上橋菜穂子 『香君』2022/05/17



西カンタルの藩王だったケルアーンの孫のアイシャとミルチャは国を追われ、大崩渓谷とその一帯を支配している山地民<幽谷ノ民>に匿われ、ひっそりと暮らしていた。
しかし現在の西カンタル藩王ヂュークチはアイシャたちを脅威と見なし、捕らえ、処刑を求めた。
藩王国の視察官マシュウ=カシュガは策を練り、アイシャとミルチャを助ける。
ミルチャはじぃやと共にウマール帝都南部の農場で、アイシャはマシュウの母方の親族であると偽り<リアの菜園>で働くことになる。

ウマール帝国には、香りで万象を知るとされる香君という女性が、神郷から奇跡の稲、オアレ稲をもたらし、人々を飢餓から救ったという伝説がある。
活神<香君さま>は神去りされてから十三年後の<再来の年>に見つけ出される。
今の香君はリグダール藩王国の貴族の娘・オリエだ。

アイシャは臭覚がすぐれており、様々なものたちが発する<香りの声>を聞くことができる。
ある日、アイシャは<リアの菜園>で倒れてしまう。
夜中に菜園に出て、畑に植えてある物の植え替えをしていたことを問い詰められている最中だった。
このことを聞いたオリエはアイシャに興味を持ち、会いに行く。

アイシャは<リアの菜園>からユギノ山荘に移される。
山荘の暮らしにも慣れた頃に、アイシャはマシュウとオリエから<オアレ稲の秘密>を打ち明けられる。
その頃、オオヨマが発生していた。
ヨマはオアレ稲につくことがある唯一の害虫で、大量発生すると、人々が飢え、大惨事が起こる。
アイシャはマシュウとオリエに協力し、人々を救おうと奔走するが…。

何とも言えない壮大な物語です。
世の中には見える世界と見えない世界があり、ともすれば見えない世界は無視されがちだけど、すべては繋がっていて、影響し合っているのです。
アイシャは見えない世界が香りを通して見える人。
彼女の力はどうとでも使えるのですが、あくまでも彼女は自分の力を人々のために使います。
上橋さんの描くヒロインはいつも追われる(笑)、善き人ですね。

これからひょっとして食料危機がやって来るのではないかと心配な今にうってつけの内容です。
胃袋を掴む人が世界を掴む…のかな。
巻末に載っていた本をみると、上橋さんが一冊の本を書くためにどれだけ多くの本を読んでいるのかがわかります。

庭に生えた雑草を抜かなくちゃと思いますが、「痛い。抜かないでぇ~」なんて雑草が言うのかなと思うと、草取りができないわ(ウソ)。

上下二巻の厚い本ですが、面白いので、是非読んでみてください。
お勧めです。

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