アランナ・ナイト 『修道院の第二の殺人』&『エジンバラの古い柩』2012/08/17

時はビクトリア朝。
エジンバラ市警察警部補のジェレミー・ファロとその義理の息子で美貌の新米医師、ヴィンセント・ボーマチャー・ローリィが殺人事件を解いていくシリーズです。


のっけからファロは病欠開け。
40歳を少し超えるぐらいの年齢なのでしょうが、自分を老人に感じるなどという場面が何回も出てきて、笑っちゃいます。
ヴィクトリア朝の時代は平均死亡年齢が50代ぐらいだったのでしょうか。それならファロが自分が老人になった気分になるのもわかります。

ファロの妻のリジーは出産の後に亡くなり、新米医師のヴィンスと幼い二人の娘が残されました。
ヴィンスはリジーが16歳の時に産んだ子で、父親は表だって明らかになっていません。リジーに似ているヴィンスは今はファロの心の支えのような役割を果たしています。
娘たちは自分一人では育てられないからと、オークニー諸島のカークウォールに住む母親にあずけています。

病気から復帰したファロが扱うのは、パトリック・ハイムズ修道院で働いていた妻と学校教師を殺した罪で絞首刑になった男の事件の再調査です。
彼は二番目の学校教師殺人を否認していました。

再婚はしないだろうと思っていたファロは恋に落ちます。
相手はトレローニー劇団の女優のアリソン・エアド。
彼女は看板女優としてシェークスピア劇に出ていました。
ファロが見たのは、≪オセロ≫のデスデモーナと≪アンソニーとクレオパトラ≫のクレオパトラを演じる彼女です。

エジンバラには一度行ったことがあるので、出てくる通りや城のたたずまいを思い出しながら愉しむことができました。
ちょうど今頃はエジンバラ国際フェスティバルをやっているんじゃないでしょうか。
エジンバラ城で「ミリタリー・タトゥ」を見た覚えがあります。
演劇やバレエ、映画などがフェスティバル中上演されているようですので、7月から8月にエジンバラにいらっしゃるならチケットを買ってみるといいでしょう。



傷心のファロの前に現れたのが、アメリカ娘。
彼女は息子のヴィンスと釣り合う年齢なのに、何故かファロに秋波を送ってきます。
彼女はちょうどファロの娘たちがエジンバラに来ていたので、娘たちの相手をしてくれるのですが・・・。

エジンバラ城の崖下で男の遺体が見つかります。
現場を調査したファロは男性の肖像が描かれたカメオを拾います。
亡くなった警官だった父親の遺品に女性の肖像が描かれた、似たようなカメオがあったことを思い出します。
このカメオに描かれている人はメアリー女王とその夫なのか。
父親は事故ではなく、殺されたのか。

歴史ミステリーという名にふさわしい内容です。

ちなみに、本の中に出てくる赤ん坊の骨は実際に見つかっているのだそうです。

「1830年にエジンバラ城の壁の中から、非常に古い木片と赤ん坊の骨、そして“J”と刺繍された衣服が発見されたという史実に基づいています」(東京創元社ウェブマガジンより)

シェークスピア劇やメアリー女王を取り上げているのは、イギリス好きには嬉しいですね。
三作目は誰を取り上げるのか。ファロとヴィンスの恋の行方はどうなるのか。
1988年から18作も続いているというのですから、早く翻訳して出版してもらいたいですね。(原文で読めよという心の声が聞こえてきます・・・)