東野圭吾 『マスカレード・ライフ』2025/11/06

マスカレード・シリーズの五作目。


警視庁を辞め、ホテル・コルテシア東京の保安課長になった新田浩介は、前回の事件で面識のある警視庁捜査一課の梓真尋から捜査協力を頼まれる。
ホテル・コルテシア東京で明後日の午後『日本推理小説新人賞』の選考会が開催されることになっているが、その新人賞の最終候補者の一人が殺人事件の容疑者で、受賞することになったら記者会見の後に任意同行を求めたいというのだ。

同じ頃に新田克久という老人がやって来る。
彼はシアトルに法律事務所を構える浩介の父親だった。
彼は数十年ぶりに友人と会うというが、浩介には誰か予想はつかない。

そんな時に梓警部たちが捜査している殺人事件の被害者遺族や容疑者らしき人物、挙動不審な母娘がチェックインする。

同僚になっても浩介と山岸尚美のコンビは健在ですが、今までと比べるとそれほどドキドキするような展開がなく、ちょっと物足りなかったです。
山岸さんにもっと活躍してほしかったです。
刑事の浩介とホテルウーマンの山岸が反発し合いながらも、協力し合うって感じがよかったんだと思います。
今回、面白かったのは受賞作品を決めるときの選考会の様子です。
実際はどうかわかりませんが、受賞作品ってこうやって決めるのかと興味深かったです。
このシリーズがお好きな方は読んでもよろしいんではないでしょうか。
初めて読む方は一作目から読むのをお勧めします。

石田衣良 『池袋NO NAME 池袋ウエストゲートパーク21』2025/10/24

池袋の西口公園近くの果物屋の息子で、「池袋のトラブルシューター」と言われている真島誠ことマコトが、依頼された事件を、「G-Boys」のキング、タカシやハッカー、ゼロワンの力を借りて、解決していく池袋ウエストゲートパーク・シリーズの21作目。


「北口オーバードーズ」
仕事中のマコトのところにガキの女が来て、人を殺して欲しいと言う。
話を聞くと、立ちん坊仲間のモモナがクスリの売人のキリンから買った市販薬のオーバードーズで病院に搬送され、未だに意識が戻っていないという。
マコトはキリンを殺すのではなく、潰すということで依頼を受ける。

「池袋二丁目サウナセンター」
G-Boysの王様、安藤崇からの紹介で、マコトは会員制バー、セブンに行く。
セブンは同性が好きなタイプのお客が来るバーで、ノンケも歓迎だという。
依頼者はオーナーの熊谷奈々紀。
ナナキの師匠がロマンス詐欺の被害に遭ったが、二週間前にナナキは師匠に詐欺を働いた若者、ツバサに偶然サウナで出会い、彼をどうしようか迷っている。マコトにツバサと会ってもらい、人を見極めた上で彼の量刑を決めて欲しいという。
サウナが苦手なマコトだったが、『池袋サウナセンター サローネ』でツバサを紹介してもらう。

「中板橋ルッキズム」
マコトはタカシにライブ配信プラットフォームを運営するIT企業「ロー・フィッシュ」の本社に連れられて行く。
ライバーの中橋キテラに質の悪いストーカーがついているので、警護をして欲しいという。
キテラは自分をブスだと信じて疑わない、ネガティブの天才だった。
直接の脅迫も、肉体的な接触もないというので、軽く考えていたマコトだったが、その日のライブ後、悪意のある嫌がらせがある。
本気になるマコト。

「池袋NO NAME」
Gボーイズのメンバーが闇バイトで紹介された強盗の実行犯で捕まった。
彼らが関わったのは地域限定版のトクリュウ、池袋NO NAME。
マコトはGボーイズのメンバー三人と共に潜入捜査を行うが…。

