久坂部羊 『第五番 無痛Ⅱ』2017/08/01



無痛』の続篇。
あまり評価はよくないようですが、中途半端で終わってしまっては気持ちがよくないので、読んでみることにしました。

あれから6年。
先天性無痛症のイバラは薬で心神耗弱状態になっていたので責任能力を問えないということで軽い刑期になり、出所して、清掃会社で働いています。
まじめな仕事ぶりが評価されています。
カウンセラーの高島菜見子は彼に息子を襲われたりと散々な目にあっているにもかかわらず、彼を見捨てることができず、彼と繋がりを持っていました。
イバラ自身はこのままの生活が続くことを願っていたのですが、世間が放っておいてくれません。
怪しい美貌でグロテスクな絵を描く日本画家の三岸薫は、刑務所で描いたイバラの絵を見て、彼に絵の才能があるから弟子にしたいと言ってきます。
一方、ルポライターの犬伏は、イバラがまっとうになるはずがない、また事件を起こすはずだという思い込みから、イバラの周辺を嗅ぎまわります。

ウィーンで日本人会の診療所の医師をしている為頼のところに、行方不明だった南サトミが現れます。
彼女は白神はアルゼンチンで自死し、自分は国際弁護士になるためにウィーン大学で法律の勉強をしていると言います。
彼女は為頼と一緒に行ったコンサートでベートーベンの作曲した「第五番」を聴いてから、また話せなくなります。
ドイツ人の精神科医に診てもらうのですが、一向によくなりません。
為頼はサトミの治療を通して知り合ったドイツ人医師からWHO関連組織へ勧誘されます。

この頃、日本では「新型カポジ肉腫」が多発していました。
黒い肉腫が現れ、骨を溶かし、数日で全身に転移し、意識障害で死に至らしめる病です。
創陵大学準教授の皮膚科医、菅井は皮膚科医がメジャーになるいい機会であると、あらゆる手を使って「新型カポジ肉腫」の第一人者になろうとします。
しかし、悲劇が起こります。

(ネタバレあり)
一体どうなるのかとワクワクして読んでいましたが、アレェ、こうなるの、という感じでした。
為頼は相変わらず、女心に鈍感だし、特に何かしようとはしないのに事件に巻き込まれ、たまたまラッキーだったから助かります。
自分の寿命がわかるからと言いますが、事故で死ぬこともあるでしょうに。
菜見子は子供までいるのに、じいさんの為頼のどこがいいのか。
他の登場人物たちは気持ち悪すぎ。
人間の欲とは恐ろしいものです。
彼らに翻弄されるイバラが哀れでした。

久坂部さんの言いたいこと、日本の医療現場の矛盾と問題点はところどころに挟まれています。
このままでいくと医療崩壊もありえるかもしれませんね。

そういえば『大学病院のウラは墓場』を書いたのが久坂部さんだったことに、この前気づきました。
医師と患者、双方にとって益になるような改革が進むことを願いますが、さて、どうなることやら。



阿佐ヶ谷駅前のサンドイッチ屋のサンドイッチ。
さつまいもとシナモンアップルだったかしら?
ニンジンジュースもありました。
お値段が500円。
う~ん、もう買わないかも。