読んだ時代小説(文庫本)2023/11/22



森明日香 『おくり絵師』
おふゆは五年前、母が亡くなる間際に、亡父が江戸の絵師だったので、兄弟子の歌川国藤のところへ行くようにと言われ、仙台から江戸に出てきた。
それから国藤の住み込みの弟子となり、冬女と名乗るのを許されたが、この頃、自分の絵が描けずに悩んでいる。
絵が上手くなりたい思いは誰よりも強い。
だが、何を描きたいのかがわからないのだ。
自分にしか描けないと、胸をはれるものがないのだ。
そんな時に「死絵」に出会う。
一方、幼少時に仙台で知り合い、おふゆの思い人である旅芸人上がりの役者、市之進は浅草の芝小屋の夏興行「東海道四谷怪談」で主役の伊右衛門を演じることになる。

「死絵」とは人気の高い「死んだ役者の姿を描いた絵」すなわち『追善の絵』のことです。
女であるが故に絵師として悩み苦しむおふゆでしたが、「死絵」と出会い、自分がどういう絵を描きたいかがわかります。
お話の展開はすぐに分ってしまいますが、涙なくしては読めませんでした。

山本巧次 『大江戸科学捜査 八丁堀のおゆう<10> 抹茶の香る密室草庵』
現代から江戸へタイムトラベルしている女親分・おゆうこと関口優佳。
彼女が今回挑むのは密室殺人。茶問屋の清水屋が根津の寮の茶室で殺される。
この時、同じ株仲間の茶問屋の三人が冥加金のことで相談があると招かれていたが、その誰もが清水屋を殺せたはずがないのだ。
切羽詰まったおゆうは友人で江戸では千住の先生と呼ばれている宇田川聡史の助けを借り、真相に迫る。

宇田川も大胆になって、今回は穴開け用ドリルとファイバースコープ、超小型ロボットなどを江戸時代に運びこみます。大がかりな割にあまり役に立っていないような気もしますが、笑。
宇田川は南町奉行所定廻り同心の鵜飼伝三郎の秘密に気づいたようです。
さて、互いの秘密を知った伝三郎と宇田川はどうするのか。
おゆうとの三角関係はどうなるのか。楽しみですね。
ア、今回遠山の金さんが特別出演です。

坂井希久子 『つばき餡 花暦居酒屋ぜんや』
前回、大変な目にあったお花も落ち着き、やっとぜんやに日常が戻ってきた。
しかし、お梅と俵屋の若旦那との縁談は進まず、やきもきするお花。
彼女の気持ちを揺るがせかねないことが起こるが、どうやらお花も少し大人になったようだ。
そんな時に大奥勤めをしているはずの只次郎の姪のお栄がぜんやに現れる。
上様のお手つきになりそうだったので、病を得たということで暇をもらったと言う。お花は自分とは違う型破りなお栄をどう扱ったらいいのか戸惑うばかり…。

お花がだんだんと素直になり、落ち着いてきたと思ったのですが、お栄と接してから、またいじけの虫が出てきたようです。まあ、そんなに人は変れないですよね。お花が主人公のはずですが、ぜんやはこれからしばらくお栄に振り回されそうです。

有馬美季子 『おぼろ菓子 深川夫婦捕物帖』
齢二十六のお純は深川蛤町で飯屋<川野>をやっている。齢三十一の亭主の弥助は同心の林田に仕える岡っ引き。二人は七年前のある事件がきっかけで知り合い、その二年後に夫婦となった。
<第一話 花魁慕情>
ある日、吉原の妓楼の仮宅で花魁が殺された。現場には血文字の「月千」と菓子と思われる塊が遺されていた。弥助はお純の味覚と食の知識を頼りに捜査を続ける。
<第二話 つなぐ縁>
お純は十二の時に吉原に売られたが容姿に難点があり、台所の下働きにまわされる。しかし、いつの間にかお純の作る料理が評判になり、十六の時に仕出し料理屋へ移る。そして十八の時に、米問屋、栄口屋の大旦那に料理の腕と素直な人柄と気配りが認められ、身請けされ、栄口屋の台所で働くことになる。
ある日、栄口屋の孫、遙太郎が行方不明になる。その時、やって来たのが同心の林田誠一郎と岡っ引きの弥助だった。
お純は遙太郎のことが心配で、自ら思いあたるところへ行って調べてみる。

第一話の夫婦の会話が何やら不自然で、読むのを止めようかと思いました。
岡っ引きのくせに妻に相談し過ぎです。これならお純が岡っ引きをした方がいいんじゃないですか、笑。
第二話は夫婦になるきっかけになった事件の話なので、不自然な夫婦の会話がなくて読みやすかったです。
シリーズになるのでしょうが、たぶん続きは読まないな…。

<おまけの漫画>
小説ではないですが、漫画で怒りっぽい方に参考にしてもらいたいものがあります。『Shrink ~精神科医ヨワイ~11巻』です。
アンガーマネジメントに関するお話で、ここに出てくる男性のような人が職場や家庭にいませんか?
この漫画はパニック障害や鬱病、発達障害、PTSD、産後うつ、摂食障害、パーソナリティ障害、アルコール依存症など現代の心の病をわかりやすく描いています。
気になったら是非読んでみて下さい。