吉永南央 『雨だれの標本 紅雲町珈琲屋こよみ』2023/10/30

「紅雲町珈琲屋こよみ」シリーズの11作目。
前作『薔薇色に染まる頃』で、草さんはスーパーおばあちゃん並みの働きをしていましたが、お話は紅雲町に戻り、草さんの身体はそれなりに老いているようなので、ちょっと安心しました、笑。


草が営む珈琲豆と和食器のお店「小蔵屋」が有名な映画監督である沢口の新作映画の撮影候補地となる。
周りは騒いでいるが、草は乗り気になれない。

ある日、突然沢口が間を取り持つ犬丸と共に小蔵屋に現れる。
店の下見の後、沢口は草に、沢口に大きな影響を与えた映像作品を作った人物を探して欲しいと頼む。
というのも、映像の中に草が住む県内の人間しか知らない郷土かるた、「三山かるた」の箱が写っていたのだ。

少ない情報と記憶をもとに草はその人物を探し始めるが…。

今回、面白いキャラの青年が登場します。
草の店のゴミを盗み、何だか分らないオブジェを作る高橋朔太郎君です。
芸術方面に進むのかと思ったら、最後に意外な方面に行きます。
家の呪縛に囚われずに、自分らしく生きていって欲しいですね。
前からの懸案事項である従業員の久実と恋人の一ノ瀬公介の関係も色々とありましたが、うまく行きそう(だよね?)。
草から「ずっと久実ちゃんの味方でいる」という頼もしいお言葉をいただけましたから、久実ちゃん、これからどんなことがあっても、大丈夫ですよ。

そろそろ終わりが近付いたのかなと思うこともありますが、このまま草も由紀乃も久実も元気なままでいて欲しいです。
でも、「似たような毎日に見えて、季節はそっと変わってゆく」。
それが人生。これからどうなるのかわかりません。