「マイ・ブックショップ」を観る2021/04/24



この映画のポスターを遠くから見ていたので、主人公は本屋を経営している若い女性で、本屋にまつわるほんわかしたエピソードのお話だと思っていました。
見始めてからびっくり(゚Д゚)。主人公は40代!勘違いも甚だしい私です、笑。
(ネタバレあり)

1959年。イギリスの小さな浜辺の町に住むフローレンス・グリーンは16年前に戦争で夫を亡くしていました。
二人は昔、書店に勤めており、いつか二人で書店をひらくことが夢でした。

フローレンスが5年間も空家だったOld Houseを購入し、書店を開こうとした時に、何やら雲行きがおかしくなります。
町の人からは本を読む人なんかここにはいないと言われ、銀行からは融資を断られます。
町の有力者のガマート夫人にパーティに呼ばれ行ってみると、言われたのは、Old Houseは自分が買う予定だった、他に本屋に向いた物件があるから、そこを買ったらいいんじゃないか、あそこは芸術センターにすると言うのです。

フローレンスはガマート夫人の忠告に従わず、Old Houseを購入し、書店を開くことにします。
漁師のレイヴンが店の準備の手伝いに海洋少年団を寄越してくれた上に、本の配達にウォーリー少年を、店のバイトにクリスティーンを手配してくれました。

書店の話をどこからか聞いたのか、40年間屋敷に引き籠もっている老紳士ブランディシュが手紙を寄越し、良い本があったら送ってくれと言ってきます。
フローレンスは彼にブラッドベリーの『華氏451度』を送ります。
彼はこの本を気に入り、ブラッドベリーの他の本も所望してきます。
フローレンスは彼に話題になっている『ロリータ』を送り、店で売るべきかどうか相談します。
彼はフローレンスを屋敷に招き、『ロリータ』は言い作品だから売るべきだと助言し、フローレンスに、「あなたを助けたい」と告げます。

書店はそれなりに繁栄していきます。
もちろんガマート夫人はおもしろくありません。彼女は色々な手を使い、フローレンスにいやがらせをしてきます。
苦情の手紙から始まり、甥に働きかけ、「自治体は公的に価値のある建物を強制収用できる」という法案を通し、視学官にチクリ、クリスティーンを書店で働けなくし・・・。

店で働けなくなったクリスティーンが店に来た時、フローレンスは彼女が欲しがっていたお盆を渡します。クリスティーンは「あなたは優しすぎる」と言って去って行きます。
クリスティーンは幼いながら世慣れていて、人を見る目があります。
ガマート夫人に協力しているミロのことを「イタチみたい、彼は汚い手で成功する人よ」などと言っていましたし、ある物をミロの前からそれとなく持っていきます。彼女の方がフローレンスよりも大人みたい、笑。
フローレンスは人の中に潜む悪意の存在を信じられない、ある意味、純真無垢な人なのです。
こんな人が狡猾なガマート夫人に勝てるわけありません。

フローレンスに密かに思いを寄せているブランディシュは、勇気を出して書店存続のためにガマート夫人に会いに行きますが…。

小さな町に住む人々の中に巣くう悪意っていうものは恐ろしいものですね。
精一杯抵抗を試みるフローレンスですが、相手が悪かった。
でも最後にアッと驚く救い(?)が待っています。
クリスティーン、あなたはなんて子なんでしょう。

この映画の原作はペネロピ・フィッツジェラルドの"The Bookshop"で、ラストが違うそうなので、読んでみてもよさそう。(と言いながら、未だに読んでいない本が多すぎですね、笑)。

ブラッドベリーの本は若い頃に随分読みました。面白いですよ。
『華氏451度』は焚書のお話で、華氏451度は紙が燃える温度だそうです。映画で上手く使われています。
ブラッドベリーの本は色々とあるので、是非手に取って読んでみてください。
『ロリータ』は今やファッションなどで有名になってしまいましたが、この本から来ているのですよ。
まともに読んでいないので、これも読もうっと(思っていますwww)。

