吉田修一 『路(ルウ)』2020/05/30

台湾というと、今はうらやましいという思いが沸いてきます。
台湾のリーダーたちが新型コロナウイルスを封じ込めた手腕は見事だったとしか言えません。
日本がマスクがないと言っている時に、台湾ではデジタル技術を活用してアプリを作り、どこにマスクの在庫があるのかわかるようにし、マスクを配給制にしているのを知り、なんで日本ができないのかと思ったものです。
日本は技術的に世界に遅れを取っているというのが今度の新型コロナウィルス対策で明らかになったようです。

『路』は池井戸潤さんの本ではないので、台湾で新幹線が走るまでの技術者たちの苦労が詳しく書かれているわけではないので、あしからず。


台湾の台北と高雄を結ぶ高速鉄道を開通させるために、日本連合と欧州連合は競合していました。
はじめは欧州連合が有利だったのですが、その後状況が変わり、欧州連合が配線・制御、日本が車輌を受け持つことになります。
日本の新幹線が台湾で走ることになったのです。
新幹線が台湾を走るまでの8年間を、4組の日本人と台湾人の関係を軸に描かれたお話です。

商社で働く多田春香は大学時代に台湾に行った時に出会った台湾人のエリックのことが忘れられませんでした。
連絡先をなくしてしまったので、連絡ができなかったのです。
新幹線開通をきっかけに台湾に出向することになります。
エリックこと劉人豪は春香との出会いをきっかけに日本の大学で学び、建築家として日本で働いていました。

春香と一緒に台湾で働いているのが安西誠。
台湾の仕事のやり方に馴染めず、ストレスと過労がピークに来ていました。
そんな頃、台湾人ホステルのユキと出会います。

台湾で生まれ育ち、戦後日本に引き揚げてきた葉山勝一郎。
彼は台湾に対して懐かしく思う気持ちがあったのですが、ある理由からそれを封じ込めて生きてきました。
妻も亡くなり、一人になった時に幼馴染みだった一人の台湾人のことを思い出します。
その人は日本名、中野赳夫と言いました。

仕事にも就かず、アルバイトをしながら日々をなんとなく過ごしていた陳威志。
幼なじみの張美青が留学先のカナダから戻ってきたことを聞きます。
日本人に捨てられ、身ごもっているというのです。
威志は新幹線の車輌整備工場の見えるグアバ畑で美青と再開します。

この4組の男女の人生が台湾新幹線プロジェクト期間の8年を経て変わっていく様子が淡々と書かれています。

台湾人というと、飛行機の乗り換えの時に出会った人たちの人懐っこさと笑顔が思い出されます。
韓国と同じように日本が台湾を植民地にしていたというのに、日本に対する態度の違いは何なのかと思ったものです。
日本の後にやってきた中国が悪すぎたおかげですかね(笑)。
日本にいい感情を持ってくれている台湾とは末永く仲良くしていきたいですね。
台湾に行った時は暑さと湿気に辟易しましたが、住んでみると人の温かさやおおらかさが身にしみてくるのでしょうね。
台湾にもう一度行って、新幹線に乗って高雄まで行ってみたいと思いました。
それはまだできないので、DVDで我慢しましょうか。
本にも出てくる「非情城市」を再度見てみようかしら。
それとも「5月の恋」がいいかしら。
もう油桐花は咲き終わってしまったのかしら?