この頃読んだ時代小説2023/05/30

五月中に読んだのに、なかなか紹介できなかったものです。
忘れているけど、頑張って思い出しますね。


坂井希久子 『蓮の露 花暦居酒屋ぜんや』
ぜんやの常連の旦那衆を狙った毒酒騒動が起り、元吟味方与力の柳井は七声の佐助の捜索に加え、長吉のことも探し回っていた。
熊吉もまたお花に附子を渡したのは元同僚の長吉だと確信し、彼の行方を追っていた。
そんなある日、長吉の母親が熊吉を訪ねて来て、大怪我をおった長吉が先月から家にいると告げる。
早速家に行ってみると、長吉は行方をくらましており、彼の兄弟は「からむし」を見せるようにいわれたと言って、熊吉に蓑虫を見せた。
問題となっている盗賊の頭の名は蓑虫の辰といい、どうも長吉はひと月前まで、その一味だったようだ。
そんなある日、只次郎とお花は菱屋のご隠居にお妙の料理を届けに行くが、その途中でお花は何者かにさらわれてしまう。

なかなか只次郎とお妙に心を開かなかったお花が、やっと心を開くようになります。ぜんやに関わる人たちと接するうちに、世の中は実母のような人ばかりではないことがわかったのでしょうね。
お花ちゃんの幸せを祈らずにはいられません。

五十嵐佳子 『桜色の風 茶屋「蒲公英」の料理帖』
さゆは旗本・池田峯高の奥様・美恵に、おそば付きの女中として四十年仕えてきた。しかし昨年の夏の終わりに美恵は亡くなってしまう。
そのためさゆは池田家を出て、実家の日本橋・本町の薬酒問屋「いわし屋」に身を寄せる。
実家のみんなはさゆを快く迎えてくれたが、やがてその暮らしに倦んでしまったさゆは蒲公英という茶店を始める。
蒲公英では客の好みに合わせて淹れたお茶と他の茶店とは違う甘じょっぱいみたらし団子を売っている。
そんな蒲公英にさゆの人柄に惹かれ様々な人たちが訪れる。

五十五歳になるさゆをはじめ、出てくる人たちがいいキャラしてます。
今の五十五歳はもっと若いでしょうが、江戸時代の五十五歳はおばあさんよね。
五十五歳から新しいことを始める勇気に感心しました。
シリーズになりそうですね。お勧めです。

知野みさき 『結ぶ菊 上絵師律の似面絵帖』
上絵師のお律にお千代という女から菊の着物の注文がはいる。
お千代は尾張で暮らしていたが、夫が亡くなったので、夫の供養と思い、江戸で余生を過ごしに来たそうだ。
話をしていくうちにお千代が吉原の遊女・野菊を身請けするという話が出る。
お千代に頼まれ、いっしょにお律は吉原に行くが…。

今回はお律にまつわる人々の恋バナが色々と描かれていて、特別な一冊になっています。
着物や鞠巾着の柄や色がどんななのか、想像しながら読むのもいいですよ。

知野みさき 『仇持ち 町医・栗山庵の弟子日録(一)』
伊勢国津藩の武家の娘だった石川凛は、藩の上役の奸計により家族をなくし、兄の同輩に騙され、遊女となる。
一年余りで元伊賀者の望月要という刀匠に請け出され、仇討ちの意を話すと、彼は凛に武芸と医術を仕込むが、その二年後、要は置文を残し、唐突に姿を消す。
仇は江戸定府を命じられ、江戸にいる。
凛は江戸に行き、要を通じて知ったつての一つ、伊勢屋の女将・稲から勧められ、津藩江戸屋敷に出入りする町医者の栗山千歳に近づき、身の振り方が決まるまで「栗山庵」で働くこととなる。
栗山庵には千歳の他に十二歳の片腕の佐助がいて、千歳の診察を手伝っている。
裏の長屋に住む浪人剣士・清水柊太郎は凛が気にいったらしく、ほぼ毎日栗山庵にやって来る。
やがて凛は自分と同様、佐助と千歳、柊太郎にも隠された秘密があることを知る。

知野さんの新しいシリーズで、医療物です。
凛の仇討ちは終わったので、次は誰かしら。
しばらく続きを読んでみようと思います。

中島久枝 『ふるさとの海 日本橋牡丹堂菓子ばなし十一』
藪入りの日、小萩は夫の伊佐と共に鎌倉の実家に里帰りをする。
にぎやかな小萩の家族に家族のよさを痛感する伊佐。
長谷の高徳院の門前の茶店で伊佐は干菓子に目を止める。
紅色がかつての伊勢松坂の独特の紅色に似ていたのだ。

益々仲睦まじくなる伊佐とお萩です。
このシリーズは二人に子が生まれ、店を持つまで続きそうですね。
いつも言っていますが、読むと美味しい和菓子が食べたくなります。
五月は柏餅が美味しかったのですが、六月といえば「水無月」かな。
近所に美味しい和菓子屋がないので、少し足を伸ばして買いに行ってこようかしら。

五冊とも好きなお話です。
私は美味しい食べ物が出てくるか、職人や医者のお話なら、どんなものでも好きでわww。