寺地はるな 『どうしてわたしはあの子じゃないの』2021/04/25



つつじが満開の季節になりました。
身近なところで季節を感じることしかできないですが、来年はどこかに行けると思って乗り切りましょう。


水を縫う』を書いた寺地さんの本です。

閉鎖的な肘差村に住んでいる三島天はいつしか村を出て東京に行き、小説家になりたいという夢を持っていました。というのも父親からは生意気だと殴られる日々で、周りはみんな天の気持ちをわからない敵のように感じていたからです。
彼女の嫌いなのは「世間体」とか「常識」でした。

父親の兄が事故死したため、東京から肘差村にやってきた小湊雛子ことミナ。彼女の家はこのあたりでは有名な地主で、祖父は村会議員でした。
ミナは可愛くて人目を引く容姿をしているので、男の子はみなミナのことが好きだと天は思っていました。

きれいな顔立ちにコンプレックスを持つ吉塚藤生。母子家庭で母親はお酒も出す『喫茶かなりや』をやっています。彼の家にパソコンがあるので、天はよく遊びに行っていました。
藤生が天のことが好きなのはみんなは知っていますが、天はそれを知りません。
天は藤生がミナのことが好きだと思っていました。ミナが藤生のことが好きだったので、天は二人の仲を取り持つようなこともしていました。

三人は中学校の授業で「20歳の自分へ」という手紙を書かされました。ミナが卒業したら東京に行くというので、それを真似して、三人は20歳の互いに向けて手紙を書きました。
それから14年後、ミナがその時の手紙が見つかったから、廃絶された肘差村の肘差天衝舞浮立が復活される日に三人で会って、手紙を開封しようと言ってきます。

30歳になる天は地元を離れ、スミレ製パンの工場で働きながら、小説を書き続けていました。
ミナは結婚しましたが、離婚することになっていました。
藤生は地元のケーブルテレビに勤めています。

一体手紙には何が書かれていたのでしょう。

小さかった頃、「私はなんで私なんだろう。私があの子だってよかったのに…」なんて誰もが思ったことがあったでしょう。
本の中の次の言葉に、私もこんなこと考えたことがあるという人が沢山いるでしょう。

「たまに考える。自分が「選ばなかった人生」というものについて。選べなかった人生、かもしれない。後悔しているわけではなく、ただどうであっただろう、と考える癖がついている」

読んだ最後に、「わたしはわたしでいい」と思えたら、最高ですね。

読んだ漫画2021/04/26



三田紀房 『ドラゴン桜2 1~16』
龍山高校を進学校に再建したというのに、なんと東大合格者が0名になってしまった!
そう聞いた桜木健三は元教え子で東大に入り弁護士になった水野直美を引き連れ、龍山高校に乗り込みます。
龍山高校は教職員から「女帝」と言われている瀧野久美子が理事長代行となってから、有名私立大学の合格実績は上がっていましたが、東大合格者は年々減少していました。久美子は密かにあることを画策していました。
桜木は理事となり、「東大専門コース」を設置すると宣言し、全校生徒の前で演説をして生徒を募りますが、今の生徒たちは無反応。
誰も来ないかと思っていたところに、早瀬奈緒と天野晃一郎がやってきます。

前とは時代が違うので、今回はスタディサプリやツイッター、YouTubeなどを駆使しています。
この漫画を読めば誰でも東大に入れるかどうかは定かではありませんが、どうやって勉強をしたらいいのかわからない人には参考になると思います。
16巻ではこれから二次試験いう頃のお話です。
何人合格するのか、楽しみですわ、笑。

にしうら染 『モネのキッチン 印象派のレシピ 1~2』
モネが印象派と言われる前の、妻のカミーユと息子のジャンと三人で暮らしていた、31歳の頃の貧乏生活のお話。
カミーユはモネや彼の友人の画家たちのために美味しいお料理を作ってあげます。
マネやシスレー、ルノワール、モリゾなど錚々たる顔ぶれが出てきます。

