原田マハ 『旅屋おかえり』2018/10/01



題名を見た時に旅館の話かと思って読むのをやめていました。
ところが、全く違いました(笑)。

売れない30過ぎの元アイドル、”おかえり”こと丘えりかの唯一のレギュラー番組である『ちょびっ旅』が打ち切りになってしまいます。
えりかがスポンサーの名前を言い間違えて連呼してしまったため、スポンサーを怒らせてしまったのです。
彼女の所属しているよろずやプロに、所属するタレントは彼女だけ。
これでは社長も事務及び経理担当副社長も暮らしていけません。
最後の手段として、「脱ぐ」?

そんな時にえりかは大事なバッグを電車の中に置き忘れてしまいます。
そのバッグをひろってくれたのが、えりかのファンだった女性で、彼女は自分の娘のためにある依頼をしてきます。
この依頼からえりかたちはタレント業から旅の代行業「旅屋」を思いつきます。

「気がつくと、今日もまた旅をしている。
 旅が好きだ。「移動」が好きなのだ。移動している私は、なんだかとてもなごんでいる。頭も心もからっぽで、心地よい風が吹き抜けていく」

私も”おかえり”のように旅に出たいです。
停滞は心をネガティブにします。
移動していると、この言葉のようになごみます。
実際に旅に出られないので、本を読んで頭の中で移動しているのかもしれません。

心がほんわかする本です。
疲れた時や旅に出たい時に読むのがお勧めです。

今村夏子 『星の子』2018/10/02



野間文芸新人賞受賞作品で本屋大賞にもノミネートされていました。

ちひろは生まれた時から病弱だったので、両親はどうにかして助けたいと思い、たまたまもらった特別な水がアトピーに効いたことから、宗教にのめり込んでいきます。
ちひろは学校ではお友達がいないけれど、宗教団体の中にはちゃんと話せるお友達がいましたし、両親のことが好きなので、家にいることが何ともありませんでしたが、姉は家から出て行き、行方不明になってしまいます。
高校に入る時期になり、親戚の家から高校に通わないかという話が持ち上がります。

読んでいて、ちひろの純粋さと素直さに驚きます。
色々と嫌なことがあっても、親を批判せずに受け止められるのは何故でしょう。
お姉さんのように反発して、家を出ようと思わないのは何故でしょう。
こういう環境に小さい時から育つと疑問を持たない子もいるのでしょうね。

最後の親子で夜中にずっと流れ星を見ている場面は綺麗でした。
いつまでもこの親子関係が続くといいなと願わざるえませんでした。

読みやすいのですが、内容的に今一つわかりずらいです。
この本から何かを強く信じることの幸せを感じました。



「ママちゃん、ご本ばかり読んでいないで、僕と遊んでよ」と言うような顔でふて寝をしている兄。
朝の一時だけ一緒に寝るのですが、この頃、ま横になってグースカしています。
あまりにも無防御過ぎて心配になります。

碧野圭 『書店ガール 7 旅立ち』2018/10/03



『書店ガール』も最後となりました。
生徒たちのビブリオバトル開催を手伝う、司書教諭になった愛奈。
故郷の沼津に戻って、伯母の跡を継ぎ、ブックカフェの開業に奔走する彩加。
仙台の歴史ある書店の閉店騒動で、経営側と現場との板挟みで悩む理子。
育児も一段落し、吉祥寺の書店に戻り、店長となる亜紀。
4人がそれぞれの道を歩んでいます。

本はkindleか図書館という私は、この頃めったに書店に行かないのですが、たまには行こうかなと思いました。
でも、残念ながら私の住んでいるところの書店はこの本の中の書店のように頑張っているという感じがあまりしません。
置いてある本がつまんないんです。
こういう本もあるんだという発見する楽しみがないんです。
書店のみなさま、色々と大変ですが、頑張っておもしろい本を届けてくださいね。
応援していますから。

小路幸也 『花咲小路三丁目北角のすばるちゃん』2018/10/05

台風が過ぎたと思ったら、また台風。
大丈夫か日本列島。
この前の台風で庭の物が飛んでいました。
風は怖いですね。


花咲小路は何丁目から始まったっけ?
四丁目の聖人から始まり、一丁目の刑事、二丁目の花乃子さん、三丁目のナイトだからすばるちゃんは5番目ですね。
ひょっとすると花咲小路は三丁目までしかないのでしょうか?

