柳瀬みちる『神保町・喫茶ソウセキ文豪カレーの謎解きレシピ』&春河35『文豪ストレイドッグス 1~2』2021/07/11

たいした意味はないのですが、文豪繋がりということで、この本と漫画を一緒に紹介します。


表紙からおわかりのように、軽いミステリーです。

元フレンチのシェフ・千晴は神保町の一角にある四階建ての雑居ビルの一階東側で≪喫茶ソウセキ≫を開店します。
もちろん店名は大文豪・夏目漱石からです。
開店してから七日目、お客は少なく、誰もいない時間帯もあります。
生まれてから26年の人生で「間違っていなかった」ことが一度でもあっただろうかと思う毎日。
目玉は「漱石カレー」。
神保町でカレーを出すなんて、とんでもないことですよ。
美味しいカレー屋が軒並みですから。
それなのに何故と聞かれると、大家さんからふたつ出された条件の一つだからとしか言いようがありません。
「夜遅くまで営業すること」と「カレーを出すこと」の二つを守れば、破格の賃料で貸してくれるというのです。

そんなある日、店に小説家・葉山トモキがやってきて、漱石カレーを食べて、「このカレーの、どこがどう『漱石』だ」とつっこまれます。
そのため千晴は店に置いてあった『三四郎』を読む羽目になります。
この本は千晴の母の形見でした。
本の中にレシートが入っていて、誰かの書いた手紙らしき文が…。
そこにまた葉山が現れます。
彼は『三四郎』を読み始めた千晴に漱石関連の資料を貸そうと言い、連れて行かれたのが、同じビル内の4階でした。
葉山が「カレーを出すこと」という条件をつけたオーナーだったのです。

レシートから始まる謎解きの合間に次々と新しいカレーをあみ出す千晴です。
「漱石カレー」以外に「百閒カレー」、「子規カレー」、元は「石油カレー」ですが美味しくなさそうなので、名づけて「エラリー・クイーン風ラム肉のカレー」など。
各作家の著書の中にカレーのことが載っているらしいので、内田百閒や正岡子規、エラリー・クイーンのファンの方はカレーの中身の推理をしてから読むといいかも。

思っていたよりも面白いミステリーでした。
シリーズにするとなると、カレーのことを書いている作家さんは他にいるかしら?


文豪ストレイドッグス」は「現代横浜を舞台に、中島敦、太宰治、芥川龍之介といった文豪たちが繰り広げる異能アクションバトル漫画」だそうです。
賛否両論の意見がある作品のようですね。
文豪をこんな風に使うなんて、けしからんと思う人もいるのはわかります。
私なんか、文豪たちをこのようにキャラクター化するという発想が面白いと思うのですが、不謹慎でしょうか?

孤児院を追われた青年・中島敦は餓死寸前のところ、川の中で流されている男を助けます。その男は自殺をしようとしていた太宰治でした。
そこに太宰を探しに国木田独歩がやってきて、太宰がお金を持っていなかったので、国木田に茶漬けを奢ってもらいます。
彼らは荒事が領分の異能力集団「武装探偵社」のメンバーで、今請け負っている仕事は人食い虎探しだそうです。
敦はその虎のことを知っており、敦から話を聞いた国木田は虎捜しを手伝わないかと言い出します。
お金に目のくらんだ敦は手伝うことにするのですが…。

表紙の一番目立つのが主人公の中島敦で、その隣の長いコートを着たのが太宰治、左上の眼鏡が国木田独歩です。
中島敦が可愛すぎですね。
キャラクターごとに異能があり、中島敦は「月下獣」という、非常に大きな白虎に変身する異能で、太宰治は「人間失格」という、直接触れたありとあらゆる異能を無効化する異能、国木田独歩は「独歩吟客」という、手帳の頁を消費することで、書き込まれたものを具現化・実体化する異能があるそうです。

ショックだったのが、私の好きな芥川龍之介がヨコハマの港を縄張りにするポートマフィアの一員だということです。
悪役じゃないですか、ひどいわぁ。
ポートマフィアの構成員は私の好きな文豪が多いです。
例えば樋口一葉とか中原中也、梶井基次郎、森鴎外、立原道造…。

まだ二巻しか読んでいないのではっきりとはわからないのですが、各文豪たちの生きていた時代もバラバラで、設定も違っていたりするそうです。
まあ漫画でフィクションですから、それほど目くじらを立てなくてもいいと思いますよ。
それが許せないと思う人は読まない方がいいですね。

この漫画が入り口となって、子どもたちが各文豪の本を読むようになるといいと思います。

コメント

_ ろき ― 2021/07/11 19時25分52秒

「文豪ストレイドッグス」は文章で読んだだけで笑えますね。各文豪の作品にちょっとは触れた高校生あたりが読むとツボりそう。
中島敦がカワイイ。
芥川は…もしかしてスパイで、じきに寝返るんじゃないの?
10巻以上あって楽しめそうですね。途中「フョードル」ってやつが出て来るみたいで、気になる・笑。

_ coco ― 2021/07/11 20時00分45秒

ろきさん、そうなんです、敦が可愛いすぎですぅ。
彼が主人公なんて、信じられません、笑。
芥川は太宰の部下だったことがあるらしいので、ろきさんの推理はひょっとしてあってたりして。
フョードルってそうですよ、ドストエフスキーのことです。
プーシキンやゴンチャロフ、ゴーゴリもそのうち出てくるらしいです。
世界の文豪が出てくるってことみたいです。
20巻まで出ているので、ゆっくりと楽しみながら読みますわ。

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