清水ユウ 『鹿楓堂よついろ日和 1~14』
東京郊外にある和風喫茶「鹿楓堂」のお話。
「鹿楓堂」は四人のイケメン男子が営む甘味処。
店主でお茶担当、猫好きな癒やし系男子のスイ、スイーツ担当でお菓子なら底なしの胃袋を所有する椿、料理担当で陶芸の先生をしている老人人気一番のときたか、コーヒー担当だけど、変なラテアートを描き、美的センスが疑問のぐれ。
こんな4人の醸し出す雰囲気が、お客さんに癒やしを与えています。
こんな喫茶店なら、誰もが絶対に行ってみたいと思わせられますよ。

安堂ミキオ 『はたらくすすむ 4』
定年退職後、ピンサロだと思わず面接に行ってしまった長谷部進、66歳。
雇われたのはいいのですが、夜の仕事に戸惑う毎日。働くキャストたちのことを思いやり、真面目に働いていたら、いいことありました。
家族との間も上手くいき、最後にふさわしい内容でした。

ジョージ・朝倉 『ダンス・ダンス・ダンスール 20』
バレエ漫画。アニメ化決定だそうです。私は観ませんが、興味のある方は観てくださいね。

潤平はフランコの元パトロン・ゲイリーから資金援助を得るために、『ジゼル』のアルブレヒトに挑みます。
果たして結果は…。

竹内友 『ボールルームへようこそ 11』
こちらはダンスでも社交ダンスの方です。私、どんなダンスでもやったことはありませんが、観るのは好きです。
ダンスの世界も奥が深いようで…。
『ダンス・ダンス・ダンスール』と共にお勧めのダンス漫画です。

二階堂ヒカル 『あおざくら 防衛大学校物語 20』
一学年が集団脱走か…。
「同期を売ることは絶対にできない。だが、同期を見捨てることも、オレは絶対にしない」という近藤はどう動くのか。
それにしても脱柵の理由がショボかったわ。
まあ、訓練が大変で、自由時間がないですものねぇ。
私には絶対無理な生活ですわ。

小林ユミヲ 『にがくてあまいrefrain 1』
あの『にがくてあまい』が帰って来ました。と言っても、私、前のお話忘れてるわ(恥)。それにしても何故いつも料理ができない、おバカ女が渚のところにやってくるのか?

料理上手なイケメン高校教師・片山渚の暮らす長屋の隣に、大家の孫が引越してくるそうで、喜ぶ渚でしたが、やってきたのは女の孫の五味岡真。
真の面倒をみてくれると、その代わりに家賃と水道光熱費がタダになると聞き、やる気のでる渚でしたが…。

沖田×華 『透明なゆりかご 産婦人科医院看護師見習い日記 9』
最終巻です。
産婦人科にやってくる女性たちは、子どもを産むためだけではないのです。
知らなかった幸せな出産の裏にあるものを描いてくれた作品です。
一読をお勧めします。

他には『かしましめし 4』、『青のオーケストラ 9』、『Papa told me Cocohana ver.~花冠をあげる~9』、『アレンとドラン 5』、『フランス家族ニッポン滞在記』などを読みました。

『Papa told me Cocohana ver.』の知世ちゃんが元気で、よかったです。
いつまでも大人にならない知世ちゃんだけど、彼女の姿が癒やしを与えてくれます。


夫のランチ用に頼んだパンです。


色々なところで頼んでいますが、夫は味の違いがわからないようです。
私はサンドイッチはハム&チーズなんかが好きなのですが、マヨネーズたっぷりのツナとかチキンが好きなようです。
お弁当よりも簡単なので、このままランチはパンでお願いしたいです。

読んだ本2021/04/27

本が溜まってきたので、一遍に紹介します。


ペネロピ・フィッツジェラルド 『ブックショップ』
映画「マイ・ブックショップ」の原作本。細かな点で違っているところもありましたが、ほぼ映画と同じ内容です。
大きな違いはクリスティーン。私は映画の彼女の方が好きです。
本には『ロリータ』は出てきましたが、ブラッドベリーは出てきませんでした。

