原田ひ香 『古本食堂』2022/04/24

この本の中に『読書セラピスト』と同じように人に本を勧める場面が出てきます。
セラピストと古本屋の店主が勧めるのと違いはないとは思うのですが、私が思うに、圧倒的にセラピストの負けです、笑。
勧めるのが人生経験があまりない若い男性と酸いも甘いも噛み分けた女性との違いでしょうかね。


鷹島美希喜は国文科の大学院生。このまま研究の道に進むかどうか迷っていた。
そんな時に、神保町で古書店を営んでいた大叔父の滋郎が急逝し、滋郎の妹・珊瑚がお店を継ぐことになる。
美希喜は母親から珊瑚が店をどうする気かを探るように言われ、店を訪れるうちに店でバイトをするようになる。

北海道の帯広で介護ヘルパーとして働いていた珊瑚は兄の滋郎が亡くなったため、兄が住んでいた東京の高円寺にある一軒屋と神保町で営んでいた古書店を引継ぐことになる。
何もかもわからないことだらけだけど、大家の平塚さんや辻堂出版の社長、隣の喫茶店の美波さん、「汐留書店」の店主・沼田さんなどが親切に教えてくれるので、なんとかなりそうだが、でもどうしよう、このお店…。
ある日、滋郎の妻だと名乗る変な女がやって来た。
彼女は滋郎が店を任せたいと言っていたと言うが、可笑しな事に葬式にも来ていない。滋郎の妹だと名乗ると大人しく帰っていったが、彼女が言った戸越にいる子持ちの女のことが気になった。家にあった二つの茶碗の片割れが彼女のものなのか。
珊瑚は戸越銀座に行ってみるが…。

神保町には大分長い間行っていません。
絶版本で欲しいものがあれば買いますが、古本があまり好きじゃないのです。
それに若い頃は店主のおじいさんが怖くて入りずらかったです。
本の中に出てきたカレーとか鮨とかがものすごく食べたくなりました。
御茶ノ水から歩いていくことが多かったのですが、途中にある古瀬戸珈琲店はまだやっているかしら。
ロシア料理の壺焼きを初めて食べたのは神保町だったかも。
三省堂の地下にロシア料理店がなかったっけ?
そうそう岩波ホールが7月29日で閉館するようですが、その跡は何になるのでしょうね。
都心にはしばらく行っていないですが、そろそろ行ってもいいかなぁ。

あ、そうそう本のことでした。
美希喜の指導教官、後藤田先生の言葉が深いです。

「・・・ここに残っているものは末永く残していかなくてはならない。私たち、研究者はその長い長い鎖をつなぐ、小さな鎖の一つでいいではないですか。(中略)ただそれを後世に残す小さな輪で」
「・・・古本屋さんは私たち学者と同じように、本や物語といった文化を後世に残す、そういう輪です」

滋郎と関係の深い珊瑚と美希喜のことがメイン料理で、古書店を訪れる人たちとの交流やお勧めの本、美味しい神保町のお料理が付け合わせです。
古本食堂は美味しいお料理を出してくれました。
お勧めの本です。

*「マンガでかじるこの一冊」を見ると、簡単にあらすじがわかります。

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