今現在に起こっている社会問題を扱ったシリーズ。
今回は「立ちんぼ問題」と「市販薬の乱用」、「ロマンス詐欺」、「ストーカー」、「闇バイト」などです。

市販薬の咳止めや風邪薬、睡眠薬で眠気や疲労感がなくなったり、気分が落ち着いたり、高揚したりするそうで、若者たちに流行っているようです。
麻薬ではないから大丈夫とでも思うのでしょうが、依存性があり、飲み続けるとだんだんと効かなくなっていき、オーバードーズになってしまい、命を失うこともあるそうです。
保健所や精神保健福祉センターなどの専門家に相談してみましょうと書いてありますが、どれほどの人が利用しているのでしょうか。
まずは周りの家族などが気づき、相談に繋げていくというのが望ましいのでしょうがね。

毎年楽しみにしているシリーズではありますが、キング、タカシが自分たちの立ち位置に迷い始めている感じです。
もう若くはないし、前のように闇雲に突っ込んではいけないし…。
色々と難しい世の中になってしまったようです。
Gボーイズは卒業して、マコトと一緒に池袋のトラブルシューターをやってもいいかも。

では、本に出てくる恒例の(でもないけど)この言葉はどういう意味でしょう、をやってみましょうか。
①「立ちん坊」、「立ちんぼ」
特定の店舗を介さず、街頭や路上など公共の場所で立って客を待ち、売春相手を探す個人売春の形態を指す俗語。
②「オーバードーズ」
医薬品を、決められた量を超えてたくさん飲んでしまうこと。
③「ノンケ」
同性愛者から見た異性愛者のこと。フランス語のnonと組み合わせた「その気がない」という意味の隠語。
④「ロマンス詐欺」
恋愛感情や親近感を抱かせながら投資に誘導し、投資金名目やその利益の出金手数料名目などで金銭等をだまし取る詐欺。
⑤「ライバー」
ライブ配信プラットフォームを利用してリアルタイムで動画を配信する人。視聴者からの「投げ銭」が主な収入源。

私は「ライバー」がわかりませんでした。
Youtuber やVtuberは機材などを用意するための資金や編集スキルが必要ですが、ライバーは誰でも簡単にできるようです。
でも、危ない面もあるようです。

どんな社会問題が扱われるか、また来年を楽しみに待ちましょうね。

鳴神響一 『殺意の断片 湘南機動鑑識隊 朝比奈小雪』2025/10/22

「湘南機動鑑識隊 朝比奈小雪」シリーズの二作目。


美大出身の巡査・朝比奈小雪は神奈川県警機動鑑識隊江の島分駐所に勤務する鑑識員。

八月の月曜日、江の島分駐所に出動要請の電話が入る。
江の島署管内の≪片瀬画廊≫で不自然死した遺体が発見されたという。
小雪の所属する第二班が出動する。

遺体は画廊のマネージャーの田中義之で、遺体のまわりに青と赤の布か紙の破片らしきものが散らばっていた。
小雪が許可を得て調べてみると、それは油彩画を切り裂いたものだった。
これは犯人のメッセージだと小雪は思う。

そんな時に、捜査一課特命係の向井勝太郎警部補が分駐所にやって来て、美術関係の事件なので、再度小雪に手伝ってほしいと頼む。
機鑑隊の仕事に故障のないようにと念を押されたが、小雪は向井を手伝うことにする。

美術に関する事件だからといって、小雪が出張ることもないような気がします。
小雪が突き止めたことって、美術のことに疎い普通の刑事たちも突き止められることではないでしょうか。
前回も思いましたが、小雪のやってることは鑑識の仕事じゃなくて刑事の仕事ですよね。
鑑識員が捜査に参加するなんて実際にはなさそうですが、そういう前提のお話なんだと思って読むといいんでしょうね。
私はもっと鑑識員たちが頑張るというお話を読みたいもんです。

