ヨルン・リーエル・ホルスト 『警部ヴィスティング カタリーナ・コード』2022/06/02

ノルウェー・ミステリー。
猟犬』の次に訳された、警部ヴィスティング・シリーズのようです。
出版社も変わっていて、早川書房から小学館になっています。
シリーズの第12長篇にあたり、2017年に刊行されているそうです。
できれば第一巻から訳してもらいたかったです。


ラルヴィック警察犯罪捜査部の警部ヴィリアム・ヴィスティングにはタブロイド紙≪VG≫の記者をしている娘のリーネがいる。
リーネは未婚で出産し、現在は育児休暇を取っている。
リーネの双子の兄のトーマスはノルウェー軍のヘリコプターのパイロットで、今週末に帰ってくる。
ヴィスティングは以前付き合っていた女性とは別れたようで、今は孫の面倒をみるのが楽しみらしい。

毎年十月十日になると、ヴィスティングはマッティン・ハウゲンを訪ねる。
二十四年前の十月、マッティンの妻のカタリーナ・ハウゲンが失踪した。
キッチンのテーブルには彼女が書いたとみられる謎の暗号が残されていたが、未だその暗号は解けていない。
それ以来約束をしたわけではないが、ヴィスティングは毎年正午ごろにマッティンの家に向かうことにしている。
しかし今年はマッティンは不在で、どこにいるのかわからなかった。

明くる日、オスロにある国家犯罪捜査局(クリポス)から未解決事件班の捜査官アドリアン・スティレルがやって来る。
彼はマッティン・ハウゲンの関与を示す新たな証拠が出たので、ナディア・クローグ誘拐事件を再捜査するというのだ。

カタリーナが失踪したのは、ナディア・クローグ事件の二年後だった。
スティレルはヴィスティングがマッティンと親しいことを知っており、うまく自白に導いて欲しいとヴィスティングに頼む。
ヴィスティングは週末にマッティンと二人で彼の山小屋に行くことにする。

同じ頃、リーネにフリーの立場で特集記事をかかないかという依頼が来る。
打ち合わせに行くと、そこにクリポスの捜査官アドリアン・スティレルが現れる。
彼はナディア・クローグ誘拐事件を特集記事の連載という形で取り上げて、事件に世間の注目を集めてほしいという。
そろそろ記者として本格的に働きたくなっていたリーネはこの仕事を引き受ける。

マッティンはナディアの誘拐事件に何らかの関わりがあるのか、そしてカタリーナはどこに行ったのか…。
二つの事件の謎がいよいよ明らかになる。

スティレルのどんな手段を使ってでも事件を解決してやるという姿勢が嫌な感じです。
これからも登場してヴィスティングをいいように手玉に取って使おうとするのかな。ヴィスティングはそう簡単に騙せない人ですがね。
どうしてヴィスティングの娘まで事件に関わらせたのか、何か裏がありそうです。
スティレルの恋人の失踪が今後関わってくるのかしら?

二十年以上にもなるつき合いで、友情に近い感情を持っている相手を騙し続けていたマッティンと彼を自白に追い込もうとするヴィスティングの心情を考えると、辛かっただろうなと思いました。
山小屋の互いの腹を探り合う場面が印象的でした。

派手なアクションや銃撃戦などありませんが、じっくりと対話を読んでいくというミステリーです。