桜木紫乃 『孤蝶の城』2022/06/20

コロナ禍に秘かにイギリスの若者グループ、Welsh of the West Endを応援していたのですが、彼らが公開オーディション番組の「ブリテンズ・ゴット・タレント」に出ているのを知り驚きました。
スーザン・ボイルがこの番組から有名になりましたね。
Welsh of the West Endの若者たちは舞台に出ているので、プロだと思っていたのですが、BGTにプロも参加出来るのですね。
最初のパフォマンスは「From Now On」、セミファイナルは「You will be 
found
」で、ファイナルまで行けたのかはわかりません。ファイナルはこれからなのかな?
BGTがどういう番組なのか知りませんが、審査員の三人が"Yes”と言ったら次に進め、セミファイナル以降は電話投票で決まるようです(違っていたら教えてください)。

そしてもう一つ、驚いたことがあります。
Welsh of the West End の一人、トム君がBBCのクイズ番組「I Can Hear Your Voice」Christmas Specialに出ていたのです。
6人の中から歌が下手だと思える人を排除していき、最後に残った人が歌が上手かったら出場者が賞金をもらえるという番組です。
イギリスのテレビ番組は色々と面白いものがありますね。



緋の河』の続編です。
カーニバル・真子の30歳から35歳までの出来事を時系列に書いてみます。

平川秀夫ことカーニバル・真子は会話のセンスの良さと、「タマは取ったがサオは残っているというねじれた立ち位置」が受け、芸能界でも夜の街でも引っ張りだこだった。
それも落ち着いた頃、銀座「エル」のママからフランスに支店を出すから、パリに行き基盤を作ってくれと頼まれ、秀夫は海を渡る。
やがて店も軌道に乗り、三十歳になった秀夫はモロッコで「女の体」になることを決意する。

カサブランカでドクター・ブルウに陰茎切除と造膣手術をしてもらうが、麻酔が効きすぎた上に、傷口が化膿し高熱が出る。
ドクター・ブルウはサヴァと言うだけで、何もしない。このままでは命を落とすと思った秀夫は清羽が連れてきた日本人医師・風間に膿んだところを取り除き、縫い直してもらう。
傷口はまだ治っていなかったが、秀夫は日本に帰り、日劇ミュージックホールの正月公演に出る。
マスコミは「女の体」を手に入れた秀夫のことを好き勝手に書いていく。

自分でマネジメントをするのが手一杯になった秀夫は友人の巴静香にプロダクションを紹介してもらう。
初めは轟洋司がマネージャーだったが、同時に担当していた新人歌手・南美霧子が売れ始めたため、坊やこと舵田透が秀夫のマネージャーとなる。
友人のノブヨに歌詞を書いてもらい歌手デビューをするが、鳴かず飛ばずで終わる。
そんな頃、作家の北澤英二と出会い、「女の体」を初めて試す。
やがて二人の関係が週刊誌に載り、秀夫は北澤と別れる。
戦後のブルーボーイの草分け的存在の綺羅京介と対談するが、「私は仕上げを間違った神を許しながらやって来た。謝る先は痛い思いをして私を産んでくれた母」と言った秀夫の言葉に気を悪くした綺羅に対談の雑誌掲載を断らてしまう。

だんだんと会社の意向で地方営業が多くなっていく。
急に釧路出身で同級生で初恋の相手の文次こと霧乃海との対談が持ち上がる。
北海道出身だとは言っていたが、釧路出身のことは家族のために秘密にしていた。
綺羅との対談がぽしゃったことに頭に来た轟が北澤とのことを雑誌にリークし、地方営業を多くし、文次との対談を入れたようだ。

ひょんなきっかけから映画『女家業』に出演する。
そんな頃、南美霧子が轟から逃げて秀夫のところに来る。
枕営業をやれと言われたらしい。秀夫は轟の裏をかき、美霧子を海外に逃がす。
そのため秀夫と舵田はプロダクションを辞め、二人で独立する。
自分の行く末を考え始めた秀夫に静香が劇団『砂上』の代表・本間を紹介する。

秀夫はパリに行き、ピエールという若い男を連れて日本に帰って来て、結婚したと発表する。
しばらくすると日本に飽きてパリに帰ると思っていたピエールはなかなか帰ろうとしない。
困った秀夫は他の男との浮気現場を見せ、ピエールを無理矢理パリに帰す。

やがて父親が亡くなる。最後まで相容れない関係だった。
「淳子の部屋」に出た秀夫は思いつきで城を建てたいと言う。
城は建ててやれないが、建築家を紹介してやると言った男に騙され、秀夫はネズミ講にひっかかり100万円損をする。
劇団『砂上』の本間と『氷の下』という二人芝居をすることになる。
秀夫は蛇を用意し、舞台に登場させ、なんとか最後まで演じきる。
芝居を見た映画監督の木枯が『氷の下』を撮りたいと言い、秀夫は映画に出ることになる。
撮影中に木枯の女でピンク女優の花菱マユミと大喧嘩をしてしまう。
この時マユミに恨みを買い、警察にチクられ、秀夫は大麻取締法違反容疑で逮捕される。留置所では男として扱われるが、しばらくしてから釈放される。
留置所での扱いから精神的にボロボロになった秀夫だったが、映画の試写会に向かう…。

さて、これらの出来事を桜木さんがどのように書いているのか、楽しみに読んでみて下さい。
カーニバル・真子のモデルはカルーセル麻紀ですが、他にどんな人たちがモデルになっているのか、推測しながら読んでも良さそうです。

カルーセル麻紀さんと言うと、品のない毒舌おばさんと言うイメージしかありませんでした(ゴメン)。
でもよく考えてみると、今のようにLGBTQが知られていなかった時代ですから、世間もマスコミも彼女に対して言いたい放題、やりたい放題だったでしょうね。
そんな時代に文字通り裸一貫で果敢にも芸能界に進出し、一世を風靡したのですから、どれほど努力し、苦難を乗り越え、血反吐を吐く思いをしたことでしょうか。
彼女の誰にも本心を見せない孤独な姿が愛おしくなります。
彼女の生き方はカッコいいです。
とにかく手術の場面が読んでいても痛くてたまりませんでした。
今もお元気だそうですが、病気をなさったとか。ゆっくりと羽を休ませて、幸せに暮らしていて欲しいです。
最初の手術の場面が我慢できそうだったら、読んでみてください。
お勧めの一冊です。