すばるちゃんはお父さんもお母さんもおじいさんもおばあさんも誰も家族のいない子です。
でも、18歳で個人事業主。
おじいさんが託してくれた駐車場の管理人が仕事で、その駐車場に停めてあるシトロエンが彼の住居兼職場です。
家族がいなくても、弦さんや質屋の娘・瑠夏など花咲商店街の人たちが彼を見守ってくれています。

さて、駐車場にどんな人が車を停めに来るのでしょうか。
すばるちゃんたちがその謎を解いていきます。

次回は『花咲小路一丁目の髪結いの亭主』とのこと。
誰のこと?

石田衣良 『七つの試練 池袋ウエストゲートパークⅩⅣ』2018/10/06

兄犬は写真が嫌い。
カメラを向けると、こういう顔をする。


「何かぁ~」
せっかく買った、300円ショップの1000円の寝床なのに、もっといい顔をしなさい!


一応、顔を出してくれましたが、目が死んでいる・・・(笑)。



14冊目になった池袋ウエストゲートパーク・シリーズ。
主人公のマコトは相変わらず実家のさえない果物屋で働きながら、Gボーイズのキング・タカシが寄越す事件を裁いています。
安定のシリーズです。

今回の事件は4つ。
①未成年との飲酒兼淫行ではめられた若手俳優
②女の子の首を絞めるて快楽を求める男
③億ションの最上階で聞こえる音
④ネットでイイネをもらいたいがばかりに、七つの試練に挑戦し、怪我したり命を落したりする子ども達

四番目の話は今時の感じがしますね。
誰からも認められない子どもが、ネットでもてはやされるために無謀なことをやりそうです。
誰でもネットでは英雄になれるのが快感なんだろうなぁ。

このまま続くと、マコトもタカシもおじさんになり、おじいさんになり・・・。
どうなるんでしょうね(笑)。

伊坂幸太郎 『AX』2018/10/07



いつも舌をペロペロ出す兄犬。
気をつけていないとディープキスが待っている(笑)。
弟はめったになめてこないのに。



殺し屋と文房具の営業マンという二つの顔を持つ兜は、子どもが生まれた時から殺し屋家業から足を洗いたいと望んでいた。
しかし、金が回収できていないとかなんとか言われ、結局はまた仕事をやらされる。
彼は家では恐妻家。とことん妻のご機嫌をとる。
そのギャップが笑える。
一人息子はそんな父と母をクールに見ている。
どちらかと言えば父側かな。

さて、無事に兜は足を洗えるのか。

なんかこれって読んだことなかったっけという既視感が。
殺し屋シリーズって似たような感じなのか、伊坂さんの語り口がそう思わせたのかも。
もちろん2018年本屋大賞ノミネート作品だから読んでいないはずなのだけど。

息子に対する愛情がすばらしいですね。
最後はこうきたかという感じですが、兜に仕事を紹介していた医師が軽率すぎです。
伊坂さんの作品を読んでいない人は、この本から読んでもいいかも。

原田マハ 『風のマジム』2018/10/08

テレビでか雑誌でか忘れましたが、沖縄のラム酒の話を聞いたことがあります。
その本当にあったお話を本にしたのが、『風のマジム』です。


実家が豆腐屋、東京の大学へ行って沖縄の地元に帰り、今は通信会社の派遣社員をしている伊波まじむは、28歳。
今のままの生活を続け、そのうち実家の豆腐屋を継ぐことになるのかと思いながら漠然と日々を送っていました。
ところが、社内ベンチャーコンクールの告知を見て、まじむは祖母と一緒に飲んでいたラム酒を沖縄のサトウキビで作るという事業を思いつき、応募します。
まじむの案は一次審査を通り、正社員としてラム酒事業の可能性を探ることとなりますが・・・。

まじむの熱意が色々な人を動かしていきます。
本当にやりたいと思ったら、通じるものなのですね。
実際のラム酒「コルコル」は株式会社グレイスラムが製造して販売しています。
ラム酒っておいしいのかしら?
お酒は弱いけど、沖縄に行って「風の酒」を飲んでみたいわ・・・。

