水谷修 『いいじゃない いいんだよ 大人になりたくない君へ』2007/09/08

夜回り先生こと水谷修と毎日新聞社記者で『魂の声 リストカットの少女たち 私も「リスカ」だった』を書いた小国綾子、医師の岩室紳也の若者たちへのメッセージを書いた本です。
あるテーマを基に言いたいことを自由に言い、それをまとめたという感じです。
今悩んでいて、苦しんでいる子。
ついリスカをやってしまって罪悪感にさいなまれている子。
彼氏にセックスを迫られたり、妊娠しちゃって困っている女の子。
思春期まっただ中で、性のことばかり考えちゃっている男の子。
いろいろな子達へ、自分たちの経験を踏まえてメッセージを送っています。
でもそのメッセージは普通のきれい事のメッセージではありません。
例えば、「死」がタブーになっていることを取り上げ、死にたいという若者にこう言います。

「おれ、死ぬんだ」というと、あ、そうなんだ、自分はなんていうことをいってしまったんだと気づく子がいる。
そう言う子たちは、あしたを見つけ、生き方を見つけていく。
おれがいくらそういうことを話そうと、「死にたい、死にたい、死にたい、私はつらいんだ」と、自分のことしか考えられない子もいる。これは自分病だよ。(水谷)

「つらい、つらい」という閉塞的な考えから出られない自分病の子どもによくいう。「意識をずらせ。意識を外に向けろ」って。(水谷)

ほんとうに思うんだ。
もっと求めてやってほしい。
どんな小さなことでも。
その達成感、それが生きる力になっていく。
「ありがとう」という感謝の思いが生きる自信につながっていく。(水谷)

自分病は若者だけではないような気がします。
大人の中にもそういう人っていますよね。常に自分のことだけ・・・。
そういう親から育てられると、子どもも自分病にかかってしまうのかもしれません。
自分だけが社会から虐げられている気がしていて、トゲトゲした言葉を吐き、常にイライラしている。攻撃的な性格・・・。
この本は子ども達だけではなく、大人にも読んでもらいたい本です。

子どもとの向き合いというのは一対一なんですよ、つねに。
子どもが求めているのは先生でも親でもなく、その場にいる一人の人間なんだけど、その向き合いができる人間が少ない。(水谷)

取り上げたのがすべて水谷さんの言葉になってしまいましたが、他のお二人の言葉も良いものがあります。
役割(親とか教師とかではなく)を生きるより人間として生きて、子どもと接するということが大事なのでしょう。