一色さゆり 『光をえがく人』2022/07/28

今のところ熱も喉も異常がありません。
心配なら旅行に行くなよという感じですけど(笑)。
旅行中にコロナに罹りそうなところと言えば、レストランです。
お料理は美味しくて満足しました。
しかし私たちの隣のテーブルに座っていた、地元の70代ぐらいの5人の女性たちがずっと大声でしゃべっていました(ノー・マスクよ)。
レストランはちゃんと席を離しているのに、写真か何かを見るために、わざわざ立ち上がって近寄っていって、話してもいました。
私はそういうことが気になるので、そろそろ外食を解禁しようかと思っていましたが、止めますわ。
旅もしばらくおあずけです(T.T)。


5編の短編集。
今までのように美術やアートの世界そのものを描くというのではなくて、アートに絡めてアジアの政治情勢やそれに翻弄される人々などを描いた作品です。

「ハングルを追って」
久崎江里子は美術大学で事務職をしている。
ある日、淀川の遊歩道沿いに設置されたベンチで手書きのハングルで書かれたアドレス帳を拾う。
ハングルが読める油画科の助手、早瀬海子に見てもらうと、持ち主の名前はわかったが、書いてあるのはすべて韓国の住所だという。
海子は道で偶然拾ったアドレス帳から作品を作ったフランス人女性アーティスト、ソフィ・カルのオマージュを作りたいと言い出し、江里子は海子と一緒にゴールデンウィークに韓国を訪れることになる。

「人形師とひそかな祈り」
人形師、若柴正風の作る御所人形は、子どもの災難が取り払われるという評判だ。
だが正風は信じていない。なぜなら彼の家族に残酷で取り返しのつかないことが起っていたからだ。
ある日、知り合いのキヨにフィリピンから来たノアを紹介される。
正風は人形づくりに興味のあるというノアに人形づくりを教えるようになる。
しばらくしてノアはフィリピンに帰っていった。
正風は結婚をするというノアに自分の最後の御所人形を送った。
その後ノアから自分が作ったというブルール(木彫りの人形)が届く。
添えられた手紙にノアが日本にきた理由が…。

「香港山水」
彩華は実業家と結婚し、北京から香港に移住してきた。
子どもができず、夫から蔑まされているように感じ、いつしか自分の意見を言えなくなっており、そんな彩華に夫は暴力を振るうようになっていた。
そんな折、義父から勧められ美術品を買うことにした夫から、めぼしいものを探すように命じら、彩華は自分の心を見事にうつした一枚の水墨画を見つける。
画廊の担当者から、彩華はその水墨画を描いた成龍を紹介される。

「写真家」
写真家だった映子の父がモンゴルから日本に帰って来た。父は映子が小学校に上がった頃から家に寄りつかなくなっていた。
父はウランバートル校外の村で酔ったまま寝てしまい、昏睡状態で見つかり、目を覚ますと、自分の名前も妻や映子のこともわからなくなっていた。
結婚間近の姉ヒカルは父を受け入れようとはしなかったが、映子は…。

「光をえがく人」
バングラデシュ出身の後輩に連れられていったミャンマー料理店に、僕は通うようになった。
店には絵が一枚だけ飾ってあり、僕はなぜか目を惹かれた。
店主と会話をはじめてしてから次に店に行った時、僕は思いきって誰が絵を描いたのかを聞いた。
そうすると「友人が監獄で描いたんです」と店主は答えた。
たまたまその日は嵐で、雨宿りする時間つぶしにと、店主はミャンマーの民主化運動のことと監獄で出会った、この絵を描いたHのことを話し始める…。

韓国と香港が舞台のお話は、行ったことがあるだけにより身近に感じました。
他の国のことはニュースなどで報道されていても、現実感を持てないのではないでしょうか。
この本を初めにして、色々な国のことを知っていくのもいいかもしれません。

心に残った言葉。
「ーー水墨画では、描かれたものを見るのではなく、描かれたものを通して、自分の心を観ることが大事なんだよ。」

水墨画だけではなく、アートにこういう見方があるのかもしれませんね。


<今日のおやつ>
久しぶりにクッキーを頼んでみました。


バターの匂いが…(涎)。