堂場瞬一の文庫本、2冊を読む2023/11/10



堂場瞬一 『コーチ』
コーチと聞くと、スポーツのコーチを思い浮かべますよね。
しかし、この本のコーチは違います。
若手警察官のコーチという意味です。

警視庁人事二課の巡査部長、向井光太郎は所轄に派遣され、伸び悩んでいる若手警察官を指導することになる。
向井に指導されるのは、女性でありながら三十二歳で所轄の刑事課係長になった益山瞳と取り調べに苦手意識を持っている所貴之、尾行に失敗し、自信をなくした西条猛樹。
この三名に向井は的確なアドバイスを与え、使える警官へと導いていく。

第二部では、向井の指導を受けた三人が同じタイミングで本部の捜査一果殺人犯捜査第四係に赴任します。
彼らは向井の過去を探り、お節介なことに向井を捜査一課に戻そうと画策します。

第一部では短編ながら、向井の言動になるほどと思うことがありましたが、第二部になると、なんでこの三人が向井の過去を暴くという余計なことをやるのか、私にはよくわかりませんでした。
第一部では敏腕刑事で頼もしかった向井が、第二部では悩めるおじさん風になってしまって、ちょっとガッカリ。
続けて向井が若手をコーチするのを読みたかったです。


堂場瞬一 『灰色の階段 ラストライン 0』
ラストライン・シリーズで活躍する岩倉剛の過去のお話、六編。

「手口」
交番勤務から渋谷中央署刑事課に上がってきた二十七歳の新米刑事・岩倉のはじめての事件。恵比寿のワンルームマンションで男が殺されており、犯人は焼き破りの手口を使い部屋に侵入したようだ。
「嘘」
警視庁捜査一課に所属する岩倉は翌日結婚式を執り行う予定だが、帰れという声を無視し、殺人現場に駆けつける。
「隠匿」
新設されたばかりの警視庁捜査一課追跡捜査係に所属している岩倉は、娘が三歳になった夏休みに妻の両親の別荘にやってきていた。
そこに五年前の路上強盗事件の犯人が名乗り出てきたという連絡が入り、取り調べを任される。
「想定外」
東日本大震災のあった年の春、四十三歳になった岩倉は捜査一課の火災犯捜査係に配属される。
その年の十月、JR渋谷駅の近くの雑居ビルから火災が起る。死者は五人。その中の一人が問題だった。
「庇護者」
岩倉は警視庁内の年下の友人で刑事総務課に勤務する大友鉄に誘われ、芝居見物に行く。芝居の後、大友に相談事があった赤沢実里と出会う。成り行きから待機中の岩倉が非公式に元アイドルのストーカー事件を捜査することになる。
「戻る男」
岩倉は来月警視庁捜査一課から南大田署へ赴任が決まっている。そんな中、放火殺人事件が起る。赴任までに事件を解決できるのか…。

新人時代の岩倉から美里との出会いなど、意外な彼の姿が見られて面白かったです。
唯一わからなかったのは、前の奥さんとどうして結婚したのかです。
どう考えても、上手く行かないのはわかるでしょう。
とにかく「見て飽きないほど美しい」のがよかったみたいですねぇ。
男ってものは…www。

コーチはシリーズになるのでしょうか。