇ。

ちょっと違う、草平シリーズでした。


樋口有介 『不良少女』&『捨て猫という名前の猫』2019/03/09

また2冊、紹介します。
一冊ずつにすると内容忘れてしまいますから、というか、先月読んだのでもうすでに忘れています。


5つの話の短編集。
それぞれ楽しめる内容です。
様々な美女が出てきますが、私はキャリア警察官の冴子さんが好きです。
草平もそうなんじゃないでしょうか。
彼女を官僚の旦那から奪ってしまわないところが草平の草平である所以ですが。


初めて柚木草平が登場する本を読んだのが、これでした。

絶世の美女である中学生の女の子、秋川瑠璃が雑居ビルから飛び降りて自殺した。
月刊EYES編集部に彼女は自殺ではない、柚木に調べさせろという電話が入る。
彼女の死を不審に思った草平は手広く商売を展開している瑠璃の母親やアクセサリーショップのオーナーなど関係者に当たっていく。
電話をしてきたのは、住む場所もなく、ネットカフェや友人の家に泊まり、キャバクラに勤めて生活費を稼いでいる、まるで捨て猫のような青井麦だった。
しかし、麦はその後、遺体で見つかる。

なんとも言えない読後感です。
相変わらず、草平は美女好きで、軽口をたたき、加奈子ちゃんはおませな口調で草平をやり込めています。
そんな平和な日常の片隅には、居場所もなくさまよう少女とその少女を利用する大人たちがいます。
やりきれませんね。

このシリーズの中では一番の本だと思います。


樋口有介 『少女の時間』2019/03/10



私が読んだ柚木草平シリーズの最後の本で、シリーズ十作目。
『プラスチックラブ』と『片思いレシピ』の二作はまだ読んでいません。

月刊EYESの柚木担当の直海から押しつけられ、草平は二年前の女子高生殺人事件を記事にすることになります。
殺された野川亜彩子は東南アジアからの留学生を支援する組織でボランティアをしていました。
そのボランティア団体<NPO法人ピースフル・サウス・イースト(PSE)>のあるビルに行ってみると、一階に雑貨店があり、東南アジアからの輸入品を売っているようで、そのビルはPSEの事務局長・篠原益実の姉の持ちビルでした。

草平がPSE関係を調べ始めてからすぐに殺人事件が起こります。
PSEの一階にある雑貨店のアルバイトの女の子が浴槽でおぼれて亡くなっているのが発見されたのです。
一見、事故のように見え、部屋にはマリファナがありました。
しかし、草平は事故ではなく殺人であると推測します。
彼女の死と女子高校生の死は何か関係があるのか。
草平は美女たちに翻弄されながらも真相に迫ります。

今回の草平には女難の相が出ています。
美人刑事に美人母娘、美人依頼人など、美人に振り回されてかわいそうになるぐらいです。
特に美人母は面白いですけどね。
美人たちが作ったチチャを草平が飲んだところは流石と思いました。
伊達に女好きではないです。
ちなみにチチャって「トウモロコシなどの雑穀を原料にして、唾液を利用して発酵させた酒」ですから、女性たちの唾液をもろに飲むんです。
普通の感覚では、できれば飲みたくないですよね。

恋人のキャリア警察官・冴子さんの転勤がありそうで、シリーズもどうなるのか。
ちょっと心配です。