「グリーン・ブック」を観る2021/02/18

アカデミー賞、三部門(作品賞、助演男優賞、脚本賞)を受賞した作品です。
真面目な黒人差別を描いた映画かと思ったら、ちょっと違いました。
実在したジャマイカ系アメリカ人のクラッシックとジャズピアニストであるドン・シャーリーと、1962年に運転手兼ボディガードとしてドンに雇われたイタリア系アメリカ人のトニー・ヴァレロンガが、アメリカ最南部を回るコンサートツアーを基に作られた映画です。

「グリーン・ブック」とは1936年から1966年まで出版されていた、アメリカ黒人のためのガイドブック、「黒人ドライバーのためのグリーン・ブック」のことです。
人種差別の激しい南部を黒人が快適に旅するために、宿泊や飲食、給油、車の整備や修理などがどこでできるかが書かれていたようです。
(ネタバレあり)


1962年、ニューヨーク。
トニー・ヴァレロンガはナイトクラブの用心棒をしていましたが、ナイトクラブが改装工事のため閉鎖されてしまったため仕事がなくなってしまいました。
そんな矢先にディープサウスを回る8週間のコンサートツアーの運転手の話がきます。
カーネギーホールにある部屋に面接に行くと、ドン・シャーリーという黒人が雇い主であることがわかります。
実はトニーは黒人は苦手です。家に黒人の修理工が来た時に、彼が飲んだコップをゴミ箱に捨てるほどですもの。
ドンはトニーに黒人との仕事に抵抗がないか、ツアーから帰るのはクリスマスになるが大丈夫か、身の回りの世話もするなど仕事内容を話します。トニーは身の回りの世話は断りますが、ドンはトニーが気に入り、彼をツアーの運転手として雇います。

二人の旅が始まります。
ドンは9歳からレニングラード音楽院で英才教育を受けてきた学のある洗練された物腰の人。
トニーは正反対で、食べ方は汚いわ、言葉は悪いわ、言動が粗野そのもの。
例えば売り物の翡翠が落ちていたからとがめたり、手づかみで食べたチキンの骨を車の窓から捨てるような奴です。
こんな二人ですから、最初はぶつかってばかりです。

やがてトニーはドンのピアノの素晴らしさに感銘を受けると共に人種差別の実態を知ることになります。
コンサート会場に行くと、ピアノがゴミまみれです。会場係は黒人はピアノなら何だって弾くだろうと平気です。
一人でドンがバーに行くと、白人たちが絡んできて、ドンはボコボコにされます。
ある屋敷で演奏した後に出されたディナーはフライドチキンとコーン。他のお客たちはちゃんとしたディナーなのに。トイレを使おうとすると、白人用の屋敷のではなく、有色人種用の外にあるのを使えと言われます。
雨の中で道に迷っているとパトカーが来て、日没後に黒人が外出することは違法であると因縁をつけられます。頭にきたトニーが警官を殴ってしまったため、二人は留置所にいれられます。(この時ドンは司法長官のケネディに電話をします。知り合いだったのね)
ドンはトニーに耐えろ、暴力に訴えるなと言いますが…。

ドンの言葉が悲しいですね。
「私は独りで城住まいだ。金持ちは教養人と思われたくて、私の演奏を聴く。その場以外の私は唯のニガー。それが白人社会だ。その蔑視を私は独りで耐える。はぐれ黒人だから。
黒人でも白人でもなく、男でもない。私は何なんだ」

一緒に過ごすうちに段々と二人は互いに理解し合えるようになります。
トニーはドンの苦悩を、ドンはトニーの家族思いの強さを知り、トニーはドンを守り、ドンはトニーに奥さんへの手紙の書き方を教えます。

彼らはバーミンガムまで来ました。
映画によると、バーミンガムは1956年にナット・キング・コールが初めて白人観客の前で歌った場所で、その時白人たちが彼をステージから引きずり下ろして、袋だたきにしたというのです。ひどいですね。
そういう町ですから、コンサートを開くカントリークラブのレストランで食事をしようとすると断られます。ドンはここで食べられないなら今夜の演奏はしないと言いますが、差別ではなく土地のしきたりだと返されます。支配人はトニーに金を渡し、ドンを説得してくれと頼みますが、トニーは断ります。
ドンは君が望むなら演奏すると言いますが、トニーはドンを連れてカントリークラブを後にし、黒人専用のクラブで食事をします。
ドンがタキシードを着た場違いな服装なので、回りの人たちは彼をジロジロみています。
トニーがドンはピアニストだと言うと、演奏を聴かせてくれと言われ、ドンはピアノを弾き、喝采を受けます。
やがて店のバンドのプレイヤーも参加して、ドンはアドリブを披露します。
二人は楽しい時を過ごします。

コンサートが終わり、NYに戻ることになります。しかし、外は大雪・・・。
クリスマスに間に合うでしょうか。

似たような映画では「ドライビングMissデイジー」がありましたね。こちらは品がよろしかったですね、笑。
実際の彼らがどうだったのかはわかりませんが、付き合いが長く続いていたらいいですね。
アカデミー賞の作品賞を取るほどの作品かというと…?