朝井まかて 『恋歌』2015/03/01



直木賞、受賞作品。
中島歌子のことは知りませんでした。
最初に歌子の弟子の三宅花圃が出てくるので、変だと思ったのですが、彼女は入院した歌子に命じられたことを色々とやっている時に、歌子の書いた手記を見つけるのでした。

歌子は本名を登世といい、江戸の豪商の娘で、恋い慕っていた水戸藩士・林忠左衛門と18歳で結婚して水戸へ嫁入りします。
夫は幕末の混乱期で忙しく、歌子は夫といる時間があまりもてませんでした。
結局、夫は1864年に起こった天狗党の乱に加担した罪で自害し、歌子は二ヶ月間投獄されました。
同じ藩士でありながら天狗党の家族まで捕え投獄し処刑したという悲惨な出来事がこの本の中で描かれています。
愛する夫を失った後の歌子は江戸にもどり、歌塾「萩の舎」を開き、充分な生活を送っていたようです。

一人の歌人の半生をダイナミックに描ききったという本です。
登世は夫が亡くなった後は余生のようなものと感じていたのかもしれませんね。
一見、成功したようにも思えますが、歌子になってからの彼女は嫌な人として描かれています。
朝井さんも魅力を感じなくなったと言っています。
『ぬけまいる』や『ちゃんちゃら』などとは違った朝井さんの魅力のつまった本です。

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