”人間は絶滅させる者とさせられる者に分かれている、いかなるときも前者のほうが優勢だ”

この言葉の通りにフローレンスはなってしまいましたが、現実ではどうでしょうね。願わくは、絶滅させる者とならないことを…。

佐藤青南 『白バイガール フルスロットル』
神奈川県の白バイ隊員・本田木乃美は全国白バイ競技会へ出場することになりました。彼女の目標は箱根駅伝の先導で、目標に一歩近づけました。
茨城県ひたちなか市、自動車安全運転センター安全運転中央研修所で、全国白バイ安全運転競技会に出場予定の関東七都県から集まった交通機動隊員たちが合同訓練を行っていました。木乃美は誰とでも仲良くなれるという性格なので、ライバルなのにみんなと仲良くなっていきます。
そんな頃、優勝候補の他県の女性白バイ隊員たちが次々と猫をよけようとしてハンドル操作を誤り事故を起こし、負傷していきます。不審に思った木乃美は仲間の助けを借り、調べることにします。
同じ頃、横浜市内で椿山組と『凶龍』との抗争が勃発。椿山組を除名された三人が怪しい動きをしています。彼らの狙いは…?

完結篇なので、もう白バイ隊員たちに会えなくなりますが、番外篇希望します。

喜多みどり 『弁当屋さんのおもてなし しあわせ宅配篇2』
「くま弁」で宅配のバイトをしている雪緒のお話4つ。
第一話:突然弟の薫が雪緒のところにやってきます。雪緒に今の仕事のことを色々と聞いてきますが、何かある様子。心配して電話をしてきた叔父によると、バイトをしている叔父の店でミスをし、それから仕事に来ていないとのこと。さて、どうしたらいいものか…。
第二話:常連の黒川の娘、茜が夏休みで帰省してきます。いつもは休む「くま弁」ですが、今年はユウが仕事を入れています。一緒に過ごせなくて寂しく思っている千春に雪緒と茜がお節介をします。
第三話:常連さんからの不思議なお届けもののお話。墓地までおはぎを持って行って、幽霊に渡して欲しいと言うのですが…。
第四話:急に雪緒が前の会社を辞めるきっかけになった猪笹美月が電話をしてきます。彼女のことがずっと気になっていた雪緒。会って話すと元気そうでしたが、雪緒の仕事のことを聞くと美月は…。

仕事には貴賤はないとは言うけれど、世間一般の見方は変りません。
雪緒はどうやってそんな人たちの気持ちを変えっていったのでしょうか。

青山美智子 『鎌倉うずまき案内所』
出てくる人たちが次々と関わっていきますので、年表を書きたくなりますが、心配しないで下さい。後ろに年表があります。平成元年から平成31年まで、いろいろありましたね。最初は何だこれ、と思いましたが、ぐるぐるしたら、もう一回したくなりました。
こんな変った案内所があったら、私も行きたいですわ、笑。

佐伯泰英 『初詣で 照降町四季1』
18歳の時に男と駆け落ちをした佳乃が三年ぶりに照降町に戻ってきました。
実家は鼻緒屋。父親は病に伏せっており、脱藩武士の八頭司周五郎が奉公人として働いています。
佳乃は父親の代わりに職人として働くことになりますが、昔取った杵柄で、腕は鈍っていませんでした。
彼女の選ぶ鼻緒の斬新さもあり、老舗の下駄問屋・宮田屋にも認められていき、次々と仕事を頼まれます。
しかしそんな佳乃を追って、駆け落ち相手の三郎次がやってきます。

江戸時代に女の職人が結構いたのですね。
三郎次のことにけりがついたので、次からは八頭司のことがメインになるのでしょうね。四月から四ヶ月連続刊行だそうで、佐伯さんは多作な作家さんなのですね。

