「スクール・デイズ」を観る2020/11/15



日本語の題名では「スクール・デイズ」という普通のものです。
原題は哲学的で、「That's What I Am」。
自分とは何かと悩む十代にふさわしい題名ですね。
1965年のお話です。
(ネタバレあり)

サイモン先生は生徒から好かれている、国語の教師です。
彼の8年生の授業で二人一組になり、課題をすることになりました。
アンドリュー・ニコルはスタンリーとペアを組むことになります。
スタンリーは勉強はできるのですが、赤毛で耳がでかく、背が飛び抜けて大きいことから、Big Gと呼ばれていじめられていました。
ニコルは彼とはペアを組みたくありませんでしたが、好きなサイモン先生を失望させたくないので、嫌だと言えませんでした。
サイモン先生はちゃんとした理由があってペアにしたと言います。
先生は書くことに自信がないというニコルの夢に気づいていて、ニコルが書く才能があると褒めてくれ、彼に”I am a writer.   That's what I am”と何回も言わせます。
(何かなりたい職業があったら、試してみるのもいいかも)

学校に「変人の庭(geek corner)」と呼ばれている中庭があり、休憩中にいじめられっ子たちが集まっています。もちろんスタンリーもいます。
「geek」たちはひどいいじめにあっています。
例えばスタンリーは水鉄砲で股間に水をかけられ、「もらしたぞ」と大声でからかわれていました。
スタンリーの友人のノーマンはサンドイッチとチョコバーをランチに持って来いと言われ、持ってこれないとノーマンはお金をいじめっ子に渡します。
スタンリーのすごいところは、いじめられても超然としているところと、友達思いのところです。この良さにニコルはまだ気づいていません。

ニコルの父親は何事にも口出しをする人で、ニコルが芝を刈っていると、刈った跡に草が残っているといつも文句を言います。
親として悪いお手本ですが、見本を示してやると言ってニコルから芝刈り機を取り上げて、自分でやってしまいます。
プラモデルを作っていると、文句を言ってニコルからプラモデルを取り上げ、自分でやっちゃうんですよ。困ったお父さんだこと。
母親はまともな人で、ニコルが「変人の庭」とかBig Gとか言うと、ちゃんと名前で呼びなさい、からかわれている人のことを考えなさいと注意します。
ニコルは母親が何で注意するのかわかっていないようです。

ある日、ブスだとからかわれているカレン・コナーに、ジェイソンがたまたまぶつかります。
彼は「コナー菌に感染した」と騒ぎ、カレンを着ていたジャケットで何回も叩きました。
スタンリーが駆けつけて来てジェイソンを止めましたが、カレンは怪我をし、ショックを受け、トイレに籠もってしまいます。
そこにサイモン先生がやって来て、彼女を抱きしめ慰めます。
ジェイソンは先生から強く叱責されました。
その後の国語の授業で、気落ちしたサイモン先生は新聞の「世界を平和にする方法を25語以内で書く」という懸賞に応募して優勝した4単語を黒板に書きます。

    Human Dignity + Compassion=PEACE
  (人の尊厳+思いやり=平和)

そして今日は授業をする気分じゃないから、本を読んでくれと言いました。

ニコルは金曜日に職員室の手伝いをしています。
タレント・ショーのプログラムの印刷を頼まれますが、そこにスタンリーが歌を披露すると書いてあるのを見つけます。
ノーマンはそんなことをするとまたからかわられるのだから、止めろと言いますが、スタンリーは「僕は歌を歌うのが好きだから、僕にも出演する権利があるはずだ」と言って譲りません。

スタンリーとニコルは「変人の庭」でサイモン先生の課題のテーマを話し合います。スタンリーが「差別という言葉は人によって意味の捉え方が変わる」と言ったので「差別」ではな「寛容」をテーマにすることになります。

始めは子供たちが面白がって大した根拠もなく言っていたことなのでしょうが、いつしか生徒の間にサイモン先生はホモだという噂が広まっていました。
ニコルは母親にそのことを話しましたが、母親は「それはサイモン先生の人間性とは関係はなく、最高の先生であることにかわりはないでしょ」とニコルに言いました。
しかしジェイソンが母親に話したことから一大事になってしまいます。
息子がカレンへのいじめで叱られたことを根に持っていた父親が問題にしたのです。
校長はサイモン先生にそのことを話します。
サイモン先生は「ジェイソンが可哀想になった」、「私生活が教師としての能力にどう関係するんだろう。仕事と個人の問題は別なのに」、「私は57歳。人生の大半を教師として過ごしてきた。自分を曲げるつもりはない」と言って、自分がホモかどうかについて言及しませんでした。
実は彼は結婚していて、19年前に奥さんが亡くなってから独身を通していたのです。校長はホモであることを彼自身で否定して欲しいというのですが、彼は「否定しないのは子供たちのためだ」と言って断ります。

しばらくして子ども達の間にサイモン先生が今年で辞めるという噂がたちます。

タレント・ショーの日、ニコルはスタンリーに水鉄砲で水をかけられている時に助けなくて悪かった、君のように勇敢な人は初めてだ、と謝り、彼のためにノーマンを探しに行きます。
自宅にいたノーマンは笑いものになるスタンリーを見ていられないから見に行かないと言うのですが、ニコルはスタンリーが勇気を出したのだから、見届けてやらなければいけないと言って見に来るように誘います。
結局ノーマンは見に来るのですが、スタンリーの前に出演した子のドラムがとても上手かったので、公開処刑が始まると心配します。
スタンリーはノーマンの予想に反し、堂々と舞台に登場し、自作自演の歌を披露します。

最後の授業の日、『ジャンヌ・ダルク』を読み終えました。
サイモン先生はニコルとスタンリーのレポートにA+をくれ、「君たちは私の教師人生で一番の誇りだ」と言ってくれました。
最後にサイモン先生が言ったのは、”I am a teacher.   That's what I am.”でした。

サイモン先生は生徒たちが飾りつけた車で学校を去ります。
その後、ニコルは先生に会いに行きます。
それには理由がありました・・・。

ニコル君のこの一年間は彼の人生において、もっとも実りの多い年だったのではないかと思います。
幼い恋愛もあったのですが、ここには書きませんでした。
サイモン先生のような教師に出会えたニコル君たちは幸せですね。

実はニコル君たちが一致団結してサイモン先生を辞めさせないでという抗議運動をして、サイモン先生は学校に残ることになりましたという最後を想像していました。
この映画は実話に基づいて作られたそうで、なるほどと思いました。
実際、嘘の噂で辞めることになった教師のために闘う人がどれぐらいいるでしょうか。
いじめもそうです。いじめている子に止めろと言う子がどれほどいるでしょうか。
私もそうですが、たぶん何もしないで見ているだけの人の方が多いでしょうね。
それに1960年代はまだまだ同性愛に不寛容な時代でしたもの。

  ”I am a/an 〇〇.   That's what I am.”

こういう風に誇りを持って言えますか?
言える人は幸せですね。言えなかったら、言えるように少し頑張ってみましょう。

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