伊吹有喜 『娘が巣立つ朝』 ― 2024/06/14
五十四歳の自動車メーカーの関連会社に勤める高梨健一と着付け教室の講師をしている智子には二十六歳になる娘、真奈がいる。
四年前から一人暮らしをしている真奈は、歯磨きなどのマウスケア用品や洗剤などを作っている会社の総務課で働いている。
その真奈が大学時代の同級生の渡部優吾にプロポーズをされたという。
優吾は旧財閥系の工作機械関連の会社の名古屋支社に勤めている。
一月に優吾が家にやって来た。
彼は潔癖症ぎみだが、悪くはないやつだと思う健一と智子。
優吾は六月の人事異動で東京の本社に戻る予定なので、六月に結婚したいらしい。
ついでに真奈はマンションが来月更新で、これからお金がかかるので、家に戻りたいという。
娘とまた暮らせると思うと嬉しくなる健一だったが…。
優吾の両親がとんでもなく個性的で現代風の人たちだった。
母親は料理研究家でカリスマブロガー、マルコ。「オトコノコの福」という本でかつて有名になり、その本の中の男の子が優吾だった。
父親はカンカンという名でブログやSNSをやっている。肩書きは『ハッピィ・リタイヤメント・ファシリテーター』。
結婚式をどうするか、はじめから話があわない。
結婚する二人は普通の式がいいというが、式の費用はマルコとカンカン、マルコの両親、そしてカンカンの父親が援助するので、結婚資金をいちばん多く出す人の意見が最優先だと言う。
価値観や金銭感覚、生活のスタイルが違いすぎる。
真奈は優吾と結婚してうまくやっていけるのか。
娘の結婚話がきっかけとなり、健一と智子の間に不穏な空気が漂うようになる。
健一は会社で役職定年が近づき、会社の居心地が悪くなっていることに苛立っていた。
週末に三島の介護施設にいる母親に会いに行くうちに、音楽ボランティアをしている大田真理子と知り合い、昔、弾いていたギターをまた弾き始め、それが息抜きになった。
一方、智子は家で不機嫌な健一に辟易していた。
娘には優しい物言いなのに、わたしには顔に雑巾を投げつけるような話し方をする。
施設のSNSに載っている写真を見ると、わたしには見せたことのない笑顔を真理子に見せている。
仲のいい夫婦だと思っていたのに…。
最終的に智子は健一に「離婚 別居 卒婚」のどれか、決めるように迫る。
はたして智子と健一はどういう道を選ぶのか…。
まだ結婚をしていない方は、結婚しようとすると、いろいろ大変なことがあるかもしれないのね、という軽い感じで読んで下さい。ひとによって違いますからね。
もし親からの援助が欲しければ、口を出されても仕方ないと思って援助を求めようね。
本の中に出てきた次の言葉を贈ります。
「慈眼施 和顔施 愛語施」
「慈しみある眼、穏やかな顔、愛ある言葉。学問や大きな収入で貢献できなくても、ただそれだけで人は宝に等しいものをまわりに差し上げている」
結婚している40~50代以上の方は身に染みるかも。
お互いに空気のような存在になってしまい、不機嫌さを丸出しにしていませんか?
「不機嫌は暴力」だそうです。気をつけましょう。
「言ったところで何も変わらないって思ったとき、人は言葉の代わりにため息が出るんだね」
特に男性は女性がため息をつく時に気をつけて下さいませ。
怖いですよぉ、笑。
題名に引かれて、ほんわかした幸せな家族のお話を読もうと思ったら、とんでもないお話だったという感じです。
わたしは将来、高梨家の親も子も幸せにはなれないような気がしますがね。
<今週の美味しいもの>
久しぶりにスコーンを頼みました。
ASAKO IWAYANAGI PLUSのスコーンナチョレとクランベリーダージリンスコーン、すもものコンフィチュール。
飲み物はデンマーク王国王室御用達、A.C.パークスのルイボスバニラスクエアと
DEAN&DELUCAブレンドの紅茶。
ルイボスバニラが美味しくて、この頃のお気にいりです。
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