高野結史 『臨床法医学者・真壁天 秘密基地の首吊り死体』
第19回「このミステリーがすごい!」大賞の隠し玉だそうです。大賞を取ったのは『元彼の遺言状』です。

法医学者の真壁天は函館医大法医学教室の助教です。人と接するよりは死体を解剖する方がいいという変った人です。それなのに教授が彼に児童虐待を鑑定する仕事を押しつけてきました。彼の鑑定は的確なので、当てにされてしまい、抜け出せません。
しかし、しばらくして彼が子どもの虐待を指摘した親たちが次々と首吊り死体になって殺されていきます。その状態は彼が小学校の時に見た親友の首吊り死体と似ていました…。

なんかあっけなく読み終わってしまいました。
真壁のキャラが面白いので、シリーズ化してもよさそうですね。

平居紀一 『甘美なる誘拐』
こっちは第19回「このミステリーがすごい!」大賞・文庫グランプリ受賞作品。
色々と賞があるんですね。知りませんでした。

市岡真二と草塩悠人はヤクザの使い走りをやっていました。
上司の荒木田はセコく、人使いの荒い奴です。宝くじを買いに行かされ、やりたくもない地上げ屋の真似をさせられ、パーティ券のノルマを押しつけられ…。このために借金までしなくてはならず、まずいことに行ったら金貸しの爺さんが死んでいたりしました。
ある日、彼らは荒木田から宗教団体・ニルヴァーナの教祖の孫娘を誘拐するという仕事を押しつけられます。

地上げされそうな植草部品がどこに関係するのかと思ってたら、そこかという感じでした。
騙された感はありますが、ミステリーとしてはそこそこです。

桜木紫乃 『いつかあなたをわすれても』


桜木さんはこう言っています。

母が、私の名前を忘れていることに気づいたとき、実はあまり悲しくなかったんです。おおそうか、とうとうきたか、という感じでした
(中略)
「おかあさん、わたしをわすれていいよ。わすれたほうが、さびしくないから。わすれたほうが、こわくないから」この言葉を、気持ちを、母に手渡したい。
その気持ちが、絵本というかたちになりました。

とっても素敵な絵と文です。
母の日に、大人になった女性に読んでもらいたい絵本です。


今週のおやつ。


可愛らしいプティ・フールです。
両側にあるソフトクッキーサンドの中にクリームが入っていて美味しいです。

堂場瞬一 『沈黙の終わり』2021/04/28

堂場さんの「作家デビュー20周年記念碑的作品」という文に惹かれて読んでみました。
警察物だと思ったら違いました。今回は新聞記者たちの奮闘記です。


松島慶太は東日本新聞柏支局の支局長として赴任してから一週間。以前は本社で編集委員をしていましたが、定年を前に胃がんに罹り、思うところがあり現場に戻りました。
三十年以上前に県警で知り合い、今は野田署長の小野のところに挨拶に行って話していたところに、重大事件が発生します。
七歳の女の子が行方不明になってから、野田市今上の江戸川近くにある小さな森で遺体で見つかったというのです。

古山孝弘は東日本新聞埼玉支局の記者ですが、来月、異動で本社の社会部へ行くことになっていました。
「週間ジャパン」で千葉の事件を読み、何かが気にかかりました。
地図を見て気づきました。四年前、埼玉支局に配属されたばかりの頃、小学二年生の女の子が行方不明になった事件です。場所が野田市の現場と直線距離にすると五百メートルほどしか離れていないのです。
吉川署の副署長が知り合いだったので問い合わせてみると、女の子はまだ見つかってはいないが、同じ犯人が川を挟んで千葉と埼玉で事件を起こしているとは思えないと言われます。
そう言われても引っかかる古山は柏支所にいる大先輩の松島に電話をかけて自分の考えを話し、資料を送ります。
すると、資料を読んだ松島から三十三年前の流山で七歳の女の子が殺された事件を思い出したと連絡があります。遺体は江戸川近く、野田と吉川の現場から直線距離で七キロの所で見つかり、犯人はわからないままでした。

松島は三十三年前の事件のことを野田署長の小野にぶつけることにします。
小野はその時、捜査一課の刑事で、事件の捜査本部に入っていたと言いますが、一生懸命捜査してもどうにもならないことがあるというばかりです。
埼玉の事件のことも伝えるのですが、小野の反応は薄いままでした。

