桜木紫乃 『ヒロイン』2023/10/15



バレエ教室を経営している母親の命じるままにバレエを始め、コンクールに出るようになった岡本啓美。
彼女の人生が狂ったのは、コンクールでどこの留学資格も得られなかった時なのか、母の支配から逃れるために「光の心教団」に入信した時なのか、それとも…。

1995年3月、渋谷駅で毒ガス散布事件が発生する。
実行犯として指名手配されたのは宗教団体「光の心教団」の男性幹部・貴島紀夫と 23歳の信者・岡本啓美。
啓美は事件当日、たまたま禁じられていた五階に行き、貴島に見つかり、何一つ知らされずに彼と行動を共にしただけだった。

最初は貴島と潜伏するが、彼に失望し、彼の持っていたお金の一部をひそかに盗み、啓美は逃亡する。

事件から三ヶ月後、新潟。
母と離婚後、父はみどりという女と再婚し、すみれという娘がいた。
すみれには皮肉にも啓美にはなかったバレエの才能があったが、父はバレエをするのを禁じていた。
父の家でしばらく暮らすうちに、啓美はみどりから父の別の顔を知らされ、気づけばみどりたちと父を陥れていた。

埼玉県、鬼神町。
啓美はフリーの記者鈴木真琴に頼まれ、孫の「鈴木真琴」と偽り、真琴の祖母・梅乃の経営するスナックで働くようになる。
スナックに来る中国人技能実習生ワンウェイと関係を持つが…。

次々と流されるままに、姿を変え、名前を変え、啓美は居場所を求めさすらう。
彼女の求めているものは何なのか。
彼女は本当に罪を犯したのか。
犯したとしたら…。

17年間に渡る逃亡劇を描いた作品です。
啓美のことを愚かだと思うことは簡単です。無実なんだから逃げる必要はないのですから。でも、それが彼女。
母から逃れ、世間から逃れ、罪を犯し、罪から逃れ、やっと定住できるのかと思ったら、そうは上手くは行かなかった。
男は弱く、彼女にしがみつくか、彼女の前からいなくなってしまう。
女は弱さを装うが、したたかで、強い。
啓美の幸せの形ってとってもささやかなものだったのではないでしょうか。
それが逃亡生活の中で得られたというのが、憐れでした。

定番の北海道が出てきて、嬉しかったです。
逃亡生活を送る主人公のお話っていくつかありますが、作者によって描き方が違っていておもしろいですね。
今思いつくのが『八日間の蝉』とか『火車』、『白夜行』、『ゴールデンスランバー』ですが、他にもあるので、一緒に読んでみるといいかも。
この本は好きですが、この中で一番かというと微妙…。


<昨日のわんこ>


やっと涼しくなって、昼間にお散歩ができるようになりました。
弟のグイグイもなくなり、ゆっくりのんびりお散歩ができます。
でも、二匹だと嬉しいのか、弟がアッチャコッチャに行くので、足を踏みそうで怖いです。

<今週のおやつ>


もらいもののファンドリーの焼き菓子。


これももらいもののキウイ。自宅で栽培したそうです。
市販のものより小さく、毛が少ないみたいです。
ヨーグルトとグラノーラと一緒に食べました。(スプーンでキウイを半分にしたら、汚い見かけになっちゃいました、笑)

どちらも美味しかったです。ご馳走さまでした。