ヘニング・マンケル 『スウェーディッシュ・ブーツ』2023/05/12

スウェーデンのミステリー作家マンケルが書いた小説『イタリアン・シューズ』の続編です。
英語版の『After the fire』を読む前に翻訳が出てしまいました(恥)。


元医師のフレデリック・ヴェリーンは70歳。
未だ祖父から遺された小島に一人で住んでいる。

ある夜、火事で目覚める。
警察が調べると、放火であることがわかる。
とんでもないことに警察はフレデリックがやったのではないかと疑っている。
そんな彼のところにインタビューをしたいとリーサ・モディーンという女性記者がやって来る。
フレデリックは彼女と関係を持ちたいと思う。

娘のルイースに家が焼けたことを連絡するとすぐに島にやって来る。
フレデリックは娘とどう接したらいいのかわからない。
彼女はエキセントリックで、何かと腹を立てるのだ。
いったい何をして暮らしているのだ。
やがて警察から呼び出しが来る。
ルイースは一緒に行くというが断ると喧嘩になる。
翌日、ルイースはいなくなる。

しばらくしてルイースから電話が来る。
パリで警察に捕まっているので助けて欲しいというのだ。
フレデリックはパリへ向かう。
親しくなっていたリーサ・モディーンも誘うが断られる。

パリでは大使館員に助けられ、ルイースと会うことができた。
ルイースは思ってもいなかったことをフレデリックに告白する。
そしてフレデリックに付近の群島の家が焼けたという連絡が…。

この本はミステリではないので、フレデリックは犯人捜しをしませんが、彼の悪癖から偶然に犯人を突きとめてしまいます。
読みながら私も彼ではないかと思っていました。
誰もが人を正確に理解しているわけではなく、人には思いもかけないことがあります。
中学校の人気教師が強盗殺人事件を起こしてしまうようにね(本当のことなのか、信じたくないですが)。

それにしても70歳になるというのにフレデリックには驚きました。
自分よりも大分若い女性のことをすぐに好きになってしまうんですもの。
そういえば50代のヴァランダー(マンケルのミステリーの主人公)もヴィスティング(ホルストのミステリーの主人公)も女性を求めていましたね。
年を取ると一層、特に一人暮らしだと男女関係なく、そういう関係を求めるのかもしれませんね。

この小説はマンケルの最後の作品です。
そのためか死の影がどの場面にも色濃く感じられます。
マンケルはスウェーデンに明るい未来を感じていなかったのでしょうか。
新しい命に希望を託していたと思いたいです。

ちなみに「スウェーディッシュ・ブーツ」とはスウェーデンのトレトン社製のゴム長靴のことです。
火事で片方無くし、注文するのですが、何故かすぐに手に入らないのです。

老年に足を踏み入れた人が読むと身に染みる本かもしれません。

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