人気があるのでしょうか、三作目も出ているようです。
一応読んでみて、続けて読もうかどうか考えましょう。

岩井圭也 『追憶の鑑定人』2025/10/13

パソコンは無事に使えるようになりましたが、今は古いパソコンを使っています。
新しいパソコンが古いマウスを認識してくれないので、マウスが使えず面倒なのです。
わんこたちの写真等をどうしようかと考えています。
思い出にUSBメモリなどに入れて保管しておきましょうか。
パソコンはすぐに廃棄しないのでゆっくりとやっていきます。

「最後の鑑定人」シリーズの三作目。
ドラマになっているのは知りませんでした。
藤木直人が主人公の土門誠で、助手の高倉柊子が白石麻衣だとか。
私のイメージとは違います。


「交感原理」
土門鑑定所代表、土門誠は弁護士の相田直樹から鑑定の依頼を受ける。
八月下旬に都内の保険代理店に勤める水原佳南絵という女性が、二月に元夫の寺井信一を殺害したと言って警察に出頭してきた。
遺体は供述どおりに多摩の山林で見つかったが、頭部がなかった。
寺井は三年前から水原のストーキングをしていたというので、情状酌量を求めるためにストーキングの形跡を集めたいというのだ。
土門の調査から意外な事件の真相が浮かび上がってくる。

「雑踏に消ゆ」
土門誠と元治大学の研究室で同期だった<株式会社ネクストウェザー>の代表取締役社長の鳥飼創一から紹介された、S市が主催している二月の花火大会の最中に起こった雑踏事故の予備調査の依頼を受ける。
音声から思いもかけないことがわかる。

「見知らぬ水底」
大田署の管轄区内の京浜運河のコンクリート護岸で男性の遺体が発見された。
遺体は五十八歳の会社役員、室田誠治のもので、死因は溺死と診断されたが、自宅と会社が多摩地区で、亡くなる前の行動が不明だったことから、大田署強行犯捜査係は刑事事件の可能性も視野に入れて捜査することになる。
トライエージ検索では薬物を常習していた形跡は見つからなかったが、社員の証言からその可能性があり、大田署の刑事、都丸勇人は土門鑑定所に尿や血液の分析を依頼する。

「灰色の追憶」
土門誠と元治大学の研究室で同期だった協和大学理学部分子遺伝学研究室の教授、猪狩愛が、研究室の隣の納戸からの火災で急性一酸化炭素中毒になり入院する。
納戸にあったモバイルバッテリー内部のリチウムイオン電池が出火元と考えられた。
猪狩は一旦退院するが、容体が悪くなり、再び入院する。
警察は出火が深夜であることから内部の犯行で、猪狩が自ら火を放ったのではないかと疑い始める。
土門は「私が信じるのは客観的事実のみです」とはいうが・・・。

今回は土門の母校、元治大学理学部生命科学科研究室の同期の三人が出て来ます。
<株式会社ネクストウェザー>の代表取締役社長の鳥飼創一と協和大学理学部分子遺伝学研究室の教授、猪狩愛、そしてある特殊な仕事をしている窪俊吾。
彼らの間には強い絆があり、未だにその絆は強いままです。
土門はこの三人にどれほど救われたことでしょう。
羨ましいです。

犬が雑踏事件で亡くなった唯一の被害者と聞いて奮起する助手の高倉さんが面白いです。まずいハーブティーも健在ですww 。

<シリーズの順番>
③『追憶の鑑定人』(本書)

松嶋智左の「流警」シリーズの二冊2025/09/16



お祭りをやっているというので行くと、程よく神輿がやって来ました。
この神輿は男の人ばかりでしたが、女の人も担いでいるのもありました。
声が高いせいか担ぎ声が金属音っぽかったです。


『流警 傘見警部交番事件ファイル』
南優月巡査部長は傘見警部交番の警務係だ。
彼女は被疑者を護送中に事故を起こし、捜査一課を一年も経験しないで出され、傘見警察署へ異動していた。
彼女にとって傘見警察署は流刑の地だ。
傘見警部交番は元は傘見警察署だったが、地域の人口が減少し、産業も衰退した結果、警部交番に格下げされ、今は総勢十七人の署員が勤めている。