その頃、古山は捜査一課長から警告されます。
間違いなく、警察には取材されると都合の悪い事実があると確信する古山。
同じ頃、松島に面識のない警察関係者と思われる朽木という男から、三十三年前の事件のことで気をつけるようにという電話があります。

古山は被害者の家族と会っている時に、別の行方不明事件のことを聞きます。
他にも同じような事件がないかと調べてみると、行方不明事件が他に2件、殺人事件が2件見つかります。同じような事件が合計7件あったのです。
被害者の共通点は全員六歳から九歳の小学校低学年の女児で、通っていた塾が永幸塾で、塾帰りに行方不明になっていました。
これは連続した事件なのか。
警察は何を隠そうとしているのか?不祥事、捜査ミス、隠蔽工作?

古山と松島は警察庁のコメントをもらい、7つの事件に関した記事を書きます。
記事が出た後に、野田署長の小野が自殺します。
事件と何か関係があるのか…?

警察物ではないので、事件に関する直接的な捜査シーンはありません。
記者たちは警察を刺激しないように、周りから攻めていく感じです。
新聞記者ってもっと自由に取材できると思っていましたが、そうでもないんですね。
松島や古山みたいな記者らしい記者って、もはや絶滅危惧種みたいなものなのですね。
忖度って言葉が一時期流行りましたが、今やマスコミは忖度だらけなのかしら?
事件の記事は正義感から書くという記者が一人でもいて欲しいです。

松島の言葉が熱いです。

「政治記者は書かな過ぎるんだ。時代の目撃者とか言って威張っているけど、見るだけで記録者にはなっていない。結局、権力の近くにいるだけで満足してるんだろう?」

この言葉、今の政治記者たちにあげたいですね。

警察物ではない堂場さんの本を初めて読みましたが、私は警察物の方が好きです。
松島や古山がそれほど人間的に魅力的じゃないからかしら、笑。
警察内部の話の方が面白くなりそうなので、そちらの方を書いて欲しいですね。

「ブルックリン」を観る2021/04/29

主演のシアーシャ・ローナンは『ストーリー・オブ・マイライフ』のジョー役の人です。NYで産まれたのですが、両親がアイルランド人で、子どもの頃アイルランドで暮らしていたそうです。
この映画にピッタリな生い立ちですね。


(ネタバレあり)
1951年、アイルランドの田舎町のミス・ケリーの食料雑貨店で働くエイリシュ・レイシーは、未来へ何の展望を持てずにいました。
ミス・ケリーは意地悪女で、エイリシュたちをこき使い、どんなに店が混んでいようが金持ちを優先するような人でした。
姉のローズはそんな妹にアメリカで働くというプレゼントを与えてくれました。
アメリカに行くことをミス・ケリーに告げると、その場で首にされます。行くまで働いていたかったのに…。
彼女は姉のローズのことを可哀想、お母さんの面倒をみなければならなくて、彼女の人生は終わりだなどと言うのです。(ホント、クソ女です)

アメリカには船で行きます。
船に乗るのが初めてのエイリシュは時化がどんななのか知らないので、食事をしてしまいます。案の定、船が揺れるので吐き気がこみ上げてきますが、トイレに籠もる迷惑な人がいたので、しかたなくバケツに吐かなければなりませんでした。
同じ船室の女性が親切にも鍵をかけてトイレを使えるようにしてくれました。
アメリカに上陸する時には、服装やメーク、態度など上陸するときの心得を教えてくれました。

エイリシュはNYのブルックリンの口やかましいミス・キーオのところで寮生活をしながら、デパートで働き始めます。
都会に気後れしたのか自分に自信が持てず、いつもビクビクしているエイリシュ。お客さんとも上手く話ができないので、上司に注意されてしまいます。
ホームシックにかかってしまったのです。
それに気づいた上司が世話役のフラット神父を呼んでくれます。
エイリシュは彼の勧めで、ブルックリン大学の夜間クラスの会計士コースで学べることになります。篤志家が1学期分の授業料を払ってくれるというのです。
授業で学ぶうちにだんだんと自信を取り戻していくエイリシュでした。

