重松清 『カシオペアの丘で』2007/12/07

「ゆるしたい相手を決してゆるせずに生きていくひとと、ゆるされたい相手に決してゆるしてもらえずに生きていくひとは、どちらが悲しいだろう」

あなたには幼なじみがいますか?
残念ながら、私にはいません。
この本を読むと、こんな幼なじみならいてもいいな、と思います。

北海道の元炭坑町、北都市に住んでいる幼なじみの4人、敏彦と美智子、俊介、雄司は小学校4年生の時に、丘の上でボイジャーを見ていました。
彼らはその丘を「カシオペアの丘」と名づけ、いつかこの丘に遊園地ができたらいいなと夢見ます。
しかし、4人の仲も、小学校5年の時のある出来事を境に終わってしまいます。
でもお互いを大事に思う気持ちはずっと残っていました。

大人になって、敏彦と美智子は結婚し、北都市に住んでいます。
敏彦は4人が別れるきっかけになる事件で、車椅子生活を余儀なくされました。
市役所に勤め、「カシオペアの丘」という遊園地の園長をしています。
美智子は大学は東京だったのですが、故郷に戻り、小学校の教師をしています。
炭坑町を牛耳っていた倉田鉱業の御曹司、俊介は倉田の姓を捨て、東京で結婚し、中堅の不動産会社に勤めています。
雄司は製作プロダクションのディレクターになっています。
このままでは、4人がふたたび会うことはなかったでしょうが、俊介が肺ガンにかかり、余命少ないことがわかり、故郷の北都市に帰ろうと思うところから物語は思わぬ方向へと向かっていきます。

人が生きていく業というものを考えさせられます。
誰も人を傷つけずに、生きてきたと言える人が、どれだけいるのでしょうか?
「ゆるし」を考えるときに、”人への”ゆるしを主として考えますが、”自分への”ゆるしも必要なのだということを教えられました。

涙なくして読めない本です。一人でそっと読んでください。
北国の厳しさと優しさと同時に、人間の善良さを感じてください。
また重松に騙されました。

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