海堂尊 『コロナ黙示録』2020/09/10

この本は読む人を選びます。
もしあなたが自民党支持者で、安倍首相が病を押して、国民のためにコロナ禍を頑張ったと思うなら、読まない方がいいでしょう。
途中で怒り狂い、本を床にたたきつけることになるからです(笑)。
今の政治、何かおかしいなぁと漠然と思っていたり、コロナ対策もそうだけど、「モリ・カケ・桜」問題に対して義憤を感じている人は是非読んでください。


私は新型コロナウイルスの正式名称がCOVID-19だと思っていましたが、違うのだそうです。
新型コロナウイルスの正式名称はSARS-Cov-21で、このウイルスによる病気の正式名称がCOVID-19なのだそうです。
コロナ(corona)のCO、ウイルス(virus)のVI、疾病(disease)のD、末尾にWHOに報告された2019年という年号の下二桁19で、システマチックにつけられています。

毎日新聞(2020年9月9日)のシリーズ「コロナで何が変わるのか」で「コロナ禍があぶり出したものは」という質問に海堂さんはこう答えています。

「医学に基づかない政策決定をする首相官邸、柔軟な対応ができない厚生労働省の官僚、そして彼らの発信する情報を批判せず、垂れ流すメディアの体たらくです」

この憤りが海堂さんに一ヶ月という短期間で本を書かせるエネルギーとなったようです。
桜宮サーガのオールスターたちが登場しています。
現実世界で起こったことが、どう本の中の世界で書かれているのか。
彼らがコロナとどう闘っていくのか。
語り口はユーモアに包まれながらも、風刺がきいています。

東城大学医学部付属病院の不定愁訴外来主任の田口は学長の高階に呼ばれます。
そこで命じられたのは、イケメン内科医としてウェブにエッセイを書くことです。
原稿用紙二枚は田口が書き、残りの二枚は厚生省の白鳥技官が書くというのです。

そんな頃、豪華クルーズ船ダイヤモンド・ダスト号でコロナ感染者が発生しました。この対応で安保政府は対策が後手に。
同じ頃、北海道の雪見市救命救急センターでもクラスターが発生しました。
速水を始め、センターのみんなは対応に追われます。
そんな中、クルーズ船の感染者を東城大学医学部付属病院ホスピス病棟で引き受けることになり、田口はコロナウイルス対策本部長になります。

東京では元浪速府知事・村雨を筆頭に政策集団・梁山泊が安保内閣打倒を目指して会合を開いていました・・・。

そういえば、そういうことがあったなと、思い出しながら読み進めていけます。
たった数ヶ月前のことなのに、遠い昔のように思えたりするのは何故でしょうね。
コロナ疲れでしょうか。

物語は5月の時点で終わっていますが、まだ現実世界のコロナ禍は終わっていません。
「現代ビジネス」(2010年8月22日)の「海堂尊が明かす・・・新型コロナと「日本医療の深い闇」へのいらだち」の中で、エンディングの先にある未来を聞かれ、海堂さんはこう言っています。

「希望です。人類は新型コロナを撲滅できないかもしれません。でも、生き残ることが何よりも大事なことです。そのために感染の拡大を止めようとする人がいて、ワクチン開発を急ぐ人がいて、医療従事者がいる。この物語に登場するのはそんな人たちです。

今の政府も厚労省も、まったく期待できないけれど、そういう人たちがいることが、日本の救いであり、希望だと思っています」

イギリスで開発しているワクチンの治験は中止になりましたね。
中国やアメリカのワクチンは大丈夫なのでしょうか。
ワクチンも大切ですが、薬の開発も進んでいるのでしょうか?
国境を取っ払って、一丸になって協力し、薬やワクチンの開発をして欲しいですよね。

海堂さん言うように、未来には希望があるということを信じていきたいです。