「ミッドナイトスワン」を観る2021/05/29



Amazon Prime Videoで先行配信ということで、第44回日本アカデミー賞最優秀作品賞と最優秀男優賞受賞作品を観てみました。
(ネタバレあり)

凪沙は東京のニューハーフショークラブ「スイートピー」に勤めるトランスジェンダー。出生の性別は男だけど、性自認は女。このことは東広島にいる家族に秘密にしていました。
しかし従妹の娘の一果が母親から虐待されていると通報されたため、一時一果を預かることになります。
叔父さんがくると思っていたのに、やってきたのはハイヒールをはいた伯母さんで戸惑う一果に、余計なことを言うなという凪沙。

一果は短期間、東京の中学校に通うことになります。
学校に凪沙と行った日、一果は凪沙のことを面白そうに聞きにきた男の子にイスを投げつけます。
その帰り道、発表会のことを話している女の子に着いていくと、バレエスタジオがありました。
興味を持った一果は、別の日そのバレエスタジオに行き、体験入室をします。
その時にバレエシューズをくれた女の子・りんが同じ中学校に通っていることがわかり、二人は仲良くなります。
りんはお金持ちの子で、バレリーナになることを親から望まれていました。
りんはバレエを習うお金がないという一果を写真撮影会のバイトに連れて行きます。

バレエ教室ではいつの間にか一果は上手くなっており、先生に目をかけられるようになります。
嫉妬したりんは一果に写真撮影会での個撮を勧めます。
個撮で下着や水着姿になるように言われた一果は、男にイスを投げつけ、騒ぎになってしまいます。
警察に呼ばれた凪沙は一果がバレエを習っているのを初めて知ります。
バレエ教師の片平は一果には才能があるので、このままバレエ教室に通わせてくれと凪沙に頼みますが、凪沙はお金がかかるから無理だと答えます。
それを聞いた一果は飛び出して行きます。
一果に追いつき、自傷行為を行う一果を見た凪沙は、うちらみたいなもんはずっと独りで生きていかなければならないのだから強くならないと駄目だと言って一果を抱きしめます。
その夜、一果を独りにしておけなくて、初めて凪沙は一果を「スイートピー」に連れて行きます。
酔ったお客に絡まれ、大騒ぎになった時に、一果は何を思ったのか、ステージで踊り始めます。
その姿を唖然として見つめる凪沙。
一果の才能を信じた凪沙は就職をし、お金を稼ごうとしますが、一果は凪沙に頼んでいないと反発します。

りんは足の怪我のため、前のように踊れなくなり、バレエ教室を止めてしまいます。

一果はコンクールに参加することになります。
しかしコンクールの前に広島から実母の早織が一果を迎えに来ます。
このため一果は精神的に不安定になってしまいます。
コンクール当日、りんは結婚パーティに出席していました。
一果と電話で話した後、りんはパーティ会場で突然一果が踊るオデットのバリエーションを踊り始めます。
一方、一果はステージで踊れなくなり、早織がステージにのぼり、一果を抱きしめます。
その姿を見た凪沙は会場を後にします。

東広島に帰った一果はまた以前のように無気力状態になっていました。
呼ばれて祖母の家に行くと、一果を迎えに来た凪沙がいました。
凪沙は女の姿をしており、凪沙の母親はその姿を見て泣き崩れています。
早織は凪沙に、「子どもを育てる大変さがわからないくせに、この化け物が、帰れ」などと怒鳴りつけ、つかみ合いになり、追い出されます。
凪沙は一果に「私、女になったからお母さんになれるのよ」と告げて去っていきます。

中学校の卒業式の日。
一果は早織に約束通り東京に行くと告げます。
一果はバレエを止めてはおらず、片平先生がわざわざ広島まで教えに来てくれていたのです。
バスに乗り、東京へ行き、凪沙のアパートに行きますが…。

この映画はトランスジェンダーの凪沙の話ではなく、私にはバレエダンサーとして旅立つ女の子の話に思えました。
たぶん最後の描き方のせいでしょうね。
海の場面で終わった方が凪沙の悲しみとか痛みがより強く強調されたように思います。
残念なのが説明が少なくて、場面の繋がりがわからず、一体これどういうことと疑問に思うことが多かったことです。
描かれていないことを想像しろということですかね。
例えば性転換手術の描き方が、あれじゃあ、危ない手術だと思う人が多そうです。実際はああいう風にはならないそうですけど。
それにしても何故病院に行かないのかしら?

一番好きな場面は夜中に二人でバレエを踊る場面です。
ベンチに座っていたおじいさんが、「オデットですか、踊りがとてもお上手ですね、お嬢さんがた。でも、朝が来ると白鳥になってしまう。なんとも悲しい」と言って去っていくのです。

前評判では草薙さんが美しいとか言ってましたが、普通のおじさんが女装している感じでした(ごめん)。
原作があり、そちらの方が先に書かれたようで、登場人物たちの心情がわかりやすく描かれているそうなので、そちらを読むとより深く映画を理解できるかもしれませんね。