柴田よしき 『シーセッド・ヒーセッド』 ― 2026/10/16

本業、保育園の園長、副業、探偵という花咲慎一郎シリーズの三作目。


「ゴールデンフィッシュ・スランバー」
花咲真一郎のところに城島からストーカー被害に遭っている女性依頼人がまわされてきた。
立花亮子、二十一歳、自由業。
ここ二、三年以内に別れた恋人が、俳優の辰波嶺二。
ここで芸能音痴のハナちゃんは気づく。
この女は中・高校生にカリスマ的人気を誇る歌手、A-YAだと。

三ヶ月前、一部の人間にしか教えていない携帯に無言電話がかかってきた。
非通知の着信を拒否したら、今度は白紙のハガキが三~四日おきに届くようになり、最後の一枚にエンボス加工で「死ね」という文字が施されていた。

何で売れっ子の芸能人が城島のところに仕事の依頼をしたのか?
何か裏があるのでは?
そう思い城島に問い詰め、警察に介入してもらうように進言したが、とにかく城島は脅迫者が誰なのか突き止めてくれと言う。

とりあえず亮子がピックアップした携帯番号と住所を知っている人のリストをもとに、聞き込みを始める。
そんな時に亮子のマネージャーから亮子にまつわる思わぬことを聞く。

「イエロー・サブウエイ」
山内練の個人秘書、長谷川環から依頼を受ける。
生後二か月の赤ん坊の母親捜し。
赤ん坊の父親があのイースト興行社長、山内練で、母親はイースト興行傘下のデートクラブで働いていた菅野美夏。
彼女は山内のマンションの部屋の前に赤ん坊を置いていなくなった。

美夏とマンションの部屋をシェアしていた女に話を聞くと、美夏が置いて行った荷物を会員制スポーツクラブのロッカーに保管してあるという。
なんとそれは大粒のダイヤモンドらしき宝石が埋め込まれた、大きなブローチ。
赤ん坊の母親捜しが、とんでもない騒動に巻き込まれることになるのか…。

「ヒー・ラブズ・ユー」
城島から三日でカタがつく、ヤバクないという仕事を受ける。
ある女の尾行を含む素行調査。
依頼人はノーベル化学賞の候補者、竹本信三。
竹本に会ってみると、ストーカーかと思えるほど、その女に関して情報収集をしていた。
明日からロンドンに行くらしく、毎日、調査結果をメールするように指示される。
メールだって!JPEGって何だ?インターネットなんてやってないよ、と焦るが、とりあえず園のバイトの子に教えてもらう。

尾行はひとりではできないので、助っ人を笹村えつ子に頼む。
えっちゃんは探偵のイメージから遠い女性で、女性探偵の中でも指折りの優秀な探偵だ。
えっちゃんは早々にターゲットが勤める研究室の教授と仲良くなる。

ところがビルの非常階段の踊り場で監視をしていると山内が現れ、美夏の子どもと正式に親子鑑定をしたいと言い出す。
なにやら事情が変わったというが。
ついでに山内は園で預かっている子供の保護者のことで忠告して去っていく。

そんな日に、ターゲットはいつもと違う行動を取る。
彼女は誰かを脅迫しているのか…。


今回は短編集でした。
一章であったことをずっと引きずっているハナちゃんでしが、どうしようもないです。それも彼の気の良さの表れです。
山内練が出てきて、嬉しくなりました。
RIKOシリーズとはまるっきり違う山内です。
彼は女はあまり好きじゃないようです。
ハナちゃんは男で身体の芯から善人だから、山内は彼に対して優しい(程度の問題です)のでしょう。

とても魅力的な登場人物が出てきました。
長谷川環です。
彼女は性別適合手術を受けて女性になった人です。
子ども好きな面があり、用事がなくても「にこにこ園」にやって来て、子どもたちと触れ合っています。
このシリーズを読まなければわからなかった一面です。

ハナちゃんがメールやらネットで困っているのは、この本が出版されたのが2005年だからです。
その頃は今ほど一般的ではなかったのです。
今の若者は携帯とかネットがなかったころなど想像ができないでしょうね。

あと二冊あるようなので、楽しみに読んでいきます。

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