トマス・ハリス 『レッド・ドラゴン』2007/04/23

『羊たちの沈黙』で、鮮烈な印象を与えたレクター博士が初登場したのが、この本だそうです。
顔にマスクをつけられ、バッハのピアノの旋律を、恍惚とした姿で聞いている、アンソニー・ホプキンズは最高でした。
この本は、レクター博士の話ではありません。
彼は残念ながら、刑務所の中にいるんですもの。

レクターを捕らえた元FBIグレアムは、妻のモリーとその連れ子ウィリーと一緒にフロリダ・キーズでくらしていました。
そこに、FBIの特別捜査官ジャック・クロフォードがやってきます。
一ヶ月の間に二つの家族が自宅で殺さ、その殺されかたは尋常ではありませんでした。
その2つの事件の証拠調べを、FBIを辞めたグレアムにしてもらおうと、クロフォードは考えたのです。

怪しいメーター検診員の存在をつきとめましたが、事件に進展はありません。
グレアムは自分が捕らえたレクターに会いに行き、犯人に関する意見を聞こうと思いましたが、たいした意見は貰えず、愚弄されただけでした。
しばらくして、二家族を殺した犯人が、レクターに便りをよこします。
彼らは密かに連絡を取ろうとしていました。
そのことを上手く利用し、犯人を呼び寄せられないかと思い、策を練るのですが…。

レクター博士の出番が少ないので、残念ですが、流石彼です。少ない出番でも、十分存在感があります。
ところが、犯人がそれほど怖くないのです。盲目の女性と知り合ってからの、心の葛藤なんて、殺人鬼にあるまじきことです。
このつめの甘さが残念です。
一応怖さが売り物ですからねぇ(そうじゃない?)。

『羊たちの沈黙』の印象があまりにも強くて、この小説も映画になっているらしいのですが、観なくてもいいかな…という感じです。
『羊たちの沈黙』は映画・小説共にいいな、と再度確認できました。