東大出身のキャリア、榎木孔泉が県警本部の地域部長から傘見に異動してくる。
彼は迎えの車にも乗らずにやって来て、専用住宅があるというのに職員寮に住み、自分で料理を作るようだ。
傘見に配属されたことに全く不満はないようで、恬淡な態度を取っている。
優月はそういう孔泉の態度が解せなかった。
交番長は警視正という階級に拘らず、普通に接するようにと言うが、優月は素直に頷けない。
何かしくじって傘見に飛ばされたのか、それとも上と揉めたのか・・・。

孔泉の世話係になった優月は彼とともに行動するが、彼の思惑がわからず、彼に振り回されることとなる。

孔泉はどうもコニュ障があるようですが、捜査能力は抜群で、傘見地区に起こった殺人事件や傷害事件、警察官の不祥事などをうまく解決に導いていきます。
ついでに優月が傘見に飛ばされるきっかけになった出来事の裏を的確に見抜きます。
最初の方では優月のやる気のなさがとても嫌で、そのせいなのか話がつまらなく、読むのを止めようかとも思いましたが、だんだんと面白くなっていきますので、安心して読み進んでいって下さいww。
孔泉の警察官としての矜持は素晴らしいです。

流警 新生美術館ジャック』
総合アミューズメント施設『フェリーチェパーク』の五月オープンに先駆け、『新生美術館』が四月に開館することになり、開館式典が始まろうとしていた。
県警本部警備部警備第一課の巡査部長・志倉悠真は警備部長の随行兼警護の任務に就いていた。

式典開始の八分前に、激しい爆発音が轟き、美術館は狐面をつけた集団に占拠される。
その時、美術館の中にいたのは、副知事の秦玖理子と一人の少女、そして警備部長の榎木孔泉だった。

犯人たちは現金十億円と地元の陶芸家の作品が盗作であることを公表するように要求する。
孔泉たちは県警と密に連絡を取りながら、狐集団の正体を探りつつ脱出の機会を伺う。

犯人たちの真の目的は何なのか。
そして孔泉たちは無事に脱出できるのか。

読みながら似たような話を思い出しました。そういえばドラマでもありましたよね。
二番煎じみたいとも思いましたが、可愛い凜ちゃんが出てきたので許します。
彼女がいたからこそ悪巧みが明らかになったんですものね。
孔泉さん、めちゃ副知事に嫌われていましたが、彼のような男は副知事のような女は相手にしたくないでしょうね。
孔泉に人間らしさが少し出てきたようです。

読み始めは一作目の南優月巡査部長がいつ出てくるのかと思いましたが、最後まで出てきませんでした。
このシリーズは毎回孔泉が異動していき、異動先で孔泉と関わる警察官が主人公として語るお話なんですね。
だから次々と職場が変わっていくという意味で「流警」なんですか。

三作目も八月に出ていて、なんと舞台が温泉街です。
特に孔泉さんの裸は見たくないのですがww。
まだ電子書籍になっていないようなので、そのうちに読みます。

長岡弘樹 『新・教場2』2025/09/14

アラ、「教場」映画プロジェクト原作だそうです。
そのためかとても読みやすくて、すぐに読み終わってしまいました。


警察学校の教官の風間公親は第九十五期初任科短期過程の担任だ。
昨日、入校式も終わり、本格的にスタートした時に、風間は四方田校長に呼び出される。
風間が刑事指導官をしている時に彼を襲い、右目を負傷させた十崎波瑠が「風間道場」門下生により逮捕されたが、その門下生を月に一名ぐらいのペースで、半年間で六名を呼び、特別講師をしてもらってはどうかと言うのだ。
その時に風間と一緒に担当した事件のエピソードなどとともに十崎波瑠逮捕の話をしてもらいたいらしい。
風間は承知する。