木皿泉 『さざなみのよる』2018/10/09



久しぶりに大田黒公園に行ってきました。
紅葉はまだまだ。
来週は灯籠を灯すようです。
この頃認知度が上がったのか、人が多く、特にサラリーマン風の人が増えているような感じです。


前のような静かな感じがよかったんだけど・・・。



小国ナスミは43歳で癌で亡くなった。
彼女の死後、彼女を知っていた人たち、つまり姉、妹、夫、同居している父の叔母、中学校時代に一緒に家出をしようとした同級生、同僚、ナスミを誘拐しようとした男性などの間に、ナスミの残した言葉や思い出がささなみのように広がっていく様を描いた作品。

印象的だった言葉があります。
上司と不倫していた同僚が知らない間に堕胎されていたと聞き、ナスミがその上司に飲み会の席で殴りかかります。
その時、同僚はナスミに感謝しつつも、他の人の目があるので、何事もなかったかのように振る舞い、その後、その上司に仕事を紹介してもらい暮らしている。
そのことを悔いている彼女は病床のナスミに会いに来た。
彼女にナスミはこう言う。

「お金にかえられないものを失ったんなら、お金にかえられないもので返すしかない」

読みながら、自分が死ぬ時に、今まで経験した嫌なことを思い出してしまったらどうしようと思いました。
今でもたまに思い出しては嫌な気分になることがありますもの。
いいことばかり思いだせるように、今から訓練しておきましょうかね(笑)。

ジャナ・テリオン 『ミスコン女王が殺された』2018/10/11

<ワニ町≫シリーズの二作目。


CIA秘密工作員のフォーチュンはシンフルの町に潜伏する予定だったが、着いたとたんに殺人事件に遭遇し、なんとか身分がばれずにすんだが、またすぐに事件に巻き込まれてしまう。

町は夏祭りのイベントとして子どもミスコンをする。
ちょうどその時に、ハリウッドへ行っていた元ミスコン女王のパンジーが町に帰ってきた。
元ミスコン女王と偽っていたフォーチュンはパンジーと一緒にコンテストの運営をまかされることになってしまう。
しかし、フォーチュンは最初からパンジーとぶつかってしまい、その翌日にパンジーは死体となって見つかり、なんと、フォーチュンは容疑者となってしまう。
フォーチュンは自らの疑いを晴らすべく、地元婦人会コンビに再度引きずり回されることとなる。

CIAの工作員なのにもかかわらず、パワフルおばあちゃんたちに翻弄されるフォーチュンが笑えます。
孤独な生活から一転したシンフルの生活は、フォーチュンにとって普通の生活に戻るいいきっかけとなるでしょう。
楽しいシリーズなので、次回も笑わせてくれるのを期待して待っていますわ。

伊吹有喜 『カンパニー』2018/10/13



表紙を見て、うかれたおっさんが会社で頑張る姿を想像していました。
宝塚月組が舞台化しているようなので、宝塚が何でわざわざ会社の話を?
なんて思って読んでみたら・・・。

老舗製薬会社に勤める47歳、総務課長の青柳は会社の合併とグローバル化によりリストラ候補となってしまいます。
出向先は社長の娘がプリマのバレエ団。
娘と世界的プリンシパルの高野が踊る冠公演「白鳥の湖」を成功させなくてはならなくなります。
慣れない仕事に戸惑う青柳。
私生活では妻と娘が家を出ていってしまい、離婚間近。
ふんだりけったりの青柳です。

女性トレーナーの由衣は、担当していた女性ランナーが妊娠し引退したため、リストラ候補へ。
青柳と同じくバレエ団へ出向し、高野の面倒をみることになりますが、高野は彼女に体を触らせようとはしません。
どうしたらいいの?

この2人とプリンシパル高野が絡み、おもしろい展開に。
「白鳥の湖」は無事に上演できるのでしょうか・・・。

「カンパニー」とは。
すぐに「会社」だと思ってしまいますが、他の意味もあるんです。

「人生はダンス。生きていくって、心臓が打つリズムに合わせて踊ること。違います?どうせ踊るなら、楽しく踊りたい」

「夢中になれること、好きになれること。それこそが王者の才能だと俺は思う」

たぶん、このセリフ、使われているんだろうなぁ、と思いますが、どうでしょう。

伊吹さんの本ですから、読み終わった後に明日からの元気をもらえるでしょう。
久しぶりにバレエを見たくなりました。