山本文緒 『無人島のふたり 120日以上生きなくちゃ日記』 ― 2022/11/17
山本さんは昨年の十月に膵臓癌でお亡くなりになりました。
享年58歳でした。
わたしは彼女の本は『再婚生活 私のうつ病闘病日記』(2007年5月)しか読んでいませんので彼女のことはよく知りませんが、『再婚生活』を読む限りではとんでもない日常生活を送っていました。
タバコを吸うし、遊びに行くと午前様は当たり前、油物の多い食事をしていますよ。脂肪の取りすぎって膵臓に悪いのではなかったかしら。
この時に煙草とお酒を止めたといいますが、癌などの病気になるのは若い頃の生活状況が関係するのかしら…。

山本さんは2020年の終わりぐらいに胃が変だと思い始め、年が明けてから痛みと胸焼けがひどくなり、三月上旬に検査で慢性胃炎と診断されます。
しかし痛みはおさまらず眠られなくなり、血液検査をすると、γ-GTPが千を越していたため大きい病院で診てもらいます。
そして膵臓がんのステージ4という診断が下されます。
既に転移があり、抗がん剤で進行を遅らせることにしますが、山本さんに抗がん剤は合わず、化学療法はしないことにします。
余命を主治医に聞くと、半年、抗がん剤が効いたとしても9ヶ月だということでした。
本の副題の120日とはセカンドオピニオンの医師がいった予後4ヶ月のことです。
膵臓がんが分った時には再婚した夫さんは会社を早期退職していました。
うつ病の時には休職までして支えてくれた彼でしたが、今回も山本さんのために東奔西走してくれます。
「突然20フィート超えの大波に襲われ、ふたりで無人島に流されてしまったような、世の流れから離れてしまったような我々」
山本さんと夫さんの関係がとても好ましく思えました。
彼女の選んだのが、在宅での緩和ケア。最期まで夫さんと二人がいいんですねぇ。
山本さんは抑えた表現で淡々と書いています。
「せめてこれを書くことをお別れの挨拶として許してください」
許しなんて求めなくてもいいのに。
最期まで書き続けることが作家の性なのでしょうね。
本島に帰った夫さんは元気にしているのかなと、ちょっと気になりました。
山本さんがいなくなっても夫さんは彼女と暮らした軽井沢の家で暮らすようです。
わたしは山本さんが書いているように夫がいなくなったら今の家では暮らさないと思います。
最期まで泣き言を書かなかった山本さんは、気配りのできる強いお方だと思いました。
ご冥福をお祈りいたします。
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