全部で六話の短編集です。
章ごとに二人の学生にまつわる話と門下生による特別講習の話があり、最後に風間に不正などを見抜かれた学生が一人ずつ退校していきます。
警察学校は普通の学校とは違い、競争意識が強く、隙あらばライバルたちを蹴落としてやろうという人が多いんですかね。
それとも話を面白くするために、そうしているのですか。
風間は人を見抜く天才です。
彼がいなかったら、とんでもない人が警察官になってしまいますねww。

映画前提というのがなんとも言えませんが、それなりに面白いです。
ドラマを見ていないので、私の中の風間はあくまでもキムタクではないです。
そうそう、だんだんと風間が丸くなっていくようで、それが残念です。
初期の頃の風間は怖いけど、私は好きでした。

<教場の順番>
①『教場
②『教場2』
③『教場0』
④『風間教場
⑥『新・教場
⑦『新・教場2』(本書)


<今日のわんこ>


用事を終えたママが見えて嬉しそうなわんこたち。
この後、ママがカメラを向けているとわかった兄はすかざず横を向いてしまいました。

川瀬七緒 『18マイルの境界線』2025/09/06

法医昆虫学捜査官シリーズの八作目。


東京の稲城カントリークラブのゴルフコース外の山林で女性の遺体が見つかる。
遺体は全裸で、歯が抜かれ、顔面が鈍器で潰され、髪が切られ、灯油で燃やされ、手足は炭化しており、身元を特定できない状態だった。

警視庁捜査一課の岩楯祐也と相棒の深水彰は昆虫学者の赤堀涼子と協力して捜査に当たることになり、多摩中央警察署に出向する。

その三日後、神奈川県相模原市にある解体スクラップヤード敷地内で女性の遺体が見つかる。
遺体の損壊状態から稲城と同一犯の犯行であると見なされるが、稲城カントリークラブと解体スクラップヤードは30キロ以上も離れていて、関係者に繋がりを見つけられなかった。

事件は難航を極めるが、赤堀が遺体の昆虫相から真相を導き出す。

今回は岩楯と深水が捜査する様子が詳しく描かれていて、あまり変人の赤堀先生は登場しません。
その代わりと言っていいのかどうかわかりませんが、捜査分析支援センター技術開発部の波多野とプロファイラーの広澤春美、嶋野警部補、解剖医高梨などが再度登場(前にも登場していたのをすっかり忘れていますww)してくれます。
どの方も強烈なキャラをしていますので、是非これからも赤堀先生と組んで、捜査をしてもらいたいものです。
ちょっと気持ち悪い場面がありますが、大丈夫ですよ(たぶんね)。
私はクロクサアリの匂いをかいでみたいなぁww。

<法医昆虫学捜査官シリーズの順番>
①『法医昆虫学捜査官』(2012年)
④『メビウスの守護者』(2015年)
⑤『潮騒のアニマ』(2016年)
⑥『紅のアンデッド』(2018年)
⑦『スワロウテイルの消失点』(2019年)
⑧『18マイルの境界線』(2025年)(本書)

篠田節子 『青の純度』2025/08/31



五十歳の誕生日の日、有沢真由子は二十年近く前に投資対象として買った熱海のリゾートホテルを久しぶりに訪れた。
そこで出会ったのが、バブルの時代に圧倒的な大衆的知名度を獲得していたジャンピエール・ヴァレーズの絵だ。
インテリア絵画として美術業界では黙殺され、評論家には相手にされず、今や名前を口にするだけで笑いを誘う、バブルの遺産のようなヴァレーズの絵に、真由子は不覚にも感動した。

年度が変わり、真由子がチーフエディターをしている女性関連書籍企画出版部門、通称「フェミナ」で旅行関連のウェブマガジンの企画が持ち上がる。
取り上げるのはハワイで、比較的アピールしやすいミュージシャンとアーティストを特集することになる。
たまたま企画書を作った若い編集部員にヴァレーズの絵を見せると、気に入ったようで、特集の中で取り上げたいという。
版権を調べてみると、窓口は「ギャラリー藤森」で、虎ノ門の外資系ホテルでヴァレーズの原画展が行われるという。
世間から忘れさられているはずなのに、何故今、ヴァレーズの原画展なのかと疑問に思う真由子。

