森昌麿 『黒猫の薔薇あるいは時間飛行』2015/01/30



黒猫シリーズ、第三弾。

若くして美学の教授である黒猫はフランスの大学の客員教授として渡仏してしまいました。
付き人は博士論文に挑む日々を送っていました。
彼女は日本の女流作家、綿谷埜枝の描いた短編『星から花』とポオの『アッシャー家の崩壊』の比較論に挑むことにします。
教授の紹介で埜枝に会うことになりますが、彼女の話を聞き、論文を書くために消えた薔薇の謎を解くことになります。
一方黒猫は恩師の孫娘マチルドから亡父がよく聴いていた音楽家の音色が変わった原因を調べてほしいと頼まれます。
黒猫と付き人がそれぞれに聞いた二つの恋の話。
二人は別々の場所で別々の推理を行っていきますが、いつしかそれは交差していきます。

時間がこの本の中で重要な役割を果たしています。
大学時代の教授が、「今、時間について考えているんです・・・」と言っていたことを思い出しました。
彼が時間について何を言ったのか覚えていませんが、文学を論じるということはあんな感じなのかと、彼の持つ独特の雰囲気に魅了されていました。

「恋は終わる。だが、純粋な美的精神の活動のなかではおわらないんだよ」

美学とはなんなのか。
未だに理解できない私ですが、おもしろそうです。