クリスマスにエイリシュは、アイルランドからアメリカに渡って50年以上が経ち、ホームレスになった老人たちに食事を配るボランティアをします。
彼らはアメリカでトンネルを掘ったり、橋や高速道路をつくったりする仕事にかかわってきたのです。(アイルランドの歌が歌われます。帰りたくても帰れない故郷への思いの籠もった、この場面が切なくて涙が出てきます。)
寮に帰ると、ミス・キーオから一番いい部屋が空くので、そこをエイリシュが使うようにと言われます。

ドロレスという女の子が新しく寮に入って来ます。
彼女が教会のダンスに行きたいというので、エイリシュも一緒に行くことにします。(2人のお姉様たちは感じ悪いですわ。行かないと言ったのに、来るんですもの)
そのダンス会場で、エイリシュはイタリア人で配管工をしているトニーと出会います。トニーは下宿まで送ってくれ、別れる時にディナーに誘われます。(アレ、ドロレスは置いてきたの?)
やがてエイリシュはトニーと付き合うようになります。
仕事ではお客と話せるようになり、上司がびっくりして、何故かと聞いてくるまでになります。イタリア人男性と付き合っているというと、野球や母親の話をしないイタリア人男性は大当たりだと教えてくれます。(上司の方は美人で一見冷たそうに見えますが、優しいんです)

2人お姉様たちは、エイリシュがトニーの家で食事をすると聞くと、パスタの食べ方を教えてくれます。(本当は優しい人たちなんですね)
上司の女性もエイリシュがコニーアイランドに行くと聞くと、水着を選んでくれます。

そんなある日、仕事をしているエイリシュのところにフラット神父がやって来ます。姉のローズが亡くなり、明日埋葬されると言うのです。
トニーはアイルランドに帰るというエイリシュが戻って来ないのではないかと心配になり、ロングアイランドの土地を見せて、兄弟3人で建設会社をやるので、ここに住まないか、結婚してくれと言います。
二人は秘密裏に結ばれ、市役所で結婚します。

アイルランドに戻り、友人のナンシーと遊びに行くと、ジム・ファレルが来ていました。彼は裕福な家庭の男性で、ナンシーはアイルランドにいる間、楽しめばいいのよ、なんて感じです。
ところが母親はジムは狙い目だと、エイリシュにジムを強く勧めてきます。
ローズが亡くなったので、エイリシュを身近に置いておきたいのですね。
ローズが働いていたデイビスの店からローズの代わりに簿記の仕事をしてもらいたいと言われます。
ジムもナンシーの結婚式でダンスをしていると、NYには戻らないでここに残って欲しいと言い出します。
前にアイルランドにいた時とは違う状況です。
そんな時にエイリシュのところにミス・ケリーからの呼び出しが…。

アイルランドの生活はさぞ息苦しいでしょうねぇ。特に女性には。
仕事はないし、ミス・ケリーのような意地悪ババアはいるし、親からの期待はうざいし…笑。
そんなアイルランドの町よりもブルックリンの方が自由に出来ていいように私は思いますが、エイリシュがどちらを選んだのかは映画を観てのお楽しみに。

学校では歴史をあまり面白く思わなかったので、勉強しませんでしたが、映画をより深く理解するためには歴史は必須だと思うこの頃です。
特にこの映画ではアイルランド移民とアメリカの歴史が関わっていますものね。

クリスマスで歌われる歌はW.B.Yeatsの”Tales of Red Hanrahan"(『赤毛のハンラハンの物語』)の中の 'Casadh an tsúgáin' (「縄ない」)だそうです。
映画とこの歌に関するエッセイがありましたので、興味がある方は読んで観てください。歌詞と映画の場面が見られます。
歌だけ聴きたかったらアイリッシュ・グループのThe Gloamingの歌うこちら