真由子は原画展に行ってみた。
すると、頻繁にシニアキュレーターを名乗る人物からメールや電話が来るようなる。
トラブルが懸念されるので、ウェブマガジンのハワイ特集にヴァレーズは載せないことになる。

しかしその後、エステサロンの広告主のトラブルでウェブマガジンは廃刊となり、真由子は肩書きのない編集長になる。
そんな時に真由子はヴァレーズを取り上げた本を作ろうと思いたつ。

知り合いの持っている絵の写真を本に載せることにするが、作品使用の許諾を得なければならない。
「ギャラリー藤森」はヴァレーズのブルーファンタジアシリーズの著作権だけを管理しているという。
真由子はリフレッシュ休暇を使いハワイに行き、ヴァレーズに直接会って交渉することにするが、不思議なことに、あれほど日本で人気があったヴァレーズを知っている人がハワイにいない。
わずかな手がかりを頼りに調べていくと・・・。

読みながら、ラッセンの絵を頭の中に思い浮かべていました。
篠田さんは山中湖のホテルでラッセンの絵に出会い、その時経験した感覚を小説にできないかと思ったことがこの作品の出発点になったそうです。
ラッセン、なんであんなに流行ったんでしょうね。
私の友人も買ったと言っていましたが、そういえば買った場所が画廊ではなく、ホテルかどこかの展示会だったような・・・。
ラッセンはまだ生きていると思いますが、まだ絵を描いているのでしょうかね。
この作品は全くラッセンとは関係なく、彼の絵にインスパイアーされて書かれたというだけです。
ちょっと嫌だなと思える人物が一人出てきますが、心温まるお話です。
絵でも生き方でも、本人がいいと思えばいいんで、結局のところ他人の評価なんて関係ないんですよね。
そう思えるお話でした。

堂場舜一 『拒絶の理由 警視庁総合支援課4』2025/08/30

警視庁総合支援課」シリーズの四作目。


大井町駅前で会社員同士が呑み会で喧嘩になり、一人が死亡した。
二人とも明律製菓の大井町工場に勤務しており、居酒屋で呑んでいる時に険悪な感じになり殴り合い、被害者は倒れて頭打ち、ほぼ即死状態になる。
加害者はボクシング経験者だった。

翌朝、総合支援課の打ち合わせで所轄の品川南署が被害者家族の様子がおかしいといっていたということが出る。
柿谷晶は支援課新人の高尾ひなたと共に被害者家族の家に行く。

被害者の父親の木元拓夫は妻が倒れたというのに、金がかかるから病院は駄目だと言う。
どうも殺された息子・純の葬式費用の心配をしているようだ。
とにかく生活が苦しいようで、家族の誰も携帯を持っていない。
借金があるのか?
純は中学を卒業後高校に進学せずに働き始め、仕事を転々とし、この四月にやっと明律製菓に正社員として就職したという。

その後の木元一家への対応はスムーズに進んだが、葬儀後、警察に連絡もなく一家はいなくなる。新潟へ行ったらしい。
木元の職場には休職の申し出があり、弟の光はしばらく休ませると学校に連絡があったという。

晶は品川南署の井端と共に新潟へ向かう。
単純な事件のはずが、調べていくと古い失踪事件との関わりが明らかになってくる。

今回の事件は晶の兄の事件と似ていて、晶には人ごとではないようです。
それにしても木元一家は何故、頑なに支援課の援助を断り、警察との関わりを避けようとしたのでしょうね。
逃げると警察は調べるのにね。

びっくりしたのが、晶のキャラ変です。
評判が悪かったので変えたんですかね。
まともになってますww。
でも産休に入った秦香奈江の代わりの新人、高尾ひなたの扱いがひどいです。
ひなたの見た目が「子ども」みたいだからですか、評価できない状態が続いているなんて言って、今までの自分を棚に上げてませんか。
あなたの方がひどかったですよ。何様のつもりかと言いたくなりましたわww。
やっぱり堂場さん、女性を描くのが下手かも。

晶の家族問題が次回も描かれるのでしょうか。
それとも出し惜しみするのかしら。
あくまでも支援課の活躍をもっと読みたいと思いますので、よろしくお願いします。

中山七里 『災疫の季節』2025/08/08

コロナ渦の事件を描いた作品。


「週刊春潮」の副編集長の志賀倫成は、部数を伸ばすために、人の不安と助平衛根性につけこみ、ワクチン接種の不安を煽るような記事を掲載していることに後ろめたさを感じていた。
反ワクチン団体に悩まされているくぬぎ病院で勤務医をしている高校時代の悪友、伊達充彦にもカルト教団のパンフレットに成り下がったのかと非難される。

そんな頃に反ワクチンを主張する阿神儀会がくぬぎ病院でワクチン接種を妨害しようとした時に、会の代表・阿川兵衛が薬品保管庫で筋弛緩剤を打たれて窒息死しているのが見つかる。
警視庁捜査一課桐生班が出動する。
容疑者は現場にいた70数名。
防犯カメラは襲撃メンバーにより止められており、不詳の下足痕や不詳毛髪が山ほどある。
コロナ渦以降病院業務のシフトはメチャクチャで、事件当時、自分がどこにいたのか他人に証言してもらうのは難しい。
捜査員の葛城公彦の脳裏に前途多難という文字が浮かんでいた。

志賀は自身の事件で出会った葛城から有益な捜査情報を引き出し、それを基に独自の取材を始め、阿川兵衛の生まれも育ちも東京都内で東大理三を経て医師免許を取得というプロフィールが嘘であったことがわかる。
阿川は茨城県久慈群大子町生まれの高卒で、母親が霊感商法で借金をしていたため、土地建物を売却したが、隣近所にも借金をしまくっていたため町を出ざるおえず、その後、両親は離婚し、彼は父親と暮らしていたという。
阿川はカルト教団に復讐する手段として、自らカルト教団のリーダーとなり、世間を撹乱しようとしたのか。

阿川が死んでからすぐに阿神儀会に新しいリーダーが現れる。
阿神儀会は独立した団体ではなくて、もっと大きな組織の一部なのか?
そして犯人は病院関係者なのか?
志賀の中で伊達への疑惑が芽生える。

コロナ渦のことを思い出しました。
医療関係者の方々には感謝しかありません。
本の中で伊達医師は言っています。

「問題なのは終息の時期や終わり方ではない」、「学ぶことだ。自分の言動を省みて、役に立ったことと立たなかったこと、失敗したことと成功したこと、後悔したこととしなかったこと。そういうのを忘れずにいれば、次に似たような災いが降りかかっても慌てずに済む」

果たして私たちは学んだのでしょうか。
次の災いの時に同じような間違いを犯さないでしょうか。

気になった言葉があります。

「所詮、出版社にとって思想など商品でしかない」

コロナ渦で暇を持て余している時にあることが気になり、それがネットや新聞などでどう扱われているか注目して見ていました。
そうすると、偏向的なことが書かれていたり、あったことを公にしないようにしていたりすることがありました。
マスコミは真実を報道するという使命があると思いますが、そんなことを考えているのは少数なのかもしれないですね。

ミステリとして読むと、な~んだってなっちゃいます。
この頃、最後の数ページで犯人を明かすことが増えて来ているような。
社会問題を扱うのは手慣れているのですから、無理にミステリにしようと思わなくてもいいような気がします。
新刊が8月と9月に出るようで、出版社が許してくれないのかもしれませんが、じっくりと時間をかけていいものを書いて欲しいです。