村上春樹 『騎士団長殺し』2023/05/24

『騎士団長殺し』は『騎士団長殺し<第1部>顕れるイデア編』と『騎士団長殺し <第2部>遷ろうメタファー編』の各上下二巻からなるお話です。

村上春樹は学生時代から読み続けていますが、『IQ84』以降は文庫本になったら読もうかという感じになっています。
新作の『街とその不確かな壁』を図書館で予約をしようかとも思ったのですが止めて、この本をkindleで読むことにしました
村上春樹は村上春樹のままでした。


「私」は36歳の画家で、肖像画を描いて生計を立てていた。
ある日、妻のユズから離婚したいと言われる。男がいるというのだ。
ショックを受けた私は、ユズに家を引き渡し、車で北海道と東北地方を放浪する。

途中で車が動かなくなってしまい、二ヶ月ぶりに東京に戻った私は、二度と肖像画を描かないと決める。
美大時代からの友人の雨田政彦から彼の父親が住んでいた小田原の山中にある家を借り、住むことにする。
雨田の父、雨田具彦は著名な画家で、始めはモダニズム絵画を指向し、ウィーンまで留学したが、帰国後唐突に日本画に転向していた。
ずっとこの家で仕事をし、十年前に妻が亡くなってからはひとりでここにこもって暮らしていたが、認知症が進み療養所に入ったという。

越してきて数ヶ月経った頃に、私はアトリエの屋根裏部屋で雨田具彦の未発表の絵を見つける。
その絵は『騎士団長殺し』と題されていて、私はその絵には何か特別なものがあると感じる。

夏が終わろうという頃に、エージェントから電話が来る。
もう一度だけ、肖像画を描いてみないかというのだ。
その話は報酬が法外によく、対面で描いてもらいたいという要望だった。

肖像画の依頼主は私の家のテラスから見える瀟洒な邸宅に住み、銀色のジャガーに乗る、白髪の免色渉という男だった。
私は免色は私に何を求め、何の目的で肖像画を描くように依頼してきたのだろうかと疑問を感じる。

そんな頃、真夜中に目を覚ました私は不思議な鈴の音を聞く。
その音は祠の裏に積まれている石の隙間から漏れ聞こえているようだ。
モデルをしに来た免色にその音の話をすると、彼は夜中にまた来るという。
その夜、やって来た免色は私に十三年前の出来事を話す。
その話が終わった頃に、鈴の音が聞こえてくる。
免色は費用は自分が出すから、知り合いの造園業者に依頼して、重機で石をどかし、掘り返してもらおうという。
やってみると、敷石のしたに石室のような穴があり、底に鈴が置かれていた。

ある夜、私が目覚めると、鈴が鳴っていた。
鈴の音はスタジオから聞こえていた。
スタジオに行くと、そこは無人で、鈴は棚の上にある。
しかし、居間のソファの上に、身長が六十センチばかりの白い奇妙な衣服をまとった、具彦が絵の中で描いた騎士団長がいた。
彼は自分のことを「イデア」だという…。

騎士団長の登場から物語は動いていきます。
とにかく第一部ではなかなか村上春樹の世界に入り込めなくて、読みにくく、字面だけ追っている感じでした。
第二部の冒険が始まると、読むスピードが上がりました。
でも、いったい彼は何を書きたかったのか、私の理解力が足りなくて、全くわかりませんでした。
意味のない(あるか?)セックス描写に辟易しましたし、自分の胸が膨らむかどうか気にしている少女が謎でした。
オペラの『ドン・ジョバンニ』は見たことがないので、見てみたら少しはわかるようになるかな?

気にいった言葉をあげておきます。

「この世界には確かなことなんて何ひとつないかもしれない」
「でも少なくとも何かを信じることはできる」

村上春樹が好きな方は読んでもいいでしょうが、そうでもない人は止めておきましょう。
初期の作品を先に読んだ方がいいと思いますよ。というか、私は初期の作品の方が好きです。


「ママちゃん、ぼく、穴の中が好きです」

ヨーキーはネズミ捕りなので、穴の中にもぐるのが大好きです。
いつでもどこでももぐろうとします。
タオルや座布団、クッションなどがあると、